2007年3月14日

ダニ媒介性およびライム病 ロシア
トリパノソーマ症 米国 EID
● ダニ媒介性およびライム病 ロシア
PRO/AH/EDR> Tick-borne & Lyme diseases - Russia (Chelyabinsk region) 20070314.0904
 情報源 Noviy Region, Russian Information Agency [trans.]、3月12日
Russia: South Urals prepare for tick encephalitis season
チェリヤビンスク Chelyabinsk 地方の主任保健担当官は、ダニ媒介性脳炎の緊急予防対策実施に関する書類に署名した。前年、ウラル地方南部のダニ脳炎第1例は、春の雪解けが始まった 3月に発生した。Rospotrebnadzor [消費者の権利と福祉監視連邦サービス] の地方当局は、2006年のダニによる刺咬は、南ウラルで約 18000件であったと説明した。同地区内で 2006年に、3人の死亡を含む 126例のダニ媒介性脳炎患者と、260例の Lyme 病患者が発生した。南ウラルのダニ媒介性脳炎の有病率は、ロシアの他の地方の約 1.5倍で、最も多かったのは Kunashakskiy, Uiskiy, Nazepetrovskiy および Nagajbakskiy 地区と Plast および Karabash 地区であった。そのうち 28%が町や村の居住区域で、警戒すべき状況となっている。当局は、この状況は予防ワクチンの接種率の低下によるものと説明している。2006年、南ウラルでワクチン接種を受けたのは、住民のわずか 6%だった。当局は、ダニ媒介性脳炎対策として、森林で働く人たちに、ワクチン接種と同時に、衣服や忌避剤を供与している。ワクチン接種を受けていない小児や若年者は、ハイキング等の野外活動に参加させるべきではない。同じことは、5月から 7月に野外活動を楽しもうとしている人々にもあてはまる。
[Mod.NP- 昨年 (2006)、ロシア各地 (Pskov, Kemerovo, Chita, Nizhniy Novgorod,Novosibirsk, Tyumen, Irkutsk, republics: Khakassia, Buryatiya and Mariy El) や、ラトビア、エストニアなどでダニの活動性増加が観察された。合計 3510人のダニ媒介性脳炎患者 (人口 10万対 2.44の有病率) が、2006年のロシアで記録された。これは、2005年より 22.7% 低い数値であった。同じ年、Lyme 病は 7451例 (人口 10万対 5.18) で、2005年より 0.3%少なかった。 (ウラル南部) チェリヤビンスク地方はロシアの中欧にあり、ヨーロッパとアジアの中間である。ウラル山脈の南の麓にあたり、平原につながっている]

● トリパノソーマ症 米国
PRO/AH/EDR> Trypanosomiasis, autochthonous - USA (LA Louisiana) 20070314.0900
 情報源 Emerg Infect Dis, April 2007、3月14日
Autochthonous transmission of the Chagas disease in Louisiana

ルイジアナ州 Louisiana で発生した、シャーガス病 the Chagas disease の寄生虫、クルーズトリパノソーマ _Trypanosoma cruzi (TC) の国内感染伝播が、2006年7月、ルイジアナ州ニューオーリンズの農村部の74歳の女性 患者で確認された。患者は2種類の血清検査と血液培養が陽性であり;患者宅で捕獲された 18匹のサシガメ _Triatoma sanguisuga_の56%が、PCR 法による _T. cruzi_ の検査が陽性であった。