ProMED-mail 情報: 2023年5月9日

◎ リステリア症，妊娠　イスラエル中国

イスラエル

PRO/AH/EDR> Listeriosis - Israel: (Tel Aviv) pregnancy

Archive Number: 20230510.8709957

　情報源 Y Net [in Hebrew] 2023年5月8日

高熱と胎児仮死のため救急受診となった30代の妊婦が6日緊急帝王切開を受けた。出産後，胎児に危険を及ぼす可能性のあるリステリア菌 _Listeria_ bacteria による食中毒と診断されたこの女性は，テルアビブ Tel Aviv の有名ハンバーガーレストラン ("America Burgers") に注文していた。現在入院2日目であるが良好な状態にある。保健省 the Ministry of Health はまだこの情報を把握しておらず，食事内容との関連については今後調査される。リステリア症 Listeriosis は細菌のリステリア菌 the bacterium _Listeria monocytogenes_ による感染症である。保健省によると "インフルエンザのような症状で合併症はないが，妊娠女性にとって流早産や新生児の重い障害の原因となる大変危険な疾患であり，出生直後の新生児の血液や髄膜感染を起こすこともある。"

America Burgers responded: ...

5月7日には，入院となった妊婦2人を含む16人の客らが胃腸炎を発症したとして，高級レストラン the prestigious Topolopompo restaurant in Tel Aviv が閉鎖されている。入院患者らの検査で，サルモネラ菌 _Salmonella_ と大腸菌 _E. coli_ bacteria が確認されている ...

[Mod.ML－リステリア症 listeriosis の起因菌であるリステリア菌 _Listeria monocytogenes_ は自然界に広く存在する。グラム陽性棹菌で，土壌，水，牧草，生野菜や生肉，家きん，生ミルク（未殺菌），ソフトチーズ，調理に使われたキッチン，ウシ・ヒツジ・ヒト・甲殻類・魚類・貝類・ヒナ・ダニ・昆虫などの消化管内に存在する。

ヒトの感染症としてもっとも多いのは食中毒であるが，経胎盤または経産道垂直感染による母児感染も起こりえる。また感染動物との直接の接触による，獣医師や農業従事者の皮膚局所感染もある。

自然界でも（土壌による生野菜の汚染や感染ウシのミルクやチーズなど），調理過程においても，食品の汚染が発生する。

はじめは少量の菌による食品の汚染であったとしても，リステリア菌は冷蔵庫内の温度でも増殖が可能であるため，摂取時に発病するのに十分な菌数となる可能性がある。したがって，冷蔵庫に保管されていた菌汚染のある生ミルクやそれにより作られたチーズ，調理済みの野菜や肉食品によりリステリア症を発症しても不思議はない。リステリア菌は冷凍食品中でも生存できる。

ヒトのリステリア症の原因となった食品には，生ミルク raw milk, ソフトチーズ raw-milk soft cheeses (e.g., ブリー brie, カマンベール camembert, and Mexican soft cheeses), コールスローサラダ coleslaw, raw vegetables in salads, パテ pate, 冷製肉 deli cold cut meats, ホットドッグ hotdogs, and シーフード raw or undercooked seafood, e.g., サーモン smoked or cured salmon, カキ oysters, or スシ sushi などがある。(1)

ヒトの感染源を特定する方法として，molecular techniques, i.e., matching genotypes of _Listeria_ isolated from patients with genotypes of _Listeria_ isolated from a possible source がある。

65歳以上および免疫に問題のある人々は，リステリア症によるリスクが高くなる。妊娠に伴う免疫低下により，一般人口に比べて妊娠女性は10倍以上リステリア症に感染しやすくなる。(ACOG) ただし，妊娠女性の多くは無症状，または発熱，筋肉痛，腰痛，頭痛，時に下痢や消化器症状を伴う程度の，軽い症状である。その場合でも，胎児及び新生児の感染は重篤で死亡する可能性もある。流早死産となるおそれもあり，新生児では敗血症や髄膜炎となることがある。

米国産婦人科学会 the American College of Obstetrics and Gynecology (ACOG) によると，"妊娠関連のリステリア症のほとんどすべての症例は，リスク因子のない生来健康な女性で発生している。"

"リステリア症と診断される症例は主に妊娠第3期 the 3rd trimester であるが，妊娠早期の胎児損失 cases of early fetal loss では娩出物の培養が行われることが少ない the relative infrequency of culturing products of conception ため，感染の報告が実際より少ない可能性がある。(ACOG)

他の疾患が除外された，リステリア症に一致する発熱等の症状や徴候のある妊娠女性に対し，リステリア症を想定した検査と治療を行うことが適切である; ガイドライン guidance from the American College of Obstetrics and Gynecology では，リステリア菌アウトブレイクの回収対象などの原因食品の摂取を申告しても，無症状の妊娠女性には，血液と便培養などの検査や治療を行わなくてもよい indicated とされている。その中には以下の記載がある: "リステリア菌汚染を理由に回収されている食品を摂取した妊娠女性で，発熱がない afebrile，軽い胃腸炎やインフルエンザ様症状が見られた場合，待機的に管理してよい can be managed expectantly" (ACOG)

アンピシリン Ampicillin 単独，またはゲンタマイシン gentamicin との併用がファーストチョイスの治療薬となる; 代替薬として trimethoprim/sulfamethoxazole があるが，神経管欠損に関係する葉酸拮抗作用 antifolate effect があるため the 1st trimester of pregnancy での使用は避けるべきである。(CDC) 妊娠中のリステリア症治療のため母体に対して使用される抗生物質は主として，胎児及び新生児の感染予防が目的である。同じ薬剤が，新生児のリステリア症感染の治療に用いられる。(2)]

