2007年3月10日

ヒ素中毒 香港,アルメニアから
タリウム中毒 米国 ロシアから
ノロウイルス 米国 新たなウイルス株

● ヒ素中毒 香港、アルメニアから
PRO/EDR> Arsenic poisoning, bottled water - China (HK) ex Armenia: recall 20070310.0853
 情報源 Hong Kong Department of Health - Health & Community News、3月8日  
Alert issued on mineral water products
過量のヒ素が含まれている可能性のある、アルメニアのミネラルウォーター製品に関する注意喚起
食品安全センターは、卸業者に対して、過量のヒ素を含む、 Jermuk 社の 3種類のミネラルウォーターの販売を中止するよう指示した。この製品には、以下のラベルが付いている。
"Jermuk Original Sparkling Natural Mineral Water Fortified With Natural Gas From The Spring"
"Jermuk Sodium Calcium Bicarbonate and Sulphate Mineral Water"
"Jermuk, Natural Mineral Water Sparkling"
関連項目 20070309.0832

● タリウム中毒 米国 ロシアから
PRO/EDR> Thallium poisoning, intentional - USA ex Russia 20070310.0850
 情報源 Reuters Alert Net、3月9日
L.A. hospital confirms women poisoned by thallium
概略 
母国ロシアへの旅行中に発病し、モスクワでの治療後、2007年3月7日にロサンゼルスのCedars-Sinai Medical Center へ移された米国在住の母娘 2名が、3月9日、タリウム中毒 Thallium poisoning と確定診断され、両国での調査が進められている。タリウムは、ロシアの元スパイ・リトビネンコ氏が昨年ロンドンで殺害されたことで疑われた物質で、後にポロニウムによる殺害であったことが判明している。家族を含めロシア政府では働いたり、ロシアと政治的・経済的なつながりのないこの女性 2名が、どのように、またなぜタリウム中毒を起こしたかの詳しい説明はない。
親子は、1980年代に旧ソ連から米国へ移住したが、しばしば帰国していたという。最も新しい帰国は、2007年 2月中旬で、到着の 1週間後に発病した。家族は、入院したロシアの病院にはタリウム中毒の解毒剤がなく、Prussian Blue というその薬剤を空路で届けたところ、治療開始後すぐに症状の改善が見られたという。
[Mod.TG-タリウムへの暴露の発生には、いくつかの経路が存在する -- 汚染された食品の摂取、職場での暴露、および環境での混入や汚染である。職場での暴露には、しばしば高濃度の被爆を起こしうる物質の吸入によることが多く、神経学的症状を引き起こす可能性がある。タリウムの摂取は、低レベルの暴露になり、結果として嘔吐、下痢などの胃腸症状や、摂取による一時的な脱毛がみられる。タリウムは金属の一種で、他の金属の溶融精錬 smelting から精製される。一般的な用途は、電子装置や半導体産業などである。特殊ガラス製造に使用されることもある。無味無臭の純金属としても、また、しばしば臭素、塩素、フッ素、ヨウ素など他の物質との化合物としても発見される。化合物となった場合、白っぽい無色 colorless-to-white または黄色の色調を帯びている。タリウムによる環境汚染は、smeltingの際に起こることが多く、長時間にわたって、空気中、水中、および土壌中に残留する。降雨や降雪によって大気中からは取り除かれるが、植物や魚類、貝類にとっては、環境からタリウムが吸収される状態のまま残っている。ヒトにおいて、慢性的に低量のタリウムを摂取した場合の結果はよくわかっていない。短期間に大量のタリウムを摂取した場合、脱毛、胃腸炎症状のほか。神経、心 ・ 肺 ・ 肝 ・ 腎への影響がある。これまで、フルーツや野菜に残留する低濃度のタリウムに妊婦が暴露した結果おこった、先天異常の報告はない。しかし、食品の低濃度の残留による発達や生殖への影響について、ラットでの記述がある。げっ歯類の研究では、オスの生殖能力に影響する可能性があることが示唆されている。産業暴露は、物質の吸入に関係することが最も多いが、短期間の高濃度暴露の、ヒトの生殖に対する影響については、わかっていない。皮膚に接触することによるタリウムの暴露の影響は、ヒト/動物のいずれにおいても、はっきりしていない。タリウムは溶解性物質であるため、理論的には、皮膚接触によって吸収される可能性が危惧される。ヒトおよび実験動物のいずれに関しても、発癌物質としてのタリウムの問題を扱った研究はない。血液、尿、毛髪が、タリウム暴露の検査に用いられる。 Prussian Blue や ferric ferrocyanide [* フェロシアン化鉄] などにより、治療される。ちなみに、何を持ってこの兄弟はタリウムを疑い、なぜ Prussian Blue を持ってロシアまで飛んだのだろうか? 米国では、しかるべき医療流通経路を通して入手可能である]

