2022年8月31日

COVID-19(173)
 ブレークスルー感染とワクチン・既感染 
 パキロビッド相互作用ガイドライン

● COVID-19(173)ブレークスルー感染 パキロビッド相互作用ガイドライン
PRO/AH/EDR> COVID-19 update (173): breakthrough infection, clinicians, children, WHO, global
Archive Number: 20220831.8705316
[1] Breakthrough infections(ブレークスルー感染)
 情報源 medRxiv 2022年8月9日
原著タイトル Infectiousness of SARS-CoV-2 breakthrough infections and reinfections during the omicron wave. MedRxiv. 2022.
要約
ワクチン接種後,および既感染後にふたたび感染する,ブレークスルー感染 Breakthrough infections が,特にオミクロン流行 during the omicron wave において増え続けている。カリフォルニア州の刑務所 across 35 California prisons のサーベイランスデータを解析し,刑務所の環境内での SARS-CoV-2 omicron infections オミクロン感染患者の感染性 infectiousness に対する,ワクチン接種及び既感染の影響について検討した。
ワクチン接種,既往感染,およびワクチン接種と既往感染,のいずれも,発端症例の濃厚接触者に対する感染リスクをそれぞれ,24% (9-37%), 21% (4-36%), and 41% (23-54%) 減少させると推定した。ブースター追加接種とより最近のワクチン接種では,さらに感染性が低下した ... 
Results
Discussion
One-sentence summary: Vaccine-derived and naturally acquired immunity independently reduce the infectiousness of persons with omicron SARS-CoV-2 infections.
[2] Moral distress among clinicians(医療者のモラルストレス)
 情報源 CIDRAP (Center for Infectious Disease Research and Policy) 2022年8月29日
パンデミック初期 amid COVID-19 surges in the 1st year of the pandemic において,リソースの不足と困難な決断に直面し,米国の safety-net clinics に勤務するプライマリケア医,歯科医,行動医療医の 72% 近くが,軽度から重度の道徳的ストレス mild to intense moral distress を経験したと答えていることが,BMJ Open で報告された。University of North Carolina at Chapel Hill researchers が主導したこの研究で,safety-net clinics in 20 states において低所得者層の診療に当たった 2073人の,教育ローンのある第一線の医療関係者らに,from 24 Nov 2020 to 7 Feb 2021 にオンライン調査が行われた ... moral distress については,行為または目撃した事象と,深く保持された道徳・倫理的信念や期待,との間の対立の結果起きる,心理学的不安感 psychological unease と定義された。看護師らにおいて,これら such distress が燃え尽きなど(burnout, compassion fatigue, disengagement from patients, poor-quality patient care, and job turnover)につながることが指摘されている ... 調査対象者のプロフィール(年齢など) ... 71.6% がモラルストレスを感じたことがあると回答し,そのうち 26.8% は "intense," ,"or the "worst-possible" moral suffering と答え,44.8% が "mild" or "uncomfortable" distress と答えた。(28.4% reported no distress.)
もっとも多いストレスのタイプは,患者とスタッフ間の感染リスクを最小限とするプロトコールに変更されたため,最重症の患者のみのケアに限定され,最善あるいは必要なケアが提供できなかったことだった。さらに,対面での診療が患者にとってより望ましい,または患者が遠隔医療にアクセスできない場合でも,バーチャル訪問に頼るしかないことがしばしばあった。このほか,医療スタッフ虐待,スタッフ・患者関係の問題,ウイルス感染に対する恐怖 ... 原文参照願います。
[3] News scan
 情報源 CIDRAP 2022年8月29日
 [A] Children's self-collected COVID nasal swabs(小児の自己検体採取)
 4-14歳の小児も正確な鼻腔検体採取が可能。
 原著タイトル Concordance of SARS-CoV-2 Results in Self-collected Nasal Swabs vs Swabs Collected by Health Care Workers in Children and Adolescents. JAMA. 2022; doi: 10.1001/jama.2022.14877.
 [B] Omicron in children at day 7(7病日でも小児の半数が検査陽性
 the original omicron COVID-19 strain オミクロンに感染した小児の約半数が,発症後 7日目の迅速抗原検査で陽性であることから,the US Centers for Disease Control and Prevention (CDC) の自己隔離ガイドラインに疑問が示されている ... 
 原著タイトル Persistence of SARS-CoV-2 omicron variant in children and utility of rapid antigen testing as an indicator of culturable virus. Clin Infect Dis. 2022; ciac693; ]
 [C] 米国 USA: COVID-19 trends
 the Washington Post trackerでは,ほとんどの指標 most US COVID-19 markers が減少し続けているが,死亡数は 3% 増加した。Currently, the 7-day average for new daily cases is 87 533, with the daily average of deaths at 490  ... 
 パキロビッドと他剤の相互作用に関する the FDA ガイドライン
 欧州 CDC the European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC) が,今後 10年の 5 plausible scenarios on how the COVID-19 pandemic might play out を示した
[5] Global update: Worldometer accessed 29 Aug 2022 19:23 ET (GMT-5)
 Total number of reported cases: 606 442 907
 Total number of reported deaths: 6 489 855
 Number of newly confirmed cases in the past 24 hours: 583 109
 A 7-day series of cumulative data reported by countries, territories, and reporting entities 
関連項目 
COVID-19 update (171): hospital & home deaths, N. Korea, sequela prediction, WHO, global 20220828.8705274

