2011年9月7日

◎ ボツリヌス症-米国 創傷、薬物関連
バベシア症-米国: 献血

◎ ボツリヌス症-米国 創傷、薬物関連
PRO/EDR> Botulism, wound, drug-related - USA: (TX)
Archive Number: 20110907.2730
[1] ヘロイン常習者3人が入院
 情報源 KRQE (New Mexico)、2011年9月2日。
ニューメキシコ州保健局 The New Mexico Department of Health [NMDOH] は、創傷ボツリヌス症 Botulism と見られる、3人のヘロイン常習者の入院患者の調査に協力している。ボツリヌス症は、まれであるが死亡する可能性のある病気,wound botulism は創部に感染したボツリヌス菌が産生するトキシン toxin が原因で発症する。この3人はテキサス Texas 州で入院となっているが、汚染されたヘロインを使用していたと見られている。当局者はボツリヌス症を疑わせる症状や所見があり、特に薬物注射の既往がある場合は注意するよう医療関係者らに呼びかけている。
[2] 患者は4人に
 情報源 El Paso Times、2011年9月7日。
市公衆衛生当局 El Paso Department of Public Health は、新たな wound botulism が疑われる患者の調査を開始しており、この疾患が疑われる患者は合計4人となった。今回の事例は、 black tar heroin の使用歴のある注射用薬物常習者であったことが6日明らかにされた ... 保健当局は、メキシコから輸入される a tainted batch of black tar heroin がボツリヌス症の原因ではないかと見ている。
[Mod.LL- 創傷ボツリヌス症 Wound botulism は、ボツリヌス菌 _Clostridium botulinum_ の芽胞が創傷に付着・発芽し、生体内で神経毒 botulinum neurotoxin が産生された場合に発生する。the wound botulism 患者の多くが注射による薬物常用者 injecting drug users (IDUs) である。意図してあるいは誤って、皮下や筋肉内に注射を行う IDUs では特に感染が起こりやすい。以前から Black tar heroin が米国や欧州における集団発生 clusters of wound botulism に関わってきた。このヘロインはアヘン opium poppy 栽培地域に近いメキシコを中心とした急造の製造所で生産される gummy black substance (粘着性の黒色物質) で、皮膚腫脹 skin popping と表現されるやり方で皮下に注射されることが多い。注射部位は判りにくくなるか、あるいは壊死や膿瘍を形成する。薬物が粘調であるため様々な希釈液 ("cutting" agents) が必要とされ、これがボツリヌス菌芽胞による感染源になると考えられる。ある調査によると wound botulism の発生は皮膚の清浄度、注射器具 the injection paraphernalia の衛生、針の共有には関係しない。医師は下行性の弛緩性麻痺 descending, flaccid paralysis の患者を診察する場合には、常にボツリヌス症を考える必要がある。抗毒素 Botulinum antitoxin は、病初期に用いればどの病型に対しても症状の軽減に有効であり、細菌学的検査の結果を待って使用が遅れてはならない。wound botulism の患者では、病原菌の除去と antitoxin treatment 後の再発回避のため、抗生物質治療外科的切除が必要である。ボツリヌス菌 _C. botulinum_ はペニシリン benzyl penicillin とメトロニダゾール metronidazole に感受性がある。Toxin type A (one of 7 types of botulinum toxin) は、米国内では食中毒と創傷ボツリヌス症のいずれにおいても,最も多い原因トキシンとなっている。toxin type A によるものは最も重症で、麻痺の進行が早く、高率に患者への人工呼吸器の装着が必要となる。すべてのタイプのトキシンは、運動ニューロン末端のシナプス前コリン作動システムに作用し、神経筋ジャンクションのアセチルコリン伝達をブロックする]

