2007年2月2日

◎ インフルエンザウイルス 感染性変異 Science

◎ インフルエンザウイルス 感染性変異
PRO/AH> Influenza virus, transmissibility mutations 20070202.0421
 情報源 Science, Vol. 315, no. 5812, p. 582 、2007年2月2日
概要
1918-1919年のいわゆるスペインかぜのウイルスの遺伝子を2カ所変異させることで、そのフェレットに対する感染性が著しく減弱したことを確かめた実験についての報告。
1918-1919年のスペインかぜ(インフルエンザ)ウイルスは、致死性と感染力の双方の面 で、最悪の性質を有し、第一次世界大戦よりも多くの死者を出した.しかし、ウイルス学 者は、このウイルスが、これほど致死性が高かった原因である遺伝子の組み合わせに関し ては、多くの知識を得ているにも関わらず、なぜ容易に感染したかについては、仮説を立 てるにとどまっている. しかし、もはやそうではない.
Science誌に今週掲載された論文は、示唆されていた多く の事項を確定した;
同ウイルスの表面上に何百も付着している糖タンパクのひとつのヘマグルチニン(hemagglutinin(HA)、血球凝集素)のわずかな変化により、1918年 のウイルスがより “トリ型 avian” に変化し、フェレットにおいて発病はさせるものの 感染拡大は起こさなくなった.ロッテルダムの Erasmus 医学センターのウイルス学者 Ron Fouchier は、トリ型のウイルスがどのようにして、ほ乳類での感染力を獲得したかという難問の答えであると述べた.尚も、たった2カ所のHAの変異のみで、ウイルスが無力化する正確な説明は得られてはいないとも述べた.また、さらに解答が急がれている問題 、すなわち同じ組み合わせの変異が、各国に被害をもたらしている H5N1型インフルエンザ ウイルスを、トリだけの問題からヒトでの悪夢に変えてしまうのかという問いに対する答 えも示してはいない.北半球で何百万人が毎年感染している、ヒト型インフルエンザウイ ルス株の HA は、α-2,6とよばれる結合によって、ガラクトースと結合したシアル酸を特 徴とする宿主細胞のレセプターに優先的に結合する.
[*以下のサイトが参考になりました http://www.jst.go.jp/pr/announce/20061116/zu2.html] 
このレセプターはヒトお よびフェレットの気道に多く存在する.一方、H5N1型のようなトリ型ウイルス株の HA は形 状がわずかに異なり、α-2,3結合によるガラクトース結合シアル酸と結合しやすい;このシアル酸はトリの腸管の多くを占めている.これらの知見にもとづいて研究者らは、1918ウイルスはトリ型ウイルスが α-2,6結 合に対する結合性 predilection を獲得するような変異が起こったときに発生し、自然界でよりヒト型に近づいたものと考えてきた.もしそうであるならば、この変異を逆にたどれば、1918ウイルスの “トリ型化” が可能となると、新しい研究の筆頭著者である米国ジ ョージア州アトランタ CDC の Tarence Tumpey 氏が述べた.彼は CD Cや NY マウントサイナイ医科大学の仲間らと共に、この10年間に復元され現在精力的な研究の対象となっている 1918ウイルスを用い、数カ所を変異させた. 
1つの変異により α-2,3とα-2,6 のいず れのレセプターにも親和性を持つようになり、
もう一つの変異は、完全に α-2,3 だけに 対する優位性をもたらせた.高用量のこの2種類のウイルスおよび1918ウイルスwo(ヒト型インフルエンザの最良の実験動物である)フェレットに経鼻的に接種したところ、3種類のウイルスはいずれも重症の感染症を発生させた.
しかし、観察の対象は発病したフェレットの隣のかごのフェレットだった. 
オリジナルの1918ウイルス株では(隣のかごの)フェレットも感染し発症した.α-2 ,3 および α-2,6 のいずれのレセプターにも結合するような変異を生じた株において、感染伝播は効率的には行われなかった;実際に発症しなかったものの、隣のかごにいた3匹のフェレットの内の2匹に抗体が産生されていた.α-2,3 結合のみの株はいかなる感染伝播も起こさなかった.
この研究によって、レセプターの選択性が感染伝播の鍵となる初めての直接的なエビデンスが与えられたと、ロンドンの国立医科学研究所ウイルス学 の Mikhail Matrosovich が述べた.しかし、なぜわずかな変異がこの様な劇的な変化を起こすのかという理由については、はっきりとはしていないと述べた. フェレットでは α-2 ,6結合が優位であるが、ヒト同様 α-2,3 レセプターも有している;このため、トリ型化 されたインフルエンザウイルスもフェレットに感染する.では、なぜこのウイルス株は飼育かごを飛び越えて、感染伝播を生じなかったのであろうか.
一つの手がかりが、2006年の研究にある;その中で、α-2,3レセプターを有するヒト細胞は基本的に肺の奥深い部分に存在し、そこからはウイルスが簡単には排出されにくい事が示されている.一方、α-2,6レセプターは基本的には上気道にある.
もうひとつのヒントは、トリ型化したウイルスに感染したフェレットは、くしゃみをしなかったという事がある.Tu mpey は、なぜフェレットでの感染伝播が減弱したかを理解するのは難しい事ではないと述べた. 
同時に複数のグループが、HAでのわずかな変異により、H5N1型ウイルスがヒト型化する可 能性があるかについての解明に取り組んでいる.
他の部位の変異も必要であると思われるとウィスコンシン大学.東京大学の河岡義裕氏が述べた.そして、もし人類が幸運なら 、研究者らによって(ヒト型化に)必要な変化の組み合わせが、自然には起こりにくい事が証明されるかも知れない.ともかく、前もって何が必要であるかを知っておく事で、 科学者らは、死鳥やヒト患者の監視や必要なときに警鐘を鳴らす際の準備態勢が可能となる.
[Mod.CP- A Two-Amino Acid Change in the Hemagglutinin of the 1918 Influenza Vir us Abolishes SCIENCE VOL. 315, NO. 5812
要約
Transmission 1918年のパンデミックインフルエンザは、地球全体に拡大する壊滅的なウイルス感染流行 となった.今回我々は、1918インフルエンザの血球凝集素レセプター結合部位をわずかに 変化させることで、パンデミックウイルスの感染伝播力が変化することを示した.レセプ ターの優位な結合部位を、ヒトα-2,6からトリα-2,3シアル酸にスイッチさせる、2個 のアミノ酸の変異により、フェレット間での呼吸器飛沫感染によるウイルス伝播が生じな くなったが、致死性と上気道での複製能は保たれていた.さらに、α-2,3とα-2,6に対 する、二重の特異性を有する1918ウイルスでも、感染伝播力の減弱がみられたことから、 α-2,6シアル酸単独の結合親和性が、このパンデミックウイルスの感染伝播の効率性に 重要であった事が示唆された.これらの事実は、血球凝集素レセプター特異性が、ほ乳類 におけるインフルエンザウイルス感染伝播に関して、重要な役割を果たしていることを、 明らかにした。これらの実験は、インフルエンザウイルスの遺伝子に特定の変異を導入す ることを可能とする逆遺伝学の技術開発の、直接の帰結である。この論文で述べられてい る実験は、インフルエンザウイルスの感染伝播力を規定する、血球凝集素 タンパクの最小の遺伝学的変化を明確にした。この知見により、ヒトでのパンデミックウ イルス新興の切迫の予想に役立つ可能性がある]

