◎ 腎症候性出血熱 ロシア,ハンタウイルス分類学
● 黄熱 ボリビア
PRO/AH/EDR> Yellow fever - Bolivia (La Paz) (02)
Archive Number: 20070319.0969
情報源 El Dario.com (Cochabamba, Bolivia) [edited; Trans.]、2007年3月12日
保健省の疫学地図によれば、全国で、634例のデング熱と DHFによる死亡 1例、4例の黄熱とうち死亡 3例、3例のハンタウイルス感染、(Chuquisaca の) 32例のレプトスピラ症確定患者と 800人の疑い患者が発生した。
[Mod.JW- 黄熱と同じく黄疸を示すレプトスピラ症疑い患者数百人のうち、何人が検査により黄熱と診断されるだろう]
[Mod.MPP- the number of suspected cases of yellow fever reported in Bolivia since 1 Jan 2007 疫学第 9週 ( 2月末 )には、33例の黄熱疑い患者が 3地方 (Cochabamba, La Paz and Santa Cruz) から報告されている。2007年 3月10日の報告書では、30人の黄熱疑い患者のうち検査で確定さ れたのは、わずか 2例であった。このニュース記事では、黄熱 4例が確定さ れたのか疑い患者であるか判らない。また、これら報告例の地理的情報もはっきりし ない。確かな情報筋からのさらなる情報を希望する]
関連項目 Yellow fever - Bolivia (La Paz) 20070206.0464
◎ エルシニア症、リステリア症 カナダ
PRO/EDR> Yersiniosis, listeriosis - Canada (ON): unpasteurized milk/cheese 20070319.0968
情報源 The Globe and Mail、2007年3月19日
Grey Bruce で、生のミルクによる小児の感染症が2件最近発生したと、2007年 3月18日に公衆衛生当局が発表した。
[Mod.LL-未殺菌のチーズによるリステリア症はよく知られている。この感染症は殺菌済ミルク pasteurized milk によっても起こることが知られている。このことをよく伝えている例として、殺菌処理済チョコレートミルク pasteurized chocolate milk の汚染による45人のリステリア症集団発生の症例がある。
-乳製品は、最終生産物の段階において、損傷 spoilage とリステリア菌 _Listeria monocytogenes_ などの病原菌の監視を行う必要がある
-消費期限はこれらの検査に基づいている
-工場内衛生基準は高く保たれている
-消費者は常に 4度以下で牛乳を保管し、消費期限までに消費する
リステリア菌は外因性にミルクを汚染する可能性が十分あるため、他の複数の研究から、品質のよい牧草 silage [ヒツジやウシのエサとなる、発酵した水分たっぷりの飼料]、搾乳技術の向上、生乳へのリステリア菌混入防止のための家畜舎の衛生管理などの重要性が強調されている。もうひとつのエルシニア菌 _Yersinia enterocolitica_ も、リステリア菌と同様に外因性に生乳に混入する可能性がある。 いずれの菌も、冷蔵庫の庫内温度でも増殖する能力を持ち、未殺菌乳だけでなく、殺菌乳を汚染する場合もある。以前に発生したエルシニア症の感染流行は、すでに報告されているリステリア症と同様に汚染されたチョコレートミルクによるものであった。生乳の汚染がこれらの 2つの病原菌によって起こりうることは明白で、殺菌過程が感染のリスク軽減する。殺菌乳とは無菌の状態ではなく、これらの菌あるいは他の菌を含有している可能性があり、4度以下の保管と消費期限前の使用という ガイドラインは守るべきである。参考文献6件の紹介]
● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (54): Egypt, WHO 20070319.0965
[1] 25th case confirmed by WHO
Egypt: Avian influenza situation in Egypt -- WHO update 9
情報源 World Health Organisation (WHO) Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR) disease outbreak news、2007年3月19日
2007年 3月19日、エジプト保健人口省は、新たな 1名のヒトでの H5N1 鳥インフルエンザ A ウイルスの感染を公表した。患者は、エジプト中央公衆衛生研究所と第 3 米国海軍 医科学部門 NAMRU-3 で確認された。この 10才の少女は Aswan Governorate 出身で、3月 13日に発症して入院し、現在状態は安定している。調査により、彼女が最近病鳥と接 触していたことが明らかになった。彼女の接触者は健康監視下におかれている。エジ プトで確定された 25人の患者のうち、13人が死亡した。
