2007年2月23日

トリパノソーマ症 米国、シャーガス病 CDC
ブタ連鎖球菌 米国

● トリパノソーマ症 米国、シャーガス病 CDC
PRO> Trypanosomiasis, Chagas disease, blood donor screening - USA 20070223.0669
 情報源 Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) 2007; 56(07);141-143、2月23日
Blood Donor Screening for Chagas Disease, United States, 2006-2007
シャーガス Chagas 病は、人獣共通感染症で、血液を媒介とする寄生虫 _Trypanosoma cruzi_ を原因とし、ラテンアメリカ諸国で、推定 1100万人の患者が発生している.土着感染地域では、T.cruzi は一次的にはサシガメ (kissing bug) により感染伝播するが; 輸血、胎内感染、臓器移植、検査室での事故、またはサシガメの入った食物や飲み物の摂食でも起こる.
輸血による T.cruzi 検出のための開発中のアッセイを評価する目的で、2006年 8月から 2007年 1月まで、アメリカ赤十字社は米国の3つの血液センターの血液検体約 14万 9千件について、シャーガス病の原因である、トリパノソーマ _Trypanosomacruzi_ スクリーニングを行った。
シャーガス病は、典型例では感染後初期の 1-8週間は、無症状または軽い症状 (発熱、倦怠、刺し口の腫脹、リンパ節の腫れなど) しか示さないが、急性期がある。無治療の場合、低レベルのまま生涯感染が続き、時に寄生虫血症を呈する。感染した患者の多くは、慢性の間欠期(すなわち初回急性感染後、長期の感染が臨床上潜伏している期間)は、無症状である。しかし、約 30%の患者では、心臓の症状 (心筋症、不整脈、突然死) や胃腸炎症状 (巨大食道症や巨大結腸症) を示す。米国では、ベクターに媒介され感染伝播するシャーガス病は、まれである。
しかしある研究で、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の献血者間の、1996-1998 年のシャーガス病の血清学的陽性者の増加が示された。
以下、過去 20年間に米国およびカナダで、輸血によるシャーガス病は 7例報告されており、全て免疫不全の受血者であったこと、2005 年供血者用のシャーガス病の市販の検査が開発されたこととその原理の詳細、検査結果、MMWR の編集部注 (単一検査法の限界、臨床診断では 2法以上の検査と臨床症状が考慮されること、CDC の参照サイトの紹介と参考文献など) ....
[Mod.EP- 報告の要点は、"FDA が、all blood-collection establishments による検査実施を勧告するよう期待されていること" と、"アメリカ血液銀行協会 AABB が、繰り返し ELIZA 法で陽性となる献血の全ての成分の締め出しと、流通からの除去および供血者の永久的な献血の禁止を勧告した" ことである。報告のある、2442 から 465 5人の献血者に 1人が繰り返し陽性となるとの結果は驚くべき高さであるが、スクリーニングのための疑陽性が一部に含まれているものと考えられる。報告では、検査陽性者の取り扱いについては触れられていない。陽性者は治療のため、専門医に紹介されるべきであるし、スクリーニングの目的は、常在国からのドナーを受け入れるためのスクリーニングであり、受血者のトリパノソーマ感染患者の数が減少するか、興味深い]

