2009年5月6日

インフルエンザ A(H1N1) (13)
鳥インフルエンザ、ヒト (85) エジプト、ベトナム WHO
チクングニア インド、疑い

● クリミアコンゴ出血熱-ロシア
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Russia (02): (ST)
Archive Number: 20090506.1696
 情報源:BaltInfo (Baltic information agency) [in Russian]、2009年5月4日。
the Neftecumskiy region of Stavrapolskiy Krai において初めてとなる Crimean-Congo hemorrhagic fever(クリミアコンゴ出血熱)の患者が報告されている。全部で 21人が診断のため入院中である。Rospotrebnadzor [Health Protection] administration 当局によると、同地方でダニ刺咬を受けたヒトの数は先週 1.5倍に増加した。小児 266人を含め 745人がダニ刺咬の結果受診した。... 昨年 [2008年]、the Rostov, Volgogradskiy and Astrakhan Oblasts and in the Stavropolskiy and Krasnoyarsk Krais を中心とする South Federal Okrug の多くの地域と Dagestan, Ingushetia and Chechnya でクリミアコンゴ出血熱が報告された。250人以上が重症化し、過去10年間に 20人が死亡している。
地図 the distribution of Crimean-Congo hemorrhagic fever(the WHO website)

● インフルエンザ A(H1N1)-世界各国 (13)
PRO/AH> Influenza A (H1N1) - worldwide (13)
Archive Number: 20090506.1695
[1] 中国のブタで感染循環する H1亜型豚インフルエンザウイルスについて
Diversity of H1 viruses in pigs in China 
Part 1. Detection and differentiation of H1 subtype swine influenza viruses plus the diversity of the influenza viruses circulating in pigs in China
 投稿者:中・China Animal Health and Epidemiology Center センター長・ Chen Jiming PhD、2009年5月6日。
背景:
GenBank の BLAST 研究から得られた証拠と系統発生解析から、ヒトの間で感染拡大が見られている現在の A(H1N1) ウイルスの 8つの遺伝子分節はすべて、H1N1 subtype swine influenza viruses 由来と考えられ (1, 2, 3)、カナダでブタが感染し発病したウイルスであったことが確認されている (3)。このことから、北米のどこかのブタの集団に由来し、場所は特定できないものの、今も北米の一部のブタに感染が続いている可能性がある。よって、ブタの間に感染循環する H1亜型豚インフルエンザウイルスを検出し同定することは、リスク解析の上でもパンデミック対策の上でも非常に重要である。しかし、ブタにおける H1亜型インフルエンザウイルスの多様性は複雑であるため、ブタのウイルスを検出し同定するための単一の病理学的手法をデザインすることは困難である。現在、ブタのウイルスを検出・同定する方法に関する報告はなく、この方面について、ProMED-mail の rapid communication を通じて先進的情報を共有し、ブタの病理学的サーベイランスに資することは重要である。
ウイルスの遺伝学的多様性
Genetic diversity of H1 subtype influenza virus 
世界のブタの間で感染循環のある、H1亜型豚インフルエンザウイルスには、大きく 3つのclusters があり、新たに提唱されているインフルエンザウイルス命名法(universal numeral nomenclature system for all influenza viruses)によって、h1.3.2, h1.1.3 and h1.2.5 と呼ばれている。これらはそれぞれ classical, avian-like and human-like swine influenza viruses に当たる。cluster h1.1.3 は、この中のほとんど全てのウイルスが欧州とアジアで分離されていることから the Eurasian lineage と呼ばれることもある。1930-40年代に世界中で感染循環した豚インフルエンザウイルスに相当する、もう1つの cluster の h1.3.1 はほとんどが姿を消した。 現在ヒトでの感染が拡大しつつある A(H1N1) swine influenza virus [以下、新型 A(H1N1) ウイルスと略す] は、ウイルスの HA遺伝子配列の面から the cluster of h1.3.2 (classical) で、1999年以降北米で分離されているウイルス株の一部と、高い相同性を有している (1, 3)。 N1 subtype swine influenza viruses については、ブタの間で感染循環するウイルスには大きく2種類の clusters があり、前述の命名法により n1.3.2 and n1.1.7 と呼ばれている。それぞれ classical と avian-like (Eurasian) swine influenza viruses に当たる (3)。HA geneと異なり "新型 A(H1N1) ウイルス [のNA遺伝子]" は n1.1.7 (avian-like) に属し、過去に分離されている Eurasian strains と少なくとも 2種類の North American strains と高い相同性を有している。 "新型 A(H1N1)ウイルス"の HA segment を含めた 6つの遺伝子分節は、間違いなくh1.3.2 (classical) swine influenza viruses 由来であり、残りの 2分節 (NA and M) は、 h1.1.3 (avian-like) swine influenza viruses に由来すると考えられている。これらのウイルス以外にも、しばしばヒトや鳥インフルエンザウイルスがブタから分離されている。 ブタにおける H1豚インフルエンザウイルスの同定と鑑別 Detection and differentiation of H1 swine influenza viruses circulating in pigs 中国の5人の動物インフルエンザの専門家らとともに、the detection and differentiation of swine influenza virusesに関し、以下の3つの点で意見の一致を見た。 
