2007年6月19日-20日

ライム病  米国 2003-2005 MMWR

● ライム病 米国
PRO/AH/EDR> Lyme disease, 2003-2005 - USA
Archive Number: 20070620.1995
 情報源 MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2007; 56(23): 573-6、6月15日
2003-5年の、全米のライム病患者についての解析。
ライム病はスピロヘータである_Borrelia burgdorferi_を原因とし、クロアシダニ blacklegged ticks (_Ixodes_ spp.) の刺咬によってヒトに感染する。初期症状として、発熱、頭痛、全身倦怠などがあり、移動性紅斑 erythema migrans と呼ばれる特徴的な皮疹がみられる。未治療の場合、晩期症状として、関節、心臓および神経系の症状が現れる。'Healthy People 2010(健康人2010年)'の目標として、ライム病の風土病地域である10州 (Connecticut, Delaware, Maryland, Massachusetts, Minnesota, New Jersey, New York, Pennsylvania, Rhode Island, and Wisconsin) における、人口 10万対の年間新規患者発生数を 9.7に抑える目標が掲げられている。この報告は、2003-2005年の間の、上記 10州から報告された 59770人(93%)を含む、64382人の CDCへ報告されたライム病患者についてのサーベイランスデータの要約である。上記 10州の 3年間の平均年間新規患者発生数は、人口10万対 29.2で、目標の約 3倍の数値となっている。ライム病地域に住む人々の対策として、日々ダニの自己チェックを欠かさない、殺虫剤とダニ忌避剤を選択して使用する、作業場や遊技場のダニの個体数減少のための造成 landscaping practices を行う、そしてダニの発生地を回避することなどがある ... 以下、サーベイランスのための症例定義、症例の検討[オリジナルURLの表参照]、3つの郡 (Columbia andDutchess counties in New York and Dukes County in Massachusetts) で 3年とも人口 10万対発生数が 300を超えていたこと、症例の 61%が 5-14才の小児で、97%が白人であったことなど、発症時期は5-8月に集中していたこと、移動性紅斑は70%、関節炎は30%、顔面マヒは8%に見られたことなど。編集部注。
[Mod.ML- サーベイランスのため、CDC はライム病報告義務 reportable 症例を以下のように定義した; 1) 医師が診断した直径 5mm以上の紅斑 、または、2)ダニとの接触があった可能性のある患者で、少なくとも 1つ以上の客観的な後期臨床症状(筋骨格、心血管または神経学的)に、_B. burgdorferi_ 感染を支持する検査結果を伴う場合とした。この CDC の報告では、報告患者数の年間発生数の増加の要因の一部は、疾患発生の真の増加と、検査結果に基づくサーベイランスを実行した結果、より多くの患者を検出できるようになったであることが示唆される。しかし、CDC の報告にある州ごとの患者統計の違いから、診断報告の実施状況に違いがあることが示唆された(CDC. Lyme Disease-United States, 2001-2002.MMWR 2004; 53: 365-9)。ライム病の臨床像を示さない患者に、しばしば不適切な血清学的検査が行われている。特異度 70-100%とされる血清学的検査に対する過剰な信頼が、曖昧で非特異的な症状を示す患者の、過剰診断につながる可能性がある]

● サルモネラ菌感染症 ヨルダン
PRO/AH/EDR> Salmonellosis, serotype Enteritidis, mayonnaise - Jordan
Archive Number: 20070620.1997
 情報源 PoultrySite.com 、6月20日
ファストフード店の自家製マヨネーズを食べた 300人がサルモネラ菌中毒を発症。
300人の患者が発生したヨルダンのサルモネラ症(中毒)感染流行の注意喚起に従い、ヨルダン政府の農業保健省はアンマン Amman において、食用卵と養鶏 (ブロイラー) 業者に対するセミナーを開催した。感染流行は、サルモネラ菌 _Salmonella [enterica_ serotype]Enteritidis が原因とされ、"Shawerma"の名で知られるファストフード店が、疑問のある衛生環境での自家製マヨネーズを摂取した後に、起こった。...
[Mod.LL- 時間と場所が特定されていない。卵黄と植物油を濃厚かつ安定した乳濁液とした、マヨネーズ中の卵が感染の原因 vehicle である可能性は十分ある]

