2011年6月1日

鳥インフルエンザ H5N1、ヒト alpha-2,6-linked sialic acid (SA) レセプター親和性 PNAS

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト、WHO(2件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (44): Egypt, WHO
Archive Number: 20110601.1679
Avian influenza situation in Egypt -- WHO update 52 FORTH
エジプト保健省は、鳥インフルエンザA型ウイルス(H5N1) の新たな症例を発表した。アレクサンドリア県のアムリア地区に住む30歳の女性で、4月26日に発症し、5月3日に入院し、人工呼吸を必要とする重篤な状態で、5月9日に死亡した。入院時にはオセルタミビルの投与を受けていた。感染源を調べた結果、この症例は鳥インフルエンザウイルスを保有していたと思われる病気の鳥からのウイルスに暴露されたものであることがわかった。これまでにエジプトでは144症例が確認され、48人が死亡している。
地図

PRO/AH> Avian influenza, human (43): Egyptian sublineage 20110601.1675
 情報源 CIDRAP (Center for Infectious Disease Research & Policy) News、2011年5月27日
H5N1 strains in Egypt show increased ability to bind to human cells
エジプト国内の H5N1 鳥インフルエンザ Avian influenza ウイルスは、新たな亜系統 sublineages に枝分かれしたウイルスで、ヒトの下気道の細胞レセプターに対して、より接着しやすくなるよう変異していることがわかった。このことは、パンデミックに進展する可能性が高まったことを意味する可能性もあることが、発表されたある論文の中で報告された。
エジプト、タイ、および日本の研究者らにより、2006年から2009年にかけてエジプトで分離された H5N1 ウイルスについて、発生系統学的解析が行われた。reverse genetics の手法を用いることにより、複数の新たな亜系統株 several new sublineages において、ウイルスのヘマグルチニン hemagglutinin の、ヒトインフルエンザウイルス株のレセプター結合形質 [部位? trait] である、シアル酸 alpha-2,6-linked sialic acid (SA) との、より高いレセプター結合親和性が獲得されていることが分かった。この変異は、ウイルスが、ヒトにおいては、喉頭ではなく下気道に接着し感染することに関与し、マウスにおいても、より強毒となることが示されている。著者らは、 "今回の発見は、α-2,6 SA 特異性の新たな亜系統の新興 emergence of new H5 sublineages with alpha-2,6 SA specificity が、エジプト国内のヒトでの H5N1 インフルエンザウイルス感染の増加に影響した可能性があることを示唆するとともに、パンデミック発生リスクを理解する上で必要なデータを与えた。" と結論している。
The full article
原著タイトル Acquisition of human-type receptor binding specificity by new H5N1 influenza virus sublineages during their emergence in birds in Egypt
抄録 
HPAI H5N1 ウイルスは、ヒト-ヒト感染の有効なメカニズムは獲得していないものの、現在も、中国、インドネシア、ベトナム、およびエジプトの鳥類の間に常在した状態にある。H5N1 に感染したヒトの患者の80%以上が、トリとヒトの間の感染伝播が頻繁な地域で起きている。宿主間で感染循環することで、トリとヒトの間、さらにはヒトからヒトへの感染伝播が容易に起こるようなアミノ酸変化が生まれる可能性がある。ウイルスのヘマグルチニン viral hemagglutinin (HA) のレセプター特異性は、効率的な感染伝播が起こるのに重要な因子とされている。ヒト型レセプター特異性を向上させる、H5 virus HAs における複数のアミノ酸の置換が、患者から採取されたウイルスで確認されているが、その頻度は高くない。一方われわれは、エジプトの新たな亜系統ウイルス new H5 sublineages in Egypt が、鳥類の間で多様化するうちに、レセプター特異性が変化することを示している。これらのsublineages に属するウイルスは、ヒトにおいて、下気道への接着性や感染性が増強されていて、喉頭に対しては認められないことを確かめた。今回の知見が、エジプトのH5N1ウイルスの、パンデミックの可能性の大小を説明することにはつながらないかもしれないが、最近、エジプトで、世界中で最も多くの患者が確認されている理由を説明に役立つ。
要約 
... H5N1ウイルスのヘマグルチニン the viral hemagglutinin (HA) のレセプター親和性が、alpha-2,3- から alpha-2,6-linked sialic acid (SA) (レセプター親和性)に変化することが、H5N1によるパンデミック発生に必須とされている。今回、2006年から2009年にかけてエジプトで分離されたH5N1ウイルスについて、系統発生学的解析を行った。その結果、最近のヒトから分離されたウイルスが、複数の新たな several new H5 sublineages に偏っていたことから、 HAs のレセプター特異性が変化したことが示唆された。reverse genetics の手法を用いたところ、これらの H5 sublineages は、alpha-2,3 SA への親和性を残しながらも、alpha-2,6 SA への結合親和性を高めており、このようなレセプター特異性を生むアミノ酸変異が確認できた。HA residue 192 の1か所、および HA residues 129 and 151の2か所のアミノ酸を変化させた、 Recombinant H5N1 viruses では、ヒトの下気道での接着性および感染性が増強されていたが、喉頭においては (増強は) 認められなかった。この変化は、マウスでも、the mutant viruses による病原性増強として確認できた。興味深いことに、alpha-2,6 SA に対する高親和性を持つこれらの H5 viruses は、鳥類の間でのウイルス多様化 viral diversification の中で発生し、その後ヒトに拡大したものである。今回得られた知見は、new H5 sublineages with alpha-2,6 SA specificity の新興が、その後の、エジプトにおける human H5N1 influenza virus infections の増加の原因となったことを示唆するものであり、パンデミックの可能性 the virus's pandemic potential.を推し量るデータとなるだろう"

