2013-14

新種のオルソポックスウイルス-グルジア(ジョージア)
アフリカトリパノソーマ症
テトロドトキシン中毒 米国
エーリキア(エールリヒア)症
鳥インフルエンザ、ヒト H7N9
リッサウイルス オーストラリア
フィロウイルス-バングラデシュ
新型コロナウイルス,SARS コウモリ
類鼻疽 臨床症状

◎ 新種のオルソポックスウイルスジョージアグルジア20140502.2445865 5月2日

[1] ジョージア国内の 2名の牧民が新種のウイルスに感染した、と the [US] Centers for Disease Control and Prevention が 1日発表した。天然痘 smallpoxvirus の類縁ウイルス a 2nd cousin で手や腕に有痛性水疱を生じ,発熱、リンパ節腫脹、全身衰弱などがある、と説明されている。"これまでのところヒト-ヒト感染は確認されていないが,発症したヒトの患者がどれくらいいるのか、動物も発病するのか、についてはまだ分からない。死亡する可能性についても分かっていない" としている。感染した 2人の男性はいずれも完全に治癒している。
that family [_Poxviridae_] のうちヒトに感染するのは次の 4種類: cowpox, monkeypox, vaccinia and smallpox。 smallpox を除く他のすべてのウイルスは、通常は動物 -- ウシ、ネコ、サル -- に感染するが、時にヒトにも感染する。今回の患者はいずれも乳牛から感染した。皮膚炭疽と考えられたが検査で陰性であったため,米 CDC に照会された。
[2] CDC reports 3 human cases caused by new orthopoxvirus(CIDRAP News)
CDC の研究者らが、3人のジョージア人の新種のオルソポックスウイルス 感染を確認した。天然痘ワクチンを接種されたことがない 2名の牧民らが、2013年夏に病気のウシとの接触後に発病した。この牧民とウシと接触のあった 55人に聞き取り調査を行ったところ、天然痘ワクチンの定期接種が中止された 1980年以降に生まれた 9人の聞き取り調査対象者のうち、5人にオルソポックスウイルスに対する抗体が確認された。さらに、ジョージア国内の他の地域でも、2010年に炭疽感染の疑いとされた別の 1例が確認された。これらの牧民が所有するウシの一部も過去にオルソポックスウイルスに曝露しており、地域内の齧歯類の間で感染循環している証拠を明らかにした。
[Mod.CP- variola virus (VARV) による天然痘は数世紀に渡って世界中の人々の脅威であったが,1970年代の WHO による包括的なワクチン接種と患者隔離政策により、天然痘の根絶は成功した。最後の自然感染が発生したのは 1977年のソマリアであった。その 1年後、研究室内のウイルスが感染源とみられる 2 VARV infections が英国内で発生している。1979年、WHO はついに天然痘の根絶を宣言し、1980年代後半以降は天然痘ワクチンの使用が禁止された; 従って、地球上の人口の中で、今も接種が続けられている軍関係者を除くと、接種されたことのある人は少なくなっている。その結果として、集団免疫がなくなっていることが、ワクシニア様ウイルス a vaccinia-like virus の再興や感染拡大につながるおそれがある。
オルソポックスウイルス The orthopoxviruses は the subfamily _Chordopoxvirinae_ を構成する 8グループ genera のうちの 1つで; ほかには _Parapoxvirus_, _Capripoxvirus_, _Leporipoxvirus_, _Suipoxvirus_, _Molluscipoxvirus_, _Yabapoxvirus_, and _Avipoxvirus_ がある。これらのウイルス名は誤解を招きやすく、必ずしも宿主の種を示しているとは限らない; たとえばサル痘ウイルス monkeypoxvirus は,多くの場合げっ
歯類により感染が拡げられている。]