[2] 26th case reported
情報源 Reuters Foundation AlertNet、2007年3月19日
エジプト人の 2才の男児が鳥インフルエンザの検査陽性となり、人口最多のアラブの国の同疾患感染患者数の合計は 26人となったと、2007年 3月19日に保健省が発表し 。同省によれば、この少年は2007年 3月16日に Aswan の病院に入院した。同市では先週 10歳の少女が同じく感染陽性となっている。この少女はその後回復した。「発症 24 時 間以内にタミフルが開始されたことにより、少年の状態は良好であるとカイロの WHO 事務所の職員が述べた。Aswan のこれら 2件の患者には明らかな関連性はないとされ、 少年の両親は健康監視下に置かれている。2006年初めにエジプトの家禽で初め て同ウイルスが確認されて以来、13人のエジプト人が死亡した。発病した患者の多くは 主にエジプト北部に集中して、自宅の病鳥や死鳥との接触があった。エジプトはアジアを除く最多確定患者発生国で、今年になって 8人の確定患者が発生してお り、2007 年に世界で最も被害の深刻な国ひとつとなっている。FAO の主席獣医学者 は、エジプトは未だ鳥インフルエンザ対策が不十分な 3カ国の 1つだと述べた。
[Mod.CP -一見無関係のこれらの症例の注目される特徴は、2人の患者がともに、下 (北) エジプ ト [ナイル川の下流の意味] の Aswan の住民であるということである。その他の患者はほとんどが上エジプトで発生している。現在エジプトは、アジア以外としては最多の確定患者を報告しているが、その死亡率は 50% で、インドネシアの 77.8% に比べてずっと低く、世界全体の平均 60.1% に近い。これは、タミフルによる治療がすばやく行われている結果であろう]
● 食中毒 ネパール 死亡
PRO/AH/EDR> Foodborne illness, fatal, boar - Nepal: trichinellosis susp., RFI 20070319.0962
情報源 The Rising Nepal、2007年3月19日
Dadeldhura 地区 Rel Village of Kailapalmandau で発生した原因不明の疾患で、1人が 死亡し 9人が重体となっている。このほかにも多数の発病者が出ている。 31歳の女性 が病院へ向かう途上で、この病気により死亡した。地元の病院当局は、患者らが野生のイノシシの肉を摂食後に発病したと考えている。現在の症状として、筋肉痛、発 熱、呼吸障害、手足の腫脹が認められている。病院の医師らは、この病気の診断がつ いていないことを明らかにした。一部の患者は重症化し、患者数は増え続けている。地方保健当局には医師 2名がいるが、患者を診ているのは、そのうちの 1名のみで ある ... カトマンズ Kathmandu の疫学疾病管理局の医師は、村人の話として、患者のほとんどが女性 と子供の患者で、男性は、肉の摂取と同時に (女性は飲まない) アルコールを飲むため、発病していないとの情報を明らかにした。患者らの症状として、下痢症、 嚥下困難、咽頭痛、上下唇の "immobility [* マヒ ?] " が伝えられている。
[Mod.EP- 筋肉痛、発熱、下痢、呼吸困難、手足の腫脹は、旋毛虫症 trichinosis の 症状に一致する。患者の好酸球増加が見られれば、旋毛虫 _Trichinella_ 感染の診断 は強く支持される。野生のイノシシは世界中の旋毛虫感染の典型的な感染源である]
◎ 腎症候性出血熱 ロシア
PRO/AH> Hemorrhagic fever w/renal synd. - Russia (Central Fed. Region) (03) 20070319.0961
[1] ロシアにおける HFRS (腎症候性出血熱) の病因
投稿者 露・ウラジオストク 疫学細菌学研究所 HFRS 研究室、Galina Kompanets 、2007年3月19日
[20070313.0887 において] 原因ウイルスはプーマラウイルス Puumala virus [PUUV] と示唆されていたが、知りうる限りでは、この地域の HFRS は、PUUV ではなく、Dobrava virus [DOBV] に関係している ... ロシア中央部の DOBV に関する文献 2件の紹介 ... また、20070311.0857 の記事の第 2 項で、HFRS の感染流行地で捕獲されたげっ歯類が _Apodemus agrarius_ と確認されたと述べられていたが、 このげっ歯類は同地方の DOBV の主要なげっ歯類の宿主である。
[2] ハンタウイルス分類学
