2009年7月25日,30日,31日

マラリア シンガポール,アルテミシニン耐性 NEJM link
インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 Pregnancy,Vaccine PrioritiesAdjuvants,1st case? 

● マラリア シンガポール,アルテミシニン耐性(2件)
PRO/EDR> Malaria, autochthonous - Singapore 20090730.2673 
[1] Outbreak of suspected vivax malaria continues to spread in Singapore 
 情報源1: The Strait Times 、2009年7月29日
 情報源2:Ministry of Health, Singapore、2009年7月29日
Sembawang Road と Admiralty Road East の交差点にある商店街近くで、4人の感染が疑われる、3例目の国内マラリア Malaria 集団発生について保健省が調査を行っている。1例目の患者は同地域内に勤務する 24歳のシンガポール人女性で、6月30日に発病し 7月20日に入院した。最近の渡航歴やマラリア感染の既往はない。2例目と 3例目は、49歳のシンガポール人男性と 40歳のシンガポール人女性の同僚で、この商店街のコーヒーショップをよく訪れていた。男性は 7月11日に発病し 4日後に入院した。同僚の女性は 12日に発病し 17日に入院となった。4例目は、周辺地域の保健省の積極的患者同定で発見された 24歳の男性外国人労働者である。商店街横の nursery に滞在しており、12日に発病し 28日に入院した。1例目は回復して退院したが、4例目は現在も入院中である。この最新の集団発生は、これまでの 2件の集団発生との関連性がなく、4人の中で発病前に Jurong Island もしくは Mandai/Sungei Kadut を訪れたものはいない。
[2] Clusters of suspected local malaria transmission 
 情報源: Ministry of Health, Singapore、2009年7月7日
保健省は、14人が関係する国内でのマラリア感染伝播が疑われる2件の集団発生事例について、現在調査中である。7月6日現在、2例を除くすべての患者は退院している。14人にはいずれも最近の海外渡航歴はないことから、感染発生地域での国内感染伝播の可能性がある。 Jurong Island でのマラリア患者集積 1例目の集団発生は、Jurong Island の 25歳から 37歳までの 5人の男性外国人労働者が関係している。5月3日から 25日の間に発熱、頭痛、悪寒などの症状を発症している。4人は Jurong Island の同じ寮に滞在しており、現地で作業に当たっていた。5例目もこの近くに住んで働いていた。Sungei Kadut/ Mandai でのマラリア患者数集積 2例目の集団発生は、the Sungei Kadut/Mandai area の 20歳から 40歳までの 9人の患者で、別々の寮に住んでいる外国人労働者 8人と、1人のシンガポール国民である正社員であった。発症は 5月16日から 30日の間に発生し、発熱、頭痛、悪寒などの症状が見られた。 
[3] Further cases diagnosed from 7 Jun 2009 until 29 Jul 2009 
 情報源: Ministry of Health Singapore、2009年7月20-29日。 
6月20日にさらに 1人の vivax malaria 3日熱マラリアの患者が確認され、Jurong Island のマラリア集団発生の中に加えられた。46歳の外国人建設作業員で、Jurong Island に滞在して働いていた。23例目の 3日熱マラリア患者が確認され、Sungei Kadut/Mandai Estate の集団発生事例に加えられている。7月16日、保健省は新たな 3日熱マラリア感染例を確認した。この患者は Jalan Gali Batu (Mandai) に滞在し the Seletar Camp で働く、55歳の外国人建設作業員である。26日、さらに 1例の 3日熱マラリア感染が確認され、Sungei Kadut/Mandai Estate の症例に加わった。21歳の建設作業員で、以前に Mandai Estate に住んでいた。 
[Mod.TY- 今回のアウトブレイクは _Plasmodium vivax_ (3日熱マラリア)と診断されている。シンガポール国内でのマラリア感染伝播が最後に確認されたのは 2003年のことである (参考のサイト紹介あり) が、気候やハマダラカ Anopheles vectors の存在ゆえ、輸入例や無症候性の gametocyte を保有する移民などからの国内感染伝播のリスクが常にある。これらによって自国内感染伝播が説明可能である。保健省の声明で、建設現場の移動労働者の居住地がアウトブレイクの発生源と見られる点に注目すべきである。もし彼らがマラリアの地方流行地域からの移動労働者で、無症候性の gametocyte carrier であったなら、今回の感染伝播発生の説明が付く。_P.vivax_ と _P.knowlesi_ が間違われることがある。Macaca irus monkeys に感染し、東南アジアでのヒトでの感染報告例が増えつつある。_Macaca irus_ (サル) は、the Penang peninsula の広い範囲に生息し、マレーシアでも _P.knowlesi_  感染が報告されている。シンガポール国内でも _P.knowlesi_ に感染した患者が報告されており、市内で放し飼いにされている多数のサルからの感染が疑われている(Emerg Infect Dis. 2008;14:814-6)。当局は大規模な噴霧消毒によるベクター駆除キャンペーンを行っている]

