2008年3月22日-23日

原因不明の反応、ヘパリン 米国、カナダ 混入確認
結核 英国、ソマリアから XDR

● 原因不明の反応、死亡、ヘパリン 米国、カナダ
PRO/EDR> Undiagnosed reactions, fatal, heparin - USA (08) & Canada: recall
Archive Number: 20080323.1099
[1] 米国: heparin recall 
 情報源:US Food & Drug Administration (FDA) press release、3月21日
l  B. Braun Medical Inc. 社は、供給元である Scientific Protein Laboratories LLC  (SPL) 社から、ヘパリンナトリウム USP の有効成分 active pharmaceutical ingredient (API) の、全米での回収についての通知を受けた。同社の23種類の最終製品に回収の影響が出ている。
[2] 中国: 混入確認 contaminant identified
 情報源: Reuters、3月20日
中国政府は、米国が所有する中国の工場が米国向けに供給している、抗凝固剤ヘパリンの製品の中に異物混入があったことを認めた。重篤な副作用や死亡につながっている。中国食品医薬品局は、この混入した異物は、米国の保健当局が Baxter International Inc' 社製品中に確認した物質と "basically the same (基本的に同一)" であると述べた。米国 FDA は、2008年3月19日、バクスター社のヘパリン中から、"over-sulfated chondroitin sulfate (過硫酸化コンドロイチン硫酸)" を発見し、中国での製造過程で、故意に混入されたのか事故であるか、調査中であると発表していた。2008年2月、バクスター社は腎透析や心臓手術などで、血栓防止に使用されているヘパリンを回収していた。コンドロイチン硫酸は、関節痛などの治療用サプリメントとして世界中で販売されているが、過硫酸化物は自然に発生しないことから、化学的に合成されたものとFDA は見ている。FDA は、この混入物が、米国で報告されている最大 19人の死亡と、数百人の重症呼吸障害などの原因であるのか、調査中である。FDA 当局者によると、多くの動物を原料とする化学合成されたコンドロイチン硫酸は、ブタの小腸から取れる生のヘパリンよりも安価である可能性があるとしている。中国の医薬品監視当局は、常州 Changzhou にある中米ジョイントベンチャー工場から、バクスター社に供給されたヘパリンにおいて、異物の混入を確認した。FDA は、5日、ウィスコンシン Wisconsin 州に本社のある Scientific Protein Laboratories 所有の常州の工場からバクスター社に供給された薬品の有効成分の一部に、ヘパリン類似成分が発見されたと発表していた。Scientific Protein Laboratories 社は当初、工場のコンサルタントより、工場の製品ではなく、それ以前の供給ルートでの混入との結論を得ているとしていた。バクスター社も、SPL に届くまでに混入が発生していたとコメントしている。 
[3] ATⅢの役割 Role of antithrombin III: RFI 
 投稿者:加・Regional Veterinarian Officer、Hugh Baker、3月20日
グルコサミン Glucosamine は、活性化レジンから回収されるヘパリンの収量を人工的に高めるために加えられる、"diluent (希釈物)" である可能性が高い。グルコサミンは、構造上、ヘパリン鎖の monomer units に類似している。血性中のグルコサミンが過量になる (flooding) と、アンチトロビンⅢ (ATⅢ) のヘパリン分子の結合部位への接近が妨げられる。これが、混ぜものがある adulterated ヘパリンで、抗凝固能が減弱する副反応が生じる機序である。北米において35万人の患者に対して、透析や静脈留置カテーテルのヘパリンロックに使用されている。正常な肝機能と十分な ATⅢ の循環があれば、ヘパリンへの反応が不十分となる可能性は低い。しかし、現在ヘパリンの混入物とされているコンドロイチンは、モノマーよりは長鎖であることが多いが、ヘパリン類似の構造を有している。ATⅢ の干渉が、報告されているような副反応に重大な影響を与えるかについて、コメントできる方はいないだろうか。