シャーガス病の寄生虫に感染していることが確認された、米国国内感染報告はわずか 5例で;テキサス州の乳幼児で 3例、テネシー州の乳幼児で 1例、そして、カリフォルニア州の 56歳女性の 1例であった。米国で、シャーガス病感染伝播に最も重要なサシガメの種類は、_Triatoma sanguisuga_で 南東部全体に広く、メリーランド州やテキサス州まで分布し、テキサス州やニューメキシコ州では、_T. gerstaekeri_ が見られる。米国には活動性の森林サイクルが存在する;直接または血清学的解析により、18種以上のほ乳類において、TC が確認されている。その中には、アライグマ、オポッサム、アルマジロ、キツネ、スカンク、イヌ、森林ネズミ、リス、そしてヒト以外の霊長 (野外研究施設内) が含まれている。ルイジアナ州において、TC 感染は 28.8% [*何に対する割合か不明] に認められる。各種動物の感染割合の詳細 ... ヒトでの感染例がなかった理由として、多くの米国の家屋には、寄生虫にとって適当な生息場所がないこと、動物の宿主の偏り、ラテンアメリカのサシガメに比べ、米国で発見されるサシガメは排便が遅延すること[*意義不明] とされている。2006年 6月、ニューオーリンスの農村部の家に住む 74才女性は、50回以上もの昆虫の刺咬に悩まされ、自宅内に多数の虫を発見。薫蒸業者に見せたところ、サシガメと確認された。インターネットの情報から、シャーガス病の感染伝播を疑い、医療センターを受診した。ルイジアナ州内で患者がTCに感染したとの主張は、この疾患が土着感染している地域で、改装された家屋でほとんど滞在 (シャーガス病の感染リスクは、常在地域の長期在住に深く関係する) した、限定された渡航歴や、他のリスクファクターがないこと、自宅内に多数の感染したサシガメがいたことにより強く示唆された。眼窩周囲の腫脹は認められなかったが、サシガメの排泄物と思われ るナイトガウンの跡は、暴露があったことを示し、彼女の数知れない刺咬されたキズから、寄生虫が侵入した可能性が高い。住民らは、自宅内に多数のサシガメがいたこ とに気づかなかった。しかし、9ヶ月前にハリケーンカトリーナが襲い、ハリケーンの後、サシガメの国内蔓延がひどくなっていることが報道されていた。話として、アルマジロの個体数がカトリーナに続く数ヶ月で増加し、これらの宿主が寄生虫増加を支え、アルマジロが嵐の前の個体レベルに戻った後、他に血液を求める様になったと も考えられる。国内周辺のサシガメの生態や保有動物についてのフォローアップの調査が計画されている。
[Mod.EP-この患者はルイジアナ州で実際に感染した可能性が高く、このような症例はたった 1例であっても、国内に_Trypanosoma cruzi_ の保有動物がいるに違いないことを示している。以前ルイジアナのアルマジロ、ポッサム、イヌの TC 感染が報告されている。ヒトへの感染には、家の壁の裂け目に棲むことが多い感染したサシガメによる刺咬が必要であるとされている。この疾患は、貧しく、劣悪な住環境の疾患の典型である。保有動物やベクターについて、さらなる研究が必要である]

● 黄疸の流行 インド
PRO/EDR> Jaundice outbreak - India (UP Uttarpradesh): RFI 20070314.0903
 情報源 The Times of India, Lucknow edition、3月14日
India: Jaundice back in Jankipuram, claims 3 lives
Jankipuram で黄疸の流行が再び発生している。今回、下痢症と嘔吐を伴っている。地区の shraynagar で 3人が死亡した。保健当局は、2人の死亡を確認している。2ダース以上の患者がいくつかの私立病院や Bhaorao Devras Hospital で治療中である。地元当局は疾患拡大の原因を飲料水の汚染であるとしている。病院の当局者は、地域で発生した 6人の患者が入院したと述べた ...
