2009年6月2日-3日

プリオン病 英国、扁桃

● プリオン病 英国、フランス、米国
PRO/AH/EDR> Prion disease update 2009 (05)
Archive Number: 20090602.2054
[1] UK: National CJD Surveillance Unit - monthly statistics as of 1 Jun 2009 
 情報源: UK National CJD Surveillance Unit, monthly statistics 、2009年6月1日。 
エジンバラ Edinburgh の CJD サーベイランス機関に照会された vCJD が疑われる患者の数は前月の報告から変わっていない
[2] France: Institut de Veille Sanitaire - monthly statistics as of 2 Jun 2009 
 情報源: IVS - Maladie de Creutzfeldt-Jakob et maladies apparentees[in French,]、2009年6月2日。 
2009年、vCJDが確定診断された症例はない。
[3] US National Prion Disease Center - not updated, as of 31 Dec 2008 
 情報源: US National Prion Disease Pathology Surveillance Center、2009年5月31日
2009年になっての変更はない 
[4] UK: evaluation of tonsil survey Latest results of HPA study on vCJD-related abnormal prion proteins in extracted tonsils 
 情報源:Health Protection Agency (HPA), Health Protection Report 3(20) 、2009年5月22日 
2004 年、the Health Protection Agency は tonsils 扁桃から抽出される vCJD 関連のプリオンたんぱくの検索による、人口の中の無症候性 vCJD 蔓延に関する調査 the National Anonymous Tissue Archive (NATA) を立ち上げた。
扁桃は、vCJD に感染すると体内でプリオンが蓄積しやすい場所(ほかには脾臓、虫垂、リンパ節、脊髄、脳)の1つである。 人口の中での vCJD の蔓延を知ることは公衆衛生上のリスクのレベルの評価と感染の影響の緩和、発病の可能性のある個人への医療介入計画にとって重要である。the study (1,2) による新たな研究結果の報告により、人口の中で同定されていない無症候性 vCJD 症例は事前に予想されたよりも少ないことが示されている。この調査は、最終的に 10万人分の廃棄される扁桃検体を集めて分析することになっているが、これまでに分析された 63000検体の中に異常なプリオンたんぱくは確認されていない。archive(検体の蓄積)完了時点で、10万検体中に異常プリオンたんぱくを含むものは最大でも 50検体にとどまる見込みである。 
[5] UK: tonsil survey interim report Research: Prevalence of disease related prion protein in anonymous tonsil specimens in Britain: cross sectional opportunistic survey 
 情報源: British Medical Journal (BMJ 2009; 338: b1442) 、2009年5月21日
 [4] の原著の要約
[6] vCJD in UK assessment Editorial: prevalence of variant CJD in the UK 
 情報源: British Medical Journal (BMJ 2009; 338: b435) 、2009年5月21日

