2012年10月3日-4日

新型コロナウイルス サウジアラビア、英国 Eurosurveillance、MMWR
狂犬病 スイス・米国から、ペルー
東部ウマ脳炎、ヘビ

● 新型コロナウイルス サウジアラビア
PRO/AH/EDR> Novel coronavirus - Saudi Arabia (11): clin. lab. & epi. investigations
Archive Number: 20121004.1324712
[1] 英国 UK - HPA investigation findings, Eurosurveillance
 情報源 Eurosurveillance Volume 17, Issue 40, 4 Oct 2012、2012年10月4日
Rapid communications
The United Kingdom Public Health response to an imported laboratory confirmed case of a novel coronavirus in September 2012
3ヶ月前にサウジアラビアで死亡した患者との関係が非常に強い、新型コロナウイルスが、重症呼吸器疾患のためにカタールからロンドン London の集中治療施設に搬送された、生来健康だった患者から 9月22日に確認された ... この患者との接触から 10日間が経過した 64 close contacts の中で、重篤な症状を発症したものはなく、13人に軽い呼吸器症状 mild respiratory symptoms が見られたのみであった。症状があり検査を受けた接触者 10人からは、The novel coronavirus は分離されなかった。2003年に世界中で 8422 cases and 916 deaths が発生した The outbreak of severe acute respiratory syndrome (SARS) を彷彿とさせた。英・健康保護局 the Health Protection Agency (HPA) in London, United Kingdom (UK) は、11日前にカタールからロンドンの病院に移送された 1人の患者の a novel coronavirus 感染を確認した。この新型コロナウイルスにより重症急性呼吸器疾患を発症した患者としては 2人目で、初めての患者は、6月に死亡したサウジアラビア人の患者だった。これらの患者の詳細について報告する ... この患者は、[31 Jul 2012 to 18 Aug 2012 に] サウジアラビアを旅行した生来健康な 49歳の男性で、男性の他に同行者の数人にも鼻漏や発熱があった (Figure 1)。
8月18日カタールに入り、 3日後に症状は治まっていた。カタールでは、ラクダやヒツジのいる農場に滞在したが、家畜と直接接触したことはなかったと報告されている。9月3日に軽い呼吸器症状があり、6日後に両側の肺炎を発症したため入院が必要となった。その後状態が悪化し、気管内挿管と人工呼吸器装着が行われた。
9月12日に航空機 air ambulance によりロンドンの集中治療施設に移送され、急性腎不全の合併が確認された。同 20日、さらにロンドンの別の病院に転院している。 ProMED-mail [20120920.1302733] において、原因不明の肺炎と腎不全により死亡した 1名のサウジアラビア人患者から、コロナウイルス (暫定的に hCoV-EMC と呼ばれている) が確認されたと報告されたことを受け、ロンドンの患者の novel coronavirus infection が調べられた。患者の気道から採取した検体に対して、9月21日に a pan-coronavirus PCR assay を行い、同 22日に実施の the PCR amplicon の塩基配列解析 sequencing で a sequence が先にサウジアラビアで死亡した患者で確認された the hCoV-EMC にきわめて近いものであることが分かった。このウイルスは the genus beta-coronavirus に属し、コウモリ・コロナウイルス bat coronaviruses と最も近い関係にあった。 以下、Figure 1. Timeline of disease and travel history of novel coronavirus case, London, August to September 2012 など
[2] 英国 UK - Clinical and laboratory findings, Eurosurveillance Rapid communications
Severe respiratory illness caused by a novel coronavirus, in a patient transferred to the United Kingdom from the Middle East, September 2012
 情報源 Eurosurveillance, Volume 17, Issue 40、2012年10月4日
導入
コロナウイルスは1960年代に初めて発見され、ヒトの軽い呼吸器感染の原因となることが知られている。大型の RNA viruses で、家畜やペット、コウモリなどの幅広い動物種に感染する。限られたサーベイランスではあるが、コウモリはその広大な生息域や種の違いにより、最も多様性のあるコロナウイルスを保有し、the natural reservoir であることが示唆されている。2003年の The severe acute respiratory syndrome (SARS) outbreak でも、動物からヒトに種を超えて感染し、ヒトからヒトに深刻な疾患を引き起こす可能性が示されていた ... 病歴、診断法 (除外診断された微生物)、ウイルスの検出 (PCR 結果、系統樹) など
[3] サウジアラビア Saudi Arabia - ongoing investigations, newswire
 情報源 Ottawa Citizen、2012年10月4日。
WHO the World Health Organization and the Center for Infection and Immunity at Columbia University in New York などの専門家らが 3日、保健省の要請により、調査のためリャド Riyadh に到着した。the U.S. Centers for Disease Control in Atlanta のチームも現地入りする。これまでに確認されているのは、サウジアラビアとカタールの 2人のみで、重症呼吸器疾患と腎不全を発症している。 2つの国で数ヶ月の期間を隔てて 2例の患者が発生していることが、ウイルスの感染源の特定は困難と見られている ... ハッジでの流行への懸念、ラクダとヤギが感染源の候補となっていること、など。
[4] 米国 USA - current recommendations, MMWR
Severe Respiratory Illness Associated with a Novel Coronavirus -- Saudi Arabia and Qatar, 2012
 情報源 MMWR Early Release 4 Oct 2012 / 61(Early Release);1-2、2012年10月4日
[Mod. MPP- 重症疾患の診断がつかず、検査機関で未知の病原体 novel organisms が確認された場合には、速やかに情報を共有することの大切が強調されている。治療を担当した医療従事者が、同じ地域で、腎不全を伴う重症呼吸器疾患により死亡した 1例目の患者の報告を目にしたことが、新たなウイルスの発見につながった ... 残念なことだが、経済的な損失などを恐れ、各国は発見された novel pathogens の発表に消極的である。 these 2 cases (Saudi Arabia and Qatar) の発生国の背景を知るために血清学的調査を実施することは、決して過剰反応ではない。ヒトおよびヒト以外の保有動物の血清学的調査により、感染の蔓延や possible animal reservoirs が明らかになるかもしれない]