参考項目　2022

Listeriosis - Israel: (Tel Aviv) pregnancy, fish 20220206.8701302

中国

PRO/AH/EDR> Listeriosis - China: early pregnancy

Archive Number: 20230510.8709959

原著タイトル Maternal bacteremia caused by _Listeria monocytogenes_ ST87: A case report. Heliyon. 2023; 9(4): e14980;

　情報源 Heliyon 2023年4月

要約

妊娠女性はリステリア症のハイリスクグループであるが，中国では妊娠20週以前の母体菌血症についての臨床報告は少ない。今回，妊娠16週4日の28歳の妊婦が，4日間の発熱のため入院となった。当初近医で上気道炎と診断されていたが，起因菌は特定されていなかった。当院入院後，血液培養検査によりリステリア菌感染 _Listeria monocytogenes_ (_L. monocytogenes_) infection と診断された。検査結果が判明するまでに，3日間セフトリアキソン ceftriaxone とセファゾリン cefazolin が投与されていたが，アンピシリン ampicillin に変更されるまで解熱しなかった。serotyping, multilocus sequence typing (MLST), and virulence gene amplification により，_L. monocytogenes_ ST87 であることが確かめられた。最終的に健児が得られ，生後6週目の検診時まで問題は見られていない。_L. monocytogenes_ ST87-caused maternal listeriosis 感染例の予後は良好であることが示唆されたが，さらなる検討が必要と考える。

Case presentation

Conclusions

●　ウェルシュ菌食中毒　日本

PRO/EDR> Clostridium perfringens foodborne illness - Japan: (HG) nursing home

Archive Number: 20230510.8709963

神戸・北区の老人ホームで食中毒　76～103歳の男女24人、全員が快方へ

　情報源 Kobe [in Japanese，神戸新聞] 2023年5月9日より

神戸市は９日、北区鳴子３の介護付き有料老人ホーム「神戸ゆうゆうの里」の入所者２４人が、下痢や腹痛などの症状を訴えたと明らかにした。一部の患者の便から「ウェルシュ菌」が検出されるなどしたため、市は食中毒と判断し、１１日までの３日間、厨房（ちゅうぼう）での食事提供の中止を命じた。市によると、入所者で調査できた８５人のうち、７６～１０３歳の男女２４人が発症した。全員が快方に向かっているが、調査が済んでいないため患者数は増える可能性がある。いずれも７日に焼き肉や温野菜、たこ酢、じゃがいもの煮物などを食べたという。

[a previous version of the FDA Bad Bug Book]

●　ビブリオ感染症　米国

PRO/EDR> Vibriosis - USA: (FL) post-hurricane infections, 2022

Archive Number: 20230510.8709952

　情報源 CDC. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2023; 72(18): 497-498 2023年5月5日

原著タイトル Notes from the field: Vibriosis cases associated with flood waters during and after Hurricane Ian -- Florida, September-October 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2023; 72: 497-498>

On the afternoon of 28 Sep 2022 (epidemiologic week 40)，ハリケーン Hurricane Ian が，a category 4 hurricane with maximum sustained winds of 150 miles per hr (241 km per hr) の勢力でフロリダ州 Florida's southwest coast に上陸し，some coastal areas of Lee and Collier counties, on southwest Florida's Gulf coast では潮位が3.6-5.5m上昇した。通過後の数日間に州保健当局 the Florida Department of Health はビブリオ感染症 cases of vibriosis の著しい増加を確認した: 38 cases and 11 vibriosis-associated deaths were attributed to the storm.

...

In the week preceding the hurricane (week 39), southwest Florida reported no vibriosis cases, which was below the 5-year median (3 cases) for that week ...

storm surge or flood waters への暴露が関係する皮膚感染症の患者が合計33例（87%），暴露が不明確な創感染が2例（5%），自宅が浸水し救助されるまで長時間洪水に暴露した例が2例（5%），洪水を飲み込んだ例が1例だった。3例が平均10日間入院となり，8例が退院後施設に移り，8例が皮膚移植を必要とし，3例が下肢切断術を受けた。死亡した11例（29%）の中で，9例がビブリオ・バルニフィカス _V. vulnificus_ による感染で，コレラ菌等 _V. cholerae_ non-O1 and with some other _Vibrio_ sp. の感染が各1例だった ...

過去のハリケーンとの相違など， ... 原文参照願います。

参考項目　2022

Vibrio vulnificus - USA (05): (FL) post-hurricane 20221019.8706234

●　食中毒　米国，中国産キノコ

PRO/EDR> Foodborne illness - USA (03): (MT) morel mushrooms ex China susp, RFI

Archive Number: 20230509.8709953

　情報源 Bozeman Daily Chronicle 2023年5月3日

2023年4月にすし店 Dave's Sushi in Bozeman での食事後に少なくとも30人が食中毒を発症していることを，モンタナ州保健当局 the Montana Department of Public Health and Human Services が3日明らかにした。between 31 Mar 2023 and 17 Apr 2023 の期間中の同店での食事が関係している。3人は入院するなど症状が重く，64歳と74歳の2人が死亡しており，死因について現在調査が行われている。初期調査で morel mushrooms が問題であった可能性が指摘されており，このキノコは州内の他のレストランには流通しいていなかった。中国で採取され，カリフォルニア州の業者に出荷され，複数の他州に送られている。レストランは，検査済みキノコ the FDA-inspected morels in 2 separate batches from the California distributor を仕入れており，a regular menu item ではなかったと電子メールで回答している。5月3日時点で他の健康被害は報告されていない。しかし，the pathogen or toxin ともに特定されておらず，当局による調査が続けられている ...

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2023年5月9日－10日

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