PRO/EDR> Malaria, artemisinin resistance - SE Asia
Archive Number: 20090731.2683
[1] 情報源 New England Journal of Medicine (NEJM) 7月30日
[Ref: Dondorp AM et al: Artemisinin resistance in _Plasmodium falciparum_ malaria. N Engl J Med 2009; 361: 455-67]
[2] 情報源 New England Journal of Medicine (NEJM) 7月30日
[Ref: Noedl H et al: Artemisinin-resistant malaria in Asia. N Engl J Med 2009; 361: 540-1]

● ワクシニア 米国 実験室内感染 2008
PRO/EDR> Vaccinia, laboratory-acquired - USA: (VA), 2008
Archive Number: 20090731.2693
Laboratory-Acquired Vaccinia Virus Infection -- Virginia, 2008
 情報源 MMWR 31 Jul 2009 / 58(29);797-800 7月30日
Vaccinia virus (VACV) は天然痘ワクチンに含まれる生きたウイルス成分 the live viral component of smallpox vaccine であり,妊娠,免疫不全,皮膚の状態などのリスク因子のある人々において,予期せぬ暴露による感染や重症合併症などの結果がを生じることがある。2008年7月8日,the CDC wasnotified by a Virginia physician of a suspected case of inadvertent autoinoculation and VACV infection in an unvaccinated laboratory worker

● 炭疽 キルギスタン,カザフスタン
キルギスタン
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, bovine - Kyrgyzstan (02): (DA) more cases
Archive Number: 20090731.2692
 情報源 Trend News, Azirbaijan 7月31日
More taken to hospital with anthrax symptoms in Jalalabad

カザフスタン
PRO/AH/EDR> Anthrax, human - Kazakhstan (02): (WK)
Archive Number: 20090731.2690
 情報源 IA Visota 102.0 [Trans.] 7月31日
An outbreak of anthrax has been observed close to Astrakhan. A total of 185 people are under medical observation

● ダニ媒介性脳炎 ロシア
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Russia (06): (CL)
Archive Number: 20090731.2691
 情報源 Uralpress News Agency [Translated] 7月28日
Tick-borne encephalitis in Chelyabinsk Oblast

● 鳥インフルエンザ,ヒト インドネシア
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (106): Indonesia (SE) susp
Archive Number: 20090731.2689
 情報源 The Jakarta Post 7月31日
Girl hospitalized for suspected case of bird flu
A 17-year-old girl was admitted Friday [31 Jul 2009] to the Wahidin Sudirohusodo Hospital in Makassar, South Sulawesi, with what is suspected to be an H5N1 infection. 

● ポワッサン脳炎 米国
PRO/AH/EDR> Powassan virus, encephalitis - USA: (MN)
Archive Number: 20090731.2684
 情報源 Star Tribune, Minneapolis-St. Paul 7月30日
ミネソタ州 Minnesota で,2種類のダニ媒介性疾患が発生し,7月に Dakota County の小児がロッキー山紅斑熱 [Rocky Mountain spotted fever] で死亡したと,29日に当局者が述べた。Rocky Mountain spotted fever and Powassan encephalitis はまれであるが注意が必要。
もう 1種類の Powassa (POW) disease は,2008年に a child in Cass County が,2009年にも同郡の成人 1名が感染した

● チクングニア インド(3件)
PRO/EDR> Chikungunya (28) - India: (GA)
Archive Number: 20090731.2680
 情報源 SmasHits.com, Indo-Asian News Service (IANS) report 7月29日
the South Goa district の 100人以上の鉱山労働者が,チクングニアウイルス chikungunya [virus] に感染したと,29日 health minister が述べた]

