2007年3月13日

食中毒、魚類 中国,テトロドトキシン
腎症候性出血熱 ロシア

● 食中毒、魚類 中国
PRO/AH/EDR> Foodborne illness, fish - China (Guangdong) (02): tetrodotoxin
Archive Number: 20070313.0889
 情報源 Xinmin Evening News [in Chinese]、3月12日
海水魚 "Yongeichthys criniger"を食べ 16人が中毒、1人死亡
_Yongeichthys criniger_ を食べた、Xilian の多数の住民が食中毒を起こし、16人が発病し、病院へ向かう途中で 1人が死亡した。2007年 3月12日、広東省衛生部は Zhenjiang 市の保健当局から、3月 7および9日に Dajing 村 (Xilian) の 13人と、Guatneg 村の 3人が海水魚を食べた後、食中毒の症状を発症したとの通報を受けた。小児2 人が含まれていた。56才の男性が病院へ向かう途中に死亡した。3月11日の時点で、3人が回復して退院した。調査と動物実験から、Zhenjiang 保健当局の予備的な判断としては、トキシンを含む魚類の摂食を原因とする食中毒とされた。水産局と、海洋大学の専門家らは、魚の種類は、有毒魚の _Yongeichthys criniger_ と同定した。含有されている毒は、テトロドトキシン である。これは、衛生当局の現地調査に続く結論に基づくものである。地元保健当局は、衛生監視の強化、住民への教育、ハゼ類の採取、売買、摂取を控えるよう勧めている。広東省衛生部が、広東省の魚類の摂取による食中毒を報告したのは、これが初めてである。
[Mod.JW-フグ Puffer fish は、テトロドトキシン Tetrodotoxin の原因として有名である。診断が、シガテラの疑いからテトロドトキシンに変更された。両者とも初期症状は同じである]
[Mod.LL-テトロドトキシンは、多様な動物種から分離されていて、Californianewt (イモリ)、parrotfish、 _Atelopus_ 属のカエル、blue-ringed octopus タコ、starfish ヒトデ、エンゼルフィッシュ、xanthid crab カニなどがある。テトロドトキシンが何から代謝されるのか metabolic source は、不明である。藻類の中でテトロドトキシンの原料となるものは、同定されていない。最近まで、テトロドトキシンは宿主の代謝産物と考えられていた。しかし、_Vibrionaceae_, _Pseudomonas sp._, _Photobacterium phosphoreum_ 科の複数種の細菌が、テトロドトキシン/無水テトロドトキシンanhydrotetrodotoxin を産生することが最近報告され、この種のトキシンは細菌由来であるとの見方が有力である。この種の海生生物に関係する細菌は、海中で普通に見られる。もしこのことが確定されたなら、これらの細菌の種類に、より直接的に関係する中毒において、この発見は重要な意義をもつ。毒のあるフグを食べてから 20分から 3時間後までの間に、中毒の最初の症状である、唇や舌の軽いしびれが見られる。続いて、顔面と四肢のマヒが進行し、浮遊感が表れる。頭痛、胃痛、吐き気、下痢、そして嘔吐などを発症することもある。時に酩酊様歩行あるいは歩行困難が見られる。中毒の第2段階として、マヒの進行がある。患者の多くは、動くことができず、座ることさえ困難となる。呼吸困難が進行する。会話は障害され、通常、呼吸困難、チアノーゼ、血圧低下となる。マヒは進行し、けいれん、精神障害、不整脈を生じることがある。マヒ性貝毒 (PSP) は、dinoflagellate 産生 saxitoxin の摂取によるもので、ほぼ同じ症状を呈する。これは、トキシンの作用機序が同じであるためであるが、フグ毒で見られる中等度から重度の血圧低下は、PSP では通常認められない。抗コリンエステラーゼ除草剤中毒は、フグ毒や PSP による疾患と間違われる可能性があるが、アトロピンの使用で症状が緩和され、他のコリン作動性神経刺激症状の発現として、流涎、流涙、気道分泌亢進、および縮瞳が見られる]
関連項目 20070311.0870