[Mod.CP- Jankipuram は、インド最大の人口密集地 ウッタルプラデシ 州の州都Lucknow の 1地区である。過去にも上水道の汚染が発生しており、その結果胃腸疾患が流行している。今回の Jankipuram の流行において、黄疸の臨床診断と上水道の汚染の疑いから、原因として、自然状態としては、A 型および E 型肝炎ウイルス、レプトスピラまでが示唆される。A 型肝炎ウイルス感染で、死亡に至ることは多くないが、E 型肝炎ウイルス感染では死亡することがある。北のネパールでは、E 型肝炎ウイルス感染が繰り返し問題となっている]

● 野兎病 アルメニア
PRO/AH/EDR> Tularemia - Armenia (Gegarkuniq) 20070314.0901
[1] 6人の患者の診断確定
 情報源 ArmInfo [trans.]、3月12日
アルメニアの Gegarkuniq 地方の Tsovagyukh で、村人数人が動物から感染する急性感染症である、野兎病 Tularemia と診断された。共和国感染症病院の医長は、6人の患者で診断が確定したと述べた。医師と疫学者からなる緊急対策チームが 2007年 3月10日から稼働し、注意喚起が発令された。医師らは、他にも10人が感染を確定されるものと考えている。患者数が少数であるため、水系感染による可能性はないものと考えられている。2004年、Fonatanka 村で感染流行が発生し、その後、約 300人の感染源は飲み水であることが判明した。今回については、疫学者らは、村内に多数が観察されていたとの村人の言から、小型ほ乳類[ノウサギ hares のこと?] が感染源であると考えてられている。医師は、野兎病が容易に治療でき、またリンパ型のみで、重症化する肺型は診断されていないことを明らかにした。また、1000人以上がワクチンの接種を受け、その他全員 (4500人) もワクチンの手続きに入っていると述べた。
[2] 40人が感染し、水系感染の疑いがある
 情報源 Center for Disease Prevention and Control of the Republic of Armenia [trans.、URL なし]、3月10日
2007年 3月10日、アルメニア Gegarkuniq 地方の Tsovagyuk 村で野兎病感染流行が報告されている。これまでに 40人が医療機関を訪れている。感染源はまだ確定されていないが、水系感染の疑いがある。Oculoglandular 眼腺型、oro-glandular 口腺型、glandular 腺型の報告がある。患者らは適切な治療を受けている。新たな患者が確認されている。
[Mod.AS- 2つの報告において、患者数の食い違いがある。追加の問い合わせにより、2007年 1月以降、40人の累積患者が発生したことは明らかである。[1] の 16人例は、新たに発生した患者数かも知れない]
[Mod.LL- 主病変が口と結膜で、皮膚にないという報告は、エアロゾル化され、経口摂取された媒介物を示唆する。切り傷、ダニ、その他の昆虫の刺咬、もしくは他の創傷から _Francisella tularensis_ (病原性の球桿菌) に感染した患者の多くは、腺または潰瘍腺病変 (皮膚の初期病変を伴う) を示す。感染流行の疫学は未だ明らかではない]


● アスペルギルス症 スペイン
PRO/EDR> Aspergillosis, fatal - Spain (Madrid): susp. 20070314.0899
 情報源 Portal [trans. ]、3月13日
マドリード Madrid の病院 Principe de Asturias at Alcala de Henares Hospital の予防医学センターと、公衆衛生監督局は共同で、過去 2ヶ月間に 4人の死者が出た、高齢者 11人のアスペルギルス症感染を、現在調査中である。記者会見では、調査の最終結果が得られるまで、 (彼の言うところの) ある特定の患者群で通常よりも短期間に発生した状況を、確実に説明できる原因は把握できていないと、Alfonso Diaz-Canete 医師は答えた。彼は、高齢で慢性的に重症呼吸器疾患を持ち、アスペルギルスに感染した 4人が死亡したと述べた。しかし、内科部長は、前述の微生物が死因であると決めることはその証拠を得ていていないため、非常に難しいが、この真菌が、以前から症状のあった患者らの病状に影響したことは認めた。マドリードの保健当局長は、事態は沈静化し、すべての対策と努力が行われていることを明らかにした ...
