2011年5月12日

原因不明の死亡-タイ (07)  
リンパフィラリア症-ウガンダ

● 原因不明の死亡-タイ (07)
PRO> Undiagnosed deaths - Thailand (07): (CM)
Archive Number: 20110512.1459
 情報源 Yahoo UK News 、2011年5月10日。
若い英国人1人を含む7人の旅行者らが死亡したのは、全員が訪れていたタイのホテルで見つかった有毒性トコジラミ駆虫剤 a toxic bed bug pesticide が原因と見られている。2月19日、北部の観光地である Chiang Mai を旅行中であった78歳と73歳の年金生活者夫婦が、Chiang Mai's Downtown Inn の泊まっていた部室で死亡しているのが発見された。2人の死亡は,1月から3月にかけて起きた一連の死亡の中の最も新しい事件で、2週間足らず前にも23歳のニュージーランド女性が死亡していた。タイの当局によると、この高齢者夫妻は数分間のうちに相次いで致死性の心臓発作を起こしたとされていたが、家族らはそのような心臓の問題を指摘されたことはないと主張していた。ニュージーランド女性は、ホテル滞在中の2月3日に大きく体調を崩し、現地の病院に運ばれたものの、翌日心臓の炎症で死亡した。彼女と一緒に旅行し、同じ部屋に宿泊していた2人の健康状態も悪化し、緊急に心臓手術を受けた結果、1人はようやく命をとりとめている。当局はすぐに、これらの死亡が付近のバザールで販売されていた "toxic seaweed" によるものと決め付けたが、ニュージーランド女性の父親が根気強く "隠蔽 cover up" だと訴え続けたことでメディアが動いた。New Zealand's 60 Minutes の番組で放映された取材で、トコジラミ bed bugs 退治用の殺虫剤として使用されている Chlorpyrifos のわずかな痕跡が NZ 女性の宿泊していた部屋から見つかった。宿泊客を装ったレポーターが5階にあるこの部屋からぬぐいとったものが検査された。テストを行った国連の toxicologist は、この若年女性や他の旅行者らの症状から有毒化学物質の過量摂取による死亡が疑われると述べている。NZ やイタリアの専門家らもこの意見を支持している。ホテルオーナーからのトコジラミ対策の指示に従って過量にスプレーした overzealous sprayer ことが、女性の死亡につながったと考えられるとの意見を述べた。Chlorpyrifos が、女性の死亡から3か月も経ち部屋が清掃された後でも確認されたことから、滞在中は高濃度に存在していたことが示唆されると説明した。血液検体から毒物を検出することは非常に困難であり、女性の遺体に対して検査することは有用でないとも述べた ... タイ警察は the Downtown Inn の殺虫作業を請け負った会社を家宅捜索し、公衆衛生相は殺虫作業者に間違いがあったのではないかと述べている。The governor of Chiang Mai はこれらの旅行者の死亡は不運によるものとしている。The Downtown Inn は今も1泊41米ドルで営業を続けている。
[Mod.TG- 患者らが訪れてからこれほど長く residues of Chlorpyrifos が残るのは、通常、殺虫剤の多くがこのような剤型を採用しこの殺虫剤もそうだったのだろう。従って発見された残留物が必ずしも患者らの滞在中にあったものだとは限らない。Chlorpyrifos は白い結晶状の固形物で強い臭いを伴う殺虫剤である。言い換えると、もし配合が間違ったり、過量に使用されたり、希釈されなかったりすれば、ホテルの室内で臭いがしたといえる。水にはあまり溶けないため、通常は作物や動物に使用する前に、油性の液体と混合する。water soluble powders もあるが残留性が低く粉を撒くのと変わりない。Chlorpyrifos は皮膚からは吸収されにくいが、Undiluted hot or molten product(非希釈,加温,融解製品)では吸収されるかもしれない。熱傷の報告はないが molten type of product による熱傷の発生の可能性はある。過量の Chlorpyrifos (of normal, not molten product) が皮膚についた場合は洗い流す必要がある。何人かは生存しているが、その中で化学物質の臭いをかいだり、洗い流したりした報告は目にしていない。消化管から吸収される可能性があり、大量に摂取されれば死亡するので、ホテルで出された食事の汚染原因物質との疑いが浮上する。Excessive exposure (by any route) では、有機リン型コリンエステラーゼ阻害 organophosphate type cholinesterase inhibition の原因となりうる。この場合の症状としては、頭痛、めまい、協調運動失調、筋けいれん、振戦、嘔気、腹部疝痛、下痢、発汗、縮瞳、視力障害、流涎、流涙、胸部圧迫感、多尿、けいれんなどがある。高濃度を長期間吸入すると、直ちに嗅覚に強い刺激を感じ、通常の濃度であっても、嗅覚のあるヒトなら普通は気づくはずである。症状の1つに tightness in the chest があるが、必ずしも a heart attack or another heart issue に関係するわけではない。層である場合もあるが、そうでない場合もある。心臓に何らかの問題を持っていなかったからと言って、Chlorpyrifos による患者とするわけにはいかない。現時点で、a residue があったことは easily explainable であり、heart problems も、化学物質が犯人であることを決定付けるのに十分ではないと考える。further forensics and investigation are in order.]
関連項目 20110423.1273