● 麻疹 中国
PRO/EDR> Measles - China: RFI 20070313.0888
 情報源 People's Daily online, Xinhua Agency report、2007年3月12日
12日、衛生省 The Ministry of Health は、2月の麻疹 9501例、風疹 2341例を発表した。2006年同時期と比較して、それぞれ、68%および 134%の鋭い増加であった。麻疹感染症例は、2007年初めから特に原因なく急増している。
[Mod.MPP- 衛生部の公式報告を機械翻訳すると、"2007年 2月の麻疹感染は 9501例で、同 1月の 8447例の 12.48%増であり、2006年 2月 5641例の 68.43%増となっている。風疹についての同内容の解析(省略)" となる。2007年 1月11日の ProMED-mail の、広東省の麻疹に関する投稿において、報道記事に以下のような発言が見られた。"しかし、1985年以降、麻疹発生は全国的に増加している。2005年には、10年の間に、10万人対10人の最高比率にまで増加した。一部の省では、2006年さらに高い蔓延が観察されている。中国政府は麻疹根絶 5カ年計画を設定した。" 麻疹はワクチンで予防可能な疾患である。麻疹イニシァチブが 2001年開始となり、2010年までに、麻疹の死亡を 2000年の報告を 90%減少させることを目標としている。WHO 西太平洋事務局 WPRO は地域の目標に麻疹根絶を掲げている]

● 腎症候性出血熱 ロシア
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fever w/renal synd. - Russia (Central Fed.Region) (02) 20070313.0887
 投稿者 フィンランド Vantaa Research Unit Heikki Henttonen教授、3月13日
20070311.0857 には、いくつか付け加えるべきコメントがある。この地域のハンタウイルスによるHFRS に関して正確さを欠く表現が含まれている。[1] については、この地域の HFRS がプーマラウイルス PUUV によるものが主で、感染流行は晩秋から真冬に発生するので、流行が終了したとすることは問題ない。しかし、[2] についてはコメントが必要である。齧歯類が目覚めることで、2007年の春に新たな感染流行が予測されるというのは誤解である。温帯森林気候地帯の masting [エサとなる種や果実の結実] のため、齧歯類のピークの年には夏の中-下旬に、多くの症例が発生する場合はあるものの、PUUV による春の感染流行は起こらない。もし "awaking" が冬眠する齧歯類について使われているのなら、彼らは PUUV を保有することはない。宿主となるのは、以前は_Clethrionomys glareolus_ と呼ばれていた、土手のハタネズミ _Myodes_ (the bank vole、_Myodes glareolus_) であって、モデレーターがコメントの中で述べていた _Apodemus agrarius_ ではない。投稿にあった "Field mouse" は、専門家以外の報告においては、全ての齧歯類をさす言葉である。中欧および東欧において、_A. agrarius_ は Saaremaa hantavirus [SAAV] を伝播する。これらのネズミ科 murine および arvicoline の齧歯類は冬中活動している。今回の感染流行は、暖冬が原因である。ロシア中央部で、HFRS の感染流行は典型的には、キャリアの種の増減を反映して、3年周期で発生しているため、単なる偶然である可能性もある。たとえ、温暖な気候が疾患の動静に影響したとしても、長期的なキャリアの齧歯類の動向がはっきりと判るまでは、ひと冬分だけを根拠に強く断定するのは危険である。今回よりも深刻な流行が以前、中欧ロシアで発生したことが知られている。さらに、ヒトの行動についても忘れることはできない。ソビエト崩壊後のロシアの政治的変革後、森林地帯に住宅を建てるひとが増え、PUUV/HFRS に感染する機会が増えた。一方では、暖冬は齧歯類の活動性の点では有利に働くかも知れないが、他方では、雪の覆いが消え、捕食者からの防護がなくなる点で、不利となることもある。最近の北欧での経験では、実際に、暖かい初冬は、寒波が来て、土手ネズミの人家への移動が活発化するまで、HFRS 感染流行を遅らせて数を減少させることが示唆されている。ウイルスはマイナス 30度で死滅するとのコメントも明らかな間違いである。われわれは、ハンタウイルス (およびその他のウイルス) を、長く形よく保存するために、通常マイナス 70度で保存する。Kallio らは、温度と湿度が、宿主外での PUUV の生存に明瞭に影響することを示している。さらに、齧歯類の宿主の動向 (周期的か季節性か)、地形の構造 (タイガの大きな森かとびとびに存在する小さな温帯林か) の様々なパターンに加え、低温によるウイルス生存期間延長も、北欧やロシアと、中欧や東欧のどちらで HFRS が多くなるかの一因になる。冬のピークを過ぎ、その後の春と夏に、土手ネズミの個体数は、平均的な密度よりずっと少なくなる。このため、減少局面での齧歯類の撲滅計画の開始は無用で、毒物が無差別にばらまかれるのであれば、有害でさえある。