[Mod.TG-アスペルギルス症は、真菌のアスペルギルス属 _ Aspergillus _ sp. を原因とする。この特定の真菌は、腐食した物質、たとえば落ち葉の山、堆肥の山でも発見されるような、腐った植物、穀物のような貯蔵された日用品などでも見つかることがある。アスペルギルス属は、侵襲性の肺疾患の原因となり、活動性・陳旧性を問わず、以前の結核の瘢痕や膿瘍がある場合は特に、肺に菌球 fungal ball を形成する。侵襲性アスペルギルス症は、初期にはインフルエンザ様症状で発症し、発熱、痛み、悪寒、頭痛、さらに呼吸困難や視力障害、血痰などを生じることもある。喘息様のアレルギー症状を発祥することもあり、発熱に喘鳴、せき、体重減少を示す。診断は病歴、臨床症状と胸部レントゲン写真、喀痰培養にもとづき、さらには肺生検が必要なこともある。菌球は、肺組織の出血を伴う場合、外科的処置を要する。侵襲性疾患では、抗真菌薬、たとえ 、Itraconazole または voriconasol による治療が必要となる。アンフォテリシン B が用いられることもある。侵襲型では、心内膜炎を伴うこともあり、アンフォテリシン B による治療となる。これらの薬剤は、それぞれにいくつかの問題があり、薬剤の使用の重大な結果としての腎不全の危険もあるため、医師による慎重な監視が必要であ る。一般的に、適切な治療と反応性のある免疫状態であれば、患者は徐々に回復する。この特殊なケースでは、患者らがどのようなして感染し、免疫状態がどうだったか は解らない。高齢者で、免疫反応性能力は、年齢に応じて減弱していたとされている。疾患発生の調査の一方で、暴露した環境と、患者らが接近して発生していたかにつ いての情報が得られれば有用である]

● 鳥インフルエンザ 家禽か渡り鳥か
PRO/AH/EDR> Avian influenza, poultry vs migratory birds (14)
Archive Number: 20070314.0905
 情報源 EID, Volume 13, Number 4; April 2007、3月13日
"鳥類と鳥インフルエンザの、アジアからアラスカへの移動"と題する、EID に投稿された論文。
要約 
アジアを起源とする鳥インフルエンザウイルは、一部では渡り鳥によって拡散された。アラスカでは、アジアからの種々の鳥類の宿主とアメリカの鳥類の宿主が、大陸を越えた鳥類相 avifaunal が混在するこの地域で、混じり合っている。この地域は、野鳥由来の鳥インフルエンザウイルスに汚染された水の中で鳥類が混じり合うことから、アジアからアメリカへウイルスの伝達が起こるゾーンだと仮定されている。われわれの 7年以上 (1998-2004、8254検体) にわたる、水禽と海岸に棲息する鳥類の、鳥インフルエンザウイルス・サーベイランスの結果、感染率は非常に低いものであることが判明した (0.06%) 。[陽性となった検体はわずか 5検体で、H5亜型は 0] この結果から、ウイルスの生態学上の北極の効果は、恐らく生態系の生産性が低いことと、利用水域に対して比較的密度が低いことなどが原因となっているものと考えられた。鳥類の多様性と個体数の統合、大陸間の宿主の移動、遺伝学的解析を総合すると、われわれの結果から、この地域 [*Alaska] の、大陸間 [*アジアからアフリカ] のウイルス移動のリスクおよびおそらく頻度も、相当低いことが示唆された。
以下、討論、参考文献、モデレータの賛同(省略、原文参照)。

● 原因不明の大量死、ピグミーウサギ 米国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed die-off, pygmy rabbits - USA (WA)(02) 20070314.0902
 投稿者 仏・Epidemiology Unit、Francois Moutou、3月14日
カリシウイルスcalicivirus (ウイルス性ウサギ出血性疾患など)を仮定して検査すべきである。OIE の研究所はイタリアだが、米国内の研究所でも可能と思われる。
[Mod.TG-ウサギ出血性疾患は、20050609.1649 において、詳細な議論が行われている。明らかにこれは、世話人がウサギの保護を模索すべき疾患である。米国には、この状況を取り扱うことが可能な研究所が複数ある。研究所や獣医学者からの当局の報告を待ちたい]
関連項目 20070310.0852

● 鳥インフルエンザ アフガニスタン、ジブチ