● 結核 英国、ソマリアから
PRO/EDR> Tuberculosis, XDR - UK (Scotland) ex Somalia
Archive Number: 20080322.1094
 情報源:The Guardian 、3月21日
30歳代の男性1名は、グラスゴー Glasgow の病院に隔離され、超薬剤耐性結核菌 XDR-TB  Tuberculosis に対して、各種の抗生物質を組み合わせた治療を受けている。Gartnavel general hospital 広報は、衛生当局は、この男性との接触者を追っていると話した。この患者は、英国内では初めて診断され治療を受けている XDR-TB 患者である [BBC の報道によると、WHO の XDR-TB の定義が 2006年に改定されて以来初めての英国での患者であるが、遡って見ると、2003年の患者が XDR-TB と確認できるとされている]。
WHO は、空気感染するXDR-TB は世界中に蔓延しやすいとして注意を呼びかけている。結核は、家庭内や学校など、密接かつ長時間の接触を通じてのみ感染するため、1例の発生が流行を起こす可能性はほとんどない。しかし、英国内に XDR-TB が発生したことで、より一層の注意が必要となった。... 
2006年、英国では 8497例のうちの 1%が MDR (多剤耐性) であった。XDR-TB は、第1選択の INH とリファンピシン、第2選択のフルオロキノロンと注射用抗結核薬 KM,AMK, capreomycin のうちの1種類以上に抵抗性を示し、治療期間は 12-18ヶ月を必要とするため、地方財政上の負担も大きくなる。
このソマリア人の男性は、2007年11月にヒースロー Heathrow に到着した際の感染症スクリーニングを受けている。レントゲン検査により、肺内に結核の痕跡が認められたが、活動性ではなかった。政治的亡命を要求しようとしていたこの患者は、医師に対して最近 6ヶ月間の結核治療を受けたと話した。男性にはスコットランドへの移動が許可された。2008年1月、肺内病変の再燃のため、入院となった。その後の培養検査の結果、XDR-TB と診断された。NHS の医師は、XDR-TB が通常の TB よりも感染力が高いことはないものの、特別な治療を必要とすると説明した。XDR-TB との接触者は、通常の TB と同じ様式で追跡し、発見されれば直ちに治療を開始できるようにしなければならないと話した。
[Mod.ML-政治亡命を求めているこのソマリア人は、最近 6ヶ月間の結核治療を完了してから英国に到着したと報告されている:無症状であったものと思われ、2007年11月に英国入国が許可されたときには、非活動性と見られる陳旧性結核の痕跡のみであった。
正確な治療内容は記載がないが、INH、リファンピシン、pyrazinamide (PZA) およびエタンブトールが含まれていたに違いない。6ヶ月間の治療スケジュールは、結核菌に薬剤感受性が認められた場合の治療にのみ適応があり、INH に耐性があれば、この4剤レジメは効果がない。しかし、リファンピシンに耐性である場合は、6ヶ月のレジメで効果が期待できる。PZA に対する感受性も、6ヶ月コースの有効性には必要である。
全ての可能性の中で、このソマリア人患者は初めから XDR-TB に感染しており、薬剤感受性が行われないままに、無効な 6ヶ月レジュメを受けていたため、英国入国時に非活動性であると誤解されてしまったのだろう。航空機内の乗客にも XDR-TB への曝露の可能性が生じている。わずか 2ヶ月で再燃したことから、6ヶ月の治療(服用)を守らなかったために、XDR-TB に進展したという可能性は低い。このような不十分な服薬遵守では、フルオロキノロンや注射用剤への耐性獲得の説明はできない。
XDR-TB への進展は、通常、1次治療が不成功に終わり、これらの2次選択薬の使用が不十分であった場合に生じる。こうして初発の XDR-TB 感染患者が、濃厚接触のあった人々に感染を拡大させる。
20080228.0813 では2002-2006年に 81カ国の 9万人の結核感染患者に関する WHO の調査では、新規結核患者の 20人に1人が  MDRであり、毎年発生する世界の900万人の新規結核患者のうち約45万人がMDRという計算になる。... 
XDR-TB は、世界中で見つかっているが、国際的な調査によると、アジア東欧で最も多いことが示唆されている。25%の症例が、アゼルバイジャンの首都バク Baku やパプアニューギニアなどの、いくつかの地域から報告されている。実際のところ、サーベイランスや感受性検査が十分でないため、世界の多くの場所での MDR や XDR-TB の発生状況は性格には判っておらず、報告されているよりもずっと多い可能性もある。すべての結核患者の、また、再燃や明らかな治療不成功後に、分離された結核菌 _Mycobacterium tuberculosis_ の抗結核薬感受性検査を行うべきである。20080228.0813 にあるように、最近の研究により、感受性検査や薬剤耐性サーベイランスを行わない DOTS の 6ヶ月治療計画導入が、南アフリカ KwaZulu Natal で非常に感染性の高い XDR-TB の発生を助長したとされている (Clin Infect Dis. 2007; 45: 1409-14)]