● ブタ連鎖球菌 米国
PRO/AH/EDR> Streptococcus suis, porcine, human - USA (NY) 20070223.0668
 情報源 PigProgress.net、2月21日
北米初のブタ髄膜炎 pig meningitis のヒトの感染例が報告された。生来健康であったニューヨーク州北部の59才の農夫は、髄膜炎で入院していた。初期の検査において、ブタにおいてよく見られ、髄膜炎の原因となるブタ連鎖球菌 _Streptococcussuis_ が確認された。養豚業の従事者については、感染の可能性の周知に力を入れる必要があると、病院医師は述べたが、一般市民への影響はないだろうとしている。農場で働く人は、ブタやその排泄物から感染することがあり、精肉業者もリスクがある。手洗いと豚肉の十分な加熱により、リスクは最小限となる。コーネル大学の研究者は、農場の農夫とブタの菌の DNA レベルの解析を行った。ブタとヒトとの一致を見ることはできなかったが、デンマークやオランダのブタとヒトで確認されたかぶと、一見したところ一致していた。一部の株はヒトでの発症を起こしやすいものであったと、研究者は説明した。ブタ連鎖球菌は、ヨーロッパにおいて過去 20年以上にわたって時折ヒトに感染していたが、東南アジアでは、常にヒトでの感染が発生しており、特に中国では、2005年に感染流行が発生し、患者 204人死者 38人、死亡したブタ約 600頭であった。2005年には、南米において、アルゼンチンからはじめての症例が報告された。すべてのブタ連鎖球菌の症例は、動物から感染したもので、当局者は、このブタの細菌が、ヒトから他のヒトへの感染する恐れはないとしている。
[Mod.LL- 北米初としているが、2002年の報告で、カナダの4症例について議論されている。アイオワ大学のウェブサイトにもカナダと、おそらくこのニューヨーク州を含めた各国での感染について説明されている。2005年の中国の感染流行は、かつての感染は流行ではなく単発であった点と、連鎖球菌トキシンショック症候群 (STSS) が発生した点で、非典型的であった。ブタのでの流行は、2005年 7月20日ごろにピークとなり、感染が発生した村の平均死亡頭数は約 4 で、この時期に四川省で死亡したブタの死因の 98% がブタ連鎖球菌であった。感染したブタはすべて庭先飼育されており、たいてい各群れで1匹ずつ感染していた。感染した子ブタによって庭先飼育のブタに感染が発生し、健康なブタに波及した。単一のリボタイプが検出されたことは、この説を支持している。
感染流行中のブタ連鎖球菌感染の主要なリスクは、感染したブタの処分と、死亡原因が不明なブタを精肉処理するときの、直接の暴露である。近代的な処理場とは異なり、地方の農夫らは予防や手袋を着用しない。通常、1ないし2名で行う作業内容とは、頚動脈から瀉血し、死骸を膨らませ、80度の温水でブタ皮を処理したあと、大型のナイフで皮を剥いだり削いだりする。皮の熱処理と皮剥ぎは同時に行われることも多い。この後、調理用に肉を小さく切り分ける。全体の作業にかかる時間は1時間以上となる。
われわれの研究では、患者はすべて、発病または死亡したブタの血液や組織との直接の接触があった。しばしば、皮膚にある傷を通して感染する。処理中に飛沫感染する可能性もあるが、われわれにはそのような例は見出せなかった。その他の感染リスク要因が他の研究で示されている。調理された豚肉を食べることによる感染の証拠は見出されなかった。未処理の豚肉が近所に配られたが、生肉や生の内臓部分を食べることはしなかった。
ヒト-ヒト感染は、病気のブタとの接触がなかった家族、近所、医療従事者に発病がなかったことから、可能性はきわめて低いと考えれる。
唯一の未解決の問題は、初期の患者集団発生における死亡したヤギ 1匹と、その後のブタ連鎖球菌の感染流行との厳密な関連性である。これら 2つのケースにおいて、細菌学的確証を得られていない。2人の感染は、ヤギの死亡の直後に発生し、この感染流行における他の患者と臨床症状が似ているため、ブタ連鎖球菌が原因であると推察しているが、感染したヤギからヒトへのブタ連鎖球菌感染はいまだかつて報告されていない。庭先飼育を行っている農家では、いろいろな動物が一緒に飼われており、ブタ連鎖球菌感染がブタやヤギの間で伝播する可能性がある。細菌の保有とヒトでの感染における、ブタ以外の動物の役割の解明にはサーベイランスが役立つだろう。
ヒトでのブタ連鎖球菌感染には、臨床的に 3つの異なる病型があり、すなわち、STSS、敗血症、髄膜炎である。STSS については、これまで他の連鎖球菌や黄色ブドウ球菌では同様の病態の記載があったが、ブタ連鎖球菌による報告はなかった.通例とは異なる STSS 様疾患によって、この感染流行が地方衛生当局の注意を引くこととなった.このことで、この感染流行における STSS の報告の割合が比較的高くなったことが説明される.他の説明として.無脾症、糖尿病、アルコール依存、悪性腫瘍などの、共存する有病因子の報告もあるが、我々のこの感染流行の調査には当てはまらなかった。
検査室において、感染流行のブタ連鎖球菌の毒性(病原性) 因子 virulence factor が確定された.mrp,sly, ef が含まれているが、その詳細な臨床意義は明らかにされていない.これらの分離株 (mrp+, ef+, sly+) は、ヨーロッパ株と関連性があり、北米株より毒性が強いと考えられている.新たな毒性遺伝子が関係しているなら、遺伝子解析によって決定されるかも知れない]

