2010年11月17日

原因不明の死亡-ウガンダ
コレラ-ハイチ,ドミニカ共和国
鳥インフルエンザ、ヒト (58)-中国 H5N1

● 原因不明の死亡-ウガンダ 
PRO/EDR> Undiagnosed deaths - Uganda: (AO Agago, AI Abim) RFI
Archive Number: 20101117.4172
 情報源 New Vision (Uganda) 、2010年11月15日。
Abim で発生した原因不明の病気の流行により、Abim および Agago の両地区の合計 13人死亡した。Abim では、患者 20人のうち 8人が死亡している。隣接する Agago 地区でも、Abim 地区と接する the sub counties of Omiya P'Chua and Paimol で5人の患者が報告されている。Abim 地区保健当局者は、患者 20人のうち 8人が死亡し、2人が隔離され、10人は状態が回復して退院したと述べた。患者は、高熱吐血下血および鼻や耳などからの出血があり、発症後 3-5日で死亡し、感染力が強いと見られると話している。14日の週の終わりに WHO と保健省の担当者チームが現地入りした。採取された検体について、ウガンダウイルス研究所で検査が行われているが、今のところ原因は不明のままである。Ebola, Marburg, and Lassa 除外されており、検体が米国アトランタ Atlanta の CDC に航空機で送付されている。Agago 地区当局の医師は、Abim から報告されているのと同様の感染症により Paimol and Omiya P'Chua で 5人が死亡していると報告した。ここにも調査チームに入ってほしいと話した。医師は Abim Hospital の入院患者の 10%以上が、となりの Agago 地区の患者であることから、Agago で死亡した 5人は、Abim 病院を受診 (入院) したときに感染したのではないかとの疑いがもたれている...
[Mod.JFW- ウガンダ北部で発生したこの原因不明の病気の症状から、ウイルス性出血熱が想起されるが、the Uganda Virus Research Institute は Ebola, Marburg and Lassa fevers を否定している。鑑別診断の範囲は広く、その中には arbovirus などのウイルス感染症、腸チフスや赤痢などの細菌感染症、リケッチア症、マラリアなどの寄生虫感染症などが含まれる]
[Mod.CP- 2008年、重症出血熱の原因となった新種の_Arenaviridae_ ウイルスである Lujo virus (LUJV) が South Africa で分離されている。院内感染を特徴し、ヒトの間で感染流行し、かつてないほどの高い致死率 80% (4/5 cases) を示した。分子学的解析により、それ以前に知られていた Old World arenaviruses (such as Lassa fever virus) とは別の arenavirus であることが判明した。このウイルス感染により、移送された重症のザンビアの初発患者に続いて、南ア国内でも患者が発生している。アフリカの他の地域での Lujo virus 感染は知られていないが、今回のウガンダの出血熱の原因として、Lujo virus の可能性も検討すべきである]
参考項目
Genetic Detection and Characterization of Lujo Virus, a New Hemorrhagic Fever–Associated Arenavirus from Southern Africa(PLOS
地図 Abim and Agago districts in northeastern Uganda
厚労省検疫所 FORTH

● コレラ-ハイチ (2件)
米国
PRO/EDR> Cholera - Haiti (21): USA (FL) 20101117.4171
 情報源 CNN 、2010年11月17日。
最近ハイチからフロリダ Florida 州に帰国した女性 1名がコレラ Cholera と診断されたと、16日に州当局が発表した。今後の発生状況について、引き続き注意していきたいと述べた。 2010年1月のハイチ地震以降、米国とハイチとの間を移動する米国民の数が増加しているという。米国内の整備されたインフラにより、食品や飲料水が糞便で汚染されるリスクは最小限に抑えられており、コレラ感染が拡大する可能性は低い(limiting the potential for the spread of the disease)と述べ、ヒト-ヒト感染もまれであると説明されている。
地図 Florida in relation to Haiti