PRO/AH/EDR> Avian influenza (53): Afghanistan, Djibouti, OIE: RFI 20070314.0898
[1] アフガニスタン Afghanistan
 情報源 UN Integrated Regional Information Networks (IRIN) News、3月12日
先週、アフガニスタンにおいて、新たに13件の鳥インフルエンザ感染が発生し、2007年の国内の発生数は 17となったと、保健当局が発表した。カブール Kabul の国連機関 FAO の広報官は、東部 Nangarhar and Kunar 県の 5つの地区の 9羽の死亡したトリの、H5N1型鳥インフルエンザ感染が診断されたと述べた。カブールに診断用研究所を立ち上げた FAO によると、首都カブールの庭先飼育の家禽においても、さらに 4件の感染例が確認されている。これに先立ち、2007年 2月24日には、同じ Nangargar と Kunar 県で 4件の H5N1型ウイルス感染例が報告されている。これらはいずれも、パキスタンとの国境に接している。アフガニスタンで初めてトリ感染症例が報告されたのは、2006年 3月のことであった。アフガニスタン政府は隣国のパキスタンや他の鳥インフルエンザ発生国からの家禽の輸入を禁止した。対策として、政府当局は、感染が確認された、首都と2つの県において、家禽へのワクチン一斉接種を行った。動物衛生生産局長は、主な養鶏場でのワクチン一斉接種は完了し、庭先飼育の家禽にも開始したと、2007年 3月11日に報告した。しかし、アフガニスタン政府は、感染対策のための資金が不足している。カブールでは、子供たちが死んだトリのそばで遊んでいるところ見かけられて いる。若年者は健康に見え症状を呈していないが、これらの人たちの血液検体が採取されて医学的検査に送付されている。公衆衛生省は、これまで国内ではヒトの鳥イ ンフルエンザ感染例が発生していないと述べている。2500万人と見られているアフガニスタンの人口の半分以上は、貧困ラインを下回る生活をしている。これは、ニワト リや卵が貧しい農村部の家族にとっての重要な収入源であり、彼らは登録せずに何十羽の庭先飼育を行っていて、鳥インフルエンザの感染流行時には、非常に感染しやす いことを意味している。
[2] ジブチ、OIE フォローアップ報告 No. (最終報告) RFI
 情報源 OIE Disease Information, WAHID 2007; 20(6)、2月3日
Highly pathogenic avian influenza, Djibouti、follow-up report No. 1 (final report)
感染開始時期 2006年4月6日
報告日 2007年2月3日
原因ウイルス 高病原性鳥インフルエンザウイルス、H5N1
新たな感染流行 なし
[Mod.PC-新たな 13件のアフガニスタンからの報告は、以前報告のあった地域に限定されているものの、やや深刻な勢いで累積していることを示している。情報提供を依頼する目的で、ジブチのOIEへの最終報告を含めた。これは、2006年 5月27日以降続いている、読者からの詳細な情報に対する要求に応えてのことである。トリでの感染流行に関す OIE 報告は、たった 1つしかなく、しかもそれはこの最終報告である。エジプトでのヒトの感染に関する投稿で Mod.CP が触れたように、ヒトでの感染流行は、1人の患者に限定され死者は発生しなかった。読者らのコメントから、以下の疑問に答えられる情報提供を、新たに依頼する
- なぜ、かくも少ない数の、ヒトとニワトリあるいはその他のトリだけしか感染しなかったのか。
- なぜ、もっと感染拡大がおこらなかったのか。
- どのようにして、ジブチに鳥インフルエンザが持ち込まれたのか
- どのような感染対策が最も効果的だったのか
これらの疑問に対する答えが得られ難いことは承知しているが、どのような情報でも非常に有用だと思われる]

●  抗生物質耐性 ウガンダ チンパンジー
PRO/AH/EDR> Chimpanzees, antibiotic resistance - Uganda 20070314.0893
[1] 保護区内のチンパンジーが耐性菌に感染
 情報源 The News-Gazette.com (Champaign-Urbana, Il)、3月10日
