2007年1月31日

鳥インフルエンザ、家禽か渡り鳥か
狂犬病 ペルー
鳥インフルエンザ、ヒト ナイジェリア
リフトバレー熱 ケニア、ソマリア

● 鳥インフルエンザ 家禽か渡り鳥か
PRO/AH> Avian influenza, poultry vs migratory birds (10)
Archive Number: 20070131.0394
[1] トリの渡りに対する、鳥インフルエンザの影響
低病原性鳥インフルエンザで、野鳥が発病
 情報源: Reuters Foundation Alertnet 、2007年1月30日。
2007年1月31日、低病原性鳥インフルエンザ感染により、野鳥が発病して渡りの時期が遅くなり、以前考えられていたよりも速やかに感染が拡大することが、研究の結果明らかになった。このことは、低病原性鳥インフルエンザは、野鳥にまったく影響しないという従来の考えを変化させた。低病原性鳥インフルエンザは、それ自体はヒトに対して無害であるが、ヒトインフルエンザ株と混合することで重大な脅威となる。「lこの研究は、低病原性ウイルスの感染伝播に新たな視点を与えるものだが、野鳥に対する高病原性ウイルス株にも関与している」と、ロッテルダムのErasmus医学センターのウイルス学者が述べた。現在の鳥インフルエンザについての関心は、アジアが起源で2003年以来164人が死亡している、H5N1型高病原性鳥インフルエンザに集まっている。オランダの研究者による、米国の科学誌PLoSONEに掲載されたこの報告において、12羽のハクチョウについて調査が行われ、うち2羽でH6N2およびH6N8の低病原性鳥インフルエンザ株が確認された。この結果、感染したハクチョウは、健康なハクチョウに比べ、渡りの開始時期が遅れ、エサを食べる速度も遅くなり、渡りをする距離も短くなった。「トリが発病したということで、トリ同志のウイルス伝播が起こらないとは言えない」と述べた。以前から、高病原性鳥インフルエンザに感染したトリは、病状が重く飛ぶことができないため、ウイルスを伝播しないと信じられていた。「発病したトリは、渡りの時期が遅れるため、渡りのときにより多くの健康なトリが、(発病したトリの)周りを通り過ぎる。このため、以前考えられていたよりも、より急速にウイルスの感染拡大が生じる」と、共同研究者であるthe Netherlands Institute ofEcology の学者が説明した。昨冬、12羽のハクチョウの首環に GPS ナビゲーションチップを取り付け、ボランティアのバードウオッチャーの助けを借りて、注意深く観察を行った。感染した2羽のハクチョウは、健康なハクチョウより1ヶ月遅れの、1月後半から2月初めにかけて、北東ロシアの春の繁殖地に向かって渡りを開始した。感染鳥の渡りの飛行距離は、通常次の飛来地まで250kmとぶところ、わずか35kmしか飛べず、消化力も落ちているようだと研究では述べられている。これらのハクチョウは今冬の初めにオランダに戻っており、完全に回復していた。研究者は、5000万人が死亡した、1918年のスペイン風邪など過去の大流行株の起源は低病原性ウイルスであることから、同ウイルス株の、さらに詳細な情報を得ることは重要であると述べた。
記事;Hampered Foraging and Migratory Performance in Swans Infected with Low-Pathogenic Avian Influenza A Virus. の要約あり(省略)
[感染したトリの数が2羽と、サンプルサイズが小さいことに注意すべきである。逸話 anecdote より 1羽多いだけである。しかし、著者は価値あるポイントを提起している。他の研究者が、この仮説を検証することが望まれる]
[2] 地球規模または地域間の拡大 Global and interregional spread
 投稿者: Zdenek Hubalek 、1月24日。
前稿 Avian influenza, poultry vs. migratory birds (09), part (1) Global and interregional spread に関して
高病原性鳥インフルエンザの北米への導入と拡大の可能性に関して、極めて似通った結論が、最近他の論文でも述べられていたことを申し述べたい。(Birds and influenza H5N1 virus movement to and within North America -Emerg. Infect. Dis. 12: 1486-1492, October 2006)