● 大腸菌 O104 EU、米国
PRO/AH/EDR> E. coli O104 - EU (07) & USA 20110601.1678
[1] ドイツ: 新たな数字
 情報源 The Guardian, Associated Press (AP) report、2011年6月1日
ドイツ国内の食中毒による患者が、死者16人、重症患者100人超となった ... ドイツ政府当局は当初、スペイン産キュウリが原因としていたが、詳しい検査の結果、菌による汚染はあるものの、感染流行につながる菌ではないことが示されている ...
[2] Spanish cucumbers cleared as vehicle
 情報源 FreshPlaza 、2011年5月31日
Spanish cucumbers are not the source of the _E. coli_ O104 outbreak. ...
[3] オランダ
 情報源 Crienglish.com, Xinhua News Agency report、2011年6月1日
これまでに、オランダ国内で、まれなタイプの大腸菌に感染した人の数は5人であることが、1日公衆衛生研究所から発表された。このうち4人が、消化器症状や腎不全を訴えている。いずれも、最近ドイツを旅行している。
[4] チェコ共和国: 第1例 ドイツから
 情報源 Deutsche Presse Agentur (DPA)、2011年6月1日
5月31日、ドイツ国内で拡大する大腸菌による感染流行による、国内初の患者が確認された、と当局が発表した。ドイツ北部を旅行後、チェコ国内に立ち寄ったばかりの米国人女性の旅行者で、ドイツ国内で野菜サラダを食べていた。
[5] 米国
 情報源 msnbc.com、2011年5月31日
合衆国保健当局は31日、最近ドイツ北部を旅行した米国民2人が、5月第2週以降、1150人以上の感染者と16人の死者が出ている、大規模感染流行の患者であることを確認した。重症合併症を起こし入院となっている ... 長文
[6] 概説
 情報源 Spiegel Online International、2011年5月31日
治療に当たる、腎臓内科部長 the Third Medical Clinic and Polyclinic at the University Medical Center Hamburg-Eppendorf (UKE) の医師へのインタビュー(単時間で病状が変化する、かつて経験したことのない患者が大量に受け入れなければならなかった苦労)など,長文

● 豚熱(豚コレラ)リトアニア  OIE
PRO/AH/EDR> Classical swine fever - Lithuania: (KS), OIE 20110601.1681
 情報源 OIE, WAHID、2011年6月1日
Classical swine fever, Lithuania、Immediate notification
感染開始時期 2011年5月31日
前回流行時期 2009年8月
原因ウイルス Classical swine fever virus, type 2.1
新たな感染流行
発生地  Pig farm JSC Berzs kompleksas, Kaunas, Jonava, Kaunas 農場
感染した種 ブタ Swine
Susceptible 15 919
Cases 15 919
Deaths ***
Destroyed ***
Slaughtered ***
***Not calculated because of missing information

● ナツメヤシの病気,Al-Wijam 病 エジプト
PRO/PL> Al-Wijam, date palm - Egypt (02): clarification 20110601.1680
 投稿者 サウジアラビア・Taif University 、Dr. Hayam Abdelkader2011年5月31日
20110519.1512 について。
エジプトにおいて,ナツメヤシの Al Wijam disease 病の発生は確認できていない。電顕では病原体を確認できなかった。DNA sequencing は行われていない。

● 炭疽 アルゼンチン
PRO/AH/EDR> Anthrax, bovine - Argentina: (BA) 20110601.1676
 投稿者 アルゼンチン・Laboratorio Azul Diagnostico SA、Dr Ramon Noseda、2011年5月31日
5月21日、the Azul [Buenos Aires province] Alert and Response Program zone, において炭疽 Anthrax 感染が発生した。特に、1989年以降5件の感染流行が発生している、the Avenamiento no.5 road 沿いの the Paraje El Destierro で著しい。 80日以上肥育場内に corralled されていた、84頭の成牛の群れのうち、1頭がすべての開口部から出血しながら、突然死した
[Mod.MHJ- なぜ corralled animal が炭疽に感染したのか、謎である]

● ウシ新生児汎血球減少症 ワクチン原因説
PRO/AH> Bovine neonatal pancytopenia: vaccinal etiology 20110601.1671
 情報源 Vaccine (Article in press, 12 May 2011) abstract、2011年5月31日
原著タイトル Bovine Neonatal Pancytopenia: Is this alloimmune syndrome caused by vaccine-induced alloreactive antibodies? Vaccine (2011), doi:10.1016/j.vaccine.2011.05.012
要約 
ウシ新生児汎血球減少症 Bovine neonatal pancytopenia (BNP) は、2007年にドイツおよびその周辺国で初めて確認された新興疾患である。生まれたばかりの子牛 newborn calves が罹患し、汎血球減少症、激しい出血と高い致死率を特徴とする。これまでに、感染や毒物は原因として除外されている。その一方で、母親から抗体を子牛に与える初乳開始後に発生することが分かっている。ヒトに置き換えると、BNP は、母体由来の抗体という alloreactive による疾患ではないかと考えられる。BNP と、 母牛に接種された牛ウイルス性下痢症 bovine virus diarrhoea (BVD). ワクチンの間には、はっきりとした関連性が認められている。今回、同ワクチンの BNP 発病に果たす役割について検討した ...
結論 
BVD vaccine has the potential to induce BNP associated alloantibodies.