第1点目は a common upper primer と 2 differentiation down primers (1つは全ての H1 swine influenza viruses、もう1つは the current A(H1N1) swine influenza virus spreading in humans に対する) を用いた single RT-PCR system によって、H1亜型に属する豚インフルエンザウイルスの全 clasters の HA遺伝子と、"新型 A(H1N1) ウイルス"の HA 遺伝子を同定できることである。 これらの sequences を以下に示す 
H1S-3: 5'-TAAGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAA-3' H1R-1143: 5'-TGGTGATAACC(G/A)TACCATCCATCT-3' H1Rm-610: 5'-CACGAGGACTTCTTTCCCTTTATCAT-3' 
The putative positive amplicons of the pair(H1S-3 and H1R-1143)は全長 1143bpで、抗原性・病原性・宿主親和性の解析に重要な HA1ドメインをカバーする。The putative positive amplicons of the pair (H1S-3 and H1m-610) は全長 610bpである。 
第2点目は、ウイルスの NA 遺伝子同定が "新型 A(H1N1) ウイルス" との相同性の判定に重要である点に専門家らが合意していることで、前述の方法でウイルスの HA 遺伝子が同定され、疑わしい検体が得られれば以下のプライマー使ってウイルスの増幅と NA 遺伝子の解析が可能である。
NAS-5A 5'-GCAAAAGCAGGAGTTTAAAATGAA-3' NAR-1108A 5'-GTTCTCCCTATCCAAACACCAT-3' 
第3点目は、中国のブタから分離されたいずれの H1亜型豚インフルエンザウイルスの HA 遺伝子と NA 遺伝子の塩基配列も、分子疫学的解析およびリスク評価の上で重要であることを専門家らは認めている点である。従って、疑わしい検体中の "新型 A(H1N1) ウイルス" 相同 NA 遺伝子同定のために、ペアのプライマーをデザインすることはあまり意味がない。BLAST [searches] in GenBank からの前述のプライマーや、いくつかの primer-design software tools の質や特異性を評価することは難しいことではない。要望があれば関連する評価材料も利用できる。これらのプライマーをもとにしたキットもまもなく市販されるだろう。現在、subtype H1 swine の同定と鑑別のための別のキットが認可されており、ウイルスの HA 遺伝子同定に以下のプライマーが用いられている 
H1-762U: 5'-TATCAACAATAAGAA-3' H1-762L: 5'-CAAACATCCAGAAGA-3' H1-292U: 5'-CATTAATGATAAAGG-3' H1-292 L: 5'-TCCAGCATTTCTTTC-3' 
The pair H1-762U and H1-762L は、全 H1 subtype swine influenza viruses (the amplicon is 762 bp in length) の検出目的にデザインされ、the pair H1-292U and H1-292L は "新型 A(H1N1) ウイルス" (the amplicon is 292 bp in length) の検出を目的にデザインされた。このキットには、ウイルスの conserved matrix gene を検出するためのペアのスクリーニングプライマーも含まれていて、検体中に何らかの亜型のウイルスが含まれているかどうかのチェックもできるようになっている。... さらに、キットの説明続く(原文参照願います) 
中国のブタのインフルエンザウイルスの多様性 
The diversity of the influenza viruses circulating in pigs in China 
国内外の人々は、中国国内のブタで感染循環するインフルエンザウイルスの多様性に興味を持っている。過去10年間の多くの関連文献(ほとんどが中国語)によると、中国で感染循環するインフルエンザウイルスのほとんどは、H1N1 (cluster: h1.3.2 or classical) と H3N2 (cluster: h3.1.5) swine influenza viruses であった。cluster h1.1.3 (avian-like) がブタから検出されたのは、中国では 2007年の上海と浙江省だけである。一方、H9N2 subtype avian influenza viruses がブタから検出されたことが、少なくとも 2003年以後に中国の複数の研究グループから報告されている。H5N1 亜型鳥インフルエンザウイルスがブタから検出されたのは中国では 2005年に1度だけで、中国政府が家禽への H5亜型ワクチン接種を義務づけた後は検出されていない。ヒトの H3N2 および H1N1 亜型インフルエンザウイルスも、少数の中国のブタから検出されている。その上、異なる起源を持つこれらのインフルエンザウイルスの遺伝子部分の再集合も、中国のブタで比較的頻繁に起きていることが示唆されており、re-assortment(再集合) subtype (H1N2) 豚インフルエンザウイルスも、2004年以降に複数のグループが分離している。"新型 A(H1N1) ウイルス" は、非常に限られた地域に莫大な人口を抱える中国にとって、非常に危険なウイルスである。もし中国で蔓延すれば、感染流行の有病率と致死率は、メキシコと同程度の高率となる可能性がある。両国とも途上国であり、感染の結果、中国で多数の若者が死亡する可能性がある。このため、中国にとって、国内への感染拡大防止のため International Health Regulations and the Code of the World Organisation for Animal Health (OIE) に従ったいくつも厳戒態勢を取ることには合理性がある。 
参考文献 ... 