◎ リンパ系フィラリア症-ウガンダ

PRO/EDR> Lymphatic filariasis - Uganda: RFI 20110512.1458
Elephantiasis in Nakasongola and parts of Masindi district 

 情報源 Uganda Health News, Ultimate Media、2011年5月10日。
Nakasongola and some parts of Masindi district の住民の間にリンパ系フィラリア症 Elephantiasis [lymphatic filariasis] が広がっている。この病気は顧みられない疾患 the neglected diseases の1つである。filarial worms によって伝播される filariasis は、蚊族 mosquitoes が伝播する。貧しく病院にかかることができないアフリカでは、ありふれた病気である。Nakasongola では、住民100人に対して少なくとも 2-4人が感染している。ウガンダの他の地域でも、多くの患者が見過ごされている。足、胸、陰部が腫れる症状が見られる。そのほかには、尿道からの白色の分泌物、睾丸の痛み、肝腫大がある。一部の住民らは、魔術 witchcraft によるものと信じている。
[Mod.EP- Elephantiasis は _Brugia malayi_ または _Wuchereria bancrofti_(バンクロフト条虫)の長期の慢性感染による病気で、ウガンダの病原体は主に後者である。したがって、A sudden outbreak of elephantiasis の発生というのは説明しにくいが、ずっと以前からまん延していたのか、何らかの新たな発生なのか、記事からは分かりにくい。Lymphatic filariasis(リンパ系フィラリア症)はウガンダ国内では北部を中心として endemic であり,学童に対して_W. bancrofti_-specific circulating filarial antigens (CFA) capture test 抗原検査を用いて行われた調査によると、between 0.4 percent and 30.7 percent of schoolchildren が陽性だった。全人口 870万人のおよそ 35%が _W. bancrofti_ のまん延率が1%を超えるこの地域に住んでいると考えられている 。
(Rapid assessment of the geographical distribution of lymphatic filariasis in Uganda, by screening of schoolchildren for circulating filarial antigens. Ann Trop Med Parasitol. 2005; 99(2):141-53)]

● ポリオ (07)
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (07): update 20110512.1462
[1] MMWR 13 May 2011 update (January 2010--March 2011)
Progress Toward Interruption of Wild Poliovirus Transmission --- Worldwide, January 2010--March 2011
 情報源 MMWR 13 May 2011 / 60(18);582-586、2011年5月12日。
[2] Worldwide update as of 11 May 2011[2]
Polio this week - As of Wedn 11 May 2011
 情報源 Polio Eradication website、2011年5月11日。

● 鳥インフルエンザ-オランダ,家きん H7亜型
PRO/AH/EDR> Avian influenza, poultry - Netherlands: H7 20110512.1463
 情報源 Reuters、2011年5月12日。
オランダ政府当局は12日、中部の有機家きん飼育場でこの2か月間で2件目の鳥インフルエンザ Avian influenza の発生が確認されたため8800羽のニワトリを処分することを発表した。Kootwijkerbroek のこの農場から半径3km圏内の60か所の農場についても調査されている。このH7亜型ウイルスが高病原性であるかについては、13日に検査の結果が判明する ... 2011年3月に南部の農場1か所でH7亜型鳥インフルエンザの発生が確認され、約12万7千羽の産卵鶏が処分されたが、後に検査で低病原性 low-pathogenic variant ウイルスであったことが判明している。オランダは、年間にEU生産量の7%の卵を産出し、輸出の2/3をドイツが購入している。

● Taenia ovis、ヒツジ-ニュージーランド
PRO/AH/EDR> Taenia ovis, ovine - New Zealand 20110512.1457
Sheep measles threat rises in shooting season
 情報源 Radio New Zealand News、2011年5月11日。
ダックの狩猟シーズンが再開され、農場のヒツジにとって脅威が増す季節になった。狩猟による脅威ではなく sheep measles によるものである。たくさんの猟犬がヒツジ農場やその他の農村部に入り込み、これらのイヌがちゃんと薬を飲んでいないとすると、sheep and lambs に寄生虫 the _Taenia ovis_ parasite をばら撒くことになる。Sheep measles は、類似の疾患で現在では国内から排除されたとされている hydatids ?と違い、健康上のリスクはない。しかし、死亡したヒツジの体内に目に見えないのう胞が残ると、精肉所で引取りを拒否されるため、農家にとっては痛手となる。食肉産業界では、この病気の排除に懸命であり、the Ovis Management company によると、精肉所におけるラムの感染率は1%未満に保たれている。しかし duck shooting(のシーズン) は1年で最も感染リスクが高まる時期となると言う。sheep measles tablets は獣医師や家畜業者から手に入れることができる。
[Mod.TG- ヒツジは牧草地から tapeworm eggs を摂取し、この卵が横隔膜、骨格筋など様々な筋組織でのう胞を形成する。この肉を生でイヌが食べると、イヌの消化管で成長し約35日間で産卵し、イヌの糞便中に排泄されるサイクルが形成される。ヒツジの生肉を決してイヌに与えないようにすべきである。処理方法には2つあり、1.冷凍 (マイナス10度以下で7日間以上)、2.加熱 (72度以上で全面が変色するまで) である]