狂犬病 死後解剖時の注意
Rickettsia felis-オーストラリア◎ 狂犬病 20110511.1442 5月11日
[
Mod.TG -狂犬病は予防可能な哺乳類のウイルス性疾患で、狂犬病に感染した動物の咬傷により感染伝播されることが最も多い。the Centers for Disease Control and Prevention (CDC) に報告される狂犬病症例の大多数が、アライグマ、スカンク、コウモリ、キツネなどの野生動物である。狂犬病ウイルスは中枢神経系に感染し、最終的に脳の病気を発症し死亡させる。ヒトの感染の初期症状は、発熱、頭痛、全身衰弱、不快感などである。進行するとより特徴的な症状として,不眠、不安、意識障害、軽いまたは部分的な麻痺、興奮、幻覚、混乱、流涎、嚥下困難、強水症 hydrophobia などが現れる,これらの症状が発現すると、確実に数日後に死亡する。強水症は水を恐がることを意味するが、これは患者の咽頭の筋肉が麻痺して水などの液体を飲み込めないことによることを指摘しておきたい。唾液を飲み込むこともできないため流涎が過剰になる。米国内のヒトの狂犬病の報告は、1990年以降約27例と極めてまれであるが(東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど)他の地域ではこれよりもずっと多い。ヒトの感染例は動物での発生数に比例する。米国内でのヒトの狂犬病がまれである一方、狂犬病の可能性のある動物に曝露したことにより予防治療を受ける人は毎年16000人から39000人いる。死亡後の狂犬病の診断は、脳からの組織 (髄膜 medulla、小脳 cerebellum、海馬 hippocampus など) の検査によって行われ、剖検が狂犬病診断の重要な位置を占めている。これまでにヒト及び動物の死後剖検を行った人の狂犬病感染例の報告はない。生前の患者であっても、ヒト-ヒト感染伝播の報告は、臓器や組織移植による非常にまれなケースだけに限られている。狂犬病ウイルスの空気感染については、research laboratory setting を除いて、確実に記述された報告はない。CDC と WHO はともに、狂犬病の患者から医療従事者への感染リスクは、他のウイルスや細菌感染と同じかそれ以下としている。さらに曝露例に対しては rabies PEP がある。とはいえ、狂犬病の患者や死体と接触があったすべての人々に対して recommended precautions に従うよう求められている。剖検時のわずかな狂犬病感染リスクは、注意深い切除技術 careful dissection techniques と、N95 or higher respirator(マスク)、full face shield, goggles, gloves, complete body coverage by protective wear(防護衣), and heavy or chain mail gloves (?、刃物や骨片によるキズから守る to help prevent cuts or sticks from sharp instruments or bone fragments)などの防護によって、より小さくすることができる。 oscillating saw ではなく handsaw を用い、頭蓋骨の除去時にのこぎりが脳組織に触れないよう注意することで、Aerosols を最小限にすることができる。作業中および作業後の環境や器具の消毒には、10%の次亜塩素酸ナトリウム溶液が推奨されている。(入室は)作業に直接関わる人だけに限るべきである。剖検の作業に当たって、事前のワクチン接種は勧められていない。患者の唾液や他の感染性部位(神経組織など)に、キズや粘膜が触れた場合には、 PEP (post exposure prophylaxis) of autopsy personnel を勧めている。
出典]
◎ ツツガムシ病 20110319.0872 3月19日
[
Mod.ML-"Scrub typhus は、_Orientia tsutsugamushi_ を原因とする人獣共通感染症で、ベクターでもあり宿主でもあるダニの幼虫 larval mites (chiggers) of the _Trombiculidae_ family による刺咬により感染する。trombiculid mites は、げっ歯類 Rodents of the family _Muridae_ (rats and mice) を共通の宿主とし、_O. tsutsugamushi_ (の生存) をサポートすると考えられている。発生する地域は、ベクターのダニとげっ歯類の宿主の地理的分布とヒトとの関係で決定される。アジアおよび太平洋の島々の広い範囲で発生が報告されており,日本およびロシア東部から、南はオーストラリア、西はパキスタンとアフガニスタンまでの範囲が知られている。