投稿者 フィンランド・バンター Vantaa 研究所フィンランド森林研究室、Heikki Henttone、2007年3月19日
上記 [1] の記事を踏まえて、
はじめに手短な分類学上の議論が適当だと思われる。Dobrava ウイルスについて言及 されているが、私はロシアを含めた中欧から東欧で発生している Saaremaa ウイルス (SAAV) について話した。おそらく _Apodemus agrarius_ によって伝播されるものと、同じウイルスのことである。われわれフィンランド-エストニア-スウェーデンのチーム は、ヨーロッパ (1996 年エストニア) ではじめて、シマノネズミ striped field mouse, _A. agrarius_ のハンタウイルスを確認し、初めての発表の際、_A. agrarius_ が保有する DOBV と名づけた。ヨーロッパ内の _A. agrarius_ で確認されたウイルス株は、極東の _A. agrarius_ のハンタウイルス株よりも、DOBV により近い。当初ヨーロッパウイ ルスとして発見された DOBV とは、かなり違っている。その結果、_A. agrarius_ のウイルス株の名称として Saaremaa ウイルスが示され、この名前が一般的となっている。 しかし、1990年代後半の文献に基づいて一部では、DOBV が _A. agrarius_ が保有するウイルス株の名称として依然使用されている。また、Saaremaa ウイルスが独立したウイルスの種としてふさわしいのか、それとも A. agrarius_ に感染する DOBV にすぎないのかという科学的議論もある。ウイルス分類学国際会議は、ハンタウイルス種の定義に対して4つの基準を設けている
-異なる種は、異なる主要な宿主を持つ。すなわち独立した生態学的地位をもつ宿主を持つ。
-糖タンパク前駆タンパクのアミノ酸構成と、ヌクレオカプシドのタンパク配列が、 7%以上異なっている
-2 種類の交差中和検査の違いが、4倍以上である
-異なるウイルスの種は、他の種と自然に再集合をおこさない
では、SAAV と DOBV はどれほど近いあるいは遠いのか? SAAV と DOBV は、同じ地域であっても、違った種の宿主に感染する。 たとえば交叉感染実験によれば、SAAV は _A. flavicollis_ における増殖能に乏しい ことが示される。また、交叉中和検査では 4倍以上の違いがある。病毒性にも違いが ある。DOBV は幼弱なマウスを殺すことがあるが、SAAV にはない。SAAV はヒトにおいて 軽症の HFRS をおこし、PUUV によるものと似ているが、DOBV は重症の HFRS を引き起こ す。したがって、生物学的にこれら 2つのウイルスは別の範疇である。しかし、アミ ノ酸 (あるいは核酸) の違いの条件には合致しない。SAAV の地位は、ICTV によって決定されるだろう。プーマラウイルスは、ロシアのヨーロッパ部分では、最も一般的な ハンタウイルスであり、多くの HFRS 患者の原因である。しかし、ロシアでは SAAV も発生するという点で Kompanets 博士は正しいし、私もそのように述べている。紙面の 関係上、また、生物学側面を強調するため、SAAV についてこれ以上細かいことには触れない。しかし、_Myodes glareolus_に伝播される PUUV が優位だが、_A. agrarius_ も存在するこの地域で、血清学的スクリーニングにより、SAAV が ヒトに感染していたことが示唆されたことを指摘しておくのは重要である。 (今回報告された場所に近い) Tula 地方における 1992 年の感染流行は、後の血清学的検査により、SAAV (あるいは SAAV 様ウイルス) によるものであったことが判明した (しかし、Tula ウイルスは、ハタネズミ vole の_Microtus arvalis_ が宿主であり、病原性は持たないと一般的には考えられている)。
以上のことから、げっ歯類からの検体の PCR や遺伝子配列の解析、ウイルスの詳細な特徴づけ と分類、特に複数の病原性ハンタウイルスが共存する地方において、特定抗原を用い た詳細なヒトの血清学的検討な ど、信頼すべき適切な方法論の必要性が強調されている。
[Mod.CP-ハンタウイルスの分類学は発展途上にある。最新の ICTV 報告 (第8版) で は、現在 Dobrava ウイルスは Dobrava-Belgrade virus に指定されている。さらに、遺伝子サブユニットの再集合の欠如は、ウイルスの種のアイデンテティーとしては絶対的な指標ではなく、研究室の実験では一部の再集合株が分離されている]
● 類鼻疽 オーストラリア
PRO/EDR> Melioidosis - Australia (NT) (02) 20070319.0960
情報源 Australian Broadcasting Corp. Northern Territory、2007年3月19日