[2] Diversity of H1 viruses in pigs in China 
Part 2. Detection and differentiation of H1 swine influenza 
検査法の詳細など
[3] 細菌感染の果たす役割 Role of bacterial infection 
 投稿者:米・Univ of MD School of Medicine Baltimore,Maria Salvato, PhD、2009年5月6日。 
これまでの ProMED-mail の "swine flu" に関する記事は、"viro-centric(ウイルス中心的)"、すなわち全ての事象をインフルエンザのせいにし過ぎて、co-infections 共感染に関する推察を十分に行っていないと感じられる。3つの点で、the "flu" fatalities (インフルエンザによるとされる死者)が、細菌感染の重複による死亡であった可能性が高い。 
1点目は、インフルエンザ様症状のある患者の Baylor (Ramilio et al, Blood, 2007) profiling からの研究で、死者の 30%以上に細菌とインフルエンザの共感染が存在したことが示されている。診断の不備も考慮すれば、共感染は 30%以上、90%に達する可能性もある。 
2点目に、メキシコの初発患者は重症化した 1名の幼い男児であったが、医師は(通常細菌感染の治療に用いられる)抗生物質を処方し、この男児は生存している。抗生物質開始後 2日目に回復したことから、インフルエンザ感染に加え、細菌感染が合ったことが示唆される。 
3点目として、メキシコで初期に発生した死者の 1人は 40歳代の糖尿病患者であった点である。肺生検ではインフルエンザが認められた。この女性の周囲にいた数人に呼吸器疾患があったが、インフルエンザ陽性者は 1人もいなかった。これは、この女性もインフルエンザと細菌の双方に感染したため、死につながったことを意味する。インフルエンザ感染により呼吸器の細菌感染が起きやすく、その逆も同様であることは、よく知られている。インフルエンザ関連死亡に対応するため、医師はもっと抗生物質を処方すべきである。しかし、抗生物質は高価であり、過剰使用は危険であるため、ウイルスと細菌感染の鑑別診断が必要である。すでに FDA 認可の妊娠検査薬タイプの診断キット [produced by Rapid Pathogen Screening (RPS), Inc.] があり、結膜炎が細菌性かウイルス性かを患者の涙で診断することができる (ウイルスあるいは細菌感染で起きる早期の個体反応物質である MxA と C-reactive proteins に対する抗体を用いる)。分子生物学で、感染循環中の H3N2 ウイルスでも、H1N1 ウイルス同様の変化が認められていることは、私には当然に見える。現在の診断法は貧弱で、H1N1 が H3N2 や他のウイルス、細菌、共感染のいずれにも診断される可能性がある点が最も責められるべき点である。host-response diagnostics の開発により多くの資金を費やすべきであり、急性ウイルス感染症と急性細菌感染症を鑑別することが可能な host proteins は、約100種類あることが分かっている。血漿中のこれらのタンパクの出現は、軽症例と重症例を鑑別することを可能にする、1番早い反応物質である。 
[Mod.DK-抗生物質の使用は細菌感染が疑われる場合に限って使用されるべきである。適切な抗生物質の使用、例えば肺炎球菌ではなく、ブドウ球菌性肺炎が疑われるのであれば、抗ブドウ球菌薬を用いることも重要である。例えば 1957年のパンデミック時には、二次性細菌性肺炎の原因として,黄色ブドウ球菌は肺炎球菌に次ぐ 2番目であったが、その他の多くの病原体もまた二次性細菌性肺炎の原因となった。ここで議論されてきた論点の1つは、パンデミックが発生したときには抗ウイルス薬だけでなく、適切な抗生物質使用も必要であることにある。米国内の感染症専門家の多くが、そのような供給体制にないことと、不適切な抗生物質使用の先には、新たな細菌の薬剤耐性への対処が待ち受けていることを懸念している]

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1): animal health (07), swine, Canada, OIE
Archive Number: 20090506.1691
 情報源: OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2009; 22(19) 、2009年5月5日。 
報告理由:emerging disease 
感染開始時期 2009年4月21日 
原因ウイルス novel A/H1N1 2009 influenza virus Serotype: other Zoonotic impact: possible transmission of the novel A/H1N1 influenza virus from humans to pigs(ヒトからブタへの新型ウイルス感染の可能性) 
有病率 25% 
致死率 0% 
新たな感染流行 
発生地 Alberta (Clearwater county) 