"Scrub typhus は、典型的には原因が特定できない発熱として発症する; the strain of _O. tsutsugamushi_ の種類と患者の免疫状態、その他の因子によって重症度が左右される。発生が報告されていなかった地域や、検査による確定診断ができない地域での診断は難しい。6から 12日間の潜伏期間後に発症し、刺し口の焼痂 eschar が初発症状であることが多い。発熱、頭痛、[リンパ節腫脹]、筋肉痛などが見られ、斑状丘疹状発疹を伴うこともある。嘔気、嘔吐、下痢、下気道症状などが見られることもある。治療が遅れた場合には、肺炎、髄膜脳炎、黄疸、腎不全、心筋炎などの合併症,多臓器不全や出血を伴なった播種性血管内凝固を生じることもある。診断し早期に抗生物質による治療を行うことが重要で、治療が行われてない場合の致死率は 1-30%に達する。Scrub typhus は、ドキシサイクリン doxycycline による治療が有効で、診断が疑われた時点で、検査結果の判明を待つことなく、直ちに治療を開始しなければならない。"
げっ歯類が保有宿主として働くほか、ダニの経卵感染も感染の持続 the dominant mechanism for maintenance of _O. tsutsugamushi_ に役立っている (
CDC) 。
低木 low-lying scrub brush や植生移行帯の the chigger-rodent cycle のある地域に誤って侵入したときに発生する。]
◎ 類鼻疽-2 20110324.0926 3月24日
[
Mod.TG -Whitmore's Disease または melioidosis, Nightcliff gardener's disease と呼ばれ、_Pseudomonas pseudomallei_ から現在は Burkholderia pseudomallei_ と名称が変更された類鼻疽菌による細菌感染症である。ヒトも動物も、汚染のある水や土などの環境との直接の接触による、嚥下、吸入、キズからの3つの感染経路がある。感染動物のキズからの滲出物内に細菌が排出され、感染部位によっては、鼻水、ミルク、糞尿にも菌が排出されることがある。ヤギ、ブタ、クモザルで、経胎盤感染が報告されている。蚊族 (_Aedes aegypti_) やノミ rat fleas (_Xenopsylla cheopsis_) を介した、ベクター媒介性感染も報告されているが、昆虫の刺咬の果たす役割についてはよく判っていない。類鼻疽は、東南アジア、中国、インド亜大陸と、オーストラリアの一部に常在し,カリブ海地方、中東、南米、シンガポール、台湾からも報告されている。過去に、アフリカ諸国から弧発例が報告されているが、アフリカらの類鼻疽の報告は多くない。しかし、一部の国では検査による診断が皆無または弱いことから、類鼻疽の診断がつけられない可能性もある。この細菌が、生物学的兵器として使用されることへの懸念がある。特に、鼻疽 glanders の原因菌である鼻疽菌 _Burkholderia mallei_ と似ている点や、感染動物からヒトに感染する点が危惧されている。類鼻疽菌に有効な抗生物質は限られているため,正しい診断がなければ死亡する恐れがある。1975年、パンダによりパリ動物園に類鼻疽が持ち込まれ,パリ市内の他の動物、さらにはフランス全国の乗馬クラブにも拡大し,少なくとも2人の死者が発生した。
自然感染した場合の潜伏期間は,高用量の曝露後の 1日以内から、数か月または数年に及ぶこともあるが、2か月以上であることが多い。少数例ではあるが、29年間、まったく症状が認められなかった例も報告されている。さらに、62年後に発症したと見られる1例が報告されている。生物兵器としてのエアロゾルによる感染の潜伏期間は 10-14日と見られている。菌の侵入部位に急性限局性病変が認められることがある。皮膚病変では、灰色または白色で、硬い結節もしくは潰瘍病変となる。結節は乾酪性で、周囲は炎症性となることが多い。所属リンパ節腫脹やリンパ管炎も見られる。その他の急性限局性病変としては、化膿性耳下腺炎/耳下腺膿瘍、角膜損傷に続いて起きる破壊性角膜潰瘍、蜂か織炎などがある。壊死性筋膜炎様の感染となることもある。泌尿生殖器感染としては、前立腺膿瘍がある。限局性感染病巣が播種する可能性もあるが、常に全身感染に先立って局所感染症状が認められるとは限らない。皮膚及び皮下感染症が、他の部位から血行性に波及しておきることもある。類鼻疽では、肺型が最も多く見られ,一次性病変としても、菌血症の一部としても起こりうる。症状としては、発熱、咳、胸膜性胸痛が常に認められ、一部の症例で、吐血を認める。鼻内の潰瘍性病変や結節性病変から、鼻中隔穿孔をきたすことがある。著明な体重減少が認められることもある。肺症状は、突然発症する場合も、頭痛、食欲不振、全身性筋肉痛などの前駆症状の後に発症する場合もある。合併症には、気胸、膿胸、心膜炎などがある。治療が行われない場合は、しばしば、最重症型の敗血症に進展する可能性がある。糖尿病、がん、腎不全のような持病がある場合に、最も起こり易い。通常は急性発症し、発熱、悪寒 rigors、その他の敗血症に特徴的な症状が見られる。しかしながら、一部の敗血症の患者では、多くは体重減少を伴う弛張熱の後に、より緩徐に敗血症に至ることもある。敗血症性類鼻疽 septicemic melioidosis の最も多く見られる症状として、発熱、激しい頭痛、見当識障害、咽頭炎、上腹部痛、下痢、黄疸、著しい筋肉の圧痛などがある。通常、呼吸困難などの肺症状も見られ、関節炎や髄膜炎が起きることもある。一部の患者で、所属リンパ節腫脹、蜂巣炎、リンパ管炎を伴った、播種性膿疱性発疹を見る。肺血性ショックが起こり、一旦発症すると死に至ることが多い。慢性類鼻疽は、膿疱や化膿性病変を特徴とし、様々な臓器に発生する。