●  ノロウイルス 米国
PRO/EDR> Norovirus - USA (multistate): new strain 20070310.0849
 情報源 Times Argus 3月10日
New norovirus strain responsible for wave of gastrointestinal infections

米国の研究者らは、この冬、ニューイングランド New England 州全体の病院、老人ホーム、学生寮や全米を巻き込んだ、胃腸感染流行の原因は、新株のノロウイルスによるものであったことを発見した。このことは、今シーズン、広い範囲にわたって成人や小児が発病し、重症化したことを解明する重要な手がかりとなる。一部では以前にこのウイルスに感染したことがある人はいるものの、実際にはほとんどの人が感染しやすい状態にあり、脆弱で高齢な患者にとって危険と考えられる。近いうちに CDC は、この新たなウイルスについての報告を公式に行うことにしている。遺伝子 fingerprinting によれば、患者に感染したこのウイルスは、識別可能な、攻撃性の強いものである。2006年 10月12月にかけて CDC が検査を行った便検体において、 60%の患者の検体で、新株のノロウイルスが陽性であった。初めてこの新たなウイルスが感染循環していることが確認されたのは、クルーズ船 Minerva IIの乗客が、非常に強い胃腸炎を発症した、2006年 1月のことであった。この秋に、便検体について行われた、最新の遺伝学的検査法により、以前確認されていたものとは別の、新たな株とはっきり識別され、GII.4 Minerva と命名された。以下、ノロウイルスの一般的な説明など ... 過去にはノロウイルスの経過は1日程度で寛解し、発熱することはまれであったが、今シーズン、一部の患者は、3から 4日間の経過となり、発熱もした。CDC ウイルス学専門家は、発熱や病悩期間が長い症例が多数報告されていることを明らかにした。以下、このウイルスがなぜ冬期に流行するのか解らないこと、エレベーターのボタンなどから感染し、消毒薬に抵抗性があり、回復した患者においても便中に排泄が続くことなど。新株は、ヒトの細胞とより多くの場所で接着する能力があり、より多くのヒトに、より危険となっている可能性がある。強毒性を持った理由は、重要だが容易には解明できない。30年前に初めてノロウイルスが確認されたが、検査室での培養にはまだ成功していない。このことがウイルスの研究、さらには抗ウイルス薬やワクチン開発を困難にしている。"1種類のノロウイルスに感染しても、他の株の免疫にはならない。何度も感染する可能性があり、するべきことは予防である。手洗いをしっかりすべきである。
[Mod.CP-ノロウイルスは非常に感染力のある、成人の突然発症する胃腸炎の主な原因で、1995年以降ウイルスの大流行が報告されている。ノロウイルスは、1968年オハイオ州 Norwalk の学校で発生した胃腸炎感染流行の原因となった、Norwalk ウイルスに因み命名された。現在 7種類以上の遺伝グループがある (GI, GII, GIII, GIV, GV, GVI and GVII)。さらに、31以上の遺伝子群 genetic cluster に細分化されている。初めて新たな変異遺伝型 GII.4が発生したのは[欧州において]2005/2006 シーズンのことであった。 2006年夏には優位株となった。 variant 2006a として、2005年英国の感染流行または患者例から、データベースに初めてエントリーした。その後、第 1例目の 2006b が、2005年 12月にスペインの公共居住施設での流行後に報告され、2006年春にヨーロッパやクルーズ船での 45件以上のノロウイルス感染流行の原因になるなど、広範囲でこの変異したウイルス株が感染循環していることが明らかになった。2006a および 2006b の発生は後に、GII.4 の遺伝型グループの出現に取って代わられ、このことは世界中でおびただしい感染流行が発生した事実に一致する。北米において、現在のより重症化しやすい感染流行の原因である変異株は、新たな変異株である可能性が高い。新たな変異株の発見や既に知られている Ⅱ4 変異株との関連についての詳細な情報を期待する]

● サルモネラ感染症 米国
PRO/EDR> Salmonellosis, serotype Tennessee, peanut butter - USA (13) 20070310.0848
 情報源 FDA (US Food and Drug Administration) News, press release、3月9日
回収対象商品を、製品コード "2111" で始ま るPeter Pan peanut butter と Great Value peanut butter のうち、製造日について、2004年 10月まで遡って回収することとした。
[Mod.LL-商品回収対象の製造日が、2006年 5月であったものが、2005年 12月、そして今回 2004年 10月と、2回にわたって変更された。最も早い発症日は、2006年 8月1日のままである。このような変更の背景には、一部のピーナッツバター、もしくは同製品を使用した商品 (トッピングなど) の製造が、当初予想より前に製造されていたことが、調査により判明したことがあったのであろう]
関連項目 (12) 20070309.0834

