2012年3月28日

原因不明の脳疾患-ウガンダ (05) nodding disease
◎ マラリア 薬剤耐性
インフルエンザ (20) 宿主感受性遺伝子の特定

● 鳥インフルエンザ、ヒト (39)-インドネシア WHO
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (39): Indonesia (NB)
Archive Number: 20120328.1083746
[1] 情報源 The Wall Street Journal Asia, AP report、2012年3月27日。
インドネシアの17歳の患者が鳥インフルエンザ Avian influenza で死亡し、2012年の6人目の同ウイルス感染による死亡患者となった。保健省当局者は 27日、ロンボク島 Lombok island 東部の少年が、3月前半に病気のニワトリと曝露した後に発症したと説明した。1週間の入院後、3月9日に死亡した。H5N1 ウイルス感染が検査で確定されたのが数日前だった。2003年に家禽の間で鳥インフルエンザが発生して以来、世界中で352人が死亡している。インドネシアでは死者156人と最も深刻な被害が出ている。
[2] 情報源 World Health Organisation (WHO), CSR, Disease Outbreak News、2012年3月26日 FORTH より
26日に公表されたWHOの情報によると、インドネシアで新たにインフルエンザA(H5N1)症例1例が報告された。患者はヌサトゥンガラバラット州(Nusa Tenggara Barat Province)に住む17歳の男性で、2月28日に発熱があり、3月1日に受診したが、患者の状態は悪化し紹介病院へ入院し、3月9日に死亡した。疫学調査では、患者の近隣で家きんの突然死が相次いでいたことがわかっている。インドネシアでは2005年から現在までに188例の患者が報告され、そのうち156例が死亡した。
[Mod.CP- West Nusa Tenggara (Nusa Tenggara Barat) はインドネシア南中部にあり、バリ Bali を除く the Lesser Sunda Islands の西側部分を構成し、the Lombok Strait に沿って延びる the Wallace line が州の西端になる。最新の患者の居住地である Lombok は、州内に 2つある大きな島のうちの1つで、Lombok は州内最大の都市で州都にもなっている]

● 原因不明の脳疾患-ウガンダ (05) nodding disease
PRO/EDR> Undiagnosed cerebral disease - Uganda (05): nodding disease 20120328.1083745
 情報源 The John Benneth Journal、2012年3月25日。
Nodding disease は小児を中心に罹患する疾患で、特定の食品の摂取や寒さで頭を振るようになり、食事が取れなくなって栄養不良に陥る。真菌感染による全身の壊死性血管炎の可能性も指摘されている。特に sorghum rot or sorghum ergot とも呼ばれる、_Claviceps africana_ の可能性が高いとされている。Sorghum は穀物の1種で、the nodding disease の発生のあるアフリカでも広く栽培されている。小児の Nodding disease はinfected sorghum cereal の摂取や、栽培農地の風下で芽胞の吸入だけでも感染する。Sorghum ergot fungi 真菌感染では、動物においても the nodding disease の小児と同じ症状を示す [Sorghum ergot (_Claviceps africana_) associated with agalactia and feed refusal in pigs and dairy cattle. Aust Vet J. 2000;78:102-7]。the nodding disease の小児らでは成長や知能の発達が止まり、ライ麦による真菌中毒 ergot mold poisoning in rye と同じ症状である。ergot-infected sorghum を食べたウシやブタは、えさを食べることを嫌がり、children with the nodding disease のような低体温が見られる。
[Mod.EP- Food toxins についての言及は以前にもあったが、sorghum rot を特定したものではなかった]
Recent reviews of mycotoxins include: Richard JL. Some major mycotoxins and their mycotoxicoses--an overview. Int J Food Microbiol. 2007;119:3-10; and Bennett JW, Klich M. Mycotoxins. Clin Microbiol Rev. 2003;16:497-516. (04): nodding disease
関連項目 (04) 20120317.1073307