● ポリオ パキスタン、アフガニスタン
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (09): Pakistan, Afghanistan, global VDPV 20121004.1324273
[1] パキスタン Pakistan, アフガニスタン Afghanistan MMWR update
Progress Toward Poliomyelitis Eradication -- Afghanistan and Pakistan, January 2011-August 2012
 情報源 MMWR 5 Oct 2012 / 61(39);790-795、2012年10月4日
1988年に the World Health Assembly はポリオ Poliomyelitis 根絶を目指し、the Global Polio Eradication Initiative (GPEI) が設立されたが、 2012年になっても アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア国内のポリオウイルス感染伝播 the transmission of indigenous wild poliovirus (WPV) はなくならず、ついに the World Health Assembly はポリオ根絶を完了させることは、公衆衛生上の緊急課題であると宣言した。 2011年、アフガニスタンで 80 WPV cases が確認されている (25 WPV cases in 2010); 2012年の8月までに確認されたのは 17 WPV cases (34 WPV cases for the same period in 2011) だった。.パキスタンでは 198 WPV cases in 2011 (144 WPV cases in 2010); 2012年8月までに 30 WPV cases (同88 WPV cases) であった
[2] Global update as of 3 Oct 2012 (including VDPV)
 情報源 Global Polio Eradication Initiative (GPEI)、2012年10月3日

● 狂犬病 スイス・米国から、ペルー(2件)

スイス
PRO/AH/EDR> Rabies - Switzerland (02): ex USA, bat, human 20121004.1324616
U.S.-Acquired Human Rabies with Symptom Onset and Diagnosis Abroad, 2012
 情報源 MMWR 5 Oct 2012 / 61(39);777-781、2012年10月2日
2012年 7月8日、米国民 1名が、右腕のけいれん、不安感、倦怠感の精査のため、ドバイ Dubai, United Arab Emirates の病院に入院となった。翌日患者は興奮状態 agitation の後、昏睡状態に陥った。同31日に死亡した。CDC 等による調査の結果、この患者は2012年3月にカリフォルニア California 州でコウモリから狂犬病に感染したと結論づけられた [20120829.1270822]

