2009年6月4日-5日

インフルエンザ A(H1N1) ブラジル・米国,ブタの感染実験
チクングニア ベルギー,タイから

● インフルエンザ A(H1N1) (4件)
PRO/AH/EDR, Influenza A (H1N1) - worldwide (57): Brazil, USA
Archive Number: 20090605.2090
[1] ブラジル Brazil - Tamiflu
 情報源: Veja magazine 30 Apr 2009 [in Portuguese]、2009年6月5日
政府当局は 4月末までに Tamiflu [oseltamivir phosphate] の全製品を市場から引き上げた。これまで処方箋なしに薬局で購入できた市民による self-medication (自己判断による治療) を防止することがねらいである。タミフルが必要な医師は,成人 6250人分(1日2カプセルで5日間服用の計10カプセル)と同人数の小児用量分相当を政府備蓄から調達しなければならない。政府当局は 2007年に購入(使用期限 2009年)の 900万人の治療 courses 相当量のタミフル stock of materia prima(原料?)を保有している。一旦 individual doses (使用単位) にしてしまうと、有効期限は 3週間になってしまう。このため 4月末に 80万人の治療量を追加で購入する交渉を行っている。 Roche 社によると 2006年以降 85カ国で 2億2000万人分の治療用量の Tamiflu が購入されている。ブラジルでは Relenza (GSK) は販売されていないが、必要時の輸入は認可されている。 
[Mod.TY− どれほどの国で Tamiflu が処方箋なしで購入できるのか。需給のバランスや耐性株の上で懸念される] 
[2] 米国 - health care system 
 情報源: Bloomberg Press 、2009年6月4日
豚インフルエンザ感染流行が米国の医療システムを凌駕していることが報告された。政府当局と医師らの間のコミュニケーションが十分に調整されず、WHOによる6段階のパンデミック警戒スケールが現場を混乱させたと、4日に発表された調査機関の解析の中で述べられている。報告では、不安になった市民が救急室にあふれる一方で、不法移民や無保険者らの受診が遅れたことが明らかにされている。CDC によると米国では 1万1000人以上が H1N1インフルエンザウイルスに感染し 17人が死亡している。ほとんどの患者はウイルス感染により発熱と咳以外の症状を示さなかったにも関わらず、WHO はパン デミックが切迫している状況であることを意味する警戒レベルを 5とした。危機が訪れる前にシステムの脆弱性を検証することが大事であるとこの研究者らは報告している。H1N1は我々の危機に対する初期対応能力の実証テストとなっていると述べた NPOの管理者は、数年前に比べてずっと進歩しているものの,今回のアウトブレイクで政府当局の備えに深刻な問題点があることがあぶりだされたと指摘した。この報告では、公衆衛生のインフラ整備 (強化) のための 10の勧告が示されており、その中には州および各自治体の衛生当局の job cuts (雇用削減) の停止、緊急時の無保険の国民への医療提供、新規患者の増加に対応する医療施設への支援などが含まれている。
[3] USA - CDC's reporting H1N1 Flu (Swine Flu): Questions and Answers About CDC's Online Reporting 
 情報源: USA CDC、2009年6月3日(感染研関連サイト)

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (56): case counts
Archive Number: 20090605.2089
[1] WHO - global updates (06:00 GMT) 
[2] PAHO - Americas regional updates (23:00 hrs GMT) 
[3] News briefs: 5 Jun 2009

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1): animal health (12) swine trial inf.
Archive Number: 20090605.2088
 投稿者:英・VLA (Veterinary Laboratories Agency)、Dr Ian Brown、2009年6月5日
20090604.2067 に関して  
(個々のレベルでのばらつきが正常範囲内である集団における) ブタ個体間において症状に違いが見られており、ブタによく適応した他の SIV [swine influenza virus 豚インフルエンザウイルス] について行われた experimental studies で得られた結果と、全体的には非常に類似したものとなった。
field setting では intercurrent factors (介在因子) によってより重症化する可能性があるため、製造メーカーや獣医師らは field infections において様々な症状に遭遇することが予想される。The European Commission (DG Health and Consumers, Unit D1) 当局は 6日、ブリュッセル Brussels において 'brainstorming meeting on the novel Influenza A (H1N1) virus at the animal/human interface' の国際会議を開催する。