●  ボツリヌス中毒 米国
PRO/EDR> Botulism, olives - USA (FL, GA, NY): recall 20070310.0847
 情報源 FDA (US Food and Drug Administration) News, press release、3月8日
"Cerignola"オリーブにボツリヌス菌による汚染の恐れ
フロリダ Florida 州の Flora Foods of Pompano Beach 社は、生命に関わり死亡することもある疾患の原因の、ボツリヌス菌 _Clostridium botulinum_ 混入の恐れがあるため、25 オンス入り "Cerignola Olives" (UPC 0-20038-00693-5) の回収を行っている。消費者は、たとえ見た感じや臭いに異常がなくても、この製品を使用しないよう注意する必要がある。死亡することもある食中毒のボツリヌス中毒では、次のような症状が見られることがある:全身衰弱、めまい、ものが二重に見える(複視)、話したりものを飲み込んだりしにくくなる。呼吸困難、他の筋力低下、腹部膨満、便秘などもよく見られる症状である。コレラの症状が起こった場合は、直ちに受診すべきである。回収される、 "Cerignola" オリーブは、フロリダ州、ジョージア州、ニューヨーク州郊外 upstate の小売店に流通している。透明な25オンス用ガラスビンに入っていて、ラベルに "LOT #G080" と印刷されている。これまでのところ、摂取に関連して発病した報告はない。この製品が定期的な検査でunderprocessed [* 十分な処理がなされていない?] であったことが判明したことを受け、汚染の可能性が浮上した。FDA により商品の流通が差し止められ、会社による問題の原因究明が続けられている。25オンス用ビン入り "Cerignola" オリーブを購入した人は、購入店に返品して、返金を受けるよう勧告する。
[Mod.LL-Bella di Cerignola (通常は "Cerignola"のみで呼ばれる) オリーブは[イタリア半島の]長靴のかかとの部分に当たる、イタリア南東部の端にある、Apulia 地方で栽培され、塩水や酢の中に漬け込んで保存される。シャキシャキした歯ごたえと柔らかな香りは、前菜やスナックとしてとても良い選択である。同じブランドのオリーブの、同様の商品回収が、2005年11月と 2006年 12月 (20061205.3430) にも発生した]

●  リーシュマニア症、内臓 中国
PRO/AH/EDR> Leishmaniasis, visceral - China (Xinjiang) 20070310.0846
 情報源 Oilnews.com.cn [trans.]、3月8日
新疆 Hami 地方で、カラアザールの1例発生
Tuha Oilfield Hospital において、black fever [内臓リーシュマニア症 visceral leishmaniasis] の 1例が診断された。40年以上の間、新疆 Hami 地方において、この疾患は非常にまれであった。隔離治療により、このウイグル Uygur の若い男性患者の状態は安定して、病状の指標は全て改善し、退院した。
[Mod.EP-内臓リーシュマニアまたは Kala Azar ともよばれる疾患は、中国国内では広く蔓延していたが、1958年以降はコントロールが行き届いていた。中国北西部の丘陵地帯の、新たに開発された砂漠地帯で散発的な発生が見られているのみである。最近の新疆の患者の遺伝子タイピングにより、中国東部の Kala Azar は、インドのものと同じであることが判明している (中国のリーシュマニアの、RAPD [random amplification of polymorphic DNA] 法による、種 species と菌株 strain の解析についての報告がある)。一編の中国におけるリーシュマニア症の検討においては、新疆および内モンゴルの散発例を除けば、中国国内のリーシュマニア症は制圧されていると結論されている (Current status of Kala Azar and vector control in China. Bull World Health Organ 1991;69: 595-601)。隣国カザフスタンにおいてもリーシュマニア症の発生があることを銘記すべきである]

● ニューカッスル病 イスラエル,ルーマニア(2件)
PRO/AH/EDR> Newcastle disease, poultry - Israel (Galilee): RFI
Archive Number: 20070310.0855
 情報源 Jerusalem Post、3月7日
家禽の大量処分 Huge number of diseased fowl destroyed in Galilee
過去数ヶ月間に、Galilee の数十の町において、外来のニューカッスル病 Newcastle disease に感染した数十万羽の家禽が廃棄処分となっていると、イスラエルラジオが、2007年 3月7日に伝えた。加えて、農業省は、感染流行をメディアに伝えず、問題除去のための必要な対策をとっていたことが明らかになった。感染が発生した地域は、30日間の隔離と現地の卵やニワトリを販売することを禁じられた。
[Mod.PC-既に感染は下火となっているが、流行は 2007年 1月に発生し、食卓用の鶏卵と、食肉の双方に影響がでた。 OIE への報告は行われていないようである。経過や診断法その他の詳細情報が寄せられることを希望する]