ペルー
PRO/AH/EDR> Rabies - Peru (08): (PU) canine, bovine, porcine, human 20121003.1320926
 情報源 RPP Noticias [in Spanish]、2012年9月28日
地域保健当局 the Puno Regional Health Directorate は、2012年に地域内で合計 6例の狂犬病 rabies が確認されていることを明らかにした。このうちの1人は、病院 the Carlos Monge Medrano Hospital in the city of Juliaca の 3階でイヌの咬傷を受け死亡した Macusani の患者 [20121002.1319488] である。6人の患者のうち、3人がイヌによる咬傷で、他の 2人はブタとウシによる咬傷だった。
[Mod.TG- ウシの狂犬病感染も耳にすることがある。ウシからの感染で多いのは、獣医師やオーナーなどが、のどに何かを詰まらせていると思い、それを取り除こうとした時に感染するものである。ウシは狂犬病に感染すると独特なうなり声を発し、のどに何かを詰まらせていると誤解されるのである。哺乳動物、特に温血動物なら、すべて狂犬病に感染する可能性がある。ブタの感染の報告は多くはないが、感染し他の動物同様、ウイルスを伝播する能力も持っている]

● インフルエンザ 米国、ネパール(2件)
米国
PRO/EDR> Influenza (97): USA & worldwide, CDC update 20121004.1324516
 情報源 MMWR Weekly 61(39);785-789、2012年10月5日
2012年5月20日から9月22日までの間に、米国内で季節性インフルエンザの低レベルの活動性が確認されていたが、夏季には前年を超える活動性が検知された。 Influenza A (H1N1)pdm09 (pH1N1), influenza A (H3N2), and influenza B viruses は世界中で確認されており、米国内でも散発的に発生した。2012年7月、influenza A (H3N2) variant viruses (H3N2v) がインディアナ Indiana 州で初めて確認され、7月 12日以降、合計 306 cases from 10 states が報告されている。This report summarizes influenza activity in the United States and worldwide since 20 May 2012.

ネパール H1N1PDM9
PRO/EDR> Influenza (96): Nepal (KT) H1N1pdm9 20121003.1322298
 情報源 The Global Times (via Xinhua)、2012年10月3日
パンデミックインフルエンザウイルス pandemic influenza A(H1N1)pdm9 が、ネパールの首都 Kathmandu および首都以外の 3つの地区で確認されていることが 3日、医師ら the Sukraraj Tropical & Infectious Disease Hospital によって明らかにされた。 カトマンズと 中西部 districts of Chitwan, Sindhuli and Khotang で採取された血液検体から検出された。2009年に、ネパールで確認されていた

● アスペルギルス髄膜炎 米国
PRO/EDR> Aspergillus meningitis - USA (02): contaminated drug 20121004.1322744
 情報源 Associated Press、2012年10月3日
ステロイド注射を受けた 5つの州の 26人がまれな致死性髄膜炎に感染し、このうち 4人が死亡している。18例がテネシー Tennessee 州で発生しており、Nashville のあるクリニックに問題のステロイドが最も多く納入されていた。 Massachusetts の専門薬局 a specialty pharmacy である、 the New England Compounding Center が製造したもので、現在同局は回収を行っている。3 cases in Virginia, 2 in Maryland, 2 in Florida, and 1 in North Carolina の患者が報告されており、死亡したのは 2 in Tennessee; Virginia and Maryland had 1 each 、と the CDC は発表している。報告され始めたのは 7月で、この24時間に新たに5例の患者が確認された、と 3日当局者が述べた。今回の疾病に関係すると考えられる真菌に汚染されていた可能性がある、背中への注射に使われた少なくとも 3種類の異なる製品について調査が行われている。いずれの製品による可能性も否定されていないが、最も疑われているのは back pain の治療に用いられることが多いステロイド薬である。
[Mod. LL- 今のところ、製剤から真菌が検出されていない。アスペルギルスの種についても記載がない]
関連項目 20121002.1320024