● 手足口病 アジア
PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease - Asia (02)
Archive Number: 20090603.2059
 情報源:CDC Travelers Health, Outbreak Notice 、Released: May 29, 2009、2009年6月3日
2009年3月以来、中国、香港、シンガポール、台湾などアジアの各地で、hand, foot, and mouth disease (HFMD 手足口病) の患者数が増加している。HFMD は乳児や小児に多く見られる疾患であり、最近報告されている患者の多くは小児である。この疾患は非常に感染力が強く、感染した患者の咳やくしゃみなどの飛沫、唾液、水疱内容、便などとの接触により広がる。 
○中国 4月10日、中国政府当局は、農村部を中心 に54713人のHFMD患者を報告している。中央部の河南省 Henan, 江蘇省 Jiangsu, 広西荘族自治区 Guangxi, 安徽省 Anhui, 広東省 Guangdong, 河北省 Hebei, 湖南省 Hunan, 浙江省 Zhejiang と東部・山東省で感染流行が発生している。3月30日、中国 CDC は 2009年に 19人が HFMD により死亡したことを確認し ている。 
○香港 S.A.R 3月27日、香港 CDC は 1例の HFMD患者を確認した。 この患児が通う保育園の児童 9人にも HFMD 感染が発生した。香港で 2009年に HFMD が報告されたのは 7件目である。 
○シンガポール 4月11日、保健省には 5471人の HFMD 患者が報告されている。例年シンガポールは 3月から 5月にかけて HFMDのピークを迎える。 
○台湾 3月31日、台湾 CDC は重症合併症を伴った HFMD の患者 9例を確認した。いずれも 5歳以下の小児であった。北、中、南部からの患者である。 
○ 旅行者へのアドバイス
HFMD には予防ワクチンはない。発熱などの対症療法以外の特異的治療法もない。旅行中に体調を崩し発熱があった場合に、一部の国々では,米国では有害作用を理由に禁止されている薬剤 pyrazolone による治療が行われることがあることに注意しなければならない。この薬剤は over-the-counter OTC 薬としても販売されている。CDC はこの種の薬剤を発熱の治療に用いることを勧めない。一般に、一部の国々では購入した薬剤が偽薬であるリスクが あるため、CDC は旅行中に必要となる可能性のある薬剤持参する事を推奨している。これらの国へは解熱剤を持っていくことも考慮した方がよい。 HFMD への感染を避けるためには、個人的な衛生手順を遵守する方法がある。特に HFMD の発生が報告された国々を旅行する際は以下の健康を守るためのヒントに従うのがよい 
−こまめに石けんと水で手洗いする 特に食事の前、咳やくしゃみをした後、トイレの後。石けんや水がない場合は、アルコール 60%以上のアルコールハンドジェルを使用する。パック入りアルコールジェルの携行も検討する 
−フォーク、スプーン、カップなどの食器を共有しない 
大人はこどもの旅行者に気をつける。乳幼児と青少年は HFMD に感染しやすい。HFMD は EV71 [enterovirus 71] を含む一部のエンテロウイルスによる疾患で、世界中で見られる。EV71 による HFMD 感染流行も多く、近年ではアジア太平洋地域全体の国々から報告されている。EV71 は感染者の鼻やのどからの分泌物・唾液・水疱内容液・便を通じて、直接ヒト-ヒト感染する可能性がある。HFMD 患者によく見られる症状として発熱、口腔内の痛み、水疱を伴うことの多い紅斑である。EV71 による HFMD では時に脳浮腫(脳炎)などの重症の合併症が見られ る。患者のほとんどが 10歳以下の小児であるが、成人も感染する可能性がある。 

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト(3件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (100): Egypt, 78th case, WHO conf.
Archive Number: 20090603.2058
 情報源: WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR) Disease Outbreak News、2009年6月2日
Avian influenza situation in Egypt - WHO update 19 
エジプト保健省は 2009年6月1日、新たなヒトでの鳥インフルエンザ Avian influenza A(H5N1)感染者について報告した。この患者は Kafr el-Sheikh Governorate・the Kafrel-Sheikh District の 4才女児1名である。5月30日に発熱・咳・咽頭痛で発病した。同月31日に Kafr el-Sheikh Fever Hospital に入院した。oseltamivir を投与され状態は安定している。エジプトではこれまでに 78人の患者が確認されており 27人が死 亡している。 
[Mod.CP- 20090602.2055 で報告されたエジプトで 78例目の患者の WHO による公式確認である。The SAIDR (Strengthening Avian Influenza Detection & Response) website では、この患者のほか 2008年後半以後エジプトで確認されている 26人の患者がリストアップされている。The location of each case が map で示されている。患者は成人女性 4人、16才の少女 1人、6歳以下の小児 22人からなる]

PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (99): Egypt (KS) 78th case
Archive Number: 20090602.2055
 情報源:RIA (Russian News & Information Agency) Novosti 、2009年6月2日
エジプトで小児1名が鳥インフルエンザ Avian influenza に感染したと診断され、ほか 39人が感染の疑いがあるため入院中であると 2日保健省当局者が発表した。この北部 Kafr el-Sheikh 州の 4才の女児は,現在容態は安定しており抗ウイルス薬の治療を受けている。エジプトで初めて鳥インフルエンザ感染患者が発生したのは 2006年で、その後国内で H5N1 ウイルスに感染したことが確認されたのは 78人となり 27人が死亡した。WHO によると 2003年に初めて鳥インフルエンザが確認されて以来世界で 262人が死亡している。 
地図 Kafr El-Sheikh is located at no. 13 in the map of the governorates of Egypt
 
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (98): Egypt, 77th case, WHO conf.
Archive Number: 20090602.2046
 情報源:WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR) Disease Outbreak News、2009年6月1日
Avian influenza situation in Egypt - WHO update 18 
エジプト保健省は新たなヒトでの鳥インフルエンザ感染例を報告した。患者は Dakahlia Governorate(県)Dekernes District の、生後 14ヶ月の女児 1名である。2009年5月25日に発症した。同29日に Mansoura Chest Hospital に入院となり oseltamivir の治療を受け状態は安定している。感染源調査により、病死した家禽との濃厚な接触が確認されている。この患者の感染は the Egyptian Central Public Health Laboratories で確認された。エジプトではこれまでに 77人の患者が確認されており 27人が死亡した。 
[Mod.CP- 20090531.2024 で報告された 77例目の感染者の WHO による公式確認である。] 
[Mod.JW- Tamiflu (oseltamivir) treatment が開始されたのは発病の 4日後に入院したあとからだが、この薬剤は最初(発症)の48時間以内に使用された場合に限り有効だと考えられている。女児の状態が安定しているのが、薬剤による効果なのかそれともこの女児の場合は自然経過であったのかは確かめることはできない] 
地図 Daqahliya governorate can be located at no. 7 in the map of the governorates of Egypt