● 中毒,原因不明 ウクライナ
PRO/EDR> Poisoning, agent unknown - Ukraine (02): (Yalta) phosphine
Archive Number: 20080323.1102
 情報源 IA "Noviy Region" [in Russian] 2008年3月20日
the ship "Roksolana" の船上で苦しんでいる船員らが船主を訴えるとしている ... 暫定的な情報では,荷室からガスが流入したとされている ... 
[Mod.TG- ...  Phosphine is a very toxic gas, and is also generated as a by-product during the manufacturing of methamphetamine. ]
関連項目 
Poisoning, agent unknown - Ukraine: (Yalta) 20080321.1081

● ラッサ熱 ナイジェリア
PRO/AH/EDR> Lassa fever - Nigeria: (Ebonyi)
Archive Number: 20080323.1100
 情報源:AllAfrica, Vanguard (Lagos) report、3月21日
保健省の医療専門家らが、Ebonyi State University Teaching Hospital (EBSUTH、Ebonyi 州医科大学病院) の医師 2名の死亡の原因が、ネズミなどのげっ歯類によって伝播されるウイルスによるラッサ熱 Lassa fever であったことを確認した。これを受けて州政府は、ウイルスの感染拡大防止策として、ネズミ対策を実施すると宣言した。2008年3月20日医療当局は、現在も調査中であるが、死亡した医師らの死因の最終診断はラッサ熱ウイルス感染と確定され、Ebonyi 州では 2008年 [*原文は "in 2005" とあり、since 2005 の誤りであれば、2005年以来となる] 初めての報告であることを明らかにした。第 1の死亡患者は調査チーム到着前に埋葬されたため、ラッサ熱の診断はできていない。
ラッサ熱は、1969年に初めてナイジェリア Borno 州 Lassa 村で確認された。
[Mod.TY-2例目の患者において、ラッサ熱ウイルスの検査学的診断が行なわれたのかはっきり書かれていない。確定に関する情報を歓迎する。アレナウイルス arenavirus 科のラッサ熱ウイルスは、西アフリカのマストミス _Mastomys_spp. (げっ歯類) の間に土着感染している。ラッサ熱は、西アフリカではよく見られる感染症で、年間およそ10-30万人の患者が発生し、5000人の死亡があると見積もられている。げっ歯類からヒトへの感染伝播を予防するためには、絶えずげっ歯類対策を続ける必要がある。周囲にヒトの感染例がない中で、一般の人々に (絶えずネズミ対策を)実施させることは、きわめて困難な作業である。バリアナーシングが行なわれず、職員が患者の血液や浸出物、排泄物に曝露する病院内では、多くの感染が発生する。医療関係者の感染はおこりやすい] 
[Mod.JW-ラッサ熱は、西アフリカに侵淫しており、新興ではないが、新興感染症を中心に報告している ProMED に (ナイジェリアのラッサ熱を) 掲載することは、それが出血熱であるという点で正当化される] 

● サルモネラ感染症 北米、ホンジュラスから
PRO/EDR> Salmonella Litchfield, melon - N America ex Honduras: alert
Archive Number: 20080323.1098
[1] 米国 米国 16州の50人とカナダの6人のサルモネラ症患者が報告
 情報源 US Food & Drug Administration (FDA) News, press release 、3月22日
米国 FDA は、ホンジュラスの栽培出荷会社である Agropecuaria Montelibano 社のメロン cantaloupe の輸入に関し、注意喚起を発令した。現時点での情報であるが、同社のフルーツが、米国およびカナダ国内で発生したサルモネラ菌 _Salmonella[enterica_ serotype] Litchfield 感染流行に関与していると見られているためである。同社から米国向けに出荷されたメロン全てが留め置かれる。FDA は、関係各方面とも連絡を取り、情報提供を行っている。... FDAにはこれまでに、16の州の50人と、カナダの6人の、メロンの消費に関連した患者の報告が寄せられている。死亡の報告はないものの、14人が入院した。
[2] カナダ 5つの州で9人のサルモネラ症患者が報告
 情報源:The Canadian Press、3月22日
カナダの食品監視局は、ホンジュラス産のメロン cantaloupes が、米大陸全体で発生したサルモネラ症との関連のため、自主回収されていることを認めた。2008年3月22日の米食品医薬品局 FDAの感染流行に関する注意喚起に続いての回収で、カナダでも5つの州で9人の患者が報告されている。

