2008年8月30日-31日

エンテロウイルス感染 ロシア、髄膜炎
胃腸炎 セルビア、モンテネグロから

● エンテロウイルス感染 ロシア
PRO/EDR> Enterovirus infection, meningitis - Russia: (Vladivostok) 20080831.2728
 情報源 MKRU Srochno online (translated)、2008年8月27日
ウラジオストク Vladivostok 市でエンテロウイルスの感染流行 Enterovirus infection が発生している。およそ 300例が記録されており、うち 269人が小児である。患者の半数が重症(無菌性)髄膜炎を発症し、重大な後遺症を遺す可能性がある。ウラジオストクの感染症上席専門官は、全ての感染が現地の海岸における海水浴の結果だと説明した。
[Mod.CP- エンテロウイルス感染は、小児では一般的なものである。エンテロウイルスには、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ポリオウイルス の多数の株が含まれている。エンテロウイルス感染は、衛生状態の悪い環境で起こりやすい。ウイルスに汚染された物体が嚥下されることによって感染が始ま る。ウイルスはその後消化管内で増殖するが、ほとんどの場合、体内の免疫による防御によってこの段階で感染が食い止められ、ほとんど症状はない。感冒や上 気道感染が、一般的なエンテロウイルス感染の結果である。ときにウイルスが生存し、血中で拡散し、発熱 ・ 頭痛 ・ 咽頭痛と、時に嘔吐を引き起こす。重症(無菌性)髄膜炎は、脳を被う膜と脊髄 meninges を冒し、頭痛 ・ 項部硬直 ・ 光過敏などの原因となる。通常、エンテロウイルス感染は後遺症なく治癒す るが、心臓や中枢神経系に感染が及ぶと死亡することがある]

● 胃腸炎 セルビア、モンテネグロから
PRO/EDR> Gastroenteritis - Serbia, ex Montenegro
Archive Number: 20080830.2723
[1] モンテネグロの感染流行がセルビアに波及
 情報源 Blic online 、2008年8月29日
"stomach flu" と呼ばれる原因不明で危険性の高い、感染力の強い疾患は、モンテネグロ Montenegro の首都ポドゴリツァ Podgorica にとどまらず、沿岸部にも波及している。セル ビア Serbia の各都市にも拡大した。コトル Kotor で死亡した 26才の女性の死因も、この疾患であると推測されている。モンテネグロでの休暇を終え、帰国した数十人のセルビアからの旅行者らにも、高熱、嘔吐、下痢症など同じ症状が見られた。医師らがこの女性の死因を調査しているが、この原因不明の疾患の症状を示すおよそ千人の患者が発生しているポドゴリツァの当局は、いかなる感染流行もないと否定している。モンテネグロ保健当局者の1人は、間もなくこの女性の死亡に関する発表を行うとしている。2008年、このような死亡事例が発生したのは初めてのことではない。8月はじめには、マケドニア Macedonia の 18才の女性が、モンテネグロでの休暇から帰国したあと死亡している。
[2] 26才の女性が死亡し、モンテネグロを訪れたセルビア人旅行客らも発病
 情報源 Javno、2008年8月29日
原因不明で感染力が強く、非常に危険な疾患が、モンテネグロで流行しており、その症状は高熱・嘔吐・下痢であるが、モンテネグロから帰国したセルビア人旅行者数十人にも拡がっていることが報じられた。モンテネグロの医師らは、今も 26才女性の死因を調査中であり、多くの人々が "stomach flu" とよぶこの疾患により死亡したものと考えられている。モンテネグロ保健当局の広報担当者は、剖検により女性の死因が明らかになると話している。
"stomach virus," の感染流行の原因は分かっていないが、ポドゴリツァの水質は飲用に適していることが証明されていると述べた。沿岸部にも感染流行が発生しているかは明らかではないとも述べた。生後7ヶ月の娘を残して死亡したこの女性は、24日に嘔吐が始まり、その後下痢症と吐き気が続いていた。モンテネグロ のコトル Kotor のクリニックで点滴を受けたが、心配ないだろうと伝えられた。彼女は、この日同じ症状を訴えて受診した 50人目の患者であった。しかし、彼女の症状は改善せず、両手にしびれを生じたため、カルシウムが投与されたが、身体の他の部位にもしびれが拡がった。病院に向かう途中に彼女が死亡したと、夫が述べた。
[Mod.CP ー 今回の感染流行は、ノロウイルス関連の胃腸炎感染流行の特徴そのものを有しているが、死亡する結果となったことは例外的である。モンテネグロで死亡したこの 26才の女性と、モンテネグロでの休暇後に死亡したマケドニアの 18才女性のの死亡原因に関する詳 細な情報が待たれる]
地図 Serbia and Montenegro Kotor (not marked) lies on the coast of Montenegro