PRO/EDR> Chikungunya (27): India (KL) RFI 20090730.2666 
 情報源:Asianetindia.com、2009年7月29日
ケララ Kerala 州の 5つの地区、とりわけ北部地方の住民数十万人が、モンスーンシーズンに蚊族の刺咬により伝播されるウイルス熱の感染に苦しんでいる。この地域で 10人が死亡した。衛生報告によるとこの数日間で 15万人以上の患者が発生し、政府当局は対応を迫られている。臨時の医療施設が設置され医師が派遣されている。州内で被害が深刻となっているのは、Malappuram, Kozhikode, Wayand, Kannur, and Kasaragod の各地区である。デング熱、チクングニア Chikungunya、肝炎の患者も多数報告されている。地域ごとに患者の症状は異なっており、医師は蚊族媒介性の感染症か、激しい身体の痛みを伴うウイルス熱によるものとの見方を示している。Malappuram の地区病院の管理者である医師は、モンスーン後の患者急増について、特に 6/7月に増えたと述べた。6月と比較して 100倍増加の報告があり、通常のウイルス熱と違っている点は、激しい痛みと発疹を伴った腫脹が見られることで、地域内に広がるチクングニアもしくは類似のウイルス疾患によるものと見ていいと話した。1月からの患者数は、28日現在、丘陵地帯の農村部や部族師は地域を中心として11万人を超えており、発熱と急性の関節痛の症状が見られる。 
[Mod.TY- 2009年のインド西部でチクングニアウイルス感染がグジャラート Gujarat 州を皮切りに、地域を拡大しながら流行しており、南西部カルナタカ Karnataka 州から、ゴア Goa 州を経て、現在はケララ Kerala 州にも発生している可能性がある。ケララ Kerala 州内の報告されている地域で、相当深刻なチクングニアウイルス感染流行が発生しているとの報告である。確定診断されたチクングニア感染者数や、fever cases(発熱性疾患患者)と一括りにされている中で占める割合などの情報が与えられていない。チクングニア、デング熱、肝炎の各症例の概数はどれくらいだろうか] 
地図 India showing the location of Kerala state

PRO/EDR> Chikungunya (26): India (GA)
Archive Number: 20090725.2627
 情報源 The Times of India 7月25日
Sanguem の原因不明の疾患がチクングニア chikungunya [virus infection] と判明した。患者からの血液検体が,ゴア医科大学 the microbiology department of the Goa Medical College (GMC) で検査され,ウイルス陽性の結果が判明した。30検体中 15検体が検査陽性と確認された

● インフルエンザパンデミック (H1N1)2009(3件)

