2007年6月13日

クロストリジオイデス・ディフィシル菌 カナダ
破傷風 米国

● クロストリジオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル菌 カナダ
PRO/EDR> Clostridium difficile - Canada (QC) 20070613.1932
 情報源 Montreal (QC) Gazette、6月13日
ケベックの市病院St. Francois d'Assise hospital で、クロストリジウム菌 _Clostridium difficile_ 感染流行により、8人が死亡した。合計52人の患者が、過去3ヶ月間にこの細菌に感染していると、同病院当局者が 2007年6月13日に明らかにした。これらの患者の多くは、感染の前から様々な疾患を持つ平均83才の高齢者である。調査が開始され、最終報告が 2007年6月中に完了する予定である。この病 院は、過去3週間に3例のみの診断で死亡が発生しなかったとの、患者発生状況の改善の報告を行っている。これほど多数のク菌患者がケベック市 (ケベック州 の市?) 病院で確認されたのは初めてのことである。2007年のこれまでに、Ste. Hyacinthe のHonore Mercier hospital で 2件の同疾患感染流行が発生し、16人が死亡した。
[Mod.LL 注- 記事中に、この感染流行が北米やヨーロッ パで重症化させる強毒性の ribotype 027 株によるものか,の記載がない。この株は、toxinA および B の抑制因子であると考えられている、_tcdC_ reading frame の 18-bp 欠損があり、同株がトキシンの産生過剰となる原因となっている可能性がある。医療施設での_C. difficile_管理は、積極的な感染管理対策だけでなく、抗生物質の乱用を控えることも含まれる。この疾患はまた、抗生剤関連腸炎 "antibiotic-associated colitis" や偽膜性腸炎 "pseudomembranous enterocolitis." とも呼ばれている]

● 破傷風 米国
PRO> Tetanus, injection-related - USA (NY) ex Dominican Republic (03) 20070613.1927
 投稿者 英国、Royal Liverpool University Hospital、Dr Nick Beeching、6月13日
注射に関連した破傷風は、1870年代のモルヒネの皮下注に関連した事例が初めての報告である。以前より、糖尿病患者では危険性が高いことが認識されており、慢性の潰瘍の汚染と、インスリンのシリンジの芽胞の双方から二次性に発生する。薬物乱用、特に皮下や筋肉注射の場合に関連する破傷風は、現在も米国や欧州において問題を生じている。注射関連の破傷風患者の多くは重症化し長期の集中治療を要する。不思議なことに、英国の麻薬常習者における最近の破傷風感染流行は、他の芽胞形成性病原体による感染、例えばボツリヌス中毒など、は現在も継続しているにもかかわらず、今のところ鎮静化している。参考文献の紹介あり。

● Sapovirus、胃腸炎 台湾
PRO/EDR> Sapovirus, gastroenteritis - Taiwan: RFI 20070613.1937
 情報源 Taipei Times 、6月13日
台湾CDCは、2007年6月12日、台北市の大学の教員55人が Sapovirus (SaV) 感染と診断されたことを報告した。
政府の公式会見 :SaV は、ノロウイルスと同じカリシウイルス属 caliciviruses で、ヒトのウイルス性急性胃腸炎の主要な原因となっている。このウイルスは、孤児院での感染流行で初めて発見された、日本の札幌から命名された。通常、幼 児の軽症の胃腸炎に限られている。CDC 当局者は、このウイルスの診断は困難で、昨年からの日本の国立感染症疫学サーベイランスの協力を得て、同センター でのみ診断が可能であると説明している。以前にもこのウイルスの感染が発生していた可能性があるが、この種の感染は検出不可能であったと述べた。以下、 55人の嘔吐下痢発症からの経過の説明など。
[Mod.KS- 台湾でのSaV感染流行は初めてのことで、他の食中毒に比べ、SaV との鑑別が難しい。このため、感染源の特定や感染流行調査が不可欠である。渡航歴や、患者らの食事を扱った人々の調査に関心が持たれる。以下に、SaV の情報を 紹介する]