● 狂犬病 ペルー ヒト、吸血コウモリ
PRO/AH/EDR> Rabies, human, vampire bat - Peru (02)
Archive Number: 20070131.0395
 情報源 Reuters Foundation Alertnet 、2007年1月30日
狂犬病の吸血コウモリにより南東部で11人死亡
ペルーの南東部の鉱山職人地区で、クリスマス以降11人が狂犬病のコウモリに咬傷を受けて死亡し、うち4人が子供であると、2007年1月30日に保健当局者が明らかにした。当局は、ペルーの Madre de Dios および Puno 地区の患者らは、狂犬病に感染している同じコウモリと考えられるものに咬傷を受けたと述べた。診断は確定されている。このほかに、この地域で咬傷を受けたと報告されたものは、症状がない場合でも狂犬病のワクチンで治療されている。死者の多くは、貧しく、空き地で寝泊まりしていた。この地区の他の住民は、コウモリの咬傷を避けるべく、蚊帳のなかで寝るなどの方法を教授されている。狂犬病は致死性疾患で、多くのヒトでの患者はコウモリの咬傷が原因である。
[偶然にも今月の初めに、ペルー北部のエクアドルとの国境にある Amazonas 地域で、11人の大人と子供の死亡が、ProMEDで報告されている。ペルーの、エクアドル、ブラジル、ボリビアとの国境に沿って生活している人々の死亡は、この地域に多い狂犬病の吸血コウモリによると考えられている。狂犬病の標準ワクチンは、吸血コウモリにより伝播される狂犬病ウイルス株に対して交叉防御免疫を賦与し、この地域の抗狂犬病ワクチンを優先的に実施すべきである]

● 鳥インフルエンザ、ヒト ナイジェリア
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (27): Nigeria 20070131.0397
[1] ナイジェリア: 初の鳥インフルエンザによる死者
 情報源 BBC News、1月31日。
インフルエンザ症状を発症して死亡した、ナイジェリアの女性1名がH5N1型鳥インフルエンザウィルスの検査で陽性であったと、閣僚が述べた。この報告は、アフリカで最も人口の多い国において、1年前にこのウイルスが登場して以来初めての鳥インフルエンザによる死者である。この女性は、人口が最も多い商業の中心都市ラゴスLagos出身で、最近インフルエンザ様症状で死亡した3人のうちのひとりであった。3人の血液検体がロンドンとローマに送付された。情報相は、H5N1型鳥インフルエンザウイルスの検査が行われた場所であると、ラゴスでの記者会見で語った。WHOは、2003年12月に感染流行が開始後、主に東南アジアで158人[2007年1月31日現在164人]がH5N1型鳥インフルエンザウィルスにより死亡したと述べた。国連は、ナイジェリア政府の同疾患対策に関心を寄せている。家禽が、当局の隔離や感染鳥への補償にもかかわらず、地元農民によって移動させられているためである。ヒト-ヒト感染Cross-infectionは比較的まれであり、通常、感染したトリとの濃厚な接触により感染が発生する。
[2] ナイジェリア: 西アフリカで初めての鳥インフルエンザによる死亡
 情報源;Reuters Foundation Alertnet、1月31日。
ナイジェリア政府は、検査により死亡した女性1名が鳥インフルエンザに感染していたことが確認されたことを受け、2007年1月13日にサブサハラのアフリカで初めてのH5N1型鳥インフルエンザウィルスによる死者を確定した。この22才は、感染したニワトリの羽むしりと内臓の取り出しを行って死亡した。彼女はアフリカで最も人口が多い商業都市、ラゴスの出身である。その他、女性の母親を含む3人の患者の検査は結論が出ていない。ナイジェリアは2006年にアフリカで初めて家禽のH5N1型鳥インフルエンザウィルスが確認された国で、ウイルスに感染したと疑われた14人について検査が行われた。アフリカでは、2003年以降鳥インフルエンザによりエジプトで11人が死亡し、ジブチではその東の岬で、1例の死亡しなかったヒト感染患者が発生している。H5N1型鳥インフルエンザウィルスにより、世界で164人以上が死亡し、その多くはアジアで、インドネシアが世界で最も多く、63人となっている。2007年、インドネシアでは6人が死亡し、国内のほとんどの州で家禽で土着感染している。ナイジェリアはトリでの感染を阻止する地球規模での取り組みの中で、専門家らは最も弱い地域の一つと見なされている。同ウイルスは、処分や隔離,生鳥の家禽の移動禁止などの対策にもかかわらず、ナイジェリアの全36州のうち17の州に感染が拡がった。WHOの広報は、ナイジェリアの1人の鳥インフルエンザ感染症例は、インドネシアのような、多数のニワトリがヒトと密着して飼育されている他の国での経験から、予想されていた。公衆衛生の観点からは何も変更はない。遅かれ早かれ起こるべくして起こった」と、述べた。
[Mod.CP- 2007年1月29日、WHOは、ナイジェリアで鳥インフルエンザの感染が疑われる、上記の、今回陽性と確定された22才の女性を含めた、患者14人の検査が陰性であったと報告した。ラゴスの政府筋の情報は、この決定で覆された。WHOによる診断確定を待ちたい]