● B型肝炎ワクチン関連死亡 ベトナム:否定
PRO/EDR> Hepatitis B vaccine-associated deaths - Viet Nam: NOT, RFI
Archive Number: 20080322.1091
 情報源:VietNamNet Bridge、3月21日
2008年3月20日、保健省は公式に、2007年以降複数の乳幼児におきたワクチン接種後の死亡は、ワクチンが原因ではなかったと発表した。2008年のこれまでに、7例のワクチン接種後の重症ショックが報告されており、このうち、5例は coincidental 偶発的な症例で、1例は医療ミスによるもの、もう1例は原因が明らかにされなかった。

● 東部ウマ脳炎、ウマ 米国
PRO/AH/EDR> Eastern equine encephalitis, equine - USA: (FL)
Archive Number: 20080323.1101
 情報源:The Ledger、3月22日
フロリダ Florida 州農業当局は、ウマが死亡する可能性のある、蚊族媒介性疾患の流行が発生していると報告した。2007年、州内では18例の東部ウマ脳炎 eastern equine encephalitis [EEE] が発生した。2008年、すでに 9例の発生があった。通常、感染の発生開始は 5月である。ウマには、EEE とウエストナイルウイルスに対するワクチン接種を行なって、感染を予防するよう、当局は呼びかけている。EEE は、蚊族によってウマ [そしてヒトにも] に感染するウイルス性疾患である。ウイルス感染の症状としては、発熱、無気力、よろめき、回転、昏睡があり、感染例の 90%が死亡する。Volusia County は、2008年の最も深刻な被害が発生しており、9例中4例が報告されている。 
[Mod.TY-EEE シーズンの早い到来である。ただし、暖冬のフロリダ州では、年間を通してウイルスが循環する可能性がある。ウマでの発病は、定期的なワクチン接種により、完全に予防できる。なぜ EEEウイルス感染伝播地域であることが十分判っている地域の馬主らが、ウマへのワクチンをためらうのか、理解できない] 
[Mod.JW-ウマ/蚊族あるいは双方の EEEウイルス確認が、しばしばヒトでの感染発生の前触れとなる。保有動物は、湿地に巣を作る野鳥の仲間である。フロリダ州の湿地付近の住民は、蚊族対策を始める必要がある。ヒトに使用できるワクチンは一般にはない。EEEは、小さな子供や高齢者を死亡させることもあり、きわめて厄介な疾患である] 
地図 Volusia County in eastern Florida

● 狂犬病、キツネ 米国
PRO/AH/EDR> Rabies, fox - USA: (NM), alert
Archive Number: 20080323.1097
 情報源:Carlsbad Current-Argus、3月20日
Grant County(ニューメキシコ New Mexico 州)における、最近のキツネの狂犬病 Rabies 事例発生をうけ、州当局は住民らに対し、キツネを見かけた場合には注意するよう呼びかけている。ペットや家畜への狂犬病ワクチン接種についても改めて確認した。2008年3月18日、Catwalk National Scenic Trail (near Glenwood) 近郊で、19才の女性1名が1匹のキツネに襲われた。キツネは逃げ去り見つかっていない。女性は念のため曝露後接種を受けた。17日には、Silver City で女性がイヌの散歩中に、弱ったキツネがイヌに近づいて威嚇した (hiss)。このキツネは当局によって捕獲され、18日の狂犬病の検査の結果、陽性となった。2008年3月に Silver City で確認された 2頭目の狂犬病のキツネである。2008年、Grand County で狂犬病の検査の結果陽性となったのは、キツネ4頭とイヌ1頭である。2007年、Catron County では、キツネ8頭と bobcat 1頭の狂犬病検査が陽性となっている。Carlsbad area 地域でも、キツネはよく見かけられる動物であるが、2008年において狂犬病が陽性となったものはいない。 
[Mod.JW-Carlsbad Caverns は、人気の観光地である。旅行者は、このあたりのキツネに近づかないよう注意すべきである。1994年以来、ニューメキシコ州の動物の狂犬病が報告されたのは、今回でわずかに 2件目でしかないことが注目される]

● イネの病気,ウイルス性疾患 ベトナム
PRO/PL> Virus diseases, rice - Viet Nam: update (02)
Archive Number: 20080322.1093
[1] ベトナムのコメの問題が地域に影響 
 情報源:Agence France-Presse、3月20日 
[2] メコン Mekong のコメ栽培地帯に病気による被害発生 
 情報源: Vietnam News 、2月28日