● 食中毒 カナダ トリカブト中毒疑い
PRO/AH/EDR> Foodborne illness - Canada: (ON) aconite toxicity susp.
Archive Number: 20220831.8705336
 情報源 Global News 2022年8月30日
オンタリオ州のレストラン Delight Restaurant & BBQ in Markham, Ont.での食事後,1ダースの客が体調を崩し,4人が集中治療室に運ばれた原因として,植物由来のトキシンが疑われていると,30日医療関係者 the region's top doctor が明らかにした。現地公衆衛生当局 York Region Public Health による調査が行われている。この医療関係者は,草,根,花などに含まれるトリカブト毒 the toxin aconite が関係した可能性があると述べている ... 29日に当局は,8月27-28日の週末にこのレストランの食事(店内,持ち帰り,デリバリー)を摂り,何らかの異常を感じた場合は,医療機関を受診するよう呼びかけている。
参考項目 
Aconitine poisoning: Canada (BC) sand ginger, monkshood cont. susp. 20220313.8701961

● アナプラズマ症 仏領ギアナ

PRO/AH/EDR> Anaplasmosis - French Guiana: Candidatus A. sparouinense, 1st human case, RBC
Archive Number: 20220831.8705335
 情報源 Oicanadian 2022年8月31日
ギアナの遠隔地域 a remote region of Guyana で,新たな人獣共通感染症の感染伝播がダニにより起きていることが,8月8日の the journal Emerging Infectious Diseases 誌に掲載された研究で報告された。Sparouine アナプラズマ症Sparouine's anaplasmosis)と呼ばれるこの病気は,熱帯雨林中心部に住む 1人の金採掘業者の感染により発見された。それまで未知であった細菌が男性の赤血球に感染したことで,健康状態が著しく悪化し入院が必要となった。また今回の研究で,南方から来た米大陸のダニとほ乳類 ticks and mammals of America from south の間で感染循環する細菌と遺伝学的に同じであることから,自然界の保有宿主を構成している可能性も示された ... Sparouine's anaplasmosis は現時点で 1例のみの感染しか知られていない,まれな疾患である ... (金の違法採掘が行われ,しばしばマラリアが流行する熱帯雨林地域における)マラリアの国内調査のための 360以上の採血検体で,新たな病原性細菌である _Anaplasma sparouinense_ が確認され,偶然にも the anaplasmosis of Sparouine の疾患の発見につながった。2019年に初めて確認された採血検体では,多数の赤血球の細胞質内封入体 cytoplasmic inclusions が認められ,この細菌の意義が示されたにもかかわらず,この患者には何の症状も認められなかった。それから 18か月後,同じ患者が,発熱,筋肉痛,頭痛,鼻出血,貧血のため,the Center Hospitalier de Cayenne 入院となった。広範囲の検査 A large microbiological investigation により一般的な感染性病原体は除外診断され,only a DNA examination によって _Anaplasma sparouinense_ が発見された。患者は,過去に外傷後の脾摘の既往があり,このことが感染による影響を増大させた可能性がある。3週間抗生物質による治療で回復し,退院可能となった。
この新たな病原体は,the bacterial genus _Anaplasma_ に属し,この中ではヒト顆粒球性アナプラズマ症 human granulocytic anaplasmosis の原因となる _Anaplasma phagocytophilum_ がもっともよく知られている。遺伝学研究 Genetic studies により,_Anaplasma sparouinense_ は,既知のアナプラズマ菌 known species of _Anaplasma_とは異なる,新種であることが確かめられた。系統発生学的解析においては,ナマケモノ sloths や,ブラジルの coatis [南米,中米,メキシコ,米国南西部原産のほ乳類] で採取されたダニが保有する細菌 bacterial strains との関連が確認されている。野生動物と直接的な接触のある金の採掘現場が,感染病原体のヒトへの感染伝播経路の決定要因であることは間違いない。the anaplasmosis of Sparouine が今後,(ヒトの病気としての)重要性を有し,南米の人々に対する健康リスクとなるかについて言及するのは時期尚早である ... 
出典
Novel Chronic Anaplasmosis in Splenectomized Patient, Amazon Rainforest. Emerg Infect Dis. 2022; 28(8): 1673-1676;