ウガンダ Uganda の野生動物保護区内のチンパンジーとヒトとの接近は、チンパンジーにとって、遠い過去の祖先よりもずっと当たり前のことになっているかもしれない。この動物は、ヒトの細菌までもらっていると考えられ、一部は抗生物質耐性菌であることが、イリノイ州立大学 UI の研究で明らかになった。以下、ウガンダの Kibale 国立公園内で行われた研究で、初めて直接の接触なく感染伝播が発生したことが示されたこと。HIV やエボラ、鳥インフルエンザが、動物からヒ トへと種を飛び越えて感染したこと。一部のチンパンジーにおけるポリオ様疾患や、ゴリラの麻疹やムンプスの症状が確認されていること。この研究から、新たに、特に 野生動物への耐性菌の拡大の恐れが示されたこと .... この研究のため、UI は、ウガンダとカナダの大学と共同で、Kibale 公園内にすむ 2つのチンパンジーの群れを調査した。このうちの1つの群れについては、すでに 20年以 上にわたり研究が続けられていた。もう1つの群れは、公園内の観光客を案内する監視ガイドが、絶えず訪れていた。調査団は、チンパンジーと、研究者と、ガイドから 、大腸菌の検体を採取した。さらに、公園から約 5-24km圏内に住み、たとえあったとしても少ししかチンパンジーとの接触がなかった住民からも大腸菌の検体を採取した 。大腸菌は、ヒトにも動物にも普遍的であり、一部では重症化する可能性もあるという点で、この種の調査にはよいモデルであるため、注目された。また、他の細菌より も分子遺伝学レベルでの知識や薬剤耐性の情報が豊富であった。このことは、類似性を見るときに、基本的に数多くの検体について遺伝子指紋を比較することになるため 、重要である。UI の研究者らは、チンパンジーと接近して仕事をしている人々の大腸菌は、ほとんどあるいは全くチンパンジーと接触がない住民の大腸菌に比べて、より チンパンジーの大腸菌に近かった。自然の要因からの限定的な ”バックグラウンドレベル” の抗生剤耐性が、チンパンジーにもたらされたことが、考えられるかも知れな いと、UI の研究者は述べた。しかし今回の例では、チンパンジー内と、チンパンジーに混じって仕事をするヒトの間で見られる、特定の菌種の耐性に極めて相同性がある ことが証明された。この地域の人々は頻繁に抗生物質を使用しているが、決して地元の野生動物に抗生物質を使用することはなく、このことから、チンパンジーで見られ た耐性はヒトからジャンプしてきたものと示唆されると、話した。しかもこの 2つ (ヒトとチンパンジー; あるいはチンパンジーの2つの群れ?) は実際には接触はしていな い。感染伝播は、それぞれ水資源などを介しての接触を通じて、環境から発生した可能性があると説明した。以前より接触を避けるよう注意してきた研究者らにとって、 さらに慎重に行動するよう促すこととなった。この研究のもうひとつの目的は、Kibale を運営するウガンダ政府に対して、野生動物への人間の影響を最小限にとどめるた めの情報を提供することであった。そのためには、公園内の入場者数や、滞在時間の制限などの手段がある。研究者らは現在、Kibale のチンパンジーやその他のサル類が 農作物を荒らすことがある、農場で働く人たちの細菌や抗生剤耐性の類似性の研究を行っている。以下、資金協力や研究母体などの説明。
[2] 自然界にも耐性菌は存在する
 投稿者 Field Veterinary Program William B. Karesh、3月10日
この新聞記事は、病原微生物の伝播がどの方向に向かったのか、本研究によって結論付けられたかについて明確にしていない。しかし、人獣共通感染症については以前よりよく知られている。サルの死亡原因となることが知られているヒトの病気として有名な 3大疾患は、ヒトの結核、麻疹、ポリオで、この他、サルモネラ属、クリプトスポリジウム _Cryptosporidium parvum_、_Sarcoptes scabiei_、ジアルジア _Giardiaduodenalis_ などが、動物で見られる、ヒトが感染源の種と考えられる疾患として記載さ れてきた。Thaddeus Graczyk の長年にわたるこの分野の興味深い仕事として、ヒトの糞便中の微生物を遠い距離まで拡散させうる、無数の種のハエ fly の能力を記述している。著者も強調したように、細菌の薬剤耐性を解釈するときには慎重でなければならない。抗生物質は自然界にも存在し(元は自然界から発見された)、それらを産生 するカビmold、糸状菌 fungi、植物を防護していた。それに対して、細菌は、薬理学の出現よりも前から、抗生物質耐性を獲得していった。