● コレラ エチオピア、シエラレオネ、コンゴ、ジンバブエ、WHO WER
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2007 (09) 20070223.0667
[1] コレラ-エチオピア
 情報源 International Herald Tribune; Associated Press report、2月21日
エチオピアで680人以上がコレラが疑われる感染流行で死亡したと、20007年2月21日に当局が発表した。約6万人が感染したが、同国保健相はWHOの流行発生の警告に抗して、非常事態宣言を拒んでいる。8つの州で感染が発生し、東部の辺境にあるAfarではこの1週間だけで、1000人以上の新たな患者発生が報告されている。この感染流行は、豪雨のあった2006年4月に開始した。コレラによるものではないとしているエチオピア保健当局は、急性水溶性下痢症と表現しているが、彼らが実施した検査結果は公表されていない。エチオピアの国連関係者は、2006年初めに感染が確認されたスーダンから、2006年にエチオピアにこの疾患が持ち込まれたとしている。
[2] コレラ-シエラレオネ (Northern Province)
 情報源 Awareness Times 、2月20日。
Magburaka 病院において、Tonkolili 地区の衛生担当チームは、国境なき医師団オランダの協力を得て、死亡は受診が遅れた2人のみで、190人以上の水様性下痢症患者の治療に成功した。Bombalili 地区へ拡大している。
以下、患者多発地域 Magburaka, Makeni-Lol, Makaloh, Magbas Makari-Kabia, Makaprie, Mabum, Masoko, Mabone, Masobinta, Mafumba, Magbonto, Magbesseh, Mamuta, Rotchen,Masegble, Masampa, Robiz, and Tongbai など。
[3] コレラ-コンゴ (Kouilou、Pool)
 情報源 News.yahoo.com、2月19日。
UNICEFによると、コンゴ共和国内で 82人がコレラ感染流行のため死亡した。2007年 1月末に、コンゴの商業の中心地である南西部のPointe-Noireで感染流行が発生したことが公式に発表され、首都ブラザビル Brazzaville に拡大した。2007年 2月19日の UNICEF が示した地方からの報告をまとめた数値では、Pointe-Noire において 2月14日までに 4077人がコレラに感染し、61人が死亡した。Kouilou 地域にある (PointeNoire の) 町の北において、106人のコレラ感染が報告されており、うち7人が死亡した。ブラザビルでは、14人が死亡し、46人以上が感染している。Pointe Noired およびブラザビルの患者は劇的に減少しているが、この町の間にある Mindouli 地方で感染が発生したと警告されている。
[4] コレラ-ジンバブエ (ハラーレ Harare)
 情報源 International Herald Tribune; Associated Press report、2月18日。
ジンバブエの首都ハラーレで、3人がコレラにより死亡し、2007年の初めての死亡が報告された。75才の女性 1名を含むこの3人はいずれも、ハラーレの南の貧しいスラム街の Epworth の住民であった。その他の地区の 19人でのコレラ感染流行発生と、ジンバブエの厳しい国内事情、2007年 1月に 3人が死亡したコレラ流行で市場が一時閉鎖されたことなど。
[5] コレラ-世界各国-WHO WER notifications (アンゴラ, ジブチ)
 情報源 WHO Weekly Epidemiological Record (WER)、2月23日。
コレラ届出患者 from 16 to 22 Feb 2007
国名 /期間/ 患者数/ 死亡数
アフリカ
アンゴラ 24 Jan - 8 Feb 2007 / 1794 / 106
ジブチ 24 Jan - 8 Feb 2007 / 214 / 17

● リステリア症 オーストラリア
PRO/AH/EDR> Listeriosis, smoked fish - Australia (VIC, NSW): alert, recall 20070223.0666
 情報源 The Sydney Morning Herald 、2月23日。
メルボルンの老人が発病し、マスの燻製のムースが、リステリア菌に汚染されている恐れがあるため、ビクトリア州の食品メーカーが製品回収を開始した。89 才の老人が、Yumi ブランドの燻製マスのムースを食べた後発病した。検査によりリステリア菌が検出された。賞味期限 2007年 3月10-16日の、200g入り Yumi ブランドの同ムースおよびディップが、健康に被害を与える可能性があるとして、スーパーマーケットから回収された。老人は治療により後遺症なく回復した。

● サルモネラ感染症 米国 、ピーナッツバター
PRO/AH/EDR> Salmonellosis, serotype Tennessee, peanut butter - USA (07) 20070223.0665
[1] CDC報告、製品の培養検査結果陽性
 情報源 CDC.gov、2月22日。
複 数州の公衆衛生当局は、CDC および FDA の協力を得て、サルモネラ菌 Tennessee 型感染の調査に取り組んでいる。発症者と健常者の摂食調査により、Peter Pan peanutbutter および Great Value peanut butter の摂食との関連が示され、感染源である可能性がある。患者の開封後の製品から同菌が確認されている。監視ネットワーク PulseNet (CDCのサブタイプ検出状況サーベイランス)は、2006年秋から、同菌の増加を検知していた。その後、OutbreakNet (CDCの腸管疾患感染流行の公衆衛生ネットワーク) が数週間にわたり、異常な食品による伝搬を調査した。開封されたビンの検査により、Tennessee 型と DNA 指紋が感染流行株パターンと一致したことが判明した。
(→2月28日)
[2] ConAgra [社] プレスリリース
 情報源 ConAgra Foods.com、2月22日。
同社製品からのサルモネラ菌検出の報告。