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1): animal health (11) swine trial inf.
Archive Number: 20090604.2067
 情報源:EC Standing Committee on the Food Chain and Animal Health(SCFCAH), Section: Animal Health & Animal Welfare. Background document for point 1 of the agenda, 3-4 Jun 2009、2009年6月4日
1. 研究の目的:ブタにおける、influenza A (H1N1)の dynamics 動向, clinical outcome 臨床的帰結, pathogenesis 病原性, host susceptibility 宿主感受性, および transmissibility 感染効率の調査 
2.研究デザイン(概要)
Group A: 11 pigsに対して、鼻腔からinfluenza A (H1N1)を直接接種 
Group B: Mock-inoculated(疑似接種) control pigs (n=2); non-inoculated(接種なし) control pig (n=1). 
Groups C-F: 8 non-infected pigs, 感染したブタとペアで接触感染伝播についてモニター 
3.手順(原文参照願います) 
4.暫定結果 [暫定的な結果である点を留意されたい]  
4a. Clinical signs、4b. Virus shedding、4c. Gross pathology、4d. Transmission に分けて説明(原文参照願います) 
5. Preliminary analyses: summary conclusions 
ブタは influenza A (H1N1) virus 感染に susceptible(感受性あり)で、感染実験において、臨床症状・ウイルス排泄・病理学上確認可能な疾患を誘発した。重要な点として、死亡認められず、感染動物から少なくとも 3サイクルのウイルス感染伝播が接触のあった naive なブタに認められた。このことから、ブタの集団に導入された場合、感受性のあるブタの中においてウイルスは感染を定着させる可能性が示唆された。 
[Mod.AS− 家畜のブタにおける、現在ヒトで流行中の the influenza A (H1N1) virus strain (also named "novel Mexican North American Californian swine-like influenza A (H1N1) virus of swine origin")の実験的感染試験により、このウイルスはブタにおいて軽症の豚インフルエンザウイルス株であることが示された。観察された臨床症状および肉眼的病理学的変化は、"Swine influenza" (also called "hog flu" and "pig flu") の軽症例のものと類似しており、豚インフルエンザは厳密には動物性疾患で、ブタに特異的なウイルス、すなわち swine influenza virus (SIV) による疾患である。SIV は養豚を行う全ての国々で発生している。より病原性の強いウイルス株が関与すると深刻な経済的影響をもたらせる結果 となる; 今回のヒトに適合した株は少なくとも実験的な状況下では違った(強毒性ではなかった)。感染のあるヒトによって導入されたカナダの養豚場(でのブタの感染)の場合も同じく軽症疾患であった。鳥インフルエンザと異なり、豚インフルエンザは OIE への届出義務のない疾患である。養豚業者および獣医師らは、ブタのインフルエンザを見守る責任がある。ウイルスの排泄期間が比較的短いことと、鼻咽頭経路に感染が限られていることは、the Joint FAO/WHO/OIE Statement of 7 May 2009 on influenza A (H1N1) and the safety of pork (20090507.1710) の内容に沿うものである。この中で,WHO が推奨する衛生手順を遵守して取り扱われたブタおよびブタ肉製品は感染源とならないとされている。どのような場合であっても、病気や病死したブタの肉を処理して摂食しないことが求められている]

● ダニ媒介性回帰熱 米国

PRO/AH/EDR> Tick-borne relapsing fever - USA: (CA)
Archive Number: 20090605.2083
 情報源:KSBY.com 、2009年5月28日
The San Luis Obispo County (CA) 公衆衛生当局は、北部 San Luis Obispo County の住民1人がダニ媒介性回帰熱 Tick-borne relapsing fever 患者と診断されたと発表した。まれではあるが、カリフォルニア California 州では報告義務のある疾患となっている。
以下は当局の発表内容;
1名の患者が tick-borne relapsing fever (TBRF ダニ媒介性回帰熱) と診断された。TBRF の届出義務のある州から毎年全米で 25例が報告される、比較的まれな疾患である。
この患者は North County の住民で、TBRF 患者は高度 457−2440m の地域で発見されるとする疫学的事実に一致していた。TBRF の患者は発熱、全身の痛み、 頭痛、悪寒、発汗などを特徴とする。 Relapsing fever(回帰熱)の病名は発熱と解熱を繰り返すことに由来する。患者の多くは自然に治癒するが、一部の患者で症状が遷延化する。
relapsing fever のサイクルは、各サイクルの発熱エピソード(2−9日間)が 4−14日周期で、最大 10サイクル繰り返される。
TBRF に関係するダニは,げっ歯類の巣穴やねぐら付近で発見されることが多く,夜間吸血性ダニである。このダニは ground や tree squirrels(地リスや木リス)あるいは chipmunks シマリスなどに付くことが多い。当局は住民に対して、ダニとダニによる病気に注意を払うよう呼びかけている。自宅周辺にげっ歯類やリスの巣を作らせないようにすることが予防対策である。
ダニの刺咬はあまり痛みを伴わないため気づかれにくいが、常に症状に注意し、解熱と発熱を繰り返す症状が見られたときは医師に相談する必要がある。 
[Mod.LL- Relapsing fever は the _Borrelia_ genus に属するスピロヘータ spirochete の1種が原因となる。発熱期間中の末梢血の染色 Wright's stain でただちに診断できる。他のスピロヘータと異なり、この病原体はすぐに the Wright stain に反応する。The relapses(繰り返される発熱)は、病原体の外タンパク抗原(the outer protein antigens)の変化によると考えられている。シラミ Louse 媒介性回帰熱は主にアフリカで見られるが、ダニ媒介性の同種の疾患より症状が軽い]  