● コレラ、赤痢
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2007 (05)
Archive Number: 20070202.0418
[1] コレラ - ソマリア (Hiraan, Middle Shabele)
 情報源:Reuters [edited]、2007年2月1日
コレラ Cholera が疑われる感染流行で、先週ソマリアで121人が死亡したと、2007年2月1日、Middle ShabeleのJowharの病院筋と地元長老らがともに述べた。医師らは、水様性下痢の検体でコレラ検査が陽性となり、最も感染が深刻なのは、中央Hiraan地区で105人以上が死亡していると述べた。
 * Hiraan、Middle Shabeleはソマリア南部の行政区域で、西部のエチオピアとの国境地域にある
[2] ナイジェリア (Delta):The Tide [edited]、2月2日
Delta州でコレラ感染流行により12人が死亡した
[3] ザンビア (Lusaka, Eastern Province):Zambia National Broadcasting Corp [edited]、1月31日
Lusaka においてコレラによる死者が続いている。新たな約19人の患者が過去24時間で発生した。
[4] ジンバブエ (Harare):IRIN [edited]、1月30日
コレラの疑い患者12人のうちの4人が、ジンバブエの首都ハラレで確認されたと、市保健当局長が述べた。ジンバブエの国営水道局Zimbabwe National Water Authority (ZINWA) による配水の失敗(不足)が、多くの人々に、コレラ菌による汚染の可能性がある、浅い井戸から水を引くことを余儀なくし、その結果の感染だとの意見もある。
[5] ジンバブエ (Harare):Independent Online [edited]、1月30日
ジンバブエの首都の2つの貧しい町で、9人がコレラに感染した。市の上水道が機能せず、浅い井戸からの汚染された水を飲んだ結果の感染である可能性が高い。
[6] コンゴ共和国 (Kouilou):Independent Online [edited]、1月30日
2007年初に始まった、コンゴ共和国の経済の中心であるPointe-Noireで発生したコレラの感染流行により、43人が死亡したと、保健相が2007年1月30日に明らかにした。ラジオの中で、1826人の患者と43人の死者が、2007年1月5日以降報告されており、2007年1月27日の公式発表の患者1236人、死者41人を上回った。
[7] コンゴ共和国 (Kouilou):UN Integrated Regional Information Networks (IRIN) 、1月29日
コレラ感染流行により、2007年1月初めから、コンゴ民主共和国で41人が死亡したと、保健相が1月29日に明らかにした。
[8] アンゴラ (Luanda):Reuters. Com [edited]、1月29日
死者を出した洪水により、数千人が飲み水を失い、下水施設を利用できなくなったことから、アンゴラのコレラ患者発生は、警戒レベルまで増加したと、支援団体が2007年1月29日に述べた
アジア
[9] 赤痢、フィリピン (Bohol):Bohol Chronicle [edited]、1月31日
過去2週間に、Loon の町の住民が、赤痢菌フレクスナー型_Shigella flexneri_ により、少なくとも4人が死亡し、400人以上が感染し、感染流行発生となっている。Region 7の保健局当局者はかつてない範囲の赤痢感染流行であるかも知れないと述べた
[10] コレラ - 世界各国 - WHO WER notifications
 情報源 WHO Epidemiological Record 、2007年2月2日。
コレラ患者届出数 from 26 Jan to 1 Feb 2007
アフリカ
 アンゴラ 15 - 23 Jan 2007 / 1129 / 33
 ナミビア 1 Nov 2006 - 9 Jan 2007 / 199 / 5