◎ アフリカトリパノソーマ症 20140428.2435399 4月28日

Rufunsa District (Lusaka Province,ザンビア) において致死性寄生虫疾患のアフリカトリパノソーマ症 (睡眠病) African sleeping sickness, or African trypanosomiasis の感染流行が報告されている。the Game Management Areas (GMAs) に隣接する地域で、野生動物の影響でツェツェバエが増加していることが、流行発生の原因であるとされている。同地域ではマラリア患者も増加しているという。アフリカの 30以上の国々で毎年、報告例 1万5千から2万例あたり 1例の死亡が報告されており、6000万以上の人々に感染の危険がある。
African sleeping sickness は、北緯 15度から南緯 15度に挟まれた、サハラ砂漠以南のアフリカだけに常在する。アフリカ睡眠病には 2種類あり: 1つは東アフリカを中心に発生する Trypanosoma brucei rhodesiense_ が原因となり重症化し時に数週間から数か月で死に至ることもある急性感染症の形を取る。もう 1種類は West and Central Africa で確認される _Trypanosoma brucei gambiense_ を原因とする。感染は緩徐に経過し、発症まで数か月から数年間かかることもある。これら 2種類の分布には一部重なり合う地域がある。いずれの型の感染も the bite of a tsetse fly がきっかけとなる。この不快で小型の虫はヒトを含むほ乳類の血液を栄養源とし吸血する。刺咬は強い痛みを伴うため、旅行者は必ず刺されたことを覚えている。吸血時に皮膚内に原虫が感染しリンパ系に運ばれ、最終的に血流に入る。人体内でいくつかの段階を経て、最後に髄液に到達する。より早期に、感染した原虫や病期に合わせた治療を開始することが勧められている。
溶血期 the hemolymphatic stages の West および East African trypanosomiasis のそれぞれの治療薬として、Pentamidine isethionate and suramin (under an Investigational New Drug Protocol from the CDC Drug Service) が選択される。
中枢神経系に感染が及ぶ感染末期 (infections by _T. b. gambiense_ or _T. b. rhodiense_) の治療薬としては Melarsoprol が選ばれる。
感染予防対策は preventing tsetse fly bites となる。
[Mod.EP- "アンゴラ,カメルーン,コンゴ,コートジボワール,赤道ギニア,ガボン,ガーナ,ギニア,ケニヤ,マラウィ,ナイジェリア,ウガンダ,タンザニア,ザンビア,ジンバブエの各国では,新たな患者の報告が年間 100例を下回っている"と,WHO は報告している。(Trypanosomiasis, human African (sleeping sickness) fact sheet)。1992年のジンバブエとザンビアの,ツェツェバエの分布状況に関する報告では、Lusaka 周辺は free from tsetse とされている。(PAAT,Program Against African Trypanosomiasis,)]