● チクングニア熱 インド
PRO/EDR> Chikungunya - Indian Ocean update (12): India (Delhi)  20070613.1935
 情報源 The Times of India、6月13日。
チクングニア Chikungunya が首都に発生し、女性1名が蚊族媒介性のこの疾患に罹患した。先週、RML病院を受診した36才の患者で確認されたと、デリーの衛生大臣が述べ た。Paharganj 出身のこの女性の血液検体が国立感染症研究所に送付され、チクングニアの検査の結果陽性となった[ウイルスか抗体か?]。2007年初めての首都における チクングニア患者となった。2006年、首都で約40人が感染し、全国では1695人が検査の結果、チクングニア感染が確認された。2007年の夏のシー ズンの、首都におけるデング熱患者は、わずか4例となっている。
[Mod.TY- デリー地区の、主にネッタイシマカと思われる蚊族の対策についての情報を希望する]
地図 インド 

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト,ベトナム(2件)
エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (98): Egypt 20070613.1934
 情報源 All Ahead News [edited]、2007年6月13日
2007 年6月12日、エジプトで新たな鳥インフルエンザ Avian influenza 患者が報告された。カイロの南 Qena の少女1名が、鳥インフルエンザ感染の診断の下に病院に運ばれた と、エジプト保健省の広報担当者が記者会見で明らかにした。4才のこの女児は、エジプトにおける36人目のH5N1型ウイルス感染患者となる。感染した患 者のうち16人が死亡した。同じ病院内に、別の男性1名が鳥インフルエンザウイルスよると思われる症状の治療を受けている。Qena にあるこの病院は、新 たな感染であるか検査を行っている。エジプトは、東アジアを除いて、最も深刻な被害を受けている。渡りの主要な経路上にあることが、鳥インフルエンザの被 害が大きくなっている主因とされている。患者の多くは、感染して死亡したトリとの接触によって感染し、自宅付近での発生がほとんどである。
[Mod.TY- WHOはH5N1型鳥インフルエンザ感染患者36例を報告し、うち15例が死亡したとしている(この報告の16例より1少ない)。エジプトが渡り鳥の 主要な経路上にあることは間違いないが、渡り鳥がウイルスを持ち込み、家禽の移動によるものではないということを、直ちに認める訳にはいかない。家禽の処 分への補償を確立することだけが問題でもない。もし市場価格より低い補償額であれば、感染流行は報告されにくくなり、価値のある鳥類であれば隠され、処分 されないよう移動させられてしまうかも知れない。啓蒙することが肝要で、処分されたり、感染で死亡したりしたトリを、他のトリの群れやヒトがウイルスに曝 露しないよう、適切に処理することを約束させなければならない]
地図 エジプト