● 乳児ボツリヌス症 米国
PRO/EDR> Infant botulism - USA (MD)(03) 20070202.0419
 情報源 Washington Post、2月2日
メリーランド州保健当局は、Fort Meade の同じ通りにすむ、最近ボツリヌス中毒 Infant botulism と診断されていた2人の乳児において、同じタイプのボツリヌス菌が検出されたことを確認したと、2007年2月1日、陸軍が明らかにした。

● 腸炎ビブリオ、貝類 チリ
PRO/AH/EDR> Vibrio parahaemolyticus, shellfish - Chile (San Antonio) 20070202.0422
[1] 情報源 La Segunda, Chile [translated]、1月31日
保健省地域事務局により、腸炎ビブリオ患者6名の発生が確定され、このほか、特定の海域の産地からの同じ菌に感染していたと思われる海産品の生食による61人が確認されたことを受け、Valparaiso州San Antonio県に衛生上の注意喚起が発令された。
[2] 情報源 Login.cl [translation]、1月31日
同内容。初発患者は、2006年11月20日で、以下、年齢性別や発生地の内訳など

● 狂犬病 コロンビア
PRO/AH/EDR> Rabies, human, canine - Colombia (Santa Marta) 20070202.0423
 情報源 El Tiempo 、1月30日
イヌによるヒトの狂犬病 Rabies 感染発生が Santa Marta で報告され、4人が死亡し、ここ10年では最多の集団発生となったと、公衆衛生学会長が述べた。中略。患者4人は、2006年9月に咬傷を受けたと思われ、11月5日に第1例が死亡した後、20日後に2例目、2007年1月16日には3例目が死亡した。

● 致死性流出物、死亡例 中国
PRO/EDR> Toxic spill, fatal - China (Hubei) 20070202.0426
 情報源 Reuters、2007年2月2日
中国中央部(湖北省)の2人のトラックドライバーが、積み荷の毒物がハイウェー上数キロメートルにわたって漏れだし、1人が死亡し、125人以上が中毒となったため、警察に出頭したと、メディアが伝えた。湖北省のハイウェー沿いの5kmの区間の住民らは、発ガン性の硫酸ジメチル DMS がトラックから道路上に漏れだし、胸痛や眼の刺激を訴えた

●  鳥インフルエンザ 英国(2件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza (22): UK (England), turkeys H5 20070202.0424
 情報源 BBC news、2月2日
サフォーク Suffolk 州の1農場で、約1000羽の七面鳥が鳥インフルエンザにより死亡したことを、政府獣医関係当局が確認した。Halesworth に近い Holton の農場で発病後、検査されていた。環境食料農村地域省(Defra) の獣医師は、トリの検査で、H5型鳥インフルエンザが陽性であったと述べた

PRO/AH/EDR> Avian influenza (23): UK (England), turkeys H5 20070202.0427
 情報源 DEFRA News Release ref 33/07, 2007年2月2日
州の獣医学局は、Lowestofに近い家禽農場でトリの届出疾患が疑われる感染流行の調査を行っている。初期検査で、2月2日夕に、施設内で死亡して発見された家禽の検体での、鳥インフルエンザ感染が示唆された。H5亜型ウイルスであるとの初期検査の結果であったが、二次検査は進行中で、2月3日に判明する予定である