PRO/AH/EDR> Newcastle disease, poultry - Romania 20070310.0845
 情報源 The Poultrysite.com、3月9日
54834 羽の大量のトリが感染する恐れのあった、2006年 10月16日の感染流行開始以来、ニューカッスル病 (NCD) が繰り返し発生している。2007年初めから数えて、既に 6件以上の感染流行が発生している。最新の感染流行は小さな村の中だけで制圧されたが、NCD はルーマニア東部全体に拡がり、北の端から南へ向かって移動し、特にモルドバとの国境を越える恐れがある。 65.5% の致死率のため、当局は問題の早急な解決のため必死になっている。委員会の指示に基づき、ワクチン接種が認可され、消毒の実施と、国内の移動の統制が行われているが、感染の出入りを危惧し、野生動物の保有宿主の管理も行おうとしている。
[Mod.AS- 4つの点が指摘される状況である、すなわち、ウイルス感染循環が広範囲であること、病原性が高いこと、小規模業者においてワクチン接種率が低いこと、そしてバイオセキュリティが不足していることである。ルーマニアから OIE への報告は、2007年 3月6日に提出され、前回 2006年 12月の報告以降、6つの地方に 6件の感染流行が発生したことが報告されている]

● ウエストナイルウイルス 西半球
PRO/AH/EDR> West Nile virus update 2007 - Western Hemisphere (03) 20070310.0854
 情報源 Campus Times、3月9日
疾病監視用のニワトリ 1羽、WNV 抗体陽性
蚊族およびベクター対策区分による、San Gabriel Valley 地区 (Mosquito and Vector Control district) のニワトリ 1羽において、先月 (2007年2月)、ウエストナイルウイルス WNV 検査が陽性となった。このニワトリは、WNV 抗体が陽性となり、カリフォルニア州保健リケッチア疾患研究所 the California Department of Health Services and Rickettsial Disease Laboratory の二次検査で結果が確認された。同地域内では感染予防の目的で、市内全体のあらゆる場所においてニワトリを飼育している。これらの群れで、10日ごとに抗体検査を行っている。ニワトリは、カラスなど他のトリと違って、死亡することなく、抗体が出来るという。このニワトリは、その他の蚊族により伝播される疾患、セントルイス脳炎や西部ウマ脳炎なども検査されている。年間を通じてWNV感染が発生することが脅威となっている。

● 原因不明の大量死、ピグミーウサギ 米国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed die-off, pygmy rabbits - USA (WA Washington): RFI: 20070310.0852
 情報源 The Olympian Online、3月9日
Mystery disease kills Northwest Trek rabbits

過去数ヶ月間に、Eatonville 付近の Northwest Trek で、9匹の絶滅危惧種であるピグミーウサギ pygmy rabbit が原因不明の疾患で死亡した。Trek の管理者は、この死亡数は、飼育かごで育てて繁殖し、野生に放す予定であった個体数の約半数にあたると述べた。ウサギの死因は不明だが、感染力が強く急性の死亡疾患として対処されている。死亡するまで平均的な体重で、えさもよく食べていた。ストレスや行動異常も見られていないという。以下残ったウサギへの対処など
[Mod.TG-ピグミーウサギ pygmy rabbit についての説明 (野生は残りわずかで、それ以外の個体群のほとんどは 2件の繁殖計画によるものである) ... 以下長文 出典]

● 原因不明の死亡、ウシ 米国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed deaths, bovine - USA (WA Washington): RFI 20070310.0851
 情報源 Seattle Times、3月10日
WA state veterinarian investigating reported cow deaths at dairy
ワシントン Washington 州動物衛生当局は、Stevens 郡の乳用牛の牧場 1カ所で死亡したウシたちの調査を行っていると、州の農業局が 2007年 3月11日に報告した。まだ調査の着手段階であると説明している。ミルクの販売が停止されている。詳しい発生状況 (頭数など) は明らかにされていない。FDAも調査に加わっている。BSE との関連性についても、発言を避けている。
[Mod.TG- 乳用牛の特に成牛が 1ないし2頭死亡することは珍しいことではないが、2006年 12月以来ミルクが販売されていないことと、州当局だけでなく、合衆国農業部の調査に FDA が加わっていることは興味を引く。当局は、共同で調査することはよくあることとしているが、動物の死体についての調査は、地元当局に委ねるのが一般的である。ミルクが販売されていないのであれば、FDA が加わることは奇妙である]