● ペスト 米国
PRO/AH/EDR> Plague, fatal - USA: (NM) bubonic
Archive Number: 20090605.2080
 情報源:C-Health, Associated Press (AP) report 、2009年6月4日
ニューメキシコ New Mexico 州の 8才の少年1名が、腺ペスト Plague, bubonic 感染のため入院したが死亡し、その10才の姉も感染により入院している。2009年米国初のペスト感染患者となった。ニューメキシコ州当局者は 4日、この兄弟の感染経路を明らかにしなかったが、周囲への感染リスクの評価のため自宅の調査を行っている。
ペストは通常、感染したノミによってヒトに伝播されるが、感染したネズミ・ウサギ・ペットなどの動物との直接接触により感染することもある。当局は Santa Fe County 以外の情報は公開していない。死亡はこの数日間に発生した。地域で採取されたノミは CDC の検査のため送付された。CDC によると、米国では毎年平均 10−15例のペスト感染が発生している。現在の抗生物質により、良好な治療結果が得られている。 
[Mod.LL- はっきりと書かれていないが、この兄弟はともに1次感染者である: すなわち、ノミの刺咬による感染と考えられる。1年間に複数の野生動物 さらにはヒトのペスト感染例が発生することは異常だが、ペストはいつでも発生する可能性がある。2000年は 1月にニューメキシコ州のペスト感染者の報告があった(20000127.0138)が、その後 2004年は 5月、2005年も 5月、2006年は 2月、2007年は 4月、そして 2008年は 1月に、その年の初めての患者が報告されている]

● チクングニア インド,ベルギー

PRO/EDR> Chikungunya (19): Belgium ex Thailand, India (KA)
Archive Number: 20090604.2071
[1] インド India
 情報源: Daijiworld.com 、2009年6月3日
ウイルス性疾患で蚊族が伝播するチクングニア Chikungunya が州内 72か所の taluks に蔓延し 4190人以上のチクングニア感染が疑われている。6月1日現在、Bidar, Raichur, Koppal, Hassan, Dakshina Kannada and Udupi を除く全ての地区から感染疑い患者が報告されている。多い順に Uttara Kananda district (969) followed by Haveri (710) and Bangalore city (308) となっている。Bangalore の研究機関が現地で採取した 1189人の血液検体のうち、州内の 449人が検査陽性となった。このうち  Bangalore 市だけで 129人の感染が確認された。
地図 the location of Bangalore in Karnataka 
[2] ベルギー Belgium ex Thailand 
 投稿者: ベルギー・Institute of Tropical Medicine、Dr Emmanuel Bottieau、2009年6月4日
生来健康であった 43才のベルギー人女性が、4月15日にアントワープ Antwerp の the Institute of Tropical Medicine のトラベルクリニックを受診した。4日間の高熱、頭痛、全身の筋肉痛、皮膚発疹が見られた。4月2-13日の間、休暇でタイを旅行しプーケット Phuket だけの滞在であった。4月12日にプーケットの病院を受診し、デング NS-1 抗原検査が行われたが陰性と報告されている。
当院受診時、体幹と四肢の斑状皮膚紅斑および右足関節の軽度腫脹が認められた。検査所見では、白血球減少 (2290)、血小板減少 (138000) と軽度の肝トランスアミナーゼ上昇が確認された。デング診断検査が行われた。受診の翌日は解熱したが、その後2-3週間にわたって強度の関節痛を訴えた。デングのペア血清検査は陰性であった。Serology (IFAT) 検査でチクングニアウイルスに対する IgG抗体の 4倍以上の上昇が認められた (from 1/16 on 15 Apr 2009 to 1/256 on 29 Apr 2009)。急性期の血清の PCR検査でもチクングニアウイルスが陽性となった。