● 口蹄疫 ベトナム
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Viet Nam (06)
Archive Number: 20070223.0671
 情報源 Xinhua via China Daily、2月23日。
Foot-and-mouth disease hits Viet Nam
ベトナム中央部 Quang Binh 省および Quang Nam 省で、この数日間に口蹄疫 Foot & mouth disease が発生していると、2007年 2月23日に地元メディアが伝えた。Quang Binh 省 Dong Hoi 市では、bull 2頭が感染し、Quang Nam 省 Tam Ky 市ではブタ 7頭、bull および buffalo 8頭が感染した。

● 鳥インフルエンザ アフガニスタン
PRO/AH/EDR> Avian influenza (41): Afghanistan (Nangarhar, Kunar) 20070223.0670
 情報源 AFP via Yahoo.com、2月23日
2007年2月23日、OIE はアフガニスタンの2件の高病原性鳥インフルエンザウイルスによる感染流行を確認したことを明らかにした。アフガニスタンの Nangarhar 州および Kunar 州の 202羽のトリに発生し、73羽が死亡した。2月21日、FAO は感染したトリがシチメンチョウであり、H5亜型ウイルスが疑われるとしていた。アフガニスタン国内の対応策。2006年にアフガニスタンで H5N1 型ウイルスが確定されたが、ヒトでの感染は発生していない。
OIE official report
* Nangarhar、Kunar (Konar) は北東部 

● 原因不明の大量死、魚類 米国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed die-off, fish - USA (MD Maryland) 20070223.0664
 情報源 Baltimore Sun、2月22日
ポトマック川の魚の死亡、調査開始
5万匹のスズキ perch が、病気と寒さで死亡したと、当局者が述べた。

● 狂犬病 ベラルーシ
PRO/AH> Rabies, animals - Belarus (02) 20070223.0663
 情報源 Eurosurveillance weekly release, vol. 12, issue 2、2月22日。
ベラルーシ共和国の動物で狂犬病増加
1996 年に 27件であった、ベラルーシでの動物の狂犬病が増加し、2003年には 1077件、2006年には 1628件が発生した。同国内の狂犬病のほとんどはキツネで確認されているが、タヌキraccoon dogsでの感染が増加している。1999年のベラルーシでは、キツネ 65匹、タヌキ 5匹での狂犬病の報告があったところ、2003年にはキツネ 666匹、タヌキ 133匹で、感染が確認されている。その他の種での感染も少数ながら増えている。(ハイイロオオカミ grey wolves - 7倍増, 飼い犬- 8倍増、飼い猫 - 4倍増, 家畜 - 5倍増)  2001年、エサに経口ワクチンを入れた野生動物の予防接種、家畜へのワクチン接種、および野犬やノラネコの捕獲の 3つの対策からなる、3ヶ年計画が実施された。この結果 2004年の狂犬病症例数は、224匹に減少した。しかし、その後の 2年間、再び感染頭数は増加し、最新の 2007年 1月のデータ (91匹) においても、その傾向に変化は見られていない。
ヒトでの狂犬病患者
動物での狂犬病感染増加による、ヒトでの暴露後接種者数への影響は見られていない。動物での感染が散見されていた頃も、感染数が増加してからも、暴露接種者 数は人口100万人対約 200 - 250 人と高いながらも変化が見られていない。暴露後接種治療を受ける人の理由の 70% は、イヌの咬傷であり、約 14% はネコによるもの、2% 強は家畜、4.5% は野生動物によるものであった。ワクチンは細胞培養による不活化狂犬病ワクチンが使用されている。
検討
ベラルーシでは、生活の変化によ り、都市部の住民や渡航者も含め、狂犬病のリスクに暴露する人口は増加している。隣国における新たな問題も発生している。ベラルーシで最も多く狂犬病が発 生しているのは、ラトビアおよびリトアニアとの国境に近い北西部である。2003年、ベラルーシでは1000平方キロあたり約 5件の強健業が発生しているが、ラトビアとリトアニアでは、各々15 および 17 件となっている。2004年、これら3カ国すべての報告患者数は減少したが、2005年と 2006年も減少傾向が見られたのは、ラトビアのみである。ベラルーシとリトアニアでは、この時期、動物での狂犬病も増加している。