肝臓、脾臓、骨格筋、前立腺が冒されることが多いが、皮膚、肺、心筋、骨、関節、リンパ節、睾丸など、どのような臓器にも発生する。真菌性動脈瘤 Mycotic aneurysms が発生することもある。まれに、類鼻疽による脳膿瘍、脳脊髄炎 (弛緩性麻痺を伴うこと多し) 、または髄膜炎が発生することがある。慢性類鼻疽では、発熱は、あることもないこともある。感染した患者の一部は、数年間にわたって無症候性のままとなる。このような慢性キャリアでも、最終的に臨床症状を発症する可能性があり、典型的には、他の疾患により免疫状態が低下した場合に起こる。過去には多剤併用による治療が行われていたが、複数の新しい種類の抗生物質単剤による治療により、同等の効果が得られている。時に、肺切除や膿瘍のドレナージが必要となることもある。治療が成功したと考えられる場合でも、常に再発の可能性があり、一生を通じて経過観察することが勧められている。ヤギ、ヒツジ、ラクダ科、ブタに感染が多い理由を知りたいと思うかもしれない。それは、これらの動物が、地面に (顔を) 近づけて、草を食んだり、嗅いだり、地面を掘ったりして、類鼻疽菌を含む土壌の粒子を嚥下したり、吸入したりするためである。
出典]
中国の研究者らがダニが保有する未知のウイルスを発見し(このウイルスにより) 2010年9月に 6つの省の少なくとも 36人が死亡していたことが,the New England Journal of Medicine で報告された。中国疾病対策センター the Chinese Center for Disease Control and Prevention (CDC) が発見したこの重症熱性血小板減少症候群ウイルス SFTSV (severe fever with thrombocytopenia syndrome bunyavirus) に感染すると、発熱と多臓器不全が引き起こされる。6省の 171人の患者で確認され、2010年9月までに 36人が死亡している。2009年 3月から 7月中旬までの間に、湖北省中部と河南省の農村部から感染症の患者の報告があったが、当時は原因不明であった。発熱、血小板減少、消化器症状、白血球減少が主な症状で、当初は 30% という異常な致死率であったと説明された。山岳地域の農民らは、ダニの刺咬を受けることが多く、ダニは 5月から 7月に多く発生するという。
"The 1st SFTSV (strain DBM) が、河南省の 42歳の男性 1名から検出された ... Partial sequences obtained from the 1st isolated virus strain DBM, and the complete genomes of 11 additional human isolates of SFTSV were determined. ... ウイルス strains DBM , HN6, and HB29 の L, M, and S segments の部分及び完全な遺伝子塩基配列に基づく系統樹 から、SFTSV は ブニヤウイルス属 prototypic viruses of the 5 genera of Bunyaviridae であることが分かった ... SFTSV は、 the prototype of a 3rd group in the phlebovirus genus であることが示された。アミノ酸配列の相同性を比較することで、 SFTSV が the other phleboviruses と識別可能であることがより一層確かめられた ... RT-PCR によりSFTSV infection が確定診断され、急性期と回復期の血清検体のある、35人の患者の集団を選びだした。35人の患者はいずれも 4倍以上の抗体価の上昇が認められた. ... The 1st patient, a 42-year-old male farmer は、39度以上の発熱、倦怠、結膜充血、下痢、腹痛、白血球減少、血小板減少、蛋白尿、血尿が認められた。これに続き、特有の症状を持つ、急性高熱に血小板減少を伴う患者が、次々と入院となった ... 2009年 6月から 9月までの間に、case definition for SFTS2 in Central and Northeast China に一致する入院患者 241人中 171人において、SFTS bunyavirus RNA, specific antiviral antibodies、あるいは両方が確認された。患者の内訳は、43 in Henan, 52 in Hubei, 93 in Shandong, 31 in Anhui, 11 in Jiangsu, and 11 in Liaoning provinces である。2010年は 5月から 7月までに、合計 148 of 154 laboratory-confirmed cases (96 percent) が発生した。患者の年齢は、39 から 83 歳の範囲で、75%にあたる 115人が 50歳以上で、発病前に、木が多く丘陵となっている地域に住み、農業を営む人がほとんど 150人 (97 %)だった"。
a novel tick-transmitted bunyavirus が、中国国内の広い地域のヒトに対して病原性を示すことは、非常に興味深い。最終的にどの程度の範囲の地域で発生があるのか、また、ウイルスの見つかった the _Haemaphysalis longicornis_ ticks が実際にベクター competent vectors なのか? ]