PRO/AH> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (21): vaccine prioriities 20090730.2669 
[1] Pregnancy 
 情報源: CIDRAP NEWS, Associated Press report、2009年7月28日 
豚インフルエンザ [インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 ウイルス感染症] は、妊娠女性で特に重症化するため、この秋に行われる豚インフルエンザの新型ワクチン接種において、勧奨される優先順位で1番となる可能性が高い。2009年4月に始まった米国での豚インフルエンザによる死者の中で、人口比では 1%しかない妊娠女性が(死者の)6%を占めている。28日、政府ワクチン接種諮問委員会は、ワクチンが全員に行き渡らなかった場合 1番に豚インフルエンザワクチン接種を受けるのは誰にすべきかとの問題を取り上げた。リストの最上位には、最悪のパンデミックに際し社会にとって最も重要な役割を果たす医療従事者があげられたが、妊娠女性も構成比に合わない高率の豚インフルエンザ感染による死亡が認められるとの理由で最上位の次にランクされると見られる。米 CDC の疫学者 Dr. Denise Jamieson は、より重症化しやすいリスクを持っているのは誰かが問題となっており、それはこれらのグループらしいと述べた。可能であれば妊娠時期の延期を考慮すべきとの、今月 (7月) に英国とスイス政府当局から出された提案が議論を呼び、妊娠女性に豚インフルエンザ感染のリスクがあることが欧州で大きな話題となっている。保健当局者の大部分は、この勧告は公式なものではない(unwarranted)としながらも、健康上のリスクが大きいことは認めている。最近の報告によると、WHO (世界保健機関) の専門家が、妊娠女性は自然流産や特に妊娠第 2および 3期の死亡につながる可能性のある、重症化のリスクが高い傾向があることを確認している。しかしこれまでに WHO が妊娠女性に優先的なワクチン接種の勧告を行ったことはない。現在のところ医師らは the Advisory Committee on Immunization Practices [ACIP 予防接種実施諮問委員会] による決定内容を待っている状態である。通常、CDC、インフルエンザ専門家、保険者らは、このガイダンスに従っている。10年以上前から、同委員会は妊娠女性に対して季節性インフルエンザワクチンを接種するよう勧告しており、これはたとえ妊婦が若くて健康であっても [インフルエンザが] 重症化する危険性があると考えられているためである。妊娠女性は、特に妊娠第Ⅲ期には肺や免疫機構が変化して呼吸器感染症への抵抗力が落ちるため、[インフルエンザの] 影響を受けやすいと Emory University の産科医が説明した。CDC のデータによれば、豚インフルエンザが危険なことは間違いない。CDC はこれまでに米国内で豚インフルエンザにより死亡した 302人のうち 266人について詳しい情報を得ている。266人中 15人は妊娠女性で、およそ 6%にあたる。豚インフルエンザにより死亡した初めてのアメリカ人は、テキサス Texas 州の 33歳の妊娠女性であった。彼女は昏睡状態となりながら、帝王切開により健康な女児を出産した後、5月5日に死亡した。一部の感染のあった妊娠女性は、元々の健康上の問題を持っていた。例えばこのテキサス州の女性には喘息と乾癬の持病があった。しかし死亡した妊娠女性の多くは概ね健康であったと考えられていて、妊娠そのものが大きなリスクであった可能性があるとこの産科医は述べた。持病のある妊娠女性だけの問題との考え方は間違っていると思うと述べた。専門家らは、有効なワクチンによって、妊娠女性だけでなく出産前の胎児にも利益がもたらされると考えている。免疫機構が脆弱な乳児は、生後6ヶ月になるまでインフルエンザワクチンを接種されることはない。このため母親からもらえる免疫がすべてである。母親へのワクチン接種による胎児への抵抗力賦与に関する証拠 belief については、2008年発行の the New England Journal of Medicine 掲載のバングラディシュの女性での研究で報告されている。この論文では、妊娠女性へのインフルエンザワクチン接種により、乳児のインフルエンザが 63%減少したことが示されている。専門家らは、妊娠女性のうち季節性インフルエンザワクチンを受けているのは 15%程度にすぎないため、新型インフルエンザワクチンを受ける妊娠女性がどれくらいいるかは不透明だと言う。女性の中には、胎児にもたらされるかもしれないリスクを心配して通常のインフルエンザワクチンを嫌がるものもあるが、いくつもの研究から予防接種によっていかなるリスクも高まることはないことがわかっている。最近まで産科医の多くも予防接種を勧めることせず、ワクチンを購入し備蓄する費用負担や嫌がる患者らを説得する労力から逃れる道を選んでいたと、バンダービルト Vanderbilt 大学のインフルエンザ学者 Dr. William Schaffner が指摘している。産科医がこの問題に取り組み、安心してインフルエンザワクチン接種ができるようなったのは、ようやく今になってからのことだと述べた。豚インフルエンザワクチンの需要がさらに膨らむのか不透明である。妊娠患者はあまり豚インフルエンザを心配していないと、アトランタの病院の産科医でもある CDC の当局者は述べた。比較的軽症の病気と見られ大きな関心事となっていないと言う。人々の関心は、誰が赤ちゃんの面倒を見て、どのようにして食料を確保し、安心で安全な住まいをどうして手に入れるかといった、経済的な問題に向けられていると述べた。これまでに 100万人以上のアメリカ人が感染し、300人以上が死亡したと CDC は見ている。米国政府当局は、8月には複数のボランティアに対して豚インフルエンザワクチンの試験を開始する予定であり、10月までに 1億6千万人分のワクチンが準備されると見込んでいる。 
[2] ACIP meeting  Swine Flu Vaccine Priorities Outlined 
 情報源:The New York Times、2009年7月29日
豚インフルエンザ [インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 ウイルス] ワクチンは、今年の秋冬に見込まれている患者発生数増加の時期までに、すべてのアメリカ国民に接種するだけの量が間に合わないことが予想されていることから、保健の専門家らは 7月29日、特定の人々に対して最初にワクチンを接種すべきであるととの勧告を行った。最優先グループになる、総人口の約半数にあたる合計1億5千万人の米国民には、その任務が最重要との理由で、医療従事者、emergency medical responders 救急隊員が含まれている。また新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルスによる合併症や重症化のリスクが最も高い妊娠女性;生後6ヶ月未満の乳児の保育者;生後6ヶ月から24歳までの小児と若年者;25歳から64歳までの喘息・糖尿病・心疾患などの医学的問題を持つ人々なども含まれている。この勧告は、国内の医療専門家らで構成され CDC に対して助言を行う the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP 予防接種実施諮問委員会) の会議で発表された。この中の 14人のメンバーが勧告について投票を行い、通常 CDC はこの勧告を受け入れ、州政府と地方の衛生当局者らに対するガイドラインを発行する。しかし、この委員会の最初の勧告発表後、メンバーらはワクチンの深刻な不足があった場合の対処と、ワクチン接種適格者の絞込みを検討せざるを得なくなった。混乱や落胆に頭を抱える委員も見られた。会議が長引いて会期を過ぎ、1人の委員は怒り、最終投票をせずに去っていった。結局委員会は、ワクチンの不足が深刻な場合、4歳を超える健康な小児にはワクチンを接種せず、妊娠女性・医療従事者と救急隊員・乳児の保育者を除く成人にも行わないことを決めた。これらの接種者削減により、第1回目に必要とされるワクチンの数は約 4000万本に抑えられることになった。ワクチン接種が一番最後になるのは、65歳を超える健常者で、豚インフルエンザに感染する可能性は最も低いものの、もし発病すれば合併症が最も起こりやすいグループである。この年齢層の人たちは、すべての他のグループの接種が完了するまで、ワクチン接種を勧められることはない。不足を前提としてワクチン接種を制限する努力は、市民を混乱させ、予防接種を受ける意欲をなくさせ、結果的にワクチンを浪費することになるとの意見も一部にあった。きっちりとした優先順位をつけることで、ワクチンが使用されない結果となるかもしれないと述べた、投票を棄権したメンバーである Vanderbilt University の Dr. William Schaffner は、"When you have vaccine, just give it." と言い放った。米国内でさらに世界中でパンデミックの拡大がとどまるところを知らない中で、今回の決定は不確実性をはらみながらリアルタイムで下された。当局者は、新学期が始まる秋には新たな患者発生増加を予想しているが、それも確かなことではない。このワクチンについては安全性も有効性のテストもまだ済んでいない。政府当局者は 2009年10月までに 1億2千万人分のワクチンを用意する計画を立てていたが、会議の参加者の中から楽観的過ぎるとの意見が数多く出された。the virus is beating us to the tape [?] であり、秋になって我々に免疫を与えるのは、[ワクチンではなく、実際に]  ウイルスに感染することになるだろうと Dr. Schaffner が述べた。秋から初冬の多数の豚インフルエンザ患者発生と、例年それより遅れて始まり 2月にピークを迎える季節性インフルエンザ流行との "double-barreled flu season(インフルエンザのダブルパンチのシーズン)" が懸念されると述べた。 
[3] Adjuvants  Swine Flu Shot May Rely on Emergency Use of Additives (Update1) 
 情報源:: Bloomberg.com 、2009年7月29日
豚インフルエンザのワクチン製造メーカー各社(のワクチン生産)は、GlaxoSmithKline Plc  および Novartis AG の2社が開発した、限られているパンデミック対策ワクチン供給量をより多く使用するための実験段階の添加物の使用を、米国政府が緊急に使用を承認する決定を行うかどうかにかかっている。アジュバント adjuvant と呼ばれるこの成分が添加されるとすると、米国のインフルエンザワクチンでは初めてのこととなる。衛生当局者らはアトランタ Atlanta の CDC で開かれている会議に出席し、この添加物に関する検討と,製造メーカーが 9月ないし 10月には供給を開始するという限られた量のワクチンを誰に接種すべきかについての勧告を行った。The U.S. Health and Human Services Department (DHHS) は 4月に豚インフルエンザに関する公衆衛生上の非常事態宣言を行っており、the Food and Drug Administration (FDA 食品医薬品局) はこのような危機的状況の際には認可されていない医薬品の使用を認める権限を有している。米国政府当局は、安全性が懸念されることを理由にアジュバントの使用承認を躊躇してきたし、国民にワクチン接種を逃れる口実を与える恐れもあると、University of Rochester の研究者は指摘する。CDC は、ロンドン London に本社のある Glaxo とスイス・バーゼル Basel の Novartis 社に対して、豚インフルエンザワクチンに添加される予定のアジュバントに対して 4億1500万米ドルを支払うことに合意したことが 13日の発表で明らかになった。もしワクチンの量が十分で、アジュバントを使用しなくても (予定量を) 生産できるなら、必ずしもアジュバントは必要ではない。アジュバントを添加しなくても、以前発表されたよりも早い時期の 9月に 4000万人分のワクチンが調達でき、10月にはさらに 8000万人分のワクチンが準備できるとの、29日の CDC の関係当局からの発言によって、[アジュバントが不要となる] 可能性が現実味を帯びてきた。2004年にゲーンズビル Gainesville にある the University of Florida の研究者らがアジュバントを添加した油を接種されたマウスで免疫反応が過剰に発現したと報告したことから、アジュバントの安全性への懸念が生じていた。同様の反応がヒトにおいて確認されたことはない。Novartis 社が製造し欧州で販売している MF59 は、季節性インフルエンザ予防のため成人を中心に 4000万人以上に使用されている。Glaxo 社のアジュバントも 39000人の臨床試験で安全性と有効性が確認されていると、同社広報担当者が電子メールで回答した。同社はワクチンの使用開始後も安全性のモニターを継続して行っていくと述べた。米国政府は保健上の緊急事態ととらえており、承認前のワクチンの使用を許可する可能性もあると FDA の関係者は述べている。23日には、新たなワクチン承認に必要とされる試験を検討するための諮問会議が招集された。この諮問委員会は FDAに対してガイドラインを提供する医療の専門家から構成される。豚インフルエンザ [インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 感染症] の最盛期は、通常のインフルエンザシーズンよりも早く訪れる可能性があると CDC は見ている。ワクチン製造メーカー各社は、北半球での発生増加が見込まれている 10月中旬までの生産を急いでいる。気温の低下と新学期再開でさらに感染が加速されることも予想されている。ジュネーブ Geneva に本部を置く WHO は、パンデミックインフルエンザと呼ばれている H1N1インフルエンザは、予想を上回るスピードで世界中に広がっていると述べている。過去のパンデミックでは 6ヶ月以上かかって世界中に広がったが、今回のインフルエンザでは 6週間足らずでそれ以上の広がりを見せたと 17日の同機関のウェブサイト上で述べられている。各国の保健機関は患者数のカウントを中止しており、CDC によるとすでに 100万人以上のアメリカ人がこのウイルスに感染している。WHO によれば、ワクチン製造メーカー各社は通常の季節性インフルエンザワクチンと比較して、このウイルス株が産生する免疫誘導物質である抗原量が 50ないし 75%も少ないため、ワクチン生産に必要なウイルス量の培養が困難なことに気づいているという。このウイルスは多くの場合に培養に使用される鶏卵上での初期の発育が不良であると、メーカーが述べている。先週研究者らがはじめて鶏卵上での生産量を改善することに成功し、メーカーへのプレッシャーの軽減につながる可能性があると、米国のワクチン購入を担当する the Biomedical Advanced Research Development Authority の当局者が述べた。アジュバントの使用はまだ決定事項ではないと述べた。アジュバントは油と水を混ぜたもので、免疫システムを刺激することにより抗原に対する身体の反応を高める働きがある。インフルエンザウイルス株によりその効果が異なるアジュバントは、欧州で認可されている鳥インフルエンザワクチンのように 10倍もの抗原性強化をもたらせる可能性もあると、研究者は説明している。アジュバントを添加すれば、同じ抗原の量で、より多くのヒトに使用することが可能になる。[アジュバントを製造する]  GlaxoSmithKline と Novartis の両社がラットやモルモットで有害ではないことを証明するまでは、ヒトに使用するのには問題があると FDA の諮問委員会のメンバーがインタビューに答えて述べた。米国政府は通常の季節性インフルエンザワクチンは非常に有効と考えてきたため、これまでアジュバントの使用リスクについて検討したことがないと George Washington University の研究者は指摘する。イタリアやスペインではこれまで何年にもわたって the MF59-adjuvanted vaccine を安全に使用してきた経験があると述べ、この経験は信頼に値し、アジュバント添加ワクチンの使用に当たって最良のデータとなるだろうと話した。米政府当局に対して 1億8千万米ドル相当の H1N1抗原を提供するメルボルン Melbourne に本社を置く CSL Ltd. 社は、ワクチンにアジュバントを使用せず季節性インフルエンザワクチン製造により近い方法を用いる方針に決定を下した。米政府当局はインフルエンザワクチンの供給について 5つの会社と契約を結んでいる。スイスの Novartis 社はこのうち 45%の供給量を担当し、Sanofiは 26%、CSLが 19%、残りを Glaxo とロンドンの AstraZeneca Plc. 社が製造する予定になっている。 
[Mod.CP- the the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) からの公式の見解発表が待たれる]