● ハンタウイルス 米国
PRO/AH/EDR> Hantavirus update 2008 - Americas (16): USA (WA Washington ), conf 20080831.2727
 情報源:The Seattle Times 、2008年8月27日
Ellensburg の警官がハンタウイルス感染により死亡
米国疾病対策センター The United States Centers for Disease Control and Prevention (CDC) は、ワシントン Washington 州の警官1名がハンタウイルス Hantavirus 感染により死亡したことを確認した。現地保健当局は、現在もこの警官のウイルス感染の経路を調査している。この警官の死亡により、2008年 8月のワシントン州でのハンタウイルス感染は 2例目となり、死者としては 2008年初めての症例となった。州保健当局によると、匿名のベリンガム Bellingham の住民 1名がハンタウイルス感染に対する治療を受けた。このウイルス は、マウスの唾液 ・ 尿 ・ 糞を通じて感染が拡がり、WA 州では平均して毎年 1-5人が感染する。1993年以降、35人の確定患者のうち 11人が死亡し た。
[Mod.TY-未だ、この症例がどの種類のハンタウイルスによる感染であったかの情報はないが、原因ウイルスとして Sin Nombre ウイルスの可能性が最も高い]

● 鳥インフルエンザ、ヒト インドネシア 
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (66): Indonesia (West Java) 20080830.2721
 情報源 Antara News online、2008年8月30日
2008 年1月から8月までの間に、East [West ?] Java ・ Malang 地区で、鳥インフルエンザ Avian influenza A型ウイルス検査陽性となった 1名を含め、合計 5人の感染が疑われる患者が確認されていると、現地当局者が述べた。鳥インフルエンザに感染したのは、Bululawang 在住の 47才であると 30日に現地保健当局責任者が明らかにした。Malang の当局は 8月、13件の家きんの大量死(happenings)と 10件の鳥インフルエンザ関連事例 (related case)を確認している。"鳥インフルエンザウイルス感染地域は、ほとんどが環境が良好でない養鶏場である” と述べた。2008年 1-8月の間に合計 1189羽の家禽が死亡した。Pagak, Wonosari, Tumpang, Sumberpucung, Kepanjen, Pakis, Bululawang, Gondanglegi, and Pagelaran の 9つの subdistricts が、主な鳥インフルエンザ発生地域である。
地図 Malang in the Indonesian island of West Java 

● 炭疽 ロシア
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, equine - Russia: (RB Bashkortostan)  20080830.2720
 情報源:Russian News and Information Agency 、2008年8月29日
ウラル地方南西部の Bashkortostan 共和国のある村では、複数の炭疽 Anthrax 感染患者が発生したため検疫体制が布かれたと、20日に Rospotrebnadzor 当局広報担当が発表した。ウラル地方 Yanaulsky district のこの村で住民 10人が入院した。担当者は、2週間前に獣医学的検査を受けずに処分された、炭疽感染のあったウマ 1頭の肉を食べた住民らが発病したと述べた。肉は廃棄され、専門家らがウマの感染の経緯を調査している。この村では、家畜を食べることや移動させることが禁止されており、現地の肉屋も全て閉鎖されている。
[Mod.MHJ -ロシア中央部や中央アジアではウマを食べる習慣がある。目に見える範囲以上に感染が拡がっている可能性があり、ウマの炭疽感染例では、他の家畜での感染が続いてみられることが多い]