● インフルエンザ A(H1N1) 
PRO/AH/EDR> Influenza A (H5N1) - worldwide (55)
Archive Number: 20090603.2056
[1] Clinical outreach 
 情報源: Clinician Outreach and Communication Activity, Centers for Disease Control and Prevention (CDC) 、2009年6月1日
○ 新型H1N1インフルエンザの究明された情報は、毎日 CDC のウェブサイトで更新されている  
○ 医療従事者向け資料  
○ 最近の研究成果: 2009 H1N1 Influenza Virus - USDA - 2 May 2009:米国のブタの血清検体の調査で、限定的な the new S/O H1N1 influenza virus に対する交差反応が見られた  
○ 臨床情報: The Electronic Preventive Services Selector (ePSS) - AHRQ (26 May 2009);プライマリケアの現場でのスクリーニング等を目的とする、The ePSS application(ダウンロード可能なソフト)について 
[2] Cruise ships 
 情報源: ABC News、2009年6月2日
ブタインフルエンザが懸念される中、ニューカレドニアから帰港したオーストラリアのクルーズ船 The Dawn Princess cruise liner で乗客の 5人がインフルエンザ様症状を発症したことから寄港を拒否されている。体調を崩した乗客らからスワブ検体が採取され、シドニー  Sydney で検査が行われている。New South Wales Health 当局の医師は、この船はいずれの豚インフルエンザ感染発生国も経由していないが、注意が必要と話している。

● リフトバレー熱 サウジアラビア(→否定,2件) 
PRO/AH/EDR> Rift Valley fever - Saudi Arabia (02): NOT
Archive Number: 20090603.2061
 投稿者:LB、2009年6月3日
20090602.2053 について 
元の記事となった Saudi Wave の記事が Middle East Online によって間違って英訳されたもので、実際にはリフトバレー熱ではなくデング熱による死亡である。
English and French versions of the article(Rift Valley fever ではなく、dengue fever と記載されている)
 
PRO/AH/EDR> Rift Valley fever - Saudi Arabia: Alert
Archive Number: 20090602.2053
 情報源: Middle East online 、2009年5月31日
[註!: 20090603.2061 において,リフトバレー熱ではなくデング熱であったと訂正]
リフトバレー熱 Rift Valley fever は主に動物に感染し死亡させるが、ヒトにも感染することのある蚊族により伝播されるウイルスであり,新聞各紙が新たな感染流行の発生に対する注意を呼びかける報道を行っている。2000年、サウジアラビアでは 863人が the RVF virus に感染し、このうち 120人が死亡した。イエメンでは 1000人以上の感染(うち 121人死亡)が発生している。ジェッダ Jeddah およびメッカ Mecca で RVF の感染例が発生したことから、サウジアラビア国内で不安が広がっている。政府衛生当局の話として、5月以降 Jeddah で 33人、Mecca で 103人の感染が公表されていると報じられた。4月12日、20才と 22才のサウジアラビア人の男女各1名がウイルス感染により死亡したことが報道された。翌日にはメッカの病院に 100人以上の RVF 患者が入院中であると、別の新聞が報じた。患者のほとんどは直ちに治療を受けすでに退院している。5月28日 Anaween はウェブサイト上で、米国の会社が化学物質によらない生物学的な方法で RVF ウイルス [ベクターのこ と?] を排除するために招請されたことを明らかにした。 
[Mod.CP- Rift Valley Fever (RVF リフトバレー熱) はウイルス性人獣共通感染症であり、主に動物に感染するがヒトに感染することもある。動物でもヒトでも重症化し、高率に死亡することがある。RVF に感染した家畜が死亡したり流産したりすることによる経済的損失も大きい。ヒトでの RVF 感染流行発生に先行して、家畜で大きな感染流行がおきるのが通例である。従ってサウジアラビアからの現在の報告は、注意して取り扱う必要がある。WHOのファクトシートによると、ヒトでの感染はほとんどが感染した動物の血液や臓器との直接・間接の接触の結果おこる。RVF ウイルスは slaughtering(と畜) or butchering(食肉処理)、出産介助、獣医学的処置、死体や胎児の取り扱いなどの際に動物に触れることで成立している。牧畜、農業、屠殺場、獣医師などの特定の職種で感染リスクが高くなる。汚染されたナイフで傷つけられたり、キズに触れたりしてウイルスが注入された場合や、と畜の際に発生するエアロゾルを吸い込んだ場合にも感染がおきる。また未殺菌または加熱が不十分の感染動物のミルクの摂取により RVF に感染する可能性が,いくつかの証拠で示されている。さらに,主に the _Aedes_ spp(ヤブカ属)の感染蚊族の刺咬や、hematophagous (blood-feeding) flies 吸血するハエにより、ヒトに感染することもある。これまでに RVF のヒト-ヒト感染の報告はなく、標準予防策を行っている医療従事者への RVF 感染も報告されていない。都市部で RVF 感染流行が発生した形跡もない] 
地図 Saudi Arabia 