ペルー 
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (20): Peru, 33 percent asymptomatic 20090730.2668 
 情報源:El Diario (Peru), Andina (Peruvian News Agency) report [in Spanish]、2009年7月30日
The Ministry of Health (MINSA 保健省) は、インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 ウイルスに感染したヒトの 33%無症状すなわち病気の症状が認められないことを明らかにした。同省の疫学局長によると、これまでに報告された感染患者の 37%に普通感冒のような鼻づまり、咽頭痛、頭痛、体性痛などがあった。しかしそれらの患者には、発熱は認められないか、少なくともインフルエンザの特徴である 39度以上で受診が必要な高熱は発生しなかった。同氏は、このような患者は必ずしも医療機関を受診する必要はなく、家庭薬 conventional medicines と栄養のある食事と十分な水分摂取により 3-4日で回復すると説明した。さらに統計によると 30%のインフルエンザ H1N1患者ではあらゆるインフルエンザ症状が見られることもあるとも述べた。このため 5歳未満の小児、高齢者、免疫低下のある結核患者や HIV陽性患者、高血圧、糖尿病、ダウン、喘息、妊婦などの、いわゆるリスクグループには特に注意し、医療機関で迅速で適切な治療が必要である。ペルーではインフルエンザ H1N1 感染による死亡は 1%未満で、80%以上の患者は治療によく反応している点を指摘している。一度感染して治癒すれば、免疫が成立し再感染しないとの説明など。 
[Mod.CP- さらに症候性と無症候性患者での免疫反応レベルを評価するところまで、サーベイランスを進めることが期待される。もし 33%の無症候性患者で、防御可能な免疫反応が誘導されているなら、人口のおよそ 2/3はワクチン接種を必要としないだろう。WHO によると、22日現在のペルーにおけるインフルエンザパンデミック (H1N1)2009 ウイルス感染者数は 2671人で、死者は 12人となっている]