10日間の治療のための昏睡状態から回復した、1人の類鼻疽患者は、感染につながる行動をした記憶がないと語った。類鼻疽は豪雨によって表出した土壌中の細菌による 疾患で、今年の雨期のノーザンテリトリー Northern Territory で 2人が死亡している。持病のない彼につ いて、医師らは、裸足で芝刈りを行った際か、豪雨の中で土壌を吸い込んだために感 染したものと考えている。「ほとんど歩けないなんてことはなく、ただ咳が続いてい て、そのうち血痰が出た」と述べ、「最初は粘液性だったが、4日目に口から血を吐 くようになった。自宅で何とかしよう、としない方がいいと気づいた」 と語った。
[Mod.LL-_Burkholderia pseudomallei_ (類鼻疽 melioidosis ) による感染症は、東南アジアからオーストラリア北部にかけて、ところどころで土着感染している。_B. pseudomallei_は、生物兵器 B分類の病原体とされているため、ProMED-mail において は、常在地域からの報告であっても感染の投稿を行っている。ヒトでの感染は基本的に、アルコール依存、栄養不良、肝硬変、免疫不全などの基礎疾患のある状況での感 染症だが、この報告のように、健常者にも感染する場合がある。動物実験において、高用量の接種によって、免疫不全の個体ではより重症化することがわかった。さ らに、芝生での運動 moving [* あるいは mowing 芝刈りのこと ?] は、病原体をエアロゾル 化してしまう可能性があり、これは、米国 Martha's Vineyard での造園に関連する野兎病性肺炎の原因とも考えられている。この患者の臨床症状については示されていない。しかし、_B. pseudomallei_ による感染は、無症候性でも、皮膚、肝臓、脾臓 などへ急速に拡がる進行性播種性となることもある疾患である。肺炎は、急性期にも 慢性期にも見られる疾患である。後者の慢性期では、暴露後数年以上が経過し、患者はすでに常在地域から離れていて、肺結核に非常によく似た病像を呈することがあ る。診断は、細菌学的検査と血清学的検査のいずれかまたは両方でなされる。セフタ ジジム、クロラムフェニコール、ST 合剤などで治療される]
● 結核 南アフリカ,XDR
314人の超薬剤耐性結核菌の感染患者が確認、KwaZulu-Natalに集中
南アフリカ保健相は、国内で合計 314人の超薬剤耐性結核患者が確認されており、う ち 214人が死亡していることを明らかにした。患者の多くは KwaZulu-Natal (228)で 発生し、201人が死亡した。27人が治療中である。患者のうちの 203人が Masinga の患者で、死亡患者のほとんどがこの地域で発生していると述べた。なぜその場所に集中して患者が発生し、しかも死亡率が高いか、についての原因を調査していると語った
● サルモネラ感染症 欧州 serotype Typhimurium ソーセージ
PRO/AH> Salmonellosis, serotype Typhimurium, sausage - Europe (03): background 20070319.0964
投稿者 ノルウェー・Viggo Hasseltvedt, MD、2007年3月19日
サルモネラ菌_S._ Livingstoneによる感染流行の紹介。
関連項目 (02): background 20070318.0953
● 水疱性口内炎 ベリーズ OIE
Vesicular stomatitis, Belize, reoccurrence of a listed disease
感染開始時期 207年3月1日
前回流行時期 2005年2月25日
原因ウイルス vesicular stomatitis virus, serotype New Jersey
新たな感染流行
発生地 San Ignacio, Bullet Tree Road, San Ignacio (Cayo)、農場
感染した種 Species: equidae
Susceptible: 11 Cases: 1 Deaths: 0 Destroyed: 0 Slaughtered: 0
● 豚熱(豚コレラ)ニカラグア OIE
Classical swine fever, Nicaragua, reoccurrence of a listed disease
感染発生時期 2007年2月25日
前回発生時期 2002年11月19日
原因ウイルス フラビウイルス科virus family _Flaviviridae_, genus _pestevirus_
感染流行の詳細
発生地 El Coyol, El Coyol, Tola, (Rivas)
感染種 ブタ(15頭中2頭、死亡1頭、処分1頭)
感染動物の症状 筋肉の攣縮tremor、協調運動障害、発熱(41.3℃)、食欲不振、鼻か らの分泌
[Mod.PC-カナダ、米国、メキシコ、ブラジルなど西半球での豚コレラ発生増加が懸念されているなどの解説あり]