● サル痘(57)

PRO/AH/EDR> Monkeypox update (57)
Archive Number: 20220831.8705323
[1] 世界 Confirmed and suspected cases by country as of 30 Aug 2022:
 情報源 Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
 Total confirmed cases: 49 974 [49 984]
 Total deaths: 15
[2] 米国 The US CDC reports cases in the following states: 
 情報源 CDC
 Total confirmed monkeypox/orthopoxvirus cases: 18 417
[3] 米国 USA (Texas): 1st death, suspected(初の死亡例,疑い)
 情報源 STAT 2022年8月30日
サル痘感染の患者 1名が死亡し国内初の死亡例とみられると,テキサス州保健当局が報告した。a resident of Harris County 在住,home to Houston の住民で,"severely immunocompromised(重症免疫不全の状態)"の成人と説明されている。"various severe illnesses(多数の重症疾患)"があり,28日に郡内の病院で死亡したと公表されている ... 
[4] Vaccine availability and purchase(ワクチンの入手状況)
 情報源 Reuters 2022年8月29日
米国政府当局が,国内のサル痘ワクチン製造施設の製造支援 to support the packaging of Bavarian Nordic's (BAVA.CO) Jynneos monkeypox vaccine at a US-based manufacturer's facility のため約 1100万米ドルを提供すると,29日に明らかにした ... 
[5] イスラエル Israel: 1st woman case
 情報源 The Times of Israel 2022年8月28日
国内のアウトブレイク開始以来初めて,女性のサル痘感染が診断されたと,28日保健省 the Health Ministry が明らかにした。感染が疑われる患者との濃厚接触のあと,(感染が)診断されたとしている。
[6] Tecovirimat treatment
 情報源 JAMA 2022年8月22日
原著タイトル Compassionate use of tecovirimat for the treatment of monkeypox infection. JAMA. 2022. Epub ahead of print
 ... Tecovirimat は抗ウイルス薬で,エンベロープを有するウイルス the enveloped virus の細胞からの遊離,拡散,ウイルス病原性に関係するタンパク質の p37 を阻害する。In vitro testing では天然痘とサル痘のいずれに対しても拮抗的に作用し,健康ボランティアに対する使用経験から,臨床上十分な安全性が示されている。今回,例外的使用として tecovirimat による治療を受けた患者の,有害事象,全身症状及び病変の臨床的改善を評価した。
Methods
 ... between 3 Jun and 13 Aug 2022 の期間に,the Sacramento County [California] Department of Public Health から紹介された UC Davis の外来患者に治療が提供された。体重に応じた量を,8ないし12時間ごとに,バイオアベイラビリティを高めるために中~高用量の脂肪を含む食事の後 30分以内に服用。治療期間は原則 14日間だが,症状により延長(1名のみ21日間)。 ... 
Results
8月13日現在,サル痘感染が確定診断された 25人の患者が治療 a course of tecovirimat therapy を完了した ... 患者の臨床像 ... 
10人(40%)が服用 7日目までに皮膚病変が完治したが,21日目までに皮膚病変または痛みが完治したのは 23人(93%)だった。治療を完了できなかった患者はなかった。治療開始 7日目までのもっとも多く報告された有害事象には,以下のものがあった:倦怠感 7人(28%), 頭痛 5人 (20%), 嘔気 4人 (16%), 掻痒感 2人 (8%), and 下痢 2人 (8%) 。
Discussion
関連項目 
Monkeypox update (56) 20220830.8705307  