● ウシ結核 米国
PRO/AH/EDR> Bovine tuberculosis - USA (03): (NE) cattle, elk
Archive Number: 20090603.2060
 情報源:Omaha World-Herald 、2009年6月1日
Rock County [Nebraska ネブラスカ州] の肉用牛の群れで、獣医師らによりウシ結核 Bovine tuberculosis が確認された。... 同郡は、2009年春に捕獲されたエルクの結核感染が 確認された場所から、西におよそ 75km離れた北中部ネブラスカ州内の地域である。Rock County の症例と Knox County の症例は、結核菌株が異なっているため関連性はないと当局者は説明した。

● 鳥インフルエンザ モンゴル,インド(2件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza (42): Mongolia (AR) wild birds, OIE
Archive Number: 20090603.2057
 情報源:OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2009; 22(22) 、2009年5月28日
感染開始時期 2009年5月22日 
前回流行時期 2006年6月5日 
原因ウイルス highly pathogenic avian influenza virus 
Serotype: H5 
新たな感染流行
発生地 Doitiin tsagaan Lake, Ugii-nuur soum, Arkhangai 
種: wild species 死亡9羽: a migratory swan

PRO/AH/EDR> Avian influenza (41): India (WB)
Archive Number: 20090602.2045
 情報源:Business Standard 、2009年6月1日
西ベンガル West Bengal 州から高病原性鳥インフルエンザ Avian influenza 流行発生の新たな報告があった。5月20日,バングラデシュ Bangladesh との国境からそう遠くない、アッサム Assam 州農村部 Uttar Dinajpur で約 20羽の家禽の死亡が報告された。同25日に最も毒性の強い H5N1 鳥インフルエンザにより家禽が死亡したことが確認された。the High Security Animal Disease Laboratory(Bhopal ボパール)と、プネ Pune にある the National Institute of Virology での検査で陽性となった。これ以前の 5月28日に畜産当局は OIE に対して鳥インフルエンザ感染流行を報告している。ワクチンや感染し た鳥類への治療は行われていない。感染発生個所の適切な消毒は行われることになっている。この最新の鳥インフルエンザ発生は、およそ 6ヶ月前に Hajo, Rajabazar, and Kamrup areas(of Assam) で発生した流行以来のことである。このときおよそ 325羽の鳥類が H5N1感染により死亡した。さらに周囲 3kmの 52000羽以上のトリの処分が行われた。インドで初めての鳥インフルエンザ感染流行は 2006年2月に Navapur and Uchchal(the Maharashtra and Madhya Pradesh border 近郊)で発生した。これ以降国内各地で複数の感染流行が発生しており、家禽産業に経済的損失を与えている。2006-2008年の間の感染封じ込めに成功した後、インド政府は 2008年11月4日に正式な鳥インフルエンザ排除宣言を行った。しかし、その地位は長くは続かず、わずか 3週間後にアッサム州で再興した。 
[Mod.AS− この以前に West Bengal 州で発生した Uttar Dinajpur における HPAI H5N1 outbreak は 17 Mar 2009 に始まったと OIE に報告されている。OIEへのIndia's follow-up report(dated 28 May 2009) には地図も入っている。その中に以下のような疫学コメントが書かれている: "疫学的調査が続けられている。感染流行発生地点から半径 3km圏内で全ての家禽の処分作業が行われ、所有者らに対する補償も行った。強化サーベイランスキャンペーンが 10km 圏内ゾーンで開始された; 家禽市場の閉鎖、家禽の売買と移動の禁止、飼育場の消毒作業など。この作業の終了後 protocol に従って飼育再開 Restocking が許可される”]