◎ 野兎病 20110225.0622 2月25日
Tularemia は、hare plague と呼ばれることもある細菌感染症で、数年ごとにウサギや齧歯類、特にレミング lemmings の間で、限局性の流行が発生する。細菌を保有し弱ったり死んだりした動物と、直接もしくは間接的に接触することにより感染する。また、感染動物により水源が汚染されることで、飲料水を通じて感染が広がる場合もある。さらに、感染動物による咬傷や、感染性の排泄物の混じったホコリを吸い込むことでも、感染が起きる。
[ModLL -野兎病の病型 (潰瘍腺型、眼腺型、チフス型、型型) について記載されていない。従来から、rabbits あるいはダニ tick vector によりヒトに感染するとされているが、野兎病菌 _Francisella tularensis_ を含む土壌や水との接触によっても感染する。tularemia pneumonia 肺炎は、バイオテロ関連の病型ではあるが、自然感染により発生する可能性もあり、New York City でのまれな散発例や、Martha's Vineyard (Massachusetts) の造園業者の間での outbreaks の発生例がある。水が関係するアウトブレイクとしては、64人の患者が発生したロシア Dagestan の洪水による沼地、イタリアのトスカーナの塩素処理のない水道による49例、上水道の汚染に伴う the Smolensk province of Russia の集団発生例などがある。現在、米国内には認可された野兎病ワクチンはないが、the US Army Medical Research Institute of Infectious Diseases による、兵士に対する the LVS (live vaccine strain) vaccine の治験が行われている。2本針を複数回穿刺する乱刺法により接種される。LVS は旧ソ連が開発し、1956年に米軍が取得した strain 15 を利用して開発された。十分に標準化されておらず、2種類の phenotypes of _F. tularensis_ を含んでいて、このうちの1種類が免疫を誘導すると考えられている。1997年の研究報告では、このワクチンの使用により、政府研究機関職員の typhoidal tularemia 発生率が、研究従事期間(年)あたり、5.7例から 0.27例に激減したことが示されている。また、the ulceroglandular form の発生率は減少しなかったが、軽症化したと報告されている]
◎ レプトスピラ症 ドキシサイクリン 20110224.0605 2月24日
[
ModLL-Leptospirosis は、the spirochete _Leptospira_ を原因とする人獣共通感染症で、洪水が起きたときに発生するという特徴があり、スリランカ国内に常在 endemic する。予防内服の方法として、Doxycycline 200 mg oral dose を 1回 (長期間曝露がある場合は、1週間ごと) を服用する方法が用いられている。The single dose of doxycycline により、およそ1週間の予防効果が得られると考えられている。しかし、the efficacy of chemoprophylaxis of leptospirosis に関するいくつかの臨床治験では、相反する結果が得られている。プラセボを対象とした1件の
ランダム化試験 では、doxycycline prophylaxis は、an endemic area における季節性 outbreak の leptospiral infection を予防できなかったが、有病率と致死率低下に関しては有意の significant protective effect を示した。もう1つの、パナマの米訓練兵での randomized placebo-controlled study では、a weekly dose of 200 mg doxycycline for 3 weeks によって、プラセボと比較して 95 %の protective efficacy が示された。(An efficacy trial of doxycycline chemoprophylaxis against leptospirosis. N Engl J Med. 1984; 310(8): 497-500;
abstract) さらに doxycycline によるレプトスピラ症の予防効果を、異なる対象 -- 感染リスクのある地域への旅行者、住民、 encompassing soldiers (?) 農民、学生 -- について調べた臨床研究のデータをもとにした 1件の
Cochrane review では、いずれの対象についても実施を支持しないとの結果が示されたが、短期間の high risk exposure の可能性のある旅行者には有用である可能性があるとされた]
◎ 麻疹 20110224.0613 2月24日
イスタンブール Istanbul(トルコ)において、これまでとは違うタイプの麻疹の感染が続いている。2011年初から 24人の患者が報告されている。イスタンブールの麻疹患者は、3週間で、2人から24人に増加した ...