ベトナム
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (97): Viet Nam, RFI 20070613.1929
[1] 鳥インフルエンザ感染、ベトナム人女性2名が感染
 情報源 Reuter's Alert Net [edited]、6月12日
ベ トナム人女性2名が、検査の結果、H5N1型鳥インフルエンザウイルスに感染していることが判明したが、1名は回復し、もう1名は集中治療を受けている と、政府系紙が2007年6月12日に伝えた。オンラインの紙面上、予防医学局長の発言として、北部Thanh Hoa および Ha Nam省の、28才と29才の女性2名が、鳥インフルエンザに感染したことが確認されたことを伝えた。いずれもハノイHanoiの病院に入院したという。 Thanh Hoa省の29才の女性は、死亡したカモを食べ感染し、現在回復した。もう1人の女性は人工呼吸器を装着されている。Thanh Hoa と Ha Nam省はともに、2007年5月以降、家禽での鳥インフルエンザ感染流行発生が報告されている15の省と市の1つである。この新たな2人の患者の発生の 1日前に、ベトナムで1年半ぶりとなる鳥インフルエンザの男性患者が回復して退院したばかりである。2007年5月後半に発病した、ハノイ郊外の処分場の 従業員である、第2の女性患者が依然治療を受けているが、医師らは順調に回復していると説明している。ベトナムでは、2003年後半の発生以降95人の患 者が発生し、このうち42人が死亡した。この間に、動物衛生当局は3件の鳥インフルエンザ感染を確認した。すでに他の地区での発生が報告されている北部 Thai Binh 省で、6月7日および8日に発生した。
[2] ベトナムでさらに2人の鳥インフルエンザ患者発生
 情報源 Xinhua Net [edited]、6月12日
ベ トナムの保健省は新たな2人の鳥インフルエンザ感染例を報告し、2005年11月以降国内で発生した患者数は合計4人となった。最新の2例の患者は、北部 Thanh Hoa省の29才の男性と、北部Ha Nam省の20才女性であることを、予防医学局が2007年6月12日に明らかにした。発熱と咳、肺炎で発症したが、2007年6月3日に退院した、この 男性の検体において、H5N1型鳥インフルエンザウイルスの検査が陽性となった。この男性は、発病前に病気のwhite-winged duckを食べていた。感染した女性は、重症の肺炎を発症し、首都ハノイHanoiの熱帯病病院で治療を受けている。医師らは、彼女のH5N1型ウイルス 感染の原因を調査している。2005年11月以降、ベトナムで初めての鳥インフルエンザ患者となった、北部Ving Phuc省の30才男性患者は、26日間の治療の後、6月11日に退院した。この男性は、結婚式のためにニワトリを捌いた後、5月10日に鳥インフルエン ザの症状を発症していた。現在、2人の国内患者が熱帯病病院で治療中である;このHa Nam省の女性と、北部Thai Nguyen省の男性1名である。この男性は、2005年11月以降の2例目の患者で、2007年5月14日にハノイのニワトリ処分場で働き、5日後に鳥 インフルエンザの症状を発症した。今日まで、ベトナム政府は、合計97人の鳥インフルエンザ感染患者を報告しており、このうち42人が死亡している。しかし、WHOは、北部で発生したこれら4人の最新の患者の感染を確認していない。ベトナム政府保健省は、予防医学センター、パスツール研究所および全国の衛 生・疫学部局に、住民からの鳥インフルエンザ情報を受け付けるホットラインの設置を求めた。さらに同省は、H5N1型の変異の可能性を探るため、WHO に協力を求めている。動物衛生当局によれば、2007年5月初めより、鳥インフルエンザは、ベトナムの16の省と市で発生している; Nghe An, Nam Dinh, Son La,Hai Phong, Quang Ninh, Bac Giang,Dong Thap, Can Tho, Ninh Binh, Bac Ninh, Vinh Phuc, Ha Nam, Quang Nam, HungYen, Thai Binh and Phu Tho の各省と市。
[Mod.MPP- 上記の報道は疫学情報に不一致があり、解明が必要である。初めの記事では、新たな2人の患者 は、Thanh Hoa省の29才の女性とHa Nam省の28才の女性である。2番目の記事では、全部で4例について触れられており、以前の2名と、北部ThanhHoa省の29才男性とHa Nam省の20才女性となっている。いずれの事例においても、患者らは鳥インフルエンザ感染が家禽で発生していることが報告されている省からの報告で、う ち1人は病鳥との接触があったとされている。解明が待たれる。]
地図 ベトナム 

● ランピースキン病、ウシ イスラエル
PRO/AH/EDR> Lumpy skin disease, bovine - Israel: OIE 20070613.1936
 情報源 OIE WAHID disease data interface、6月13日

● 鳥インフルエンザ インドネシア,マレーシア(2件)
PRO/AH/EDR> Avian influenza (99): Indonesia 20070613.1933
[1] 情報源 AP via Jakarta Post [edited]、6月13日
イスラム諸国の多くは、金融資産の不足が理由で、鳥インフルエンザ Avian influenza 感染流行対策の準備が不十分であると、国連の衛生当局者が2007年6月13日に語っ た。...参加75カ国のイスラム諸国会議機構Organization of the Islamic Conference、OIC は、鳥インフルエンザワクチンや抗ウイルス薬の生産などの計画を実行すべきであると、WHOの当局者が示唆した。...
[2] 情報源 Bloomberg [edited]、6月12日
無症候性の、インドネシアの鳥インフルエンザ感染家禽は、今後のさらに感染成立の機序を解明する必要があるものの、ヒトでの感染リスクを上昇させる可能性が あると科学者らが指摘している。インドネシアでは、2007年は前年に比べ、H5N1型鳥インフルエンザウイルスによる家禽の死亡が減少しており、庭先の 鳥小屋で感染した一部の禽類は、この致死性のウイルスに感染しても死亡していない。インドネシアの動物衛生当局者が、2007年6月11日の取材に答えて 述べた。研究者らは、家禽においてH5N1型の無症候性感染の割合、理由とヒトへの危険性について調査を行った。インドネシアにおいて、H5N1型感染5 例に対して4例の割合で死亡が発生していた。2007年5月に感染が確認された15例において、このうち8人の感染源を医師らは特定することができなかっ た。「ウイルスが感染循環し、しかも臨床的症状がないなら、これらの動物の感染に気づかずに触れ続けることでヒトの健康リスクが生じる。」と、OIEの鳥 インフルエンザ計画を指揮する獣医師が述べた。