ドミニカ共和国
PRO/EDR> Cholera - Haiti (20): update, Dominican Rep. conf. alert 20101117.4167
[1] Dominican Republic: spread
 情報源 CNN 、2010年11月17日。
ハイチのコレラ感染流行が、国境を越えてドミニカ共和国に広がり、同国政府は衛生に関する高度注意喚起を行っていることが保健省により明らかにされた。初発の患者は12日にドミニカ共和国に入国した32歳のハイチ人建設作業員で、消化器症状を発症していると 16日に保健省が述べた。10月31日にハイチの自宅に戻っていたが、12日に再びドミニカに戻ったときに、嘔吐と下痢の症状があり、東部のリゾート地 Punta Cana 近郊の Higuey で入院した。状態は安定しており、近く退院の予定である。
[2] Haiti: possible southern peninsula spread
 情報源 Biosurveillance.typepad.com 、2010年11月16日。
Fond des Negres でコレラ感染が疑われる患者が 2名確認されている。Les Cayes では、8日以降渡航歴のない患者のコレラ感染が確定診断されている。今回の症例の感染が確認されれば the southern peninsula における広範囲の感染発生が懸念される。

● 鳥インフルエンザ、ヒト (58)-中国 H5N1
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (58): China (Hong Kong) 20101117.4166
 情報源 Bloomberg Business Week 、2010年11月17日。
香港 Hong Kong で、中国本土で感染したと見られる女性 1名の鳥インフルエンザ H5N1 bird flu [avian A/(H5N1) influenza virus infection] が確認されたと、食品衛生局長が 17日に報告した。このインフルエンザがヒトからヒトへ感染したことを示す兆候はなく、この 59歳の女性の周囲に発病したものもいない。香港政府当局はインフルエンザ対応レベルを "serious " に引き上げたと述べた。この女性は、中国本土への旅行から 11月に香港に戻り、患者の配偶者が (旅行先で) 家禽市場へ行きニワトリを食べたと話していることが明らかにされた。imported case (中国本土からの輸入例) なのか local case(香港での地域内感染例) であるのかについては、発言できる段階にはないと述べた。衛生当局は、中国北部もしくは南部でこれまでに確認されているウイルス株と一致するかについて、検査を進めるとしている。この女性が香港に戻ったのは (11月) 1日のことで、翌日にインフルエンザの症状を発症し、現在も重症の肺炎症状のため入院中であり、集中治療室にいる可能性があると説明されている。女性の旅行中の訪問先は、上海 Shanghai, 南京 Nanjing, 杭州 Hangzhou である。1997年、香港では合計 6人が鳥インフルエンザ感染流行により死亡し、当局は市内のニワトリおよびダックを全数処分している。
[Mod.CP- 今回の症例は the 2nd human case of avian A/(H5N1) influenza virus infection to be recorded in China in 2010 となる。総括すると、中国ではこれまでに 40人の患者が発生し26人が死亡している。初めて患者が確認されたのが1997年の Hong Kong で、2003年に再興した。最も新しい avian A/(H5N1) influenza 症例は、2010年6月の湖北省 Hubei の患者で、この患者は死亡したが、他にヒトでの感染例は発生していない。同様に今回の香港の症例でも感染伝播が拡大する兆候は見られていない。発症が中国本土への長期間の旅行から戻った 1日後であることから、香港で感染した可能性はないと見ていいだろう。肉を食べたことよりも、中国の市場での家禽との接触が感染源として最も可能性が高い]
[* 香港衛生保護センター CHP は ”患者と生きた家禽との接触はなかった” と発表している: (FORTH より)11月2日以来、鼻汁が出始め、熱および咳嗽がにみられ、同12日に Tuen Mun 病院 (TMH) の救急部を受診。14日に持続性発熱と血痰をともなう咳嗽のため、TMH に入院し肺炎と診断された。現在、重体である。女性から採取した鼻咽頭吸引液が、Influenza A(H5N1)に対する検査で陽性であった。患者は10月23日から11月1日にかけて夫と娘と中国本土に旅行していた。その間に、患者は生きている家禽とは全く接触しておらず、農場にも行かなかった。患者の 60歳の夫には、鼻水と喀痰をともなう咳嗽の既往があったが、回復した]

● トマトの病気,Potato spindle tuber viroid-米国
PRO/PL> Potato spindle tuber viroid, tomato - USA: (CA California) 20101117.4174
 情報源: Plant Disease 、2010年11月0日。
原著: First report of natural infection of greenhouse tomatoes by _Potato spindle tuber viroid_ in the United States. Plant Dis. 2010; 94, 1376; DOI: 10.1094/PDIS-07-10-0516.
2009年4月、ロスアンゼルス Los Angles, CA 近郊の大規模温室施設で栽培されていた多数のトマト tomato plants (_Solanum lycopersicum_ L.) に、general plant stunting (short internodes) and foliar symptoms の症状が認められた。痛んだ植物は、spindly shoots のため、脆弱となった ... RT-PCR specific for _Potato spindle tuber viroid_ (PSTVd) により診断された
[Mod.DHA- _Potato spindle tuber viroid_ (PSTVd; type member of genus _Pospiviroid_) は、ポテト、トマト、トウガラシなどの solanaceous crops(ナス科野菜)にとって重要な病原体で、ポテトの spindle tuber (or "gothic") disease やトマトの bunchy top などの原因となる]