PRO/AH> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (18): 1st case? 
Archive Number: 20090725.2631
 情報源:The Times Online (UK) 、2009年7月14日
世界で一番初めに確認された豚インフルエンザ Influenza 患者は、メキシコ北部の生後 6ヶ月の女児で、この女児には養豚場との接触が認められなかったと、23日にウイルスの研究を行っていた研究機関の責任者が述べた。この患者は San Luis Potos の生後6ヶ月の女児で、現在生存していると、メキシコ Mexico 市にある the Institute of Epidemiological Diagnosis and Reference (INDRE 疫学診断研究所) の Celia Alpuche がのべた。この女児が 2009年2月24日に新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルス感染症状をはじめて発症した (患者である) と説明した。3ヶ月前に政府が初めて A(H1N1) に対する注意喚起を行って以来、世界中が 'patient zeros 発端患者' の候補としてメキシコ東部の養豚場近郊に住む 5歳男児と南東部 Oaxaca の女性の 2人に注目していた。いずれの患者も 4月に、現在 700人以上を死亡させている同ウイルスに感染していた。しかし残っていた検体の検査が行われた結果、その後に南部で発生が起きる前の 3月に、メキシコ中部および北部で初期の少数の患者が発生していたことが明らかになった。3月の Baja California (northwest), San Luis Potosi and Mexico City (centre) において、このほかにも陽性検体が存在することを確認したと、約1ヶ月前に判明した結果について述べられている。どこで感染が発生したかを説明するのは難しいが、これらの早期の検体は養豚場があるとされる農村部以外で採取されたものであることが付け加えられた。メキシコでの死者の数は現在138人となり、患者数は14800人と言われている。また貧しい南東部で患者数が増加しつつある。 
[Mod.MPP− この乳児が、北米で第1例目のインフルエンザパンデミック (H1N1)2009 の患者である可能性はほとんど 0だろう。なぜならこの乳児は、他の感染者に曝露して感染したに違いないからである。また渡航歴や渡航者との接触はないと推定され、あるいはこのことについてはこのメキシコの当局者が述べているかも知れない。この報告はむしろ、パンデミックウイルス株発生の元凶("blamed")であるとして、訴訟好きのメキシコ国境の北 [=米国] から非難されてきたメキシコ南部の養豚場 producing farms が、実はそうではなかったことを明らかにしたという点で評価される。一番最初の患者を追い求める努力は、遺伝学的研究により遺伝子の構成成分が欧州とアジアのウイルスから成ることが示唆されていることから、パンデミック (H1N1)2009 ウイルスの真の起源(the actual origins) の同定にも役立つ]