[
Mod.CP-トルコは 2008年までに97 %のワクチン接種率を達成した。麻疹ウイルスは、血清学的には monotypic であるが、野生型 wild-type viruses の遺伝学的特徴 the genetic characterization には、8 clades (A-H) があることが知られており、22 genotypes and one proposed genotype に分類されている。 Clades B, C, D, G and H には各々 multiple genotypes (B1-3, C1-2, D1-10, G1-3, H1-2) があり、clades A, E and F は a single genotype (A, E, F) だけである。ワクチン用のウイルス株 the vaccine strains の遺伝子塩基配列 sequences の解析から、ワクチン株の元である the wild type viruses は、すべて (all members of) genotype A であることが分かっている (
see: Review of the temporal and geographical distribution of measles virus genotypes in the prevaccine and postvaccine eras. Riddell et al. Virol J. 2005; 2: 87;) 。2005年、トルコで genotype D6 の麻疹ウイルスが確認されている (Turk J Pediatr 2005 Oct-Dec;47(4):309-150) 。おそらく今回の感染流行は、違う genotype の麻疹ウイルスであり、トルコ以外の国から持ち込まれたのだろう ]
◎ ラッサ熱 20110223.0599 2月23日
[
Mod.CP-Lassa haemorrhagic fever は、西アフリカに発生する病悩期間 1-4週間の急性疾患で,1950年代にはすでに報告されていたが、ナイジェリア北部の Lassa で1969年に患者およびウイルスが確認されたことから命名され、西アフリカの限定された地域で毎年 200万から300万人が感染し、約1万人に1人の割合で死亡が発生する。family _Arenaviridae アレナウイルス科の single-stranded RNA virus である。Lassa fever が endemic とされているのは、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの一部であるが、おそらく他の西アフリカ諸国にも存在すると見られている。感染者の約80%は無症候性で,残りの患者らでは、ウイルスの感染部位である肝臓、脾臓、腎臓などの多臓器疾患を発症し,潜伏期間は 6-21日間である。人獣共通感染症で、保有動物宿主は齧歯類の rodent of the genus _
Mastomys_,一般名 the "multimammate rat" である。 _Mastomys_ は感染しても発病することなくウイルスを排泄物内に排出する。すべての年齢層で感染がみられ,_Mastomys_ が頻繁に出没する農村部の住民の感染リスクが高い。疫学的に空気感染は証明されていないが,コミュニティ内や医療環境におけるヒト-ヒト感染が発生している。ラッサ熱には治療薬が存在するものの、ほとんどのナイジェリアの医療施設において、早期に診断することは難しい。(For a recent review, see, V. Idemyor, Lassa virus infection in Nigeria: clinical perspective overview. J Natl Med Assoc 102(12):1243-6, 2010)]
◎ インフルエンザ ナルコレプシーとワクチン 20110210.0463 2月10日
情報源 World Health Organization (
WHO)
2010年8月以降、vaccines against influenza A/(H1N1) 2009 が広く使用されるに伴い、小児や青年を中心に少なくとも 12か国からナルコレプシー
narcolepsy の症例が報告されるようになった。ナルコレプシーは、突然、無意識のうちに睡眠状態に陥る、まれな睡眠異常である。スウェーデン、フィンランド、アイスランドからの報告率が高かった。
The National Institute for Health and Welfare of Finland は1日、
preliminary statement を発表した。2009年から 2010年に
the vaccination against influenza A/(H1N1) 2009 を受けた 4-19歳 について、ワクチンを受けないグループと比較して、高いナルコレプシーのリスクが認められた。フィンランド国内で使用された唯一の
pandemic vaccine は
Pandemrix, an adjuvanted influenza (H1N1) 2009
monovalent vaccine manufactured by GlaxoSmithKline で、世界47か国でも使用された。スウェーデンでもナルコレプシーリスクについての検証が行われている。フィンランドの調査では,4-19歳のワクチン接種者 12000人あたり 1例のナルコレプシーの発生があり、同年齢の非接種者に比べ、the risk of developing narcolepsy がおよそ 9倍高いと結論づけた。これ以外の年齢層ではリスクは認められなかった。
Narcolepsy は strong genetic linkage が認められており、the (HLA) DQB1*0602 genotype [人口のおよそ25%に認められる] を持つヒトにほぼ限られている。during 2009-2010 にフィンランド国内で ナルコレプシーと診断され検査を受けた全ての患者 (n=22) が、この genotype を有していた。The National Institute は、the Pandemrix vaccine は寄与因子の1つで、リスク増加に関係した他の因子についてもさらに調査が必要と考えている。
