2009年8月6日

インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 Eurosurveillance
オロプーシェ熱 ブラジル
ペスト 中国

● インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 オーストラリア 英国 
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (25): Australia, UK, updates
Archive Number: 20090806.2784
オーストラリア
 情報源:Eurosurveillance, Volume 14, Issue 31, 6 Aug 2009、2009年8月6日
surveillance trends, age of infection and effectiveness of seasonal vaccination 
毎年5月から9月までの間に、南部のメルボルン Melbourne とビクトリア Victoria 州において influenza sentinel surveillance(インフルエンザの定点サーベイランス)が定期的に行われる。2009年の第 1回の 11週間定点観測(疫学第18−28週、この間にパンデミックインフル エンザ (H1N1)2009ウイルスが定着)の結果の報告と、パンデミックウイルス感染が検査で確定された患者に対しての、季節性インフルエンザワクチンの有効性(防御効果)についての検討を行った。報告時点では 2009年のインフルエンザ様疾患 influenza-like illness (ILI) 発生はピークに至っており、2007年のピークと同程度で、2003年のピーク以下であった。いずれかのインフルエンザウイルス検査が陽性となった患者の割合は、第18週の 6%から、第28週には 59%にまで増加し、この間のパンデミックインフルエンザの診断率も、0%から 95%にまで増加していた(観測の 8週目である第25週までに、全てのインフルエンザのうちでパンデミックインフルエンザと診断される割合が 91%を超えた)。全 233例の年齢の判明しているパンデミックウイルス感染患者の平均年齢(median age 中央値)は 21才(2−63才)であり、一方、2007および 2008年の季節性 H1N1インフルエンザ患者 53人の平均年齢(median age 中央値)は 23才(1−75才)であった。季節性ワクチンによるパンデミックインフルエンザウイルス感染に対する有意の防御効果は、どの年齢においても認められなかった。 
導入: 
オーストラリア政府当局は、2009年5月8日に国内で初めての米国から帰国した旅行者のパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009 感染例を報告した。それから 10日後に、南部ビクトリア Victoria 州当局は州内初の同一家族内の同胞 3人の感染例を報告したが、やはり米国からの帰国者であった。ビクトリア州は、1998年に検査によるサポートを伴って設立されたパンデミック監視のための既存の sentinel general practice network を利用している。Sentinel monitoring は,アウトブレイクや接触者追跡調査によって確認された患者を含めた全診断症例のモニターに起因する検査のバイアスを克服するようにデザインされてい る。現在のパンデミックにおいて sentinel surveillance を行う一般医に対して、発熱(報告または測定)、咳、疲労の症例定義を満たす患者について、これまでと同様に検査を実施することが求められている。以前われわれは sentinel surveillance の中で,インフルエンザ検査が行われた患者の症例対照研究によってインフルエンザワクチンの有効性 influenza vaccine effectiveness (VE) の評価の実行可能性について報告した。今回はパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009 ウイルス感染が定着した 2009年4月29日から7月12日まで(第18−28週)の、ビクトリア州内の sentinel surveillance について報告することを目的としている。これまでのシーズンと 2009年の ILI、および Google Flu Trends を利用した新たな ILI surveillance とわれわれのサーベイランスシステムを比較した。またこの期間中にパンデミックウイルス感染によることが検査で確定された、医療機関を受診した ILI に対する季節性インフルエンザワクチンの防御効果についても検討した。 
方法: (全人口 500万人のうち 390万人がメルボルンに住むビクトリア州の、general practitioners (GPs) からの報告によるシステムの詳細情報)、検査、インフルエンザワクチンの有効性評価、
結果: 2009、インフルエンザシーズン、ワクチンの有効性 議論 ... 

