2012年1月18日

発がん性ウイルスへの曝露、家きん産業

● 発がん性ウイルスへの曝露、家きん産業
PRO/AH/EDR> Oncogenic virus exposure, poultry industry
Archive Number: 20120118.1014639
 情報源 PoultryMed、2012年1月6日。
原著 "A pilot case-cohort study of liver and pancreatic cancers in poultry workers" in Annals of Epidemiology, Volume 21, Issue 10 , Pages 755-766, October 2011
ウイルスの中に、ニワトリやシチメンチョウに感染し発がん作用をもつものがある。たとえば、the avian leukosis/sarcoma viruses (鳥白血病/肉腫ウイルス ALSV), 細網内皮症ウイルスreticuloendotheliosis viruses, and マレック病ウイルス Marek's disease virus などがそれである。これらのウイルスの中には、動物[すなわち鳥類]に対する最も強力な発がん物質とされるものもある。ヒトも様々な状況で、生きた家きんや卵などに触れることにより、これらのウイルスに暴露している; 生あるいは調理が不十分な料理の摂取; 鶏卵で培養される、麻疹、ムンプス、インフルエンザ、黄熱、腸チフスなどのワクチンの接種、などがある。外部からのウイルス汚染 exogenous ALSV-contaminated のあった黄熱ワクチンの接種による、ニワトリの悪性腫瘍の報告がある。全てではないが一部の報告では、家きん業労働者や一般市民の血清中から、これらのウイルスに対する抗体の存在が報告されている。Annals of Epidemiology [(2011) 21:755-766] に報告された研究では、poultry oncogenic viruses への曝露と、poultry workers と一般市民の肝及び膵がんによる死亡発生の増加に関係するという仮説の検証と、新たなリスクファクターとしての同定が試みられた。30 411 poultry workers and 16 408 non-poultry workers から構成される case-cohort study である。生きた家きんの処理や捕獲に職業的に従事することは、すい臓がんに大きく関係することが結果として示された。また、職業としてニワトリの処理を行うことは、肝臓がんと有意に関係した。
[Mod.CP- New occupational findings として膵がん/肝がんそれぞれについてのオッズ比 odds ratio (OR) は,家きんの処理 slaughtering of poultry (8.9/ 9.1); 生きたニワトリの捕獲 catching of live chickens (3.6/1.0); 他の食用動物の殺処分 killing other types of animals for food (4.8/2.0), そしてかつての養豚業従事歴(3.0) for pancreatic cancer only との結果が示されている。Occup Environ Med doi:10.1136/oemed-2011-100310 の研究でも、poultry and control workers と肺がんとの関係が報告されている。同様の、家きん産業以外の職業曝露によるリスク上昇として、stockyard、化学工場、防カビ剤の使用、プラスティック製品製造などでの労働でも認められている。cancer occurrence in poultry workers と職業上の暴露との関係を示すには、full scale epidemiological studies of adequate statistical power が必要となる。しかし、これらの解析結果には、ウイルス学的考察 virological componentが含まれていない点を指摘しなければならない。avian leukosis/sarcoma viruses (ALSV), reticuloendotheliosis viruses, and Marek's disease virus は、確かに強力な発がん性物質 potent cancer-forming agents ではあるが、その作用はほとんど鳥類だけに対するものである。Peyton Roux が、発がんウイルス第1号のラウス肉腫ウイルス Rous sarcoma virus を発見してから、ちょうど100年を過ぎたが、今もこのウイルスは、鳥類だけに感染するウイルス uniquely avian virus のままである]

● 中毒-コロンビア、発酵飲料 glyphosate
PRO/EDR> Poisoning, fatal, fermented drink - Colombia: (GV) glyphosate
Archive Number: 20120118.1013776
 情報源 Caracol Radio [in Spanish]、2012年1月15日。
原住民の Cubeos [少数民族 ethnic group of the Colombian Amazon] の間で "chicha" [自家製発酵飲料]による集団食中毒が発生し、1人が死亡、10人以上が重体となっている。Calamar, Guaviare Department [southern central region of Colombia] 市の中心地から4時間の the village of La Reforma で起きた今回の事例について、原住民の村長は、非合法の作物駆除に撒布された農薬?に曝露した sprayed バナナを、the Cubeos が、廃棄せずに chicha にして飲んだために発生した、と述べていることを、市長が明らかにした
[Mod.TG- 16日の Diario La Nacion (in Spanish) によると、11日に国家警察の飛行機が the Cubeo settlement 近郊のコカイン農園に glyphosate を撒布したところ、飲料製造に使われたバナナなどの農産物も汚染された、と記事に書かれている]