◎ ニパ脳炎 20110207.0425 2月7日
Nipah [virus] encephalitis ニパウイルス脳炎により 4人が死亡し、合計の死者数が 24人となった。
[Mod.CP -Nipah virus は emerging zoonotic virus で,脳炎もしくは呼吸器疾患を発症し重症化する。マレーシアとシンガポールで発生した初めての感染流行では、患者のほとんどがブタとの直接の接触による感染だった。呼吸飛沫、ブタののどや鼻の分泌物、もしくはブタの組織との接触を介して感染が伝播された。バングラディシュやインドでの感染流行では、オオコウモリ infected fruit bats の排泄物に汚染された フルーツや生ジュース raw date palm juice の摂取が感染の原因となっている。オオコウモリ Fruit bats of the family _Pteropodidae_ -- particularly species belonging to the _Pteropus_ genus -- が自然界の保有宿主で、感染しても症状を現さない。インドとバングラディシュの流行では、ヒト-ヒト感染が発生した。インドでは院内感染も発生し、患者の 75% が病院職員と見舞い客だった。From 2001 to 2008 に報告された患者のおよそ半数が、ヒト-ヒト感染によるバングラディシュの患者だった。 潜伏期間は、4日から 45日と幅がある。致死率は 40から 75%と推定されているが、現地の surveillance investigations 能力によるところが大きい ]
Moreton Bay Regional Council のスタッフ 2人が類鼻疽に感染したため、 Caboolture's Centenary Lakes での洪水の清掃作業現場を閉鎖した
[
ModLL-オーストラリアの類鼻疽報告の大部分は
the Northern Territory だが、東側の
Queensland でも地方感染している。通常、雨期に発生し、降雨による洪水や 2005年のタイの津波などにより発生が増加した。類鼻疽菌 _Burkholderia pseudomallei_ は(東南アジアやオーストラリア北部の熱帯の)常在地域の,特に水田などの土壌や地表水中に
environmental saprophyte として存在する。原虫などの他生物と相互作用を持ちながら、
viable, non-cultivable state で存在することもあり、これが
intracellular niche に適応可能な理由かも知れない。患者の多くに、糖尿病や腎臓病、肝硬変、サラセミア、アルコール依存症、免疫抑制療法、慢性閉塞性疾患などの基礎疾患があり、土壌や水との直接の接触により感染する。どの年齢層でも発生するが、40から50歳代にピークがあり、女性より男性が多い。健康な人でも重症劇症型の感染が発生するが、リスクファクターのない患者では死亡や重症化は非常に少ない。最もよく知られている症状は、高熱、激しい筋肉痛、胸痛を伴う肺炎で、痰を伴なわない咳嗽ではあるが、呼吸器分泌物は膿性で大量であり、間欠的に新鮮血が混じる。肺感染症は、細菌血症やショックを伴い、急速な経過で死に至ることもあるが、緩徐な経過を辿る例もある。急性類鼻疽敗血症は最も重症の合併症で、低血圧、高心拍出量、末梢抵抗低下といった、典型的な敗血症性ショックの症状を呈する。軟部組織や肺に原発巣があることが多い。リスクファクターを持つ患者に多く、皮下組織、肺、肝、脾などの多発性膿瘍を特徴とし、致死率は 80-95%に上る。直ちに適切な治療を行うことで、致死率を 40-50%に抑えることが可能である。類鼻疽菌は本質的に、多くの抗生物質に感受性を示さず、バイオテロ兵器として創り出される菌株は、さらに薬剤耐性が強化されている可能性もある。通常,
tetracyclines, chloramphenicol,trimethoprim-sulfamethoxazole (SXT), antipseudomonal penicillins,carbapenems, ceftazidime, and amoxicillin/clavulanate or ampicillin/sulbactam により抑制される
inhibited 。
Ceftriaxone and
cefotaxime は
in vitro activity は良いが臨床効果は認められず; マウスモデルでは、
cefepime は
ceftazidime ほどの効果は見られない。
colistin and polymyxin B and the aminoglycosides 耐性というあまり見られない特徴をもつが、
amoxicillin/clavulanate 感受性は治療選択上有用なツールとなる。レビューにより、従来の標準治療 the formerlystandard therapy of
chloramphenicol,
doxycycline, and SXT
combination は、
ceftazidime,
imipenem/cilastatin, or
amoxicillin/clavulanate (or
ampicillin/sulbactam) による治療法より死亡率が高いことが示されている。
The betalactam-betalactamase inhibitor therapy は、治療不成功に終わる確率が高い。
情報源 Bioterror: the weaponization of infectious diseases. TotowaNJ: Humana Press, 2008 pp 145-58. )]
◎ Ackee 中毒-ジャマイカ、注意喚起 20110115.0176 1月15日
情報源 Jamaica Observer 、2011年1月14日。