◎ テトロドトキシン中毒 米国内の流通 20140201.2243251 2月1日

輸入フグが関係すると見られるテトロドトキシン中毒の調査が行われている。このフグは、日米で取り決めのある専門資格を有する調理師による処理と調理が行われていなかった。中毒を発症した患者は、米国内のレストランや小売店で購入したものではなく、韓国の親類からパッケージ入りのフグを送られていた。
The safe sources are:
- 日本国・下関市の有資格の調理師が処理した輸入フグ
- 米国大西洋中部沿岸水域で捕獲された Puffer fish。他の水域からのものは、deadly toxins を含む可能性有り。
日本国政府はフグの調理師に特別の免許を与えている。米国には、唯一の認可輸入業者 only one approved New York importer の Wako International により、日米 (FDA)両政府の合意の下に、年 2-3回の特別な場合にのみ輸入され,レストランだけに販売されている。
the mid-Atlantic coastal waters of the USA で捕獲されたフグにはこれらの致死性トキシンは含有されていないため、摂取しても安全と考えられている。輸入物と比べ安価で、市場やレストランで見かける。しかし、フロリダ東岸沖で捕獲されたフグは、毒性がある疑いがあり、食用にすべきでない。
[Mod.LL-the "Bad Bug Book" からの抜粋:
members of the order Tetraodontiformes の摂取による魚類食中毒は、海洋生物によるもののうちで最も強毒性の食中毒の 1つである。フグの性腺、肝臓、消化管および皮の部分には、急速な突然死に至るに十分な濃度のテトロドトキシン tetrodotoxin TTX が含まれていることがある。身の部分は通常、危険なほど毒性が高くはない。TTX が確認されている動物種は多岐に渡り、例えば、the California newt イモリ、parrotfish ブダイ?、the genus _Atelopus_ のカエル、タコ the blue-ringed octopus、ヒトデ starfish、エンジェルフィッシュ angelfish、オウギガニア xanthid crabs がそれに当たる。TTX の生成過程 The metabolic source of tetrodotoxin はよく分かっていない。原因となる藻類は特定されておらず、近年まで TTX は宿主の代謝産物の 1つと考えられていた。しかし最近になって、strains of the family _Vibrionaceae_, _Pseudomonas sp._, and _Photobacterium phosphoreum_ などの細菌により、tetrodotoxin/anhydrotetrodotoxin が産生されるとの報告があり、細菌が原因であるとの見方が強まっている。これらの細菌は海洋生物で広く確認されており、これらの事実が確認されれば、中毒に関して重要な意味を持つ。中毒の初期症状は,口唇と舌の軽い麻痺症状で、トキシンを持つフグの摂取から 20分ないし 3時間で現れる。これに続く症状として、顔面と四肢の進行性のしびれがあり、その後身体の浮遊感を感じることがり、頭痛、胃痛、嘔気、嘔吐、下痢などの症状も現れることがある。時に歩行困難が認められる。第 2期の中毒症状である麻痺の進行により、患者の多くが移動不能となり、坐位を保持することすら困難となる。発語は障害され、通常、呼吸困難、チアノーゼ、血圧低下が出現し、さらに麻痺が進行すると、けいれん、精神障害、不整脈も起こりうる。完全麻痺の状態であっても意識は保たれ、死亡の直前まで完全に意識清明な状態であることもある。死亡は 4~6時間後に起きるが、約 20分から 8時間の間に起きることが知られている]

◎ エーリキア(エールリヒア)症 米国 20130725.1844497 7月25日

ダニ lone star ticks から感染する病気で,このダニは the "Lone Star State" と呼ばれるテキサス Texas 州のほか、南部の州にも多数生息し、メスの背中に白い斑点がある。
[Mod.LL - おそらく human monocytic ehrlichiosis の原因となる _Ehrlichia chaffeensis だと考えられる。この病原菌の名前は、初めて菌が分離された患者の居住地の Fort Chaffee, Arkansas にちなんで命名された。Mod.ML (20130405.1624168) の解説より:
"Ehrlichiosis はダニ媒介性の人獣共通感染症で、リケッチア類似偏性細胞内細菌による。
以下、CDC publication からの抜粋 ...
"Human ehrlichiosis は、米国内では少なくとも 3種類の different ehrlichial species: _Ehrlichia chaffeensis_, _Ehrlichia ewingii_, and a 3rd _Ehrlichia_ species provisionally called Ehrlichia muris-like (EML) が感染原因として知られている。感染したダニの刺咬によりヒトに感染する。米国内では,The lone star tick (_Amblyomma americanum_) が _E. chaffeensis_ and _E. ewingii_ 双方の主要ベクターである。ほとんどの患者が米国南部および中南部から報告されており,東部、南東部、中南部の州全体に存在するダニの分布地域に呼応している。過去 20-30年間にダニの分布域が拡大しており、北は Maine、西は central Texas and Oklahoma でも確認されている。[CDC]
"通常ダニ刺咬には痛みを伴わないため、エールリヒア症患者の約半数はダニ刺咬を自覚していない。典型的な症状として,発熱,頭痛,倦怠感,筋肉痛があり、発疹は小児では最大 60%に発生するが、成人では 30%未満にとどまる。ダニ刺咬から 1-2週間後に症状が現れることが多い。
"診断は徴候と臨床症状で行い、その後、特異的検査で確認する。病期の第 1週においては、全血の Polymerase chain reaction (PCR) assay の感度が最も高いが、適切な抗生物質で治療された後は直ちに感度が低下する。 the 1st week of illness に行われた血液塗沫標本の顕微鏡検査では、最大 20%の患者の白血球細胞質内に桑実胚 morulae (microcolonies of ehrlichiae) が認められる。_Ehrlichia_ の分離培養が行えるのは特殊な検査機関に限られる。
"抗体が検出されるのは通常発症の 7-10日後で、最も確実な血清学的診断法 The gold standard serologic test はエールリヒア抗原を用いた間接免疫蛍光アッセイ indirect immunofluorescence assay (IFA) で,ペア患者血清で抗体価の有意な上昇 (4倍) を確認する。The 1st sample はできれば第 1週に採取することが望ましく、the 2nd sample はその 2から4週間後に採取する。抗 IgM 抗体は抗 IgG 抗体に比べ特異性が低く、偽陽性となりやすい。
"重症度は患者の免疫状態に左右される。あらゆる年齢の成人と小児の治療の第 1選択薬はドキシサイクリンである。治療が行われない場合は、生来健康なヒトであっても死亡の可能性のある重症疾患で、重い症状として呼吸困難や出血傾向などがある。致死率は 1.8%と推定される。早期に治療すれば外来治療が可能であるが、重症化した場合は、抗生物質の経静脈投与、長期入院、集中治療が必要である。
"E. chaffeensis_ は、冷蔵した血液中で 1週間以上生存することが示されている。固形臓器移植による _E. chaffeensis_ transmission についても研究されていたが、[今回の事例まで] 確認されたことはなかった ... ]