● ハンタウイルス 米国
PRO/AH/EDR> Hantavirus - Americas (28): USA (ND)
Archive Number: 20220831.8705321
 情報源 North Dakota Department of Health 2022年8月29日
eastern North Dakota の患者 1名のハンタウイルス肺症候群 a case of hantavirus pulmonary syndrome (HPS) について,ノースダコタ州保健当局 The North Dakota Department of Health (NDDoH) から報告されている。the Centers for Disease Control and Prevention (CDC) で行われた検査でハンタウイルス感染が確定診断された。患者は入院となったが,その後回復した ... 
参考項目 2018
Hantavirus - Americas (51): USA (ND) 20180827.5991287

● 外来種ダニ 米国
PRO/AH/EDR> Invasive tick - USA: growing problem
Archive Number: 20220831.8705333
 情報源 Progressive Farmer 2022年8月29日
はじめて公式に確認されたのは 2017年になってからではあるが,それ以来 the Asian longhorned tick は全米 17州内で発見されていることが,最新の報告 the latest report from the CDC で明らかになった。一般には "Ikeda" と呼ばれる死亡するおそれのある病気を保有するため,とりわけウシの飼育業者らが懸念を示している。
the CDC によると,このダニは以下の州で確認されている: Arkansas, Connecticut, Delaware, Georgia, Kentucky, Maryland, Missouri, New Jersey, New York, North Carolina, Ohio, Pennsylvania, Rhode Island, South Carolina, Tennessee, Virginia, and West Virginia. 
The CDC は,これらのダニを発見した場合は,アルコールでダニを擦り取って容器か密封バッグに入れ,当局 their state agriculture department or local Extension office に連絡するよう求めている。このダニは,ペット,家畜,野生動物,そしてヒトでも確認されている ... 
関連項目 
Invasive tick - USA: (OH) Asian longhorned tick 20220320.8702099

● 口蹄疫 南アフリカ ウシ
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - South Africa (08): cattle, spread, control strategy
Archive Number: 20220831.8705325
 情報源 Agriorbit - Red Meat Producers Organization(RPO) press release 2022年8月30日
口蹄疫アウトブレイクに関する最新監視報告 the latest monitoring report on the foot-and-mouth disease (FMD) outbreak が,農業当局 the Department of Agriculture, Land Reform and Rural Development から発刊され,The Red Meat Producers Organization (RPO) 赤肉生産者機関は注目している。8月29日現在のアウトブレイクの最新報告では,新たに 9施設での感染発生が示されている。
This brings the total new outbreaks to 127 cases, as seen below:
- KwaZulu-Natal, from 73 to 80.
- Gauteng, from 3 to 6.
- The Free State, from 7 to 24.
- Mpumalanga, one new outbreak.
関連項目 
Foot & mouth disease - South Africa (07): (NL) cattle,spread,control,vaccination 20220824.8705200  

● COVID-19(172)ドイツ 動物
PRO/AH/EDR> COVID-19 update (172): Germany, animal, cattle, research, serosurveillance
Archive Number: 20220831.8705320
 情報源 Emerging Infectious Diseases (EID) Research Letter 2022年8月29日
原著タイトル Antibodies against SARS-CoV-2 Suggestive of Single Events of Spillover to Cattle, Germany. Emerg Infect Dis. 2022; 28(9): 1916-1918; doi:10.3201/eid2809.220125.
要約
ヒトの SARS-CoV-2 ウイルス感染は,動物への感染伝播のリスクを有する。ウシに対する感染リスクを明らかにするため,2021年後半のドイツにおいてウシから採取した 1000件のサンプルについて,血清学的調査を行った。11件の抗体陽性検体が確認されたことから,ウイルス陽性の飼育者 SARS-CoV-2-positive keepers との接触の機会に,感染が起きた可能性があるが,感染の拡大を示唆する証拠は認めなかった。