● バベシア症-米国: 献血
PRO/AH/EDR> Babesia - USA: blood supply 20110907.2729
US blood supply vulnerable to _Babesia_ infection spread by ticks
 情報源 PRNewswire-USNewswire、2011年9月6日。
原著 Transfusion-Associated Babesiosis in the United States: A Description of Cases. Ann Intern Med. 5 Sep 2011.
輸血を介した,ダニ媒介性の赤血球寄生虫のバベシア _Babesia_ の感染が起きていることが、過去30年間のデータに関する調査で明らかになった。輸血関連のバベシア症は、1979年に初めて存在が確認されて以降増加している。the Annals of Internal Medicine に 6日掲載されたこの研究結果によると,1979-2009年の間に発生した 159人の transfusion-related babesiosis のうち、その多く (77%) が2000年から2009年にかけての患者だった。感染していながら体調に異常を感じていない献血者を拾い上げる,FDA が認可したスクリーニングのためのバベシア症検査はない。死亡する可能性もあるバベシア症は、輸血に関連して発生することもあるが治療可能である。重篤な転帰として多臓器不全や死亡があり、脾臓を摘出した患者や高齢者、免疫不全の患者に最も発生しやすい。著者はスクリーニング検査の開発などの対策を求めている。現在、複数のメーカーが献血時スクリーニング用の検査 FDA-approved tests for _Babesia_ の開発を進めている ... 
この病気はダニによって感染することが最も多く、ダニの刺咬対策も重要である ... 米国内のダニによるバベシア症患者は、ほとんどが the Northeast and the upper Midwest の7つの州 (in parts of Connecticut, Massachusetts, Minnesota, New Jersey, New York, Rhode Island, and Wisconsin) で発生し、1年中で暖かい季節に集中する。一方、輸血関連の患者は19の州で年間を通じて発生している。症状が軽いものだけでなく、重症患者であっても医師が想起しない場合はバベシア症の診断がつきにくく、同じく赤血球に感染するマラリアと間違えられることが多いと説明する。2011年 1月から届出疾患 nationally notifiable disease になった
[Mod.EP- スクリーニング検査がないため、著者らは輸血歴のある、溶血性貧血を伴った発熱患者ではバベシア感染を考慮すべきただと主張している。唯一の診断法は、マラリア同様、厚層塗抹標本の鏡検である。PCR for _Babesia_ spp の検査や、鏡検によるマラリアやバベシアの専門診断は、どこの病院でも行えるものではなく、可能な施設に検体を送らざるを得ないため、診断は難しい]

● 口蹄疫-イスラエル,ナミビア
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Israel (15): OIE, resolved 20110907.2734
Foot and mouth disease, Israel, Follow-up report No. 6 (Final report).
 情報源 OIE-WAHID Weekly Disease Information Vol. 24 - No. 36、2011年9月6日。
感染開始時期 2011年4月17日 [an earlier single outbreak started 1 Mar 2011].
終息時期 2011年9月1日
原因ウイルス Foot-and-mouth disease virus, Serotype: O.

PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Namibia (02): (OD) buffalo, conf, RFI 20110907.2731
 情報源 AllAfrica, New Era report、2011年9月7日。
2頭のバッファローが検査の結果、口蹄疫 foot-and-mouth disease (FMD) に感染したことが判明し、Okakarara [Otjozondjupa Region] の住民らは21日間の検疫期間中、生活の糧であるウシの販売を禁止されている

● 原因不明の真菌、アーモンド-スペイン
PRO/PL> Undiagnosed fungi, almond - Spain: (AN Andulsia) 20110907.2728
Almeria almond production fell 70 percent
 情報源 FreshPlaza、2011年9月5日。
[小規模栽培農家の組合である] the UPA-Almeria は、州内のアーモンド生産量が70%減少したことを認めた。原因は、霜により開花が妨げられたことと、真菌の発生である ...
[Mod.DHA- Almond (_Prunus dulcis_) やその他の核果 (_Prunus_ species) には、多種多様の病原真菌が感染するが、上記記事では、他の核果には触れられていない]