● シュマーレンベルグウイルス-ドイツ OIE
PRO/AH> Schmallenberg virus - Europe (07): update, Germany OIE
Archive Number: 20120118.1014295
[1] Schmallenberg virus more difficult to discover in cattle
 情報源 Agrarisch Dagblad (AGD) [in Dutch]、2012年1月17日。
子羊に比べ、子牛のシュマーレンベルグウイルス the Schmallenberg virus [SBV] 感染を診断するのは困難である;しかし、先天奇形のある子牛の症例の報告数が増加している。ヒツジに比べてウシの妊娠期間が長いため、子牛の同ウイルス感染を調べるのは難しい。”ウシの場合、感染時期から出産までの時間が、ヒツジより著しく長いため、出産時に子牛の体内にウイルスが残されている可能性が低くなる”と the Central Veterinary Institute (CVI) の当局者は説明した ... 18日正午現在のオランダのデータ による、先天奇形の発生のあった農場数: cattle 101, sheep 129, goats 11 など。ドイツ the German state North Rhine-Westphalia の保健当局は、今後、出産されるウシ(子牛)の15-20%が SBV に感染していると見ている。秋に感染したウシが最も多く、2012年2月に奇形のウシの出産がピークとなる、と話している。
[2] New herd virus haunts Europe
 情報源 The Scientist、2012年1月17日。
2011年11月、ドイツ・シュマーレンベルグ Schmallenberg の複数の農家で、一部の乳牛が発熱し、ミルクの分泌が減っている事に気づかれた。それから2か月経たないうちに、the Schmallenberg virusと命名されたこのウイルスが、国内および隣国ベルギーやオランダの約90か所の農場[もっと増えている]でも、成牛の感染が確認されると同時に、死産や、子牛、子羊や生まれたばかりの子ヤギの先天異常の原因となっている。ドイツの動物衛生の研究機関である the Friedrich-Loeffler-Institute の所長は、”現在、ある群れでは子羊の20-50%に奇形が認められており、その中には、水頭症 fluid sacs in the brain、脊柱側弯症などがあり、多くの場合死産されている”、と説明している。
[3] New animal virus takes Northern Europe by surprise
 情報源 ScienceNow (Science magazine) 、2012年1月13日。
新たに発生したこのウイルスは、ヌカカ midges (_Culicoides_ spp.) によって媒介され、2011年の夏から秋に最も多く感染が発生したと見られており、一方、子宮内でウイルスに曝露した胎仔の出産が今始まっている。水頭症 hydranencephaly --脳の一部が液体に満たされた嚢に置き換えられる病態-- や脊椎が曲がる側弯症などのある子羊が初めて確認されたのは、クリスマス前であった

● 馬ヘルペスウイルス-米国
PRO/AH> Equine herpesvirus, equine - North America (03): (CA California)
Archive Number: 20120118.1013775
California EHV-1 case total rises to 5
 情報源 The Horse、2012年1月16日。
Orange County, California で新たに2頭のウマの馬ヘルペスウイルス equine herpesvirus-1 (EHV-1) 検査が陽性となった。今回の2頭を加え、感染流行による症例数は5頭となった

● コリネバクテリア症-米国,ウマ
PRO/AH> Corynebacterium, equine - USA: (TX)
Archive Number: 20120118.1013774
Pigeon fever new horse problem in Denton County
 情報源 Denton Record-Chronicle、2012年1月15日。
[数年間にわたって1頭も pigeon fever のウマは確認されていなかったとする、Denton County の獣医師らは] この数ヶ月間、毎週1-2頭の感染を報告する状況にある。Pigeon fever -- もしくは pigeon breast, dry land distemper, and Colorado strangles -- は、発生の予想が困難で感染性がある。病名は、ウマの胸にできる膿瘍のコブがハトの胸のように見えることから名づけられた。コリネバクテリア _Corynebacterium pseudotuberculosis_ 菌の感染を原因とする。細菌はキズや虫の刺し口から侵入すると考えられ、ウマからウマ,またはウマからウシに接触を通じて感染したり、土壌や皮膚のキズを介する伝播も起こりうる。乾燥地域に多くカリフォルニア California 州で広く発生が見られるが、近年、北方地域に感染が拡大している。一旦感染起き始めると排除は困難で unpredictable future outbreaks につながる。死亡することは少ないが、回復に数ヶ月掛かり、再発することもある。戸外で飼育されるウマの方が感染リスクが高い。ワクチンはなく、他のウマへの感染拡大を防ぐしか方法がない