2016年12月20日

ハフ病-ブラジル (03)
ハンタウイルス-米国 南北アメリカ (46)
メタノール中毒-ロシア バスローション,死亡
リッサウイルス抗体,コウモリ-スウェーデン

● ハフ病-ブラジル (03) 
PRO/AH/EDR> Haff disease - Brazil (03), clarification, more cases
Archive Number: 20161220.4710424
[1]  20161218.4707549 に関し。
投稿者 ProMED-PORT Moderator ・Rodrigo Angerami 2016年12月19日
バイア州政府当局 the Government of Bahia [Directorate of Epidemiological Surveillance, Health Secretariat of the State of Bahia 16 Dec 2016] によれば,現在までに,脊髄炎と黒色尿などの症状が認められた患者は 12人である。しかし,今回のイベント this epidemiological event の主症状は,脊髄炎 myelitis ではなく,筋炎 myositis である。
Mod.TG 注- 脊髄炎は,脳とその他の身体部位との間をつなぐ橋の役目を担う中枢神経系の一部である,脊髄の白質または灰白質の感染・炎症である。ハフ病では筋炎の症状も認められる。筋炎は,筋肉の炎症を指す用語で,筋力低下,腫脹,痛みなどが主な症状である]
[ Mods.JH/MPP 注- これまでの投稿で,筋炎または横紋筋融解症 rhabdomyolysis というべきところ,誤って脊髄炎と記述されていた。ハフ病の臨床報告のほとんどで,黒色尿と横紋筋融解症が主な症状と述べられている。おそらく,横紋筋融解症は筋炎から生じると考えられるが, "acute alimentary myositis 急性消化管筋炎" の用語を含む報告もあり,これは明らかにハフ病とは別の症候群と考えられる。今回のアウトブレイクについての ProMED への最初の投稿 20161218.4706067 で,現症について,魚類の摂取が関係する横紋筋融解症の家族と表現されたことで,ハフ病が疑われており,次の[2] では,激しい筋肉痛と濃色尿のある,7症例が報告されている]
[2]
投稿者 EpiCore Global Surveillance Project 2016年12月19日
先週の11例に加え,新たに 7例の原因不明の激しい筋肉痛と濃色尿の症例について,市保健当局 the Municipal Health Department (SMS) への報告があり,合計患者数は 18例となった。16例が Salvador の患者で,Valença, Baixo Sul Baiano からも報告があった。原因がはっきりしない突然の筋肉痛と,筋肉など収縮する組織細胞内の酵素である CPK [creatine phosphokinase] レベルの変化が認められている ... 患者の一部が食べたと報告している,魚類 the bull's eye fish, also known as Arabaiana との関連が疑われている。州北部沿岸地域の Guarajuba の同魚類を食べた後に症状が現れたとする一家族の報告を受け,現地の漁業関係者らは,同製品を水とホルムアルデヒドに入れて包装した販売者らを非難している。これらの患者は現在,未解明のアウトブレイクによる急性筋肉痛(の患者)と呼ばれている。[Fri 16 Dec 2016],州保健当局 the State Health Department は,Bornholm Disease による症状と仮定した治療法について解説した,疫学注意情報 an epidemiological alert を発表した ...
Mod.TG 注- 現状は Haff disease に矛盾しない fit と思われるが,鑑別診断として,ボルンホルム病 Bornholm disease も候補に挙げられている。しかし,魚類の摂取は,ハフ病とは関連性があるが,ボルンホルム病には関係しない ... ボルンホルム病は, まれな,肋間筋と,肋骨にも及ぶウイルス感染症で,これに沿った肺にも感染が波及することもある。この病態は,(流行性)胸膜痛 pleurodynia, or epidemic pleurodynia と呼ばれることもある。
症状
ボルンホルム病の主な症状として,激しく刺すような胸痛 severe stabbing chest pain で,深呼吸,咳,急激な動作により増悪することがある。痛みの程度に変化が見られる傾向があり The pain tends to come and go,痛みは15~30分続く。ボルンホルム病では,腹痛,発熱,頭痛,咽頭痛,筋肉痛を伴うことがしばしばで,これらの症状は突然発症し,治療を必要とするほどではないが,消失まで数日間かかる。また再発することもある。
感染拡大経路
ボルンホルム病は,エンテロウイルスグループ,なかでもコクサッキー B ウイルスを原因とし,糞口感染の形をとる。より一般的ではないが,かぜのように気道からの飛沫によって感染する場合もある。便や,咳やくしゃみなどで鼻や口から多量に排出される微小な飛沫の中に,ウイルスが存在する。手,飲料水,食品などがウイルスに汚染される。また,気道からの飛沫が空中を漂い,環境中に落下し表面を汚染する。この汚染された部分を触った手が,他の部分に触れ,ウイルスを拡げる ... 以上は,NHS UK  からの抜粋]

