◎ Alkhurma virus

サウジアラビア以外では初めての感染例
PRO/AH/EDR> Alkhurma virus - Italy ex Egypt 20101129.4285
 情報源: Environmental Health Threats Forum 、2010年11月26日。
サウジアラビア以外では初めてとなる Alkhurma haemorrhagic fever の症例が報告された。ラクダとヒツジに感染し、ヒトの感染例 Alkhurma haemorrhagic fever の多くが食肉処理業者である。しかしダニ Ornithodoros savignyi_ tick の刺咬や未殺菌のミルクの摂取による感染のおそれもある。患者の約25%が死の転帰をとる。1990年代半ばに発見され、初めての死者が発生した都市名に因んで病名がつけられた。これ以後およそ 40人の患者が報告されているが、サウジアラビア以外から報告されたことはなかった。
1例目は 64歳男性で、2010年 4月にラクダ市場を訪れた際にダニのようなものによる咬傷を足に受けている。刺咬から 2日後に高熱、悪寒、嘔気などの症状を発症し,イタリアへの帰路の途中で状態が悪くなったが、5月中旬には完全に治癒して退院となった。血液検査でデング熱、ウエストナイルウイルスが否定されたが、フラビウイルスの1種であるとの疑いが持たれ、genus- specific reverse transcription-PCR の結果、 the Alkhurma virus に非常に近い遺伝子成分が確認された。
その数週間後に、他の患者の血液検体でも同ウイルス陽性の結果が判明し、いずれの患者も、約 1ヶ月の間をおいてこの地方を旅行していたことが分かった。
参考文献
1.  Alkhurma hemorrhagic fever in travelers returning from Egypt, 2010. Emerg Infect Dis. 2010; 16(12) doi: 10.3201/eid1612101092.
(全文和訳) 厚生労働省検疫所 FORTH
一 部抜粋:
南エジプトから帰国した2名のイタリア人旅行者が不明熱で入院し、検査の結果 Alkhurma ウイルス (ALKV) に感染していることが示された。ALKV は最近になって、フラビウイルス属のダニ媒介性出血熱グループに属することが記載されたウイルスで、現在 Kyasanur 森林病ウイルスの変種であると考えられており、89%の nt 系列相同性を持つ。発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、嘔吐、血小板減少などの徴候や症状を惹起し、重症例では出血症状(鼻出血、斑状 出血、点状出血、吐血)や脳炎を起こす可能性があり、致死的な転帰 (致死率は25%程度) をとる可能性がある。ラクダとヒツジが自然宿主と考えられているが、他の哺乳動物の感染サイクルに関与については、不明である。最近、サウジアラビアの ジェッダ(Jeddah) 近郊で採取されたダニ Ornithodoros savignyi で ALKV RNA が検出された。複数の動物を宿主とするこのダニは、アラビア半島ではラクダやラクダ用の厩舎で発見され、夜行性かつ潜行性で、木の下で休むヒトやその他の動物を刺咬する。また、蚊がベクターとなりうるという仮説も、2つの研究で提示された。ヒトに経皮的(感染脊椎動物の血液により、皮膚の創傷部が汚染さ れるか、あるいは感染ダニの刺咬によって)感染のほか、ウイルスで汚染された未殺菌の牛乳摂取による、経口感染が推定されている。ヒトへの伝播には、ヒツ ジとラクダの屠殺にも関連する。 ヒトからヒトへの感染報告はない。ALKV はサウジアラビアだけで検出されてきたが、近縁関係が濃厚な Kyasanur 森林病ウイルスは、インドから中華人民共和国に至る地域に、分布が拡大している。 以下に、2010年にエジプトからイタリアに帰国した、2名の旅行者に生じた、Alkhurma 出血熱症例について報告する: 症例報告、遺伝子解析・系統解析の結果、結論。
2. Alkhurma hemorrhagic fever in humans, Najran, SaudiArabia. Emerg Infect Dis. 2010; 16(12). doi:10.3201/eid1612.100417.
[Mod.TY -... 中東の経済圏内の Alkhurma virus encephalitis のサーベイランスが望まれる。ダニ刺咬や感染動物との接触だけでなく、consumption of raw camel's milk も Alkhurma virus 感染の major risk factor とされている点は興味深い。 この地域においては raw camel's milk の摂取が一般的であるため、この点についてもさらに調査を行う価値がある]