● リーシュマニア症-スペイン
PRO> Leishmaniasis, human, canine - Spain: (MD) 20120328.1083656
 情報源 Typically Spanish、2012年3月27日。
保健省は、マドリード Fuenlabrada, Madrid を中心とする、ヒトのリーシュマニア症 Leishmaniasis の大流行の調査を行っている。ふだんはイヌの感染に限られているが、ヒトに感染することもあり、患者数が2009年の15人から2011年には118人に増加し、2012年2月末の時点で228人に達している。2010年以降、Polvoranca and Bosqu Sur の各地の住民や公園利用者らの間で多くの患者が確認されるようになった。リーシュマニア症により皮膚に潰瘍が形成され、重症例では、肝臓や脾臓に炎症が起きる。2003年にスペイン全体で101人の患者が発生し、このうち the Madrid region の患者は24人だった。現在、この地域の7-8%のイヌが感染していると言われおり、今後処分されることになるだろう being sacrificed
[Mod.EP- スペインでは leishmaniasis 地方病感染が起こっている。リーシュマニアの種類 The subspecies は _Leishmania infantum_ でイヌが保有宿主である。最近のレビュー (Epidemiology of leishmaniasis in Spain based on hospitalization records (1997-2008). Am J Trop Med Hyg. 2011;85:820-5) によると、leishmaniasis により 2028 人、住民1万人当たり平均で 0.41人に入院が必要となった。leishmaniasis 対策の中心は、保有宿主であるイヌとベクターのスナバエ the phlebotomine sand fly vector 駆除である]

◎ マラリア 薬剤耐性(東南アジア)、バハマ諸島

薬剤耐性(東南アジア)
PRO/EDR> Malaria, drug resistant - Southeast Asia  20120328.1082848
Drug resistant malaria takes new ground, raising fears of global spread
 情報源 Ars Technica、2012年3月22日。
piperaquine との組み合わせによる ACT の失敗例増加
東南アジアにおいて、薬剤耐性の熱帯熱マラリア falciparum malaria が別の初期治療に対する耐性を生じ、タイ西部の新たな地域に定着しつつある可能性が示唆されている。the World Health Organization によると、以前からの感染拡大防止策が十分でないカンボジア、ベトナム、ミャンマーの hot spots に加え、新たにタイの一部地域が加わった。アフリカへの波及も懸念されている。これまでにも2度、東南アジアで初めに薬剤耐性が発生し、その後アフリカ (世界中のマラリアの90%が発生) に広がった経緯がある。タイカンボジア国境のマラリアの強度 intensity は比較的軽いが、この地域のマラリアはなぜかクロロキンや sulfadoxine-pyrimethamine などの初期治療薬への耐性を獲得する能力を持つ。1980年から2004年にかけて、マラリアによる死者は3倍に増えて約180万人に達し、抗マラリア薬耐性がその犯人 "the likely driver" だと、Lancet に掲載された研究報告 (Global malaria mortality between 1980 and 2010: a systematic analysis. Lancet. 2012; 379(9814): 413-31)の中で述べられている。
アルテミシニンを基剤とする治療 Artemisinin-based therapies が現在世界中の初期治療の主役となっていて、Artemisinin は併用治療 (ACTs) の中の1剤として、より長く血中に留まることで残存する原虫を攻撃することができる他剤と共に使用される。一度に2種類の方法で原虫を攻撃することにより、2剤に対する耐性が同時に生じるような変異を理論上は無限に小さくできる。ACT は大量に使用され、2011年に2億5000万コースを上回る需要があった。有効な治療法として ACTs が行えなくなると、その影響は計り知れない。マラリア対策は、ACTs に完全に依存しているとタイの研究者は述べている。しかし artemisinin の効果は強力ではあるが弱まりつつあり、迅速な効果が特徴であったにもかかわらず、タイカンボジア国境のマラリア原虫により、薬剤の即効性 pharmacodynamic rush にブレーキがかけられつつある。この地域では、マラリア原虫が(血中から)消失するまでの時間が徐々に延長しつつある。懸念されるこのような傾向は、2002年ごろより見られ始めていた。当初、併用薬の mefloquine が原因と考えられたが、2006年には artemisinin の効果が弱まっていることがはっきりした。一部地域の原虫の中に、標準治療が行われた 3日目になっても残存するものがある。clearance times の長期化は、耐性発現の前兆 harbingers of resistance として知られている。そしてそれは証明されることになり、 治療の失敗例が増え続けている。その結果、カンボジアは 2008年に最新の ACT へと切り替えた。これは artemisinin と、クロロキンの chemical relative である piperaquine との組み合わせである。併用薬が有効である限り治療は成功するはずで、原虫の artemisinins 感受性に変化が見られたとしても、the clinical and parasitological efficacy of ACTs は損なわれていないとの声明が2010年に WHO より出されている。piperaquine には当初 ACTs としての治療効果 the therapeutic punch of ACTs が残されていた。しかし artemisinin の効果減弱 buckle は止まらず、一部の地域の ACT treatment 失敗率は、2008年の 8% から、2010年には 28 %に上昇した ... 2011年11月後半に WHO は : "resistance against piperaquine は広い範囲に影響を及ぼし、緊急に確認を要する" との懸念を表明し、現在、治療失敗例の増加が piperaquine resistance によるものである可能性が高いと考えている" と WHO's Drug Resistance and Containment program 当局者が述べた ...
Saving artemisinin