● 原因不明の致死性疾患 インド(2件)
PRO/EDR> Undiagnosed fatal illness - India (06) 20080830.2718
[1] Further clarification - 2 outbreaks
 投稿者 印 ・ Indian Council of Medical Research、Dr Arvind Nath、2008年8月29日
20080828.2697 の [1] は 20080826.2666 との関連はない。前者は eastern Uttar Pradesh の13地区における発生であり、後者は eastern Uttar Pradesh に属さない Kanpur Dehat District が発生地である。
[2] ウッタルプラデシ州の健康に関する注意喚起
 情報源 Thaindian News, IANS report 、2008年8月29日
多数の下痢症、マラリア、胃腸炎の患者に加え、135人以上死亡した原因不明の疾患も発生し、UP 州は全域に対する注意喚起を発令した。"1月以降、麻疹、マラリアなどの疾患が発生したことから注意を呼びかけている"と、保健医療の責任者が述べた ... east Uttar Pradesh では、急性脳炎症候群 acute encephalitis syndrome (AES) の患者が 900人を超え、このうち 160人が死亡した。黄疸やカラアザールの患者も報告されている。最も被害が深刻なのは  Kanpur Dehat (Akbarpur), Muzaffarnagar, Maharajganj, Siddharthnagar, Mau, Azamgarh, Balrampur and Gorakhpur である。
[Mod.CP ー 今回の州全域に対する注意喚起には eastern Uttar Pradesh の AES 流行、south eastern Uttar Pradesh の the Kanpur Dehat district における水系感染と考えられる感染流行に加え、以前報告されていないその他の感染流行も含まれている]
[3] げっ歯類に媒介される疾患 Rodentborne disease: レプトスピラ症とハンタウイルス感染症
 投稿者 ベルギー・Jan Clement MD and Piet Maes PhD、2008年8月29日
south eastern Uttar Pradesh 州の感染流行の原因分析
[4] The AES outbreak in eastern Uttar Pradesh
 情報源 Thaindian News, ANI report 、2008年8月28日
米国からの2チームを含む合同の医師派遣チームが 28日、Gorakhpur district of Uttar Pradesh を訪れ、脳炎患者らを診察した。CDC からの医師 2名を含むこのチームは、病原ウイルスの調査などを行う。今季になって 171人が死亡した ウイルス性感染症では、1月以来 851人の患者が入院を要した。患者の多くは 6-12才であり、死者の数が増えているため、専門家らの間に懸念が高まって いる。同疾患は脳炎を生じ、繰り返される発熱と嘔吐が初期症状である。軽い発熱であるため、両親や地元医師らは死亡することもあるこの発熱を深刻に受け止 めていないとの印象が持たれている。
地図 Uttar Pradesh 東端の Gorakhpur と中南東部 Kanpur 
[Mod.JW-この AES 流行の報告は、なぜこれが日本脳炎 JE でないと考えられたかが、明らかではない。小児ワクチンの一環として何年も前から JE ワクチンの定期接種が行われている地域であるのか、カバー率が高く,多くの小児らは免疫を保有していると考えてよいのか?]

PRO/AH/EDR> Undiagnosed pulmonary disease - India (03): hantavirus not  20080830.2717
 情報源 Sahara Samay 、2008年8月19日
プネ Pune の研究所からの報告によると、インドにおける恐ろしいハンタウイルス hantavirus 感染拡大に関する調査は終了した。報告では、検査の結果は陰性であった。少女1名が高熱と重症肺炎で死亡し、別の1人が入院したことにより、Uttarakhand 保健当局は当惑している。病院当局は、数日前に Dehradun および Tehri 出身の2人の少女がひどい高熱と肺炎のため入院し、いずれもハンタウイルス肺症候群 hantavirus pulmonary syndrome (HPS) の症状を呈していると発表していた。...
[Mod.TY-生存例でのハンタウイルス感染は除外されたかも知れないが、2人の病因は解明されていない。詳細な情報提供を希望する。]
地図 India showing the locations of Uttarakhan 

● 結核 南アフリカ: ヒトから動物への感染伝播
PRO/AH/EDR> Tuberculosis - South Africa (02): human to animal transmission  20080830.2722
 投稿者 南ア ・ ARC-Onderstepoort Veterinary Institute、Anita Michel、2008年8月29日
20080827.2680 に関して。
いくつかの情報を付け加えると、ヒトに密着して生きるならどこでも、ペットを含め家畜動物にヒトから結核が感染しうることはよく知られている。南アフリカで 処分されるブタのうち、リンパ節炎を有する個体から結核菌 _M. tuberculosis_  が分離される率は、とくに20世紀後半において、人類での感染率増加を反映するものであった。檻の中の野生動物にも、ヒトから感染を受ける可能性があり、 南アフリカのプレトリア Pretoria の動物園からも報告がある。1999年、springbok が結核感染と診断された。

● 東部ウマ脳炎 米国
PRO/AH/EDR> Eastern equine encephalitis, equine ­ USA (06): (NC North Calorina), emu 20080831.2724
 情報源 My Daily Record.com、2008年8月30日
Harnett County 保健当局は、郡東部においてこの 3週間に3匹の動物がヒトに感染する可能性のある疾患により死亡したことから、住民らに対して自身とウマの,蚊族に対する自衛を呼びかけている。2頭のウマと 1頭のエミューが死亡し、血液検査により同疾患によるものと判明した。Dunn と Coats の近郊で発生したこの3例の死亡原因は、元々鳥類がもつ東部馬脳炎であると診断された。
地図 Harnett County

● 原因不明の死亡、シカ科 米国
PRO/AH> Undiagnosed deaths, cervids - USA: (MI) 20080830.2712
Clinton River 沿いのシカの大量死、明らかな疾患の発生なし
 情報源 FREEP.com 、2008年8月29日
ミシガン Michigan 州 Rochester の Bloomer Park を中心とした、6マイルにわたる the Clinton River 沿いで、カヤックやカヌーから発見されたおよそ 20頭の死亡したシカにおいて、慢性消耗性疾患その他の野生動物の病気は見つかっていない。