英国 Big drop in new swine flu cases 
 情報源: BBC News 、2009年8月6日
イングランド England および スコットランド Scotland の H1N1豚インフルエンザの新規の患者数が大きく減少していることが、最新の統計で明らかになった。イングランドの先週の症例数は 3万例で、その前週は 11万例であった。スコットランドでは 1500例から 1050例に減った。健康保護局によると、ウイルスには致死性の強い型への変異や薬剤耐性の兆候は見られないとされている。イングランドにおける、豚インフルエンザ関連死亡は 36人に達した。スコットランドでは 4人が死亡した。先週、イングランドで530人が感染し、先週の合計793例から減少した。ウェールズでも減少が報告されているが、ILIのレベルは先週の4410例から2670例に変化し た。北アイルランドでは、前週の10例から新規患者83例へと増加した。当局は常に、通常のインフルエンザシーズンに一致して、秋に大きな増加が見られる まで、夏の間は感染率が低下すると予想していた。イングランドのChief Medical Officerは、第2波が到来した際の予測は非常に困難と述べ、guesswork 当て推量になってしまうが、新学期の再開したあといずれかの時期に再び増加するだろうと、述べた。2週間前にGPらへの負担を軽減するために始まった、国 立インフルエンザ局は、豚インフルエンザの流行レベルに応じて、規模の拡大や縮小ができるよう、"flexible enough 非常に柔軟性"である。一般市民の3/4にとって、豚インフルエンザはほとんどあるいは全く心配ないものであることが、保健当局の数字に よって示されている。先週、37%の国民が、メディアから豚インフルエンザに関する十分な情報を受け取ったと答えるほど、認知の度合いは高い。英国での冬 期に何が起こるかを予想するために、専門家らは、南半球での出来事に注目している。先週、アルゼンチンの豚インフルエンザによる死者が急増し、337人に 達している。メキシコでも、第2の患者発生の波が起きている可能性が示唆されている。 ワクチンについて この間に、WHOは、2009年9月までに一般市民向けの初めての豚インフルエンザワクチンが認可される見通しであると発表した。複数のメーカーが、初回分のH1N1ワクチンを生産し、いくつも臨床試験が現在行われている。WHOのワクチン研究の責任者である、Dr Marie-Paule Kienyは、新型ワクチンの安全性への不安の払拭を図っている。"old and proven technology 従来からの証明済みの技術" によって生産されたワクチンであると説明した。一部の専門家は、この手のインフルエンザワクチンに対する懸念を表明していた。とくに、極めてまれとされる Guillain-Barre syndromeと呼ばれる神経症状が、1976年に米国で行われた豚インフルエンザに対するワクチン接種計画中に、500人に発生している。毎冬接種さ れている季節性ワクチンの経験から、今回のインフルエンザワクチンに関する多くの情報が判っており、監督当局も、いかなる有害事象についても監視を行って いく予定であることを付け加えた。現在のワクチンの品質管理は、30年前よりずっと改善されていると述べた。米国と欧州の監督官庁は、豚インフルエンザワ クチンのために、fast-track(異例のスピードで承認する特別の取り扱い)を用意する予定である。一部は従来の季節性インフルエンザワクチンを根拠にし、新たなテクノロジーも採用する。製薬会社のBaxter社は、同社初の豚インフルエンザ Celvapan の初回出荷分の生産を発表した時期に、この方針が公表された。同ワクチンは、細胞培養を利用することで、従来の鶏卵上で培養する方法に比べ、より短い期間 で培養された。Baxter社は、英国政府へのパンデミックインフルエンザワクチン供与を契約した2社のうちの1つで、もう1社は、 GlaxoSmithKlineであり、両者とも今月中に臨床試験を開始する計画である。臨床試験の1つの重要なポイントは、ワクチンが1回接種でよいの か、2回接種が必要なのかを明らかにすることである。閣僚らは、年末までに英国民の半数をカバーできる量のワクチンを用意する予定であると、繰り返し述べ ている。今回のBBCの報告では、英国全体のILIに関するGPへの受診率グラフから、現在ILIの劇的な減少が見てとれると結論づけた。 
[Mod.CP-上記の2報告やその他の報告から、パンデミック(H1N1)2009のアウトブレイクは、国ごとにそれぞれ違った経過をたどっていることが鮮明になっ ている。アルゼンチンは現在、最も被害が深刻な国の1つになっており、死亡者数では米国に次いで2番目に多い。ProMED-mailは、 sequence dataの集積場所ではないが、コロンビア大学公衆衛生学部からの以下のような情報を得ている : ”アルゼンチンで採取された、2つのH1N1ウイルス 株の遺伝子の塩基配列解析を完了した。解析結果を公表することに懸念はあるが、ASAP(できるだけ早く)塩基配列を公開せよとのWHOの指示に従 う:ProMED-mailに対して、the community 読者への塩基配列の公開場所に関する情報を流すことをお願いしたい、残りについてもいずれ公開したい(draft sequenceの形)。今日まで、このウェブサイトではおよそ10件の完全な遺伝子塩基配列がリストされている。初めの2件についてはthe CII website からアクセス可能である。他の研究者らによる閲覧を期待したい]