◎ 鳥インフルエンザヒト H7N9 20130426.1674993 4月26日

[4] Immunological profiling: Eurosurveillance
2/3 が 50歳以上で 2/3 が男性であり,H5N1 のように学齢期の患者が目立たないのは予想外。獲得免疫による感染過程の修飾が、H5N1 と H7N9 viru
ses の年齢分布の違いの理解に役立つかも知れない。生来暴露してきた influenza A(H1N1) に誘導される抗ノイラミニダーゼ (N1) 抗体が、若年者より高齢者において influenza A(H5N1) infection の感染及び重症化リスクの低減に有用であった。一方、influenza A(H7N9) に対しては、すべての人口において anti-N9 antibodies の獲得の割合は小さいと考えられる。また,the 2009 influenza A(H1N1) pandemic による免疫学的効果 population immunological effects 因子、例えば元々保持されていたウイルス内部蛋白への T 細胞の交差性反応 、もしくは group 1 (ie H1, H5) と group 2 (ie H3, H7) の各 subtypes ごとに共通するエピトープに対するメモリー B 細胞の反応など、による influenza A(H5N1) and A(H7N9) age profiles への影響も考慮する必要がある。
デング熱の抗体依存性増強反応 antibody dependent enhancement (ADE) を最もよく説明するとされる、獲得された交差反応性抗体によるウイルス感染過程への影響も、現時点で否定できない。ADE は、異型性が弱く weakly heterotypic、交差反応 cross-reactive を有するものの交差防御作用 cross-protective を有しない抗体が、過去のウイルス抗原への曝露 - 例えば感染や予防接種 - などにより低レベルで存在するときに発生する。この反応により、架橋複合体 bridging complexes が形成され、関連性はあるが相同性のない変異体 non-identical variants の取り込みと複製 uptake and replication が生じる。インフルエンザにおける ADE の可能性については長い間議論されており、今も尚、専門家らの間で強い関心が持たれている問題であり、近年、間接的な証拠が存在する可能性が示された。the 2009 influenza pandemic の早い時期に、季節性インフルエンザと新型インフルエンザウイルスの間に、重要な相互作用が起きている可能性が報告された。注目されたのは,パンデミックウイルス influenza A(H1N1)pdm09 strain と抗原的関連性を持ちながら遠い関係にある、季節性インフルエンザワクチンの接種歴のある患者は、パンデミックウイルス感染に関係する医療機関の受診の尤度が約 2倍であった点である。ワクチンを接種されたフェレットの追試実験でも、influenza-naïve animals と比較して、より高濃度の肺内ウイルスや重症化が認められた。ブタでも重症化することが確認されている ... 原文 [Google 翻訳] 参照願います。