● ハンタウイルス-米国 南北アメリカ (46)
PRO/AH/EDR> Hantavirus update - Americas (46): USA
Archive Number: 20161220.4710663
情報源  Navajo Nation Hantavirus Surveillance Report 2016年10月
目的,注目点,データ ...
結論 1992年11月から2016年5月までの, 108 potentially Navajo HPS (hantavirus pulmnary syndrome ハンタウイルス肺症候群) cases についてまとめた報告である。 男性に比べ,女性は死亡のリスクが高かった。特に,40-69歳のグループで最も高かった。約半数の症例が,Eastern Agency で発生した。患者の大部分が,自宅および周辺でマウスに暴露していた。また多くの症例が,標高 1800-2100m の piñon/juniper woodland and/or high desert areas において,トレーラーハウス mobile homes に居住していた。

● メタノール中毒-ロシア バスローション,死亡
PRO/EDR> Methanol poisoning - Russia: (IK) bath lotion, fatal, alert
Archive Number: 20161220.4710121
[1] バスローションの飲用による中毒で 41人が死亡
情報源 Daily Mail 2016年12月19日
バスローションの飲用による中毒で,ロシアで41人が死亡した。イルクーツク市 the Siberian city of Irkutsk で,このほか 16人が入院となり,多くが重症である ... 死亡した患者は,メタノール中毒による急激で苦しんだ上の死亡だったと説明されている。メタノールを飲むと,体内で代謝されてホルムアルデヒドになり,さらにホルム酸とその化合物に変わる。こえらは,ヒトの中枢神経系に毒性を示し,失明,昏睡,死亡の原因となる ... 患者らが飲んで中毒になったのは,サンザシ hawthorn を原料とする Boyaryshnik と呼ばれるバスローションで,中にアルコール成分のメタノール methanol or methyl alcohol が含まれている。患者らは,バスローションであることを知ったうえで飲用していたのかはわかっていない。イルクーツク市内のキオスクなどで売られていた。市近郊の民家 a dacha で違法に製造されていた。同じ場所では,ウォッカも偽造されていた。警察関係者は : "Boyaryshnik liquid 以外に,Tsarskaya Okhota ('tsar's hunt') and Finlyandia Serebristaya ('silver Finland') vodkas, and a few other brands, も発見された." と述べた ... 人口 60万人弱のイルクーツク市 Siberian city of Irkutsk は,冬季には気温がマイナス 20℃まで下がる ...
[2] アルコール飲料の販売制限のない地域
情報源 MSN.com, The Washington Post report 2016年12月19日
 ... 患者の大部分が Novo-Lenino 近郊の住民だった。アルコール飲料の販売制限のない地域で,アルコールを含む安価な香水や化粧品類 facial toner が売られている,と報じられている ... ロシアではくりかえし,アルコールの代替品の摂取による中毒が発生している。正規品の代わりに,安くつく自家製アルコールを飲むことが一般的に行われている。
原文 [Google 翻訳] 参照願います。
Mod.TG 注-  ... Methanol (wood alcohol) は,木の分解蒸留 the destructive distillation of wood により生成される。メタノール中毒の集団発生 Epidemics of methanol toxicity は,メタノールが混入した,ウィスキーその他のアルコール製品の摂取の結果として起きる。2種類の有毒代謝産物,formaldehyde and formic acid がメタノール中毒の原因となる。排泄率. The elimination rate depends は体内の葉酸プール the folate pool によって決まる。ヒトを含む霊長類は一般にプールが小さく,他の動物種に比べてメタノール中毒を起こしやすい。メタノールは,不凍液や塗料など including antifreeze, windshield washer fluid, Sterno canned heat, shellacs, various paints, paint removers, varnishes, duplicating fluids, and gasoline additives,様々な形で使われている。ティースプーン 3~4杯分にあたる 15ml の 40%溶液を摂取後に死亡した例も報告されているが,一般には最小致死量は 30ml と考えられている。500-600ml の摂取でも,積極的治療により救命の可能性はある。ただし,たった 10ml でも失明する恐れもあり,個人の耐容能などに依存する。メタノールは消化管から速やかに吸収され,30 ないし 90分後に血中濃度がピークとなる。各組織に分布するが,硝子体液と視神経は高濃度となる。最も高濃度なる組織は,腎,肝,消化管で,脳,筋肉,脂肪組織の濃度は低め smaller concentrations となる。メタノールが酸化される速度は,エタノールより 10倍遅く,半減期が長くなる。飲用後発症までの時間は,40分から 72時間と幅があるが, 12~24時間であることが多い。。アルコールと同時に摂取されたものにより,発症までの時間が遅くなる可能性があるが,発症までの時間が長く the absence of symptoms ても,強い毒性を除外することはできない。メタノール中毒の症状には,頭痛,めまい,嗜眠,昏迷などがあり,これは軽度から中等度のエタノール中毒でもよく認められる。昏睡やけいれんは重症例にみられ,脳浮腫の結果と考えられる。メタノールでは,エタノールで得られるような多幸感は得られない。霧視 Blurred vision,視調節能低下 decreased visual acuity,光線過敏  photophobia (sensitivity to light) などを訴えることが多い。視野狭窄 Constricted visual fields, 瞳孔固定と散瞳 fixed and dilated pupils, 網膜浮腫 retinal edema,  視神経乳頭の充血 hyperemia of the optic disk などが認められることも多い。速やかな治療開始が症状の回復に必要だが,重症例では最大 25%に視野欠損が残存する。メタノールには粘膜刺激性があり a mucosal irritant,エタノールの大量摂取同様,嘔気,嘔吐,腹痛などの症状も現れる。病初期には吐根による消化管洗浄 gut decontamination with ipecac or lavage の適応があるが,メタノールにエタノールが混じっていた場合は,患者自身が (通常のエタノールによるアルコール中毒との)違いを自覚しないまま, 治療の至適時間を過ぎてしまう可能性がある。10% できストロース液中に添加したエタノールの経静脈投与が有効な場合がある。エタノールは,メタノールの血中半減期 the elimination half-life を延長させるので,治療が数日間にわたることもあり,患者の入院が必要である。腎保護のため,透析が必要となることがある。血液透析は有効な治療法であることに変わりない]