保健省は unfit and unopened ackees を食べないよう注意を呼びかけている。2010年12月1日から 2011年1月12日までの間に、35人の ackee poisoning の患者が確認されている。fit and well opened ackees だけを食べるよう注意を促した。完全に樹上で自然に開くまで取ったり食べたりしてはいけない、というのはくり返し言われてきた。また、種やピンクもしくは赤い膜を十分に除去し、調理前によく洗う事も中毒防止には必要で、特に熟していない果実には高濃度のトキシンが含まれていると説明した。Ackees を茹でた湯はすぐに捨て、他の料理に使っては行けないと述べた。十分に熟していない ackee には、高濃度の hypoglycin と呼ばれる toxin が含まれ、食べると死亡することもある。缶入りの ackee では、中毒は起きていない。
[ModTG-ジャマイカでは主食(staple)とも言える ackee fruit (_Blighia sapida_) は、 どちらも JVS と呼ばれる、"Jamaican vomiting sickness" or "Jamaican vomiting sickness syndrome" という疾患の原因となっている。激しい嘔吐と極度の低血糖が起きる。The ackee fruit は、熟してはじけ種が露出するようになれば食用になる(edible)。 黒い種のまわりの The yellowish aril という果肉部分を食用にしている。熟すと、brilliant red or red-orange color となる。食べるときに、果肉の中に赤い部分が混じっていてはいけない。The red peel(果皮) には、high levels of hypoglycin A and hypoglycin B が含まれている ... 2種類の水溶性有毒物質が検出されており、The 1st toxin, hypoglycin A は、 L-(alpha)-amino-(beta) -[methylene cyclopropyl]propionic acid であり、Hypoglycin B は a (gamma) -L-glutamyl derivative(誘導体) of hypoglycin A で、 hypoglycin A より毒性が弱い。Hypoglycin A は、the aril(種皮)にも含まれるが、B は含まれない。熟していない果実は、The unripe fruit には、the ripe aril のおよそ20倍の高濃度の hypoglycin A が含まれている。A,B ともに、種子の中にも含まれているため、種の入っている the seeds and the membrane はどちらも有毒である。現在 Hypoglycin A は、単に hypoglycin と呼ばれているが、transamination and oxidative decarboxylation によって methylene cyclopropyl acetic acid (MCPA) に代謝される。MCPA は、nonmetabolizable carnitine and coenzyme A (CoA) esters を形成し、これら cofactors の組織レベルを低下させ、他の生化学反応に利用されにくくする。CoA と carnitine はともに長鎖脂肪酸酸化過程の必須 cofactors であり、また、この酸化が糖新生活性に不可欠であることから、結果として低血糖が生じる。このほかMCPA は、butyryl CoA, glutaryl CoA, and isovaleryl CoA などの several acyl-CoA dehydrogenases の脱水作用を抑制し、the inhibition of butyryl CoA dehydrogenase によって hexanoyl CoA and butyryl CoA のレベルで長鎖脂肪酸の酸化が停止する。この結果、nicotinamide adenine dinucleotide (NADH)とacetyl CoA の産生が低下する。NADH and acetyl CoA はそれぞれ、a cofactor of 3-phosphoglyceraldehyde phosphate dehydrogenase および an activator of pyruvate carboxylase であり、濃度が低下すれば糖新生 gluconeogenesis 抑制につながる。The inhibition of glutaryl CoA dehydrogenase によって glutaryl CoA が蓄積し、糖新生初期の律速段階であるtransmitochondrial malate transport が阻害されることで、糖新生が抑制される。hypoglycin action による低血糖に、血中インスリン濃度の変化は関与しない。Jamaican vomiting sickness は、突然発症する嘔吐を特徴とし、ackee を含む食事摂取から2-6時間後にはじまる全般的な上腹部不快が先行する。一旦発症すると、急速に進行し、多量の発汗、頻脈、頻呼吸、頭痛、全身衰弱の症状が認められる。最大18時間の衰弱期の後、第2波の嘔吐が開始し、治療されない場合、痙攣、昏睡、死亡につながる。患者の25%にけいれん Tonic-clonic convulsions がおきる。死亡患者の85%に痙攣がみられる。Reye syndrome 類似の肝臓の脂肪壊死がおきることもある。死亡するまでの期間は平均12.5時間で、発熱や下痢はおこらない]
写真 the fruit and more history about the plant
Portions of this comment の
出典
◎ サル痘 20110113.0148 1月13日
[
Mod.CP-天然痘 vaccine によって免疫が付与されるサル痘ウイルス
monkeypox virus は、天然痘
smallpox 根絶と予防接種の中止により、少なくとも20倍以上感染が増加したことが示唆されている (
20100901.3124 and Major increase in human monkeypox incidence 30 years after smallpox vaccination campaigns cease in the Democratic Republic of Congo.