◎ リッサウイルス オーストラリア 20130215.1544648 2月15日

オーストラリア国内で the rabies-like Australian bat lyssavirus の感染が記録されたのは、今回を含め 3例で,いずれも Queensland で感染した,1996年と1998年の 2例の患者は死亡している。1例は数週間で発病したが、もう 1例はコウモリの咬症から 2年以上が経過していた ...
[Mod.CP- Australian bat lyssavirus [ABLV] は a district species in the genus _Lyssavirus_ of the family _Rhabdoviridae_ に分類される。狂犬病ウイルス rabies virus と近い関係にあるが、コウモリだけに限定されている。狂犬病ワクチンの暴露後接種による中和が可能である。州当局 Queensland Health によると: Australian bat lyssavirus (ABLV) はコウモリからヒトに感染する恐れのあるウイルスで、1996年に初めて確認され、これまでに 4 kinds of flying foxes/fruit bats and one species of insect-eating microbat のコウモリの感染が確認されている。他の多数種のコウモリでも、血液検査上、過去の感染の証拠が得られており,豪州内ではすべてのコウモリが同ウイルスを保有する可能性がある。ABLV は世界中で確認されている 12 types of lyssavirus のうちの 1種で、豪で発生が確認されているのは唯一 ABLV のみである。コウモリからヒトへの感染は a scratch or bite によることが多いが、目、鼻、口 (粘膜) がコウモリの唾液に暴露することで起きる可能性もある。ウイルスがコウモリの体外に出て数時間以上生存する可能性は、とくに日光のある乾燥した環境では低いと考えられる。暴露から発症までの期間は一定していない ...
咬傷やひっかき傷を負った場合は、ただちに、少なくとも 5分間以上石けんと水で創を徹底的に洗浄し、洗浄後、手元にあれば抗ウイルス効果のある殺菌剤 povidone-iodine, iodine tincture, aqueous iodine solution or alcohol (ethanol) を使用する。コウモリの唾液が目、鼻、口に入った場合は、徹底的に水で洗い流す。できるだけ早く医療機関を受診する。
ABLV に暴露した可能性があり、暴露前接種を受けたことがない場合、抗狂犬病免疫グロブリンを注射し、1ヶ月間で 4回のワクチン (on days zero, 3, 7, and 14) を接種する。 暴露後免疫接種については、保健当局が費用を負担する。免疫低下がある場合は、a further (5th) dose of vaccine given at day 28 と、一連の接種完了後の血液検査で免疫付与の確認を行う。コウモリの検査が可能で、他者への感染リスクがないときは、Post-exposure vaccination は最大 48時間後まで待つことができる]