● サルモネラ感染症 オランダ、米国
PRO/AH/EDR> Salmonellosis - Netherlands, USA (02): st Thompson, alert, recall 20121004.1322080
 情報源 eFoodAlert、2012年10月3日
CDC, FDA, and USDA 各局は、現在発生中で、オランダの感染流行との関係が示唆される、サルモネラ感染症 _Salmonella [enterica_ serotype] Thompson の調査を行っている。9月に 27州の 85 cases of a single genetic type of _S._ Thompson を調査した ... 9月28日にオランダ食品監視当局 the Dutch Food and Consumer Product Safety Authority は、Foppen Paling en Zalm 製造のスモークサーモンの回収を発表している
関連項目 20121002.1320025

● 手足口病 インド
PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease - India: (WB) 20121003.1322192
 情報源 The Times of India, Kolkata、2012年10月3日
コルカタ Kolkata の小児科医らが、かつて経験したことがないほど多数の手足口病 hand, foot and mouth disease [HFMD] の患者を診察している

● 東部ウマ脳炎 ヘビ

PRO/AH/EDR> Eastern equine encephalitis: snakes as virus harbors? 20121003.1322621
 情報源 Science Daily、2012年10月1日
野生のヘビが、蚊族が媒介する東部ウマ脳炎ウイルス eastern equine encephalomyelitis virus (EEEV) の宿主として、次期シーズンまでのつなぎ役 "bridge" の役割を果たしている可能性があることが、常在地域である the Tuskegee National Forest in Alabama を調査中の研究者らによって明らかにされた。主に早春に、ウイルスに感染したヘビを吸血した蚊族が、ウイルスのキャリアとなると想定されている。研究者は、ウイルスがどのようにして厳しい冬を越すことができるのか、頭を悩ませてきた。新たに、感染サイクルの中に今回のリンクが加えられることにより、ウイルスに対する有効な対抗手段を手に入れることができるかもしれない。今回の研究結果は、 1日にオンラインで発行された the American Journal of Tropical Medicine and Hygiene に掲載され、12月には print issue でも発行される。以前にも実験室的に EEEV に感染したヘビが、冬眠中もウイルスを血液中保持することは示されていたが、野生の捕獲されたヘビの血液中の EEEV が確認されたのは初めてである

● ポテトの病気、Bacterial ring rot 米国
PRO/PL> Bacterial ring rot, potato - USA: (ID) 20121004.1322810
 情報源 The Grower、2012年10月1日
Potato ring rot reappears in Idaho
アイダホ Idaho 州で、これまでにも繰り返されてきた Bacterial ring rot が発生している

● 小麦・ライ小麦の病気、Stripe rust スイス
PRO/PL> Stripe rust, wheat & triticale - Switzerland 20121004.1322743
 情報源 Proplanta [in German]、2012年9月23日
Stripe rust: return of a wheat disease
スイス北部アルプス the Alps 地方の小麦およびライ小麦の生産地域に、10年ぶりに stripe rust が発生している

● 流行性出血病 米国、シカ科
PRO/AH/EDR> Epizootic hemorrhagic disease, cervids - USA (19) 20121003.1322548
[1] West Virginia:Saturday Gazette mail、2012年9月29日。
[2] North Carolina:Winston-Salem Journal、2012年10月1日。
[3] Pennsylvania:News Channel 25、2012年10月1日。

● 炭疽 米国
PRO/AH/EDR> Anthrax, livestock - USA (03): (ND) case reported 20121003.1322160
 情報源 KFYR TV News、2012年10月1日
ノースダコタ州立大学獣医学診断研究所 NDSU's [North Dakota State University] Veterinary Diagnostic Laboratory で、2012年の州内で初めての炭疽感染 anthrax が確認された。Stark County の肉用牛 1頭が炭疽と診断された