感染者スクリーニングの限界、懸念されるミャンマー
この数年、ゲイツ財団 the Gates Foundation からの資金援助を受け、the WHO はタイ国境付近カンボジアにある the "Tier 1" zones of confirmed resistance での封じ込めの努力を行ってきたが、耐性マラリア原虫の完全除去の限界も見えてきた。新たな耐性出現地域として、ミャンマー国境に近いタイ国内の Mae Sot が疑われている。耐性原虫の範囲が拡大したのか、新規の耐性発生であるのかは分かっていない ... 完全に撲滅するためには、大きな集団のスクリーニングと薬物処方が必要となるが、全ての感染を検出することはできない。鏡検(血液標本)によるスクリーニングの感度は十分ではない。PCR 法を用いることでより判別が可能となるが、費用がかかり、非常に低レベルだが持続感染につながると予想される寄生虫血症は、検出できない。タイでは、an expanded microscopy network が支持され、PCR によるサーベイランスは延期された。全ての耐性原虫を見つけ出すのが困難であるなら、それを殺すのはなおさら難しい。2009年に研究者らが示したように、薬剤耐性との闘いは、倒すか倒されるか "last man standing" (の闘い)である。わずかでも感染が残れば、その全てが耐性であるため、根絶はこの上なく困難なものとなる ... ベトナムやミャンマー、(ミャンマー北部と国境を接する)中国雲南省などでも、artemisinin 耐性発生が疑われている。ミャンマーの人口は、薬剤耐性が知られているカンボジアの Tier 1 地域の人口(わずか27万人)の約20倍の、480万人であり、統治されていない北及び東側の国境は、薬剤耐性発生地域に一致しているなど、多くの点が懸念材料となっている。
Migration and genetics

耐性検出のためのバイオマーカーの欠如、アフリカへの波及の不安
東南アジアで発生した薬剤耐性を理由に(治療薬を)クロロキン chloroquine から変更したアフリカだが、すでに新たな薬剤 sulfadoxine-pyrimethamine (SP) への対立遺伝子が、低頻度ながら大陸全体に広がっていることが確認されている。マラリア原虫内でランダムに拡散するため(対策の)コストに見合わない。SP がマラリア治療の第1選択薬 the malaria frontline となったときには、すでに遺伝子レベルで耐性が存在していたため、非常に早い段階で耐性が進んだ。薬剤選択負荷 drug selection pressure が加わっただけで、すぐに原虫内で耐性対立遺伝子 resistant alleles が優位となる。SP 耐性は容易に確認される:the dihydrofolate reductase (ジヒドロ葉酸酵素)と dihydropteroate synthase (ジヒドロプテロイン酸合成酵素)の遺伝子の1か所の変異 point mutations が、信頼性の高いバイオマーカー reliable biomarkers となる。Artemisinin 耐性の確認は、はるかに難しい。比較的簡便なアッセイより、適切なサイズの患者集団に対する 3日間の治療中の原虫消失時間 parasite clearance times を注意深く観察する小規模の臨床トライアルが要求される。大陸全体の把握を、このような方法で行うことは不可能である。アフリカの中で、カンボジアとマラリア発生状況が似ている南スーダンなどにおいて、選択的モニタリングを行うのがよいのではないだろうか(ただし、治安の問題有り)。artemisinin 耐性のバイオマーカーがないことによって、発見が難しいだけでなく、新たに発生した耐性と今ある耐性の拡大との鑑別も不可能となる。東南アジアでの新たな耐性発生が独立した事例であるとすれば、薬剤抵抗性の原虫の持ち込みがなくても、アフリカで耐性が根を下ろす可能性がある。薬剤耐性マラリアの根絶の可能性を訊かれた WHO's Pascal Ringwald は、直接この質問に答えることはせず、"カンボジアの首相はマラリア根絶を最優先課題として、今後も対応策の実施を続けると宣言し…" と述べるにとどまった。the Centers for Disease Control and Prevention and the Gates Foundation の専門家らもコメントを避けている。先のWHO 当局者は、アフリカに飛び火した際に "chloroquine 耐性は、7-8 different foci で発生した" と述べている。これまでのところ、artemisinin 耐性が確認されている場所はこれより少ないが、その数は増え続けており、いずれも鎮静化されていない。