◎ フィロウイルス-バングラデシュ オオコウモリ疑い 20130131.1523666 1月31日

オオコウモリ Asian fruit bats で初めてエボラウイルス the African Ebola virus [の抗体] が確認された。今月の Emerging Infectious Diseases 掲載のこの報告の中で研究者らは、276 bats in 4 Bangladesh districts を捕獲したと述べ、"バングラデシュにはほとんど洞窟がなく、古い廃墟の外側にかすみ網を設置した" と説明している。このうちの 5頭 -- すべて the _Rousettus leschenaultii_ species -- が、エボラウイルス the Zaire Ebola virus [Zaire ebolavirus] 抗体検査に反応した。ウイルスそのものは検出されなかったため、遺伝学的解析を行うことはできず、the African strain との関係を明らかにすることはできなかった。[発見された] ウイルスは、何千年も前の祖先から保有されてきた可能性があるという。フィリピンのオオコウモリ Philippines fruit bats で確認された Ebola Reston はヒトでの病原性は確かめられていない。また、スペインの食虫コウモリの,an "Ebola-like" virus [Lloviu virus] が発見されている。
[Mod.CP -原著要約:エボラウイルスの地理的分布を確認する目的で、276 bats in Bangladesh の調査を行ったところ、5 (3.5 percent) bats で Ebola Zaire and Reston viruses 抗体が確認された; PCR によるウイルスの確認はできなかった。これらのコウモリが Ebola or Ebola-like viruses の保有宿主であり、フィロウイルスがアジア大陸にまで及んでいる可能性が考えられる ...
オオコウモリ Fruit bats of the genus _Rousettus_ は、 アフリカのフィロウイルスとフィリピンのレストンウイルスの保有宿主を考えられてきた。Lioviu filovirus は,スペインの食虫コウモリ _Miniopterus schreibersii_ insectivorous bats で確認され病原性を示すが、ヒトへの病原性は知られていない。コウモリを保有宿主とするフィロウイルス科ウイルスが,いまだ詳細な記述はないものの広大な地域に分布することが予想される。アジア大陸の野生動物のエボラウイルス感染の調査で,確認されている範囲を越える地域までフィロウイルスが広がっていることが示された。ザイールエボラウイルス ZEBOV [抗体] だけが陽性となったことから,レストンウイルスとは異なるエボラウイルスへの曝露が示唆された。マールブルグウイルス MARV との交差反応については、両遺伝子間の核タンパク遺伝子の相同性がわずか 35% であることから、可能性は低いと考えられる。ただし、共感染を除外することはできない。 ...
著者らの結論: 宿主からの ebolavirus 排泄が短い間隔で行われ、ウイルス血症と抗ウイルス価が逆相関することにより、抗体検査陽性のコウモリで negative PCR results であったことを説明することができる。フィロウイルスの核酸を検出できなかったことは、サンプルサイズが小さい、ウイルスの保有率が低い、あるいは使用した検査 a PCR がバングラデシュで感染循環する filoviruses に対して感受性が低いものであった、ことなどを反映したと考えられる。 ...
最近のカリマンタン Kalimantan において,複数のオランウータンのエボラウイルス感染の痕跡 evidence of ebolavirus が確認されている。2005年12月から2006年12月までの期間に、健康なオランウータン 353 healthy orangutans から採取された血液検体のうちの 65件の血清検体の検査結果がエボラウイルス陽性であった、と報告されている。(Serological Evidence of Ebola Virus Infection in Indonesian Orangutans. PLoS ONE 7(7): e40740. doi:10.1371/journal.pone.0040740. Open access article]。同様に、中国のコウモリに対して、ELISA 法によるエボラウイルス 血清学的調査 a sero-surveillance study が実施され、32 of 843 bat sera samples で抗体が、10 of 16 については western blot analysis で確定された (Serological evidence of ebolavirus infection in bats, China. Virol J. 2012; 13(9): 236)。
この種の研究においては分類学上の用語 taxonomic terminology が誤用されることが多い。これらの調査で Infectious virus が分離されたことはなく、血清学アッセイではフィロウイルスを特定する specific for any particular filovirus strain (or virus species) ことはできない。調査の結果から言えることは、広範囲のフィロウイルスに交差反応を示す抗体 broadly cross-reactive filovirus antibodies が、おそらく世界各地のコウモリで確認された、というのに過ぎない。 だからといって、この結果をもって、出血熱の原因となるフィロウイルスが世界中に存在すると言うことにはならないのである]