● オロプーシェ熱 ブラジル

PRO/AH/EDR> Oropouche fever - Brazil: (AP)
Archive Number: 20090806.2782
 情報源:Portal Amazonia [in Portuguese]、2009年8月5日
The Municipality of Mazagao (PMMZ) 当局は4日、過去3ヶ月間に市内でおよそ 657例の oropouche  ウイルス感染が発生したとの報告を行った。このうち 29例については検査機関 the Instituto Evandro Chagas (IEC) で確定診断された。biting midges [_Culicoides_]  による刺咬が原因であることを確認している。Mazagao の保健局長は、当初マラリアやデング熱を疑われていたが IEC での検査で初めて oropouche であることが判明した,と述べた。アマパ Amapa では長い間報告されたことはなかった。デング熱やマラリアと非常によく似た症状: 発熱、頭痛、全身の筋肉痛などが認められる。この地域に多く見られる biting midges がウイルスベクターの1つである。Mazagao Velho and Carvao では、2009年3月に初めての oropouche 熱の患者が発生し、4月と5月には 600例以上と著しい報告数の増加があった。The oropouche virus はブラジル国内で 2番目に多いアルボウイルス性発熱疾患の原因ウイルスで、保健省によると過去30年間で国内では約 50万例以上が発生しており、Panama, Peru, Suriname and Trinidad and Tobago でも発生が確認されている。感染流行の発生はアマゾンに限られている。 
[Mod.LJS− Mazagao は Manga のすぐ南西の隣に位置し the Amazon River 河口付近にある。住民は 15000人足らずであることから、10万対発生数の概算では 4380人となる。Oropouche は the Bunyaviridae family(ブンヤウイルス科)のウイルスで,1960年に初めて分離された。_Culicoides spp_  蚊族により感染が伝播され、ブラジル北部および中西部の不明熱 undifferentiated fever の主な原因の1つとなっている。ウイルスによる疾患で基本的には良性であり、ヒトへの重大なリスクは生じていない] 
[Mod.TY− ペルーでも Oropouche fever が発生し、当初デング熱と混同されていた(19950328.0167)] 

● サルモネラ感染症 米国
PRO/AH/EDR> Salmonellosis, serotype Newport - USA: ground beef, alert, recall
Archive Number: 20090806.2779
 情報源:US Department of Agriculture (USDA), Food Safety and Inspection Service (FSIS) 、2009年8月6日
Fresno(カリフォルニア California)の Beef Packers, Inc. 社は、サルモネラ感染症流行との関連性が疑われる 375トンの牛ひき肉の回収を開始したと、6日米農業省の Food Safety and Inspection Service (FSIS 食品安全検査局) が発表した

● 肺ペスト 中国

PRO/AH/EDR> Plague, pneumonic - China (04): (QH)
Archive Number: 20090806.2778
  情報源:Agence France-Presse (AFP) 、2009年8月6日
中国北西部で 3人が死亡し、1万人の住民が隔離された肺ペスト Plague 感染流行の原因として、1匹のイヌが疑われているとメディアが伝えた。青海省 Qinghai province のチベット地区の農村部にある Ziketan は、この強毒性疾患の感染拡大防止目的に 8月1日以降町が閉鎖されている。患者 1人が危険な状態にあり、ほか 8人の感染患者がいる。感染した患者のほとんどが,死亡した 1人目の患者の 32才の牧民の関係者と現地の医師らであると伝えられている。この牧民が所有していた,死亡したイヌが感染源であった可能性があることが、初期検査により示されている,との省当局者の話が 5日に報じられた。ペストに感染したマーモット marmot を食べたイヌがその後死亡し、牧民は死亡したイヌの埋葬の際にノミから感染したと見られると説明した。男性は 3日後に死亡している。この第1例目の死亡した患者は、無防備に死亡したイヌの埋葬を行った。男性の感染後、親類と近所の人たちにもこの男性と予防策なしの濃厚な接触があり、感染につながったと説明された。 
[Mod.LL− Marmots は the American woodchuck (_Marmota monax_) の仲間の大型の齧歯類で、東南アジアでは主要な _Y. pestis_  ペスト菌の保有宿主と考えられている。marmot はフランス語の marmotte からきた言葉で、ラテン語で "mountain mouse" を表す mures monti に由来する]