バハマ諸島 CDC
PRO/EDR> Malaria - Bahamas: (EM) 20120328.1083643
 情報源 CDC、20112年3月27日。
The Centers for Disease Control and Prevention (CDC) は最近、the island of Great Exuma, Bahamas への米国人旅行者1名のマラリア Malaria 感染例に関する公式報告を受けた。この旅行者は2012年2月から3月にかけて同島を訪れた以外は、国外への旅行はなかったと報告している。以前、2006年に Great Exuma island においてマラリア感染流行が発生し、最後に患者が報告されたのは2008年だった。the Bahamas にマラリアは常在せず、これ以降、同国内でマラリア患者は報告されていなかった ... 当局の対応、バハマへの旅行者に対する注意 (発熱・悪寒などのインフルエンザ様症状があれば医療機関を受診)、the CDC Malaria homepage の紹介など。

● インフルエンザ (20) 宿主感受性遺伝子の特定

PRO/EDR> Influenza (20): host susceptibility gene identified 20120328.1083177
[1] Gene flaw linked to serious flu risk
 情報源 BBC News Health、2012年3月25日。
研究者らが、なぜ一部の人々が他人より重症化するのかを説明する遺伝的欠陥 genetic flaw を発見した。掲載された Nature の中で著者らは、インフルエンザのために入院となった患者では、一般人口に比べ、変異遺伝子 the variant of the IFITM3 [interferon-inducible transmembrane (IFITM) protein、インターフェロン誘導性膜透過蛋白] gene がより多く認められたと述べている。この変異遺伝子によって産生される変性蛋白 malformed protein が、細胞をよりウイルスに感染しやすくさせる。専門家らは、この欠損のある人には他のリスクグループ同様、インフルエンザワクチンを接種することを勧めている。研究者らは、マウスからこの遺伝子を除去すると、これらのマウスがインフルエンザを発症した時に、遺伝子を持つ (除去されていない) マウスに比べ、より症状が重くなることを確認した。多数のヒトの遺伝子が登録されている遺伝子データベースから、遺伝子の欠陥(のある人) the flawed version of the gene はおよそ400人に1人であることが分かった。この英国と米国の研究者らは、インフルエンザで入院となった53人の患者の the IFITM3 genes の遺伝子を解析し、このうち3人が the variant を持っていることを明らかにした -- 20人に1人の割合だった ...."This discovery は、説明の一部 ...."。
[Mod.CP- the Nature press re-release relating to this paper
タイトル IFITM3 restricts the morbidity and mortality associated with influenza. Nature. 2012 Mar 25. doi: 10.1038/nature10921.
要約
The 2009 H1N1 influenza pandemic は、新たな呼吸器感染ウイルスの感染拡大のスピードと、通常は軽症である感染症であっても一部の人々の重症化や死亡につながる可能性があることを示した。最近行われた in vitro studies では、the interferon-inducible transmembrane (IFITM) protein family members が、多数の病原性ウイルスの複製を強力に抑制することが示されている。この効果 the IFITM proteins' in vitro effects の強さの程度と範囲の広さ the magnitude and breadth から、インフルエンザなどのウイルスに対する内因性抵抗力に (IFITM 蛋白が) 重要な役割を果たすことが示唆されている。われわれは、ノックアウトマウスモデルを用いてこの仮説を直接検証し、IFITM3 が in vivo において宿主の influenza A virus 抵抗性に必須 essential であることを確認した。欠損マウス Mice lacking Ifitm3 に通常の低病原性インフルエンザウイルスを感染させたところ、劇症ウイルス肺炎 fulminant viral pneumonia を発症し、高病原性スペインかぜ 1918 'Spanish' influenza に似た破壊性を示した。in vitro でもウイルス複製能の増加が見られ、再導入 the re-introduction of Ifitm3 すると抵抗性が観察された。ヒトのインフルエンザウイルス感染に対する役割 the role of IFITM3 を調べるため、seasonal or pandemic influenza H1N1/09 viruses による入院患者らの the IFITM3 alleles (対立遺伝子) を解析したところ、統計的に有意な検体数で1か所の splice acceptor site を変化させる minor IFITM3 allele (SNP rs12252-C) が高濃度に認められた。functional assays では、 in vitro の条件下で the minor CC genotype IFITM3 が influenza virus restriction を減少させる [?] ことが観察された。これらのデータから、単一の固有免疫エフェクター the action of a single intrinsic immune effector である IFITM3 の作用が、マウスおよびヒトのインフルエンザウイルス感染の経過を大きく変えることが分かった]
[2] Genetics of flu susceptibility
 情報源 EurekAlert!, Welcome Trust Sanger Institute report 3月25日

● パパイヤの病気、Root rot-フィジー
PRO/PL> Root rot, papaya - Fiji: (WE) 20120328.1082666
 情報源 The Fiji Times、2012年3月24日。
the Western Division のパパイヤ papaya (pawpaw) crops が phytophthora root rot の被害を受けている