◎ 新型コロナウイルス,SARS  コウモリ 20130122.1508656 1月22日

 2012年に中東で初めて確認された新型コロナウイルス EMC 2012 [the virus has also been referred to as nCoV -- novel coronavirus] は,これに非常に近い関係にあるウイルスを、欧州、ロシア、アジアとアフリカの一部地域、および中東に広く分布するコウモリが保有している可能性が示唆されているとの報告が,2013年3月の the journal Emerging Infectious Diseases に掲載される予定である。どうして 3か国で 1ダース以上の人々がこの新型ウイルスに感染し発症したのか、あるいは他にも感染者がいるが症状が軽いため見逃されてきたのかどうかは解明されていない。きわめて近い関係にあるコウモリのウイルスが,新型コロナウイルスに進化した、と結論づけることはできないとしている。The SARS coronavirus, a cousin of EMC 2012 は,コウモリのウイルスの 1種から新興し,中国で食される野生動物の civet cats and raccoon dogs に感染した可能性がある。
 今回の研究で,以前にガーナと欧州の4カ国 --オランダ、ルーマニア、ドイツ、ウクライナ-- でのコウモリの調査で採取し保管していた 5000頭近いコウモリの便検体を改めて調査したところ,nearly 25 per cent of _Nycteris_ bats, and 15 per cent of _Pipistrellus_ bats のコウモリで、新型コロナウイルスに近い関係にある未知のウイルスを発見した。1例では the genetic codes の違いがわずか 2% 未満だった。
 新型コロナウイルスが,なぜサウジアラビアとカタールとヨルダンだけで感染が見つかっているのだろう? また、なぜ今発生したのか?
原著タイトル Human betacoronavirus 2c EMC/2012-related viruses in bats, Ghana and Europe. Emerg Infect Dis [Internet]. 2013 Mar [accessed 21 Jan 2013]
要約 "4758 bats from Ghana and 272 bats from 4 European countries の排泄物サンプルを用い、 betacoronaviruses についてのスクリーニング検査を行った。the novel human betacoronavirus EMC/2012 に関係する複数のウイルスが、46 (24.9 percent) of 185 _Nycteris_ bats and 40 (14.7 percent) of 272 _Pipistrellus_ bats で確認できた。遺伝学的近縁性 Their genetic relatedness を考慮すれば、EMC/2012 がコウモリ由来であることが示唆された"
[Mod.MPP- 著者は "Within the Arabian Peninsula, the International Union for Conservation of Nature (http://www.iucn.org) lists 50 bat species, including _P. arabicus_, _P. ariel_, _P. kuhlii_, _P. pipistrellus_, _P. rueppellii_, and _P. savii_ bats."と書いている。2012年のサウジアラビア、ヨルダン、カタールにおける重症急性呼吸器感染症に関与する the nCoV と関係のある betacoronaviruses が、ガーナと欧州において、地中海東部地域に生息する種類も含む複数種のコウモリで同定されたことは驚くべきことではなく,コウモリから種を飛び越えてヒトに感染したとの仮説を支持する]
[Mod.CP - a reservoir for emerging viruses としてのコウモリの役割についての関連資料: Bats: important reservoir hosts of emerging viruses. Clin Microbiol Rev. 2006 Jul; 19(3): 531-45 (full article, references available at source URL) ... 2002年、ヒトの新型の重症急性呼吸器症候群の原因が、これまで知られていなかったコロナウイルス a previously unrecognized coronavirus (family _Coronaviridae_) であることが判明した。SARS-CoV と命名されたこのウイルスは、齧歯類、ウシ、イヌ、ブタ、ヒトに感染する the group 2 coronaviruses の中で、遠い関係にある a distant relative ウイルスであり、現在 group 2b に分類されている。中国南部のコウモリで最近同定された、他の2種類のコロナウイルスとは識別可能である。疫学的調査により、SARS のごく初期の患者は、野生動物の肉を扱う業種に関係していた。深センの市場で扱う野生動物の調査では、ハクビシン masked palm civets (_Paguma larvata_) とタヌキ raccoon dogs (_Nyctereutes procyonoides_) から SARS-CoV-like viruses が分離され、アナグマ a hog badger (_Arctonyx collaris_) の the SARS-CoV-like virus 抗体が確認された。興味深いことに、野生動物肉の市場の動物の間での集団感染の疫学は、輸送熱 shipping fever によく似ていた。この疾患は、異なる農場から集められた動物が、同じところに詰め込まれて、混み合ってストレスの多い条件で輸送されるときに発生する、ウイルス症候群である。このような条件では、持続的なウイルス感染症に対する免疫力が低下し、ウイルス排泄は増加し、感受性のある動物は感染して、さらにウイルスを排泄する。SARS-CoVs が確認された市場では、血清学的検査で陰性であった動物からも、rt-PCR 検査によりウイルス遺伝子 viral RNA が検出され、急性感染であることが示唆されたのと同時に、他の動物では SARS-CoV 抗体が確認されたにもかかわらず、ウイルスの排泄が続いていたことから、持続感染の存在も示唆されている。この市場の動物については、 SARS-CoV の病原性は認められなかったが、ヒトから分離された SARS-CoV を接種されたハクビシンでは、肺に対する重篤な病原性を示した。SARS に感染した、患者と野生および飼育されていたハクビシンなどの動物から得られた多数のウイルス遺伝子を解析し系統樹を作成したところ、the 1st human SARS coronaviruses は、同時期にハクビシンから検出されたウイルスと非常に近い関係にあり、この後に、ヒトからヒトにウイルスが感染伝播する中で、突然変異 point mutations の選択と蓄積が起きていったことが示唆されている。SARS-CoV の自然界の保有宿主を同定するため、rt-PCR 検査による、家畜動物、家禽、野生動物の広範囲調査が行われた。ハクビシンは、一次宿主 ではなく、偶然の感染保有動物 an incidental host であったことが判明した。最近、中国南部に生息するコウモリが SARS-CoV-like viruses に感染し,もしくはこれらの新たに確認されたコロナウイルスの抗体を持つことが,複数のグループにより同時期に確認され,その中には、 members of several species of Chinese horseshoe bats (suborder _Microchiroptera_, family _Rhinolophidae_, genus _Rhinolophus_) も含まれていた (Tables 1 and 2)。Chinese horseshoe bats の一部の種の,bat SARS-CoV 抗体保有率は 84%に達していた。コウモリに対する SARS-CoV infection による病原性はこれまで確認されたことがない。the 2002-to-2003 outbreak of SARS の期間中に、ハクビシンおよびヒトから分離されたウイルス遺伝子は、発生系統学的に幅広いコウモリの SARS-CoV のグループの中に位置する。このことは、the 2002-to-2003 outbreak の原因ウイルスが、このコウモリに関係するグループの中から発生した可能性が最も高いことを意味する。 SARS-CoV-like viruses of bats に対する抗体が、洞窟に生息するオオコウモリ megachiropteran の1種の、Leschenault's rousette (_Rousettus leschenaultia_) でも確認されていることから、fruit bats も SARS-CoV-like viruses 感染に何らかの役割を果たしている可能性も考えられる。したがって the natural history of SARS-CoV は、これまで知られていなかったコウモリのウイルス SARS-CoV-like virus of bats が、食肉市場でハクビシン、タヌキ、アナグマなどの増幅宿主 amplifying hosts に感染伝播し、その後、これらの中間動物またはその肉に接触したヒトに、逸脱したウイルスが感染したことが関係すると考えられる。引き続いて起きた、ウイルスのヒトからヒトへの感染伝播は、ウイルス遺伝子の変異による馴化 adaptive mutations が関係したと言える ... 原文 [Google 翻訳] ... 参照願います ... ]