● 口蹄疫 アンゴラ
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease, bovine - Angola: (CC) OIE
Archive Number: 20090605.2082
 情報源:OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2009; 22(23)、2009年6月3日
感染開始時期 2009年2月27日 
前回流行時期 1974年 
原因ウイルス foot-and-mouth disease virus Serotype: SAT 2 
新たな感染流行  
発生地 Luiana, Luiana, Rivungo, Cunado [sic; Cuando] Cubango 
感染種 ウシ 25000頭中250頭、死亡30頭

● トマトの病気,Tomato yellow leaf curl virus オーストラリア
PRO/PL> Tomato yellow leaf curl virus - Australia (QL)
Archive Number: 20090605.2079
 情報源:Australian Broadcasting Corporation Rural News 、2009年5月29日
バンダバーグ Bundaberg で _Tomato yellow leaf curl virus_ の被害が発生している。the silverleaf whitefly が伝播するトマトの成長を阻害するこの疾患は、3年前の 2006年に南東部クイーンズランド Queensland 州で発見され封じ込 めに失敗した。 
[Mod.DHAー_Tomato yellow leaf curl virus_ (TYLCV; genus _Begomovirus_) は、元は the Middle East で発生し、 世界中でトマトに深刻な被害を与えているウイルスの1つである]

● 小麦の病気,Fusarium head blight 米国 
PRO/PL> Fusarium head blight, wheat - USA
Archive Number: 20090605.2078
[1] Kentucky Fusarium widespread in Kentucky wheat crop 
 情報源: Southeast Farm Press 、2009年6月1日
[2] Illinois and other wheat states US cash grain outlook 
 情報源: FXstreet/Dow Jones Newswires 、2009年6月2日

● 狂犬病 米国,ロシア(2件)
米国
PRO/AH/EDR> Rabies, animal - USA: (KS)
Archive Number: 20090604.2075
 情報源:Clay Center Dispatch 、2009年6月1日
当局によると、Clay County で1頭のウマの狂犬病検査が陽性となった。所有者らにワクチンが接種されている。2009年の2例目の感染で、1例目は 3月にウイルスの陽性が判明したスカンクである。カンザス Kansas 州では 2009年に 38匹の動物の感染が確認されている。スカンク 30匹、イヌ 3匹、ウシ 2 匹、bobcat・キツネ・アライグマ各 1匹となっている。
地図 Clay County in north central Kansas

ロシア
PRO/AH/EDR> Rabies, fox, human - Russia (02): (YS)
Archive Number: 20090604.2074
 情報源:Yaroslavl.rfn [trans.]、2009年6月1日
Uglichesky district (left bank) ではこの3ヶ月間に 3例のキツネの狂犬病 Rabies 症例が確認され、ヒトに近づいて異常な行動を取っていたことから、狂犬病に関する隔離体制が宣言された。2003年までの 46年間、the left bank of the Uglich district において狂犬病の発生は報告されていなかった。2009年は最も深刻な状況となっている。最新の狂犬病感染のキツネは Otradny village で捕獲された。
[Mod.NP− ロシアではこのほかにも quarantine が実施されている地域がある] 

● 炭疽 インド
PRO/AH/EDR> Anthrax, ovine - India: (GJ)
Archive Number: 20090604.2073
 情報源:The Indian Express、2009年6月4日
Nandol village(Gandhinagar district)では 5月31日に原因不明の 23頭のヒツジの死亡が発生し、炭疽 Anthrax 感染流行が懸念され,その後炭疽感染であることが確認された。Dehgam taluka は検疫体制を宣言した。

● 樹木作物の病気,Lethal yellowing, mildew モザンビーク
PRO/PL> Lethal yellowing, mildew, tree crops - Mozambique
Archive Number: 20090604.2069
 情報源:Business Report (South Africa) 、2009年5月31日
Zambezia province において政府に次ぐ規模のココナッツを所有する Groupo Madal は、内戦や lethal yellowing disease 枯死性黄化病、異常な降水量、木の実の盗難、オイルの世界安、copra などにより、深刻な影響を受けている。