● 炭疽 キルギスタン,インド(2件)
キルギスタン
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, bovine - Kyrgyzstan: (DA) susp. 20090730.2672
[1] A suspected anthrax case has been admitted to the hospital in Aksi 
 情報源: AKIpress, [transl. ]、2009年7月29日
キルギスタンの非常事態省が、Aksiskoe rayon(Jalalabad oblast)において炭疽 Anthrax 感染流行が発生した可能性がある事を明らかにした。同省の報告では Semet 村の男性が所有するウシ 1頭が発病し、18日にこの男性が処分した。19日、男性の指に腫脹が認められたが、男性はタバコの灰とウォッカで治療した。26日になって男性は医療機関を受診し、27日に炭疽感染の疑いにより入院となった。ウシを処分した場所は chloramine で消毒した。肉、土壌、皮革の検体が検査機関に提出され検査されている。このウシは予防接種を受けていた。他に感染動物は見つかっていない。感染流行対策も行われている。医療機関の 2人の医師と 5人の看護師に対して、テトラサイクリンが予防投与されている。獣医師は同じ牧場の家畜にワクチン接種を行っている。患者と接触のあった 12人が健康監視を受けている。 
[2] At least 167 anthrax suspects kept under observatioon in Jalalabad
 情報源: The Journal of Turkish Weekly.net 、2009年7月29日。 
キルギスタンの the Jalalabad region では過去何度も炭疽感染発生が繰り返されている。 Aksiy district で炭疽感染例が報告されたことが、非常事態省により報告された。Semet 村の住民1名が 1頭のウシから感染した。167人が炭疽感染を疑われ健康監視下にある。 
地図 Kyrgyzstan