● プリオン病
PRO/AH/EDR> Prion disease update 2009 (07)
Archive Number: 20090806.2783
[1] 英国: National CJD Surveillance Unit - monthly statistics as of 3 Aug 2009 
 情報源: UK National CJD Surveillance Unit, monthly statistics 、2009年8月4日
2009年の7か月間に、あらたな vCJDの患者報告は記録されていない
[2] フランス: Institut de Veille Sanitaire - monthly statistics as of Tue 4 Aug 2009 
 情報源: IVS - Maladie de Creutzfeldt-Jakob et maladies apparentees [in French]、2009年8月4日
2009年の7ヶ月間に、1例の vCJDが疑われる症例があり、もう1例、以前確定されていなかった症例が確定された 
[3] 米国 National Prion Disease Center - not updated (quarterly statistics as of 15 May 2009) 
 情報源: US National Prion Disease Pathology Surveillance Center 、2009年8月6日
2009年5月15日以降、更新されていない 
[4] リスク評価 Risk assessment 
脳外科および眼科手術部門での、術前のvCJD感染リスク評価改訂 
Revision to pre-surgical assessment of risk for vCJD in neurosurgery and eye surgery units
 情報源: Protection Report Volume 3 No 28 2009 、2009年7月17日
外科的または神経内視鏡処置前に、常にその患者について、CJD感染のリスク増加がないかの評価が必要となる。もしリスク上昇があることが認められた場合は、特別な感染対策を実施すべきである。
[5] 血液(輸血)由来の vCJD Blood transmitted vCJD 
 情報源:Health Protection Agency -- Variant CJD and blood 
輸血に伴う、変異型クロイツフェルトヤコブ病 variant-CJD 感染が4例発生した :  受血者4人のうち 3人が vCJDを発症した。4人の患者は全員が 1996−99年の間に non-leucodepleted red blood cells(白血球が除去されていない赤血球)の輸血を受けていた
[6] 種の壁 Species barrier 
慢性消耗性疾患のシカやエルクを食べたヒトは、種の壁によって感染を免れる可能性があることが、サルでの実験で示唆された 
People Who Eat Deer And Elk With Chronic Wasting Disease May Avoid Infection Because Of Species Barrier, Study in Monkeys Suggests 
 情報源: Science Daily 、2009年8月3日
chronic wasting disease (CWD 慢性消耗病) のシカやエルクを食べた人では、CWDの感染病原体はヒトに感染を広げる能力を持たないため、感染を免れる可能性があることが、現在進行中の数年間の研究データから示唆されている。CWD を経口または脳内へ接種された 14頭のサル cynomolgus macaques は、6年以上の観察期間を経た今も、健康に問題はなく何も症状が認められていない。ただし、ヒトへの影響の直接的な関連性についての結論ではなく、今も研究は続けられている。Cynomolgus macaques は遺伝学的にヒトに近く、ヒトの脳を冒す様々な重症疾患にも罹患することから、しばしばヒトの疾患の研究モデルとして利用されている
原著 Emerging Infectious Diseases. [EID Journal reference: Race B et al. Susceptibilities of nonhuman primates to chronic wasting disease. Emerging Infectious Diseases, DOI: 10.3201/eid1509.090253] 
[7] ヒツジのミルク中のスクレイピープリオン発見 Scrapie prions in sheep milk 
 情報源: Sacramento Nutrition Examiner, Examiner.com 、2009年8月3日。
発病の20ヶ月前に、感染ヒツジのミルクでプリオン病が確認されていた 
Prion diseases found in affected sheep's milk 20 months before animals develop symptoms 

● ナツメヤシの病気,原因不明 パキスタン
PRO/PL> Undiagnosed diseases, date palm - Pakistan: (SD)
Archive Number: 20090806.2776
 情報源:The News International (Pakistan)、2009年8月4日
70 万トンの dates ナツメヤシを生産するカイルプール Khairpur [district, シンド州 Sindh province] は、date palm trees の植え付け sowing を増やしているにもかかわらず、生産量が減少している。国内の 85%を占める 45種類の dates を生産するカイルプールの dates 生産量は、複数の病気のため減り続けている