● リッサウイルス反応性抗体,コウモリ-スウェーデン
PRO/AH/EDR> Lyssavirus-reactive antibodies, bat - Sweden
Archive Number: 20161220.4711377
情報源 The Local se 2016年12月14日
スウェーデン南部で,狂犬病類似ウイルス感染の症状ある複数のコウモリを研究者が発見し,咬傷を受けた場合は直ちに医療機関を受診するよう注意が呼びかけられている。6年間にわたり,スウェーデン公衆衛生局など Sweden's Public Health Agency (Folkhalsomyndigheten), National Veterinary Institute (veterinarmedicinska anstalt) and Uppsala University の研究者らが,国内南部および中部のコウモリの唾液と血液の採取を続けてきた。調査された 452頭のいずれのコウモリの唾液でもウイルスは確認されなかったが,14頭からの血液では,抗狂犬病特異抗体が検出され,これらの個体が,ウイルスに感染または最近感染があったことが示唆された。抗体が認められたのは the Daubenton's bat species のコウモリで,南部の Skane or Smaland で捕獲されたものだった。(ヒトに) 感染するリスクは "extremely small きわめて低い"が,完全に無視することはできないとしている。通常 (コウモリに) ヒトが襲われることはないが,少なくとも Skane or Smaland では,研究者あるいは子供がコウモリを見つけた時に,たまたま襲われたりすることがあることは知っておいた方がよい。1985年にはフィンランドでコウモリの研究者が死亡しており,2003年にも,スウェーデンで抗体を保有していたことが分かった種類と同じコウモリにより受傷したイングランドの研究者が死亡している。このウイルスはヨーロッパリッサウイルス European bat lyssavirus (EBLV) で,狂犬病類似のウイルス a rabies-like virus であり,これまでに デンマーク,ノルウェー,フィンランドでも確認されている ... スウェーデンは 1986年以降,狂犬病清浄地域と考えられてきていたが,この研究者らはもはや状況は同じではないとしている   ...
[ Mod.PMB 注- この記事の出典: Lyssavirus-reactive antibodies in Swedish bats. Infection Ecology & Epidemiology. 2016; 6: 31262;
2か月前の 2016年10月,フィンランドで複数のリッサウイルス感染例 European bat lyssavirus type 2 (EBLV-2) が報告された。同ウイルスは,北欧で,コウモリだけでなくヒトでの感染も報告されていた。EBLV-1 はより広く蔓延しており more prevalent,全感染コウモリ all EBLV-infected bats の大部分を占めている。Daubenton's bats (_Myotis daubentonii_; the bats mentioned in this report) と EBLV-2 感染に関する報告は,同種のコウモリがこのリッサウイルスの保有動物であることを示唆する]