インド
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, bovine - India (07): (OR) 20090725.26 
 情報源:Orissa Diary 、2009年7月24日
部族集落の Koraput で、ウシに由来する炭疽 Anthrax 感染発生によりパニックが発生している。Koraput District では毎年発生している。これまでと同じように、今年 (2009年) も 56人が感染して治療中であり、政府によると 3人の死亡があったことになっているが、非公式には 4人が死亡している。政府は Kunduli Village で1人、Gunthaput で2人が死亡したと発表しているが、21日に M. J. of Andoput Village でも死者が発生している。Gamphaguda Village では 7日間に 8人の患者が発生している。2008年は Luhaba Village で 4人の炭疽感染による死者が発生したため、同地域内の土壌が採取されている。
地図1 Orissa in eastern India and facing the Bay of Bengal  
地図2 Koraput

● コロニー崩壊症候群,ハチ 米国
PRO/AH> Colony collapse disorder, apis - USA: multiple causes susp
Archive Number: 20090731.2687
[1] Scientists untangle multiple causes of bee colony disorder 
 情報源 Environment News Service (ENS) 7月29日
[2] Re: multiple causes of bee colony disorder
 投稿者 Jose and Sandy Villa 7月30日

● アメリカ腐蛆病 南アフリカ
PRO/AH/EDR> American foul brood, apiary - South Africa (05): alert
Archive Number: 20090731.2685
 情報源 IOL (Independent Online, South Africa) 7月29日
Fears that contagious bee disease has spread

● コメの病気,Blast disease ネパール
PRO/PL> Blast disease, rice - Nepal: (JU)
Archive Number: 20090731.2682
 情報源 eKantipur.com/The Kathmandu Post 7月29日
Rice blast decimates paddy fields
 
● サトウキビの病気 オーストラリア
PRO/PL> Chlorotic streak, sugarcane - Australia: (QLD)
Archive Number: 20090731.2681
 情報源 ABC News (Australian Broadcasting Corporation) 7月29日
Downpour helps spread cane streak disease

● 炭疽 カナダ
Anthrax, bovine - Canada (04): (MB, SK) 20090730.2674
 情報源:CFIA 、2009年7月30日
The Canadian Food Inspection Agency (CFIA) has updated their anthrax website

● ウシ結核 英国
PRO/AH/EDR> Bovine tuberculosis - UK (05): (England) alpaca 20090730.2667 
 情報源:The Veterinary record 165: Letters, pp 121-2 (subscription required) 、2009年7月25日
2008年10月から12月にかけてデボン Devon (A) の群れの 4頭の大人のメスのアルパカが、南東部イングランド England (B) の繁殖種の群れに混じった。元の群れに帰ってから 4-8週間後、このうちの 2頭に無気力・体重減少と咳症状があることに所有者は気づき、獣医師の治療が行われたが症状は進行し、2009年5月に2頭のアルパカは死亡した。死後剖検で、肺の乾酪性壊死と縦隔リンパ節腫脹が認められた

● マラリア,ペンギン エクアドル
PRO/AH/EDR> Malaria, penguins - Ecuador (Galapagos)
Archive Number: 20090725.2628
 情報源 The New Scientist 7月22日
Galapagos penguins(_Spheniscus mendiculus_) harbour malaria threat