 類鼻疽  20130102.1477973 1月2日

[Mod.LL-Melioidosis は、土壌や水に接触のあった人々を中心に患者が発生し、糖尿病 (最も一般的なリスク因子)、腎疾患、肝硬変、thalassemia、アルコール依存、慢性閉塞性肺疾患、cystic fibrosis などの健康上の問題がある患者や、kava の過剰摂取が関係する患者が主である (Kava はハーブの1種 an herbal member of the pepper family で、慢性肝疾患に関係することがある)。HIV infection が重症化の明らかなリスクファクターであるかは分からない。どの年齢にも起こりうるが、40-50歳代にピークがあり、女性よりも男性に多い。さらに劇症感染は健康な人にも起こりうるが、リスクのないヒトの重症例や死亡例はかなり少ない。急性類鼻疽の重症例において特徴的に見られる急速な呼吸不全の原因は、acute respiratory distress syndrome (ARDS) and/or pneumonia である。the ARDS から melioidosis sepsis に至る過程は、他の細菌感染よりも急速に進行し、それには細菌と白血球の細胞間相互作用 the intracellular interactions が関係しているのかもしれない。ショックや低血圧を伴わない菌血症では、予後良好であることが期待できる
出典: Tolaney P, Lutwick LI. Melioidosis. In: Lutwick LI, Lutwick SM (eds). Bioterror: the weaponization of infectious diseases. Totowa NJ: Humana Press, 2008 pp 145-58.]