● ウマウイルス性動脈炎-アルゼンチン  オランダから
PRO/AH/EDR> Equine viral arteritis - Argentina (03): (BA) ex Netherlands 20101117.4173
 情報源 Horsetalk (New Zealand) 、2010年11月16日。
アルゼンチンの首都周辺地域では、ウマの移動が禁止されている。このきっかけとなった感染流行は、オランダから輸入された精液であることが判明している。3月に San Antonio de Areco, Buenos Aires Province にあるサラブレッド農場で、ウマウイルス性動脈炎 equine arteritis virus (EAV) の感染流行による流産が多発した。
関連項目 20100510.1526
 
● 原因不明の疾患、ラクダ-パキスタン
PRO/AH/EDR> Undiagnosed disease, camels - Pakistan: Thar, RFI 20101117.4170
 情報源 DAWN (Pakistan) 、2010年11月15日。
2週間で 50頭以上のラクダが死亡したが、原因となるウイルス疾患が特定されていない。Thar region では約 1000頭がこの病気に罹患しているとみられている。これらのラクダが発病し始めたのは、Badin 近郊に the annual Urs celebration of Sufi saint Saman Sarkar の期間中開設される1か所のラクダ市場から2週間前に連れて来られた後からのことである。咳とともに鼻出血があり、その後、死に至っている。
[Mod.AS- 記事で示唆されているが CCHF [Crimean Congo hemorrhagic fever] virus in camel disease である可能性は低い; このウイルスは、家畜 [livestock; ラクダのこと?] に病原性を示すことはない。おそらく、パキスタンで最近報告されている、ヒトの CCHF cases に影響された記事と思われる。2009年の数字では、Pakistan's camel population は 93万頭で、そのうちの大部分が、パキスタン (南東部) とインド西部を分ける Thar desert の乾燥地域に生息している]

● 原因不明の疾患,オウム-オーストラリア
PRO/AH/EDR> Undiagnosed disease - Australia (02): parrot 20101117.4165
[1] 20101109.4056 について
 投稿者 Storm Stanford、2010年11月10日。
典型的な ordinary old psittacine circovirus (beak and feather disease) であり、記述のしかたが変わっている (strangely) だけである。BFD/PCD が、何らかの stomach virus と言うのも聞いたことがない。
[Mod.TG- 確かに psittacine circoviral disease (PCD、otherwise known as beak and feather disease)に間違いない。一部で parrot AIDS などと呼ばれているが、これも間違った呼び方であり、a stomach virus についても撤回されることが望まれる]
[2] "stomach virus" は "circovirus" の聞き間違い?
 投稿者 豪・Murdoch University、Dr Mark Bennett BVSc(Hons) MACVSc (Veterinary Pathology) PhD、2010年11月10日。
記事の中で紹介されている教授は、psittacine beak and feather disease virus -- an avian circovirus の世界的権威である Shane Raidal に間違いない。このウイルスは、免疫能は抑制するが、知りうる限り stomach virus ではなく、その名が示すように嘴や羽に変形をもたらす。The moderator's comments は、a "stomach" virus であるとの観点に立ったものであると考えられ、自然に avian bornavirus に思い当たった。おそらくは取材した記者が、誰かの言った言葉を間違って伝えたのだろう。
写真(Heart-breaking photo of afflicted parrot(病気のオウムの衝撃的な)

● べと病、ブドウ-オーストラリア
PRO/PL> Downy mildew, grapevine - Australia: (SA) 20101117.4164
 情報源 ABC News (Australian Broadcasting Corpo South Australiaration) 、2010年11月15日。
South Australia's Riverland では、長期間の湿潤条件が [ブドウの] downy mildew outbreak の悪化を招いている。植物病理の専門家によると、最も感染が深刻な地域は、the Renmark, Barmera, and Monash districts である。
[Mod.DHA- Downy mildew on grapevine の原因となるのは、真菌の_Plasmopara viticola_ である]