マレーシア
PRO/AH/EDR> Avian influenza (98): Malaysia (Selangor), OIE 20070613.1925
[1] 緊急報告 Immediate notification:高病原性鳥インフルエンザ、マレーシア
 情報源 OIE Disease Information, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information, 2007; 20(24) [edited]、6月8日
流行開始時期 2007年6月2日
前回流行時期 2006年3月22日
原因ウイルス 高病原性鳥インフルエンザ、H5亜型
発生地 全国的
新たな感染流行
発生地 Paya Jaras Hilir, Sungai Buloh, Petaling (Selangor)
発生状況 継続、村の単位
感染種 トリ(ほぼ放し飼い semifree-rangingの村のニワトリ)、67羽中感染67羽(死亡67羽)
[2] フォローアップ報告、1報
 情報源 OIE Disease Information, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information, 2007; 20(24) [edited]、6月12日
新たな感染流行の報告はない以下、対策など
[Mod.PC- マレーシア半島部の中央部である感染流行の発生地は、WAHISのOIEへの報告にある(上記URL)。追加報告で興味を引いた事項として、排除キャ ンペーンの中で処分されたうち17%が闘鶏であったことである。全体の中でどれだけの闘鶏が、現在発生中の感染伝播に危険を上乗せしているのだろうか]

● ブルータング ドイツ
PRO/AH/EDR> Bluetongue - Europe (14): BTV-8, Germany (NRW), confirmed 20070613.1928
 投稿者 Thomas Mettenleiter、6月13日
[20070612.1911に対して] 
2007 年の新たなBTV感染流行の初発は、ドイツのノルラインーウエストファーレンNorth Rhine-Westphaliaの歩哨動物のウシで確認された。この個体は、2007年4月の検査では陰性で、5月の地方研究所におけるcELISAと BTV-PCR の二つの検査が共に陽性となり、国立ブルータング委託研究所で確定された。...
[Mod.AS- BTV が North Rhine-Westphalia で越冬したことは明らかで、このことは感染した蚊族が現在そこに存在することを意味する。昆虫学的サーベイランスによ り、蚊族の種や個体数が判明するだろう。このことは、今後(夏ー秋)の実効性のある対策の計画を可能とする]

●  ツボカビ Chytrid fungus 日本,カエル
PRO/AH/EDR> Chytrid fungus, frogs - Japan (02): wild frogs 20070613.1924
 情報源 The Asahi Shimbun [edited]、6月12日
両生類amphibian populationsに壊滅的な被害を与え、海外の生態系を破壊することで知られている恐ろしい病気が、日本国内の4匹の(アメリカ)ウシガエル American bullfrogで確認されたと、研究者らが2007年6月10日に明らかにした。chytridiomycosis ツボカビが日本の自然環境内で確認さ れたのはこれが初めてで、ヒトに対しての影響はないものの、両生類の一部では絶滅に近い被害を受ける可能性がある。このことにより、両生類をエサとするヘ ビや鳥類の個体数減少を招き、生態系全体の連鎖を乱すことになる。...環境省が対策に乗り出すこと、初報告は2006年12月の東京のペットのカエルで あったこと、野生に広がれば収拾は不可能に近いことなど。...
[Mod.AS- ツボカビ (症? Chytridiomycosis)は、野生生物の重要な新興感染症である。この野生生物の疾患を新興させているのは、病原体の、新 たな地域への人為的なanthropogenic (human-borne) 導入である。一旦導入されてしまえば、この疾患を屋内に閉じこめておくことは困難か、達成し得ない目標となる]