感染種 farrow(分娩後?)/finishing operation: 220 sows(メス) and their piglets(2 barns豚舎) と 1800人の飼育者(4 barns)。
飼育者らの中に、呼吸器の臨床症状が見られていた。弱ったブタで通常よりわずかに死亡数が増加したが、A/H1N1 influenza virus infectionの影響は不明である。2020頭中450頭。 [Mod.AS-the proverbial zoonotic bridge(例えにある人獣共通感染症の架け橋)は2車線のハイウェーであることを如実に表した、間違いなく非常に興味深い報告である。ヒトと動物は、個々に示されたような、多様で予想もしないシナリオの中で、病気と向き合い移し合っている。今回の事例では、特に、ウイルスが拡散し、世界中のどこであっても、養豚場から体調の悪いヒトを遠ざけることが重要であることが十分に認識されていない流行の早期にも、患者とブタが接触してしまうような状況でのサーベイランスが必要であることを再認識させた。メキシコ Mexico、テキサス Texas、カリフォルニア California などの、ヒトでの感染者が出始めていた場所の近くでは、全ての呼吸器疾患を注意深く評価し、新型(new, novel)インフルエンザ A(H1N1) を鑑別診断に加える必要がある。ブタの集団でのサーベイランスを広範囲に実施する努力は、今回の感染流行において、現時点の絶対的な優先事項である。すでに呼吸器症状から回復しており、ブタの処分を行わない決定は十分正しいと思われるが、状況の解明が待たれる。]

● 鳥インフルエンザ、ヒト (85)-エジプト、ベトナム WHO 
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (85): Egypt, Viet Nam, WHO
Archive Number: 20090506.1694
[1] エジプト Egypt Avian influenza situation in Egypt - WHO Update 14 
 情報源: World Health Organization (WHO), EPR, Disease Outbreak News 、2009年5月6日。 
エジプト保健相は、新たに確認されたヒトでの鳥インフルエンザ感染を報告した。患者は  Gharbia Governorate・Tanta 地区の 34才の女性である。2009年4月21日に発症し、21日に Tanata Fever Hospital に入院し、oseltamivir の治療が開始された。女性の状態は安定している。H5N1鳥インフルエンザの感染は 23日にエジプト中央公衆衛生研究所で確認され、その後 the U.S. Naval Medical Research Unit No. 3 (NAMRU-3) で追認された。感染源の調査により、発病前に病死した家禽との濃厚な接触が明らかにされている。エジプトでは今日までに 68人の患者が確認され、このうち 23人が死亡した。 
[2] ベトナム Viet Nam Avian influenza situation in Viet Nam - WHO Update 6 
 情報源:World Health Organization (WHO), EPR, Disease Outbreak News 、2009年5月6日。 
保健相は、新たなヒトでの H5N1 鳥インフルエンザウイルス感染患者が確認されたことを報告した。この患者の感染は the National Institute of Hygiene and Epidemiology (NIHE 国立衛生疫学研究所) において確認された。患者は Quan Hoa District(Thanh Hoa Province)出身の 23才の女性である。2009年4月16日に発病し、同21日に入院となったが、同22日に死亡した。感染源の調査で,自宅周囲でインフルエンザ A(H5N1)により死亡した家禽が原因と見られている。ベトナムではこれまでに 11人の患者が確認されており、うち56人が死亡した。 
参考項目 Viet Nam 20090426.1571 Egypt 20090424.1545

● チクングニア (10)-インド、疑い
PRO/EDR> Chikungunya (10): India (KA) susp.
Archive Number: 20090506.1692
 情報源: Deccan Herald 、2009年5月4日。 
DJ Halli area において、チクングニア Chikungunya 感染が疑われる患者の数が増加している。3日、およそ 100人の新患が the BBMP [Greater Bangalore Municipal Body] health camps で治療中であり、the DJ Halli Hospital でも新たに 28人の患者が報告された。paracetamol[acetaminophen] による治療を求めて 281人の発熱患者が受診した。.. 当局者らによる清掃作業と噴霧消毒、採血による確定診断待ちの状態など 
[Mod.TY-1年以上前から Karnataka 州ではチクングニアウイルス感染の循環が続いている。人口が集中する中心部 Bangalore 市に到達しないことを祈るばかりである] 
地図 The DJ Halli は Bangalore (Bengaluru) 市中心部から北に 5kmの場所に位置する