Proc Natl Acad Sci USA. 2010; 107(37): 16262-7)。サル痘は
smallpox と比べていくらか重症化しにくいものの、瘢痕が残ったり死亡したりする可能性がある。また,
smallpox と異なり、ヒト以外の、小動物 (齧歯類,リス,サル)などとの接触によっても感染する可能性があり,感染対策がより困難となる。
the genus Orthopoxvirus_ に属する。系統発生学的上,
the species _ Variola virus_ から最も離れたウイルス種に入り、
monkeypox virus よりも
camelpox virus に近い。ヒトでの症状は天然痘に似ており、中央アフリカ の流行ではかなりの死亡率を伴ったが、2003年に米国において
African rodents が持ち込まれたことをきっかけに発生した流行では、死者は 1人も出なかった。サル痘ウイルスは、
smallpox virus (
variola virus) ほど効率的にヒト-ヒト感染しない。基本的には齧歯類とリスに保有されている
resident が、人獣共通感染症として他の種に感染が広がることがある。変異や淘汰により
monkeypox virus が
a variola-like virus に進化することはあり得ないが、重症化する可能性があり、限定された状況下での天然痘ワクチン
vaccinia virus vaccine の再使用の検討も必要となるかも知れない]
◎ Rickettsia felis-オーストラリア VI 20110107.0090 1月7日
仔猫の接触者に発生した、オーストラリア初の、ヒトの _Rickettsia felis_ 感染例が報告された。_R. felis_ は、2006年に
Western Australia (WA) のネコとイヌについたネコノミで、初めてその存在が確認されている。女児はかなり重症で、集中治療が行われており、適切な抗生物質の治療を受けていなければ死亡していたかも知れないと説明されている。
[Mod.MPP-チフス typhus の名が付く疾患は多く: epidemic typhus, Brill-Zinsser disease (recrudescent epidemic typhus), murine typhus, scrub typhus, and typhoid (so-called because it is typhus-like)、The term typhus はギリシア語の to smoke を意味する _typhein_ から来ており、患者の the smoky or clouded mental status(曇った精神状態)を表している。病原微生物は実際には spotted fever-type rickettsia に分類されているが、この疾患も feline typhus と呼ばれている。世界中の熱帯及び亜熱帯の高温湿潤沿岸気候条件の地域に広範囲に発生し、ネコが無症候性に保菌する人獣共通感染症である、_Rickettsia typhi_ 感染を原因とする murine typhus(ネズミチフス)に最も近い病気で、双方のリケッチアは遺伝的に近縁(核酸の違いはわずか12個)であり、特異的 PCR アッセイ以外には両者を鑑別診断することはできない。従って、murine typhus-like disease と診断された患者の一部、おそらく多数が、1990年に初めてネコノミから同定された _R. felis_ 感染が原因であった可能性がある。この病原体は、西半球の米国、ブラジル、メキシコ、スペインや、アフリカ、そしてオーストラリア、ベトナム、インドネシア、韓国などの旧世界に広く分布する。ヒトへの感染伝播では,主に刺咬部位に擦りこまれるリケッチアを含むノミの排泄物とされているが、ノミ刺咬そのものや、エアロゾル化された排泄物によっても、感染が伝播される可能性がある。the cat flea (_Ctenocephalides felis_) 以外に、ダニ(ticks and mites)でもこの病原体が確認されている。opossum などのネコ科動物も、hosts for _R. felis _ となることがある。epidemic typhus と比べ、Murine typhus は比較的軽い発熱性疾患で、発疹は有ることもないこともある。急性期の入院患者で集中治療を必要とするものは 10%にすぎないが、1-4%が死亡する。"feline typhus" に関する報告はあまり多くないが、重症患者の肝炎や髄膜炎などが報告されている : 参考文献紹介]