● リフトバレー熱 ケニア、ソマリア
PRO/AH/EDR> Rift Valley fever - Eastern Africa (11): Kenya, Somalia 20070131.0398
 情報源 World Health Organization (WHO), CSR, Disease OutbreakNews、1月31日。
○ ケニア 
2007年1月30日現在、死者121名を含む411名の疑い患者(致死率:29%)が北東州、海岸州、東部州、中央州より報告されている。131名が検査により確認された。北東州が最も感染の被害を受けており、ガリッサ地区(57名の死者を含む、疑い患者175名、確定患者58名)、及びIjara地区(死者23名を含む、疑い患者125名、確定患者22名)、が最も多くの患者及び死者を報告している。散発事例は、同様に東部州(イシオロ地区:疑い患者8名、確定患者3名)、及び中央州(Kirinyanga 地区:死者1名を含む、疑い患者4名、確定患者4名。カジアド地区:死者3名を含む、疑い患者3名、確定患者1名。Maragua 地区:疑い患者1名、確定患者1名。ティカ地区:疑い患者2名、確定患者1名)。中央州での複数の患者はナイロビで診断された。アウトブレイクは減少しつつあるが、保健省は、積極的監視等の感染封じ込めをするため、活動を調整し続けている。GOARN(世界感染症警戒対応ネットワーク)の調査チームが流行地域から戻り、リフトバレー熱の初期診断を行う移動検査室の提供、地方当局への患者の措置、感染制御対策訓練、被害地域に対するリフトバレー熱についての衛生教育及び情報を提供している。WHO、保健省、及び畜産水産開発省は、地域社会で普及している重要な公衆衛生情報を作成し、地域の宗教指導者が参加する集会で伝えられている。
○ ソマリア 
2007年1月30日現在、WHOは死者48名を含む100名の疑い患者を報告した。1名がケニアにあるケニア医科学研究所 (KEMRI)及びCDC/EIP での検査により確定した。国境なき医師団は検体搬送を容易にしており、WHOソマリア事務局は、ソマリア医務官に対して国内のリフトバレー熱の検出及び抑制方法についての訓練会議を行った。しかしながら、引き続き治安情勢が感染地域での感染制御対策を妨げている。

● アフリカ馬疫 ナイジェリア
PRO/AH/EDR> African horse sickness - Nigeria: serotype 2 20070131.0399
 投稿者 南アフリカ OIE AHSV&BTV委託研究所 Magda Oneill、1月30日。
ナイジェリアでAHSV serotype 2
アフリカ馬疫血清型2型が北半球で初めて確認された。ナイジェリアの委託センターで送付された血液検体の1つが、ウイルスの二本鎖RNA抽出に用いられた、セグメント2(S2)の一部の遺伝子配列が解析され、9つのASHVの血清型とのS2の遺伝子配列との比較により、ナイジェリアで分離された株はAHSV genotype[*serotype?] 2であることが判明した。 同じウマの血清を用いたウイルス中和検査でAHSV2特異中和抗体を有することが確認されていた。AHSV2参照株や2006年シーズンの南アフリカAHSV2の分離株との、S2遺伝子配列の比較により、ナイジェリアの分離株のS2遺伝子配列は、南アフリカで作成された複数のAHSV2分離株と一致していた。また、AHSV2がボツワナの感染例からも分離された事実は興味深い。これらの遺伝子の遺伝子配列は、まもなくナイジェリア分離株と比較される。同ウイルスは細胞培養により分離され、詳細な特徴付けがなされる予定である。
[ウイルスに関する解説(省略)]