● デング熱/デング出血熱
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2007 (25)
Archive Number: 20070620.1996
[1] カンボジア: 1つの村で 7人の小児が死亡した。
 情報源 Earthtimes.org 、6月13日
カンボジアの首都に近い州の当局は、2007年6月13日、過去数週間に1つの村で、7人の小児がデング熱 Dengue により死亡し、雨期の到来によりさらに死者が増えることに警戒を強めている。7人の子供らは、全てBorset村の住民で、首都から約40km南西にあるKampong Speu[Spoe] 地区病院から、プノンペンPhnom penhのこども病院へ移送されたが死亡した。以下、対策やデング熱と地域の状況の解説など。...カンボジアで無料で医療を提供している4つのKantha Bopha hospitalsの経営者であるスイス人によると、2007年6月の第1週だけで、これらの病院において1254人の重症デング熱の子供の患者が治療を受けている。
地図 カンボジア 
[2] フィリピン: 3人が死亡し、28人以上が感染
 情報源 GMA News.TV, SunStar report、6月14日
南部ネグロスオクシデンタルNegros Occidenta l州の町で、2007年6月12日現在、デング熱により少なくとも 3人の住民が死亡し、ほか 28人以上が感染した。同 14日に伝えられた報道では、患者らは全て同州の Bacolod 市からおよそ 199.4kmにある、Hinoba-an の町の出身者であった。..周辺の地名の入った発生状況(省略)。
[Mod.TY- 追加の情報として GMA は、Bgy.Parang, Jose Panganiban town 在住の 6才の少年が、6月15日に Camarines Norte で死亡したと伝えている。Bicol の衛生当局は、2007年1月から5月の間に、Albayで約 400人のデング熱患者を確認している。患者発生数順に、Naga City(Camarines Sur)、Daraga City(Albay)、JosePanganiban(Camarines Norte)となっている]
[3] 台湾、ベトナム・インドネシア・タイからの輸入例
ベトナムから台湾に帰国した4人がデング熱の症状を発症した。
 情報源 Taipei Times, Central News Agency (CNA) report 、6月17日
2007年6月初旬にベトナムを訪問した、台湾人男性とベトナム人女性の間の結婚ブローカー5人のグループのうち、4人がデング熱に感染していたことが確認されたことを、2007年6月15日に保健省が明らかにした。2007年6月12日、衛生当局は、グループは Chiay i郡の出身で、50才男性1名が感染したことが報告されたと説明した。当局はその後、この50才の男性のいずれも友人である、若年者1名とその母親、ならびに、この若者にべたん無人女性を紹介する予定であった、台湾人男性1名と、そのベトナム人妻がデング熱の症状である、高熱・骨痛・頭痛を発症したことを確認した。精査によりこのうち 3人の感染が判明し、残る1人の検査が行われている。この1日前には、Nantou 郡から、デング出血熱症例1名の報告があった。この患者は、2007年5月10日から6月7日まで、母親と共にベトナムを訪れ、台湾に帰国した当日に発熱した。その時点ではデング熱の診断は行われなかった。高熱が持続し、顔面と体幹に紅斑を生じ、病院はデング出血熱との報告を行うこととなった[rash 紅斑は、合併症のないデング熱に見られ、DHF を示唆しない]。保健省の疾病対策センター副センター長によると、2007年のこれまでに36例のデング熱患者が発生していて、22例はインドネシア、9例はベトナムで、3例はタイからの輸入例である。
地図 台湾 

● 麻疹 ナイジェリア
PRO/EDR> Measles - Nigeria (Borno)
Archive Number: 20070620.1994
 情報源 Angola Press、6月20日
ナイジェリアの内陸部で、麻疹感染流行により 60人の小児が死亡した。
2007年6月19日、北部 Borno 州の地元メディアは、麻疹 Measles 感染流行により、6ヶ月から12才までの 60人の小児が死亡したと報じた。州都 Maiduguri および周辺で数日前に発生した感染流行で、約 400人の小児の患者が発生したと、当局者の発言を引用して伝えた。最も感染が深刻な地域council は、125人の子供が麻疹の治療を受けている Maiduguri で、その他 Borno, Konduga (各 25人死亡), Jere and Bama (各 20人死亡) でも多くの患者が発生している。Konduga の長官は、医療機関へのアクセスを持たない地域に、薬剤と点滴を供給したと述べた。
[ModCP- 今回の感染流行は、アフリカの内陸部では、組織化されている社会においても珍しいことではない、ワクチンカバー率の不徹底によるものと考えられる。死者数が悲惨なほど高くなっている。さらなる努力とより組織だった対応が必要である]

● 病原大腸菌 O157 カナダ ,米国(2件)
カナダ
PRO/AH/EDR> E. coli O157, restaurant - Canada (ON)(03)
Archive Number: 20070620.1989
 情報源 St. Catherines (ON) Standard、6月19日
断水中に営業を続けたことが、レストランでの大腸菌O157感染発生の原因。
20070620.1989 
オンタリオ Ontario 州 St. Catharines のレストランで、重症患者が多数発生した病原大腸菌 O157感染流行は、不適切な食品の取り扱いが原因である可能性があると、公衆衛生当局者が述べた。当局は、大腸菌による汚染が、このレストランが、市の給水管工事のため断水した 2007年5月19日に、18時間にわたり営業を続けた時から発生したと見ている。...5月17日から 6月5日までにこのレストランで食事をした合計 9人が、病原大腸菌に感染していることが判明しており、うち 5人は症状が重いため入院した。主に幼児と若年者の患者らは全員回復して退院している。この他に、このレストランで食事をした 25人が、大腸菌感染の可能性があるとしてリストに挙げられている。食材や食器、環境などのサンプルのうち、chicken shawarma と肉切り包丁carving knife から病原大腸菌 O157が検出されている。チキンは大腸菌の保菌 harbor はしないので、レストラン内で他の感染源から移ったものと当局は見ている。
[Mod.LL- 水道水が欠如すれば、キッチンの衛生状態は極めて問題があるものとなる。Shawarma は、中東スタイルのサンドイッチで、ラム肉、ヤギの肉、チキン、シチメンチョウ肉、牛肉、あるいは色々な肉の盛り合わせが挟まれている。中東全体のポピュラーな食べ物で、中東以外の世界中でも多くの人々に好まれている。名前は、トルコ語で回転 turning を意味する言葉に由来する]

米国
PRO/AH/EDR> E. coli O157, restaurant - USA (NC): caprine origin susp.
Archive Number: 20070620.1984
 情報源 Charlotte (NC) Observer 、6月19日
病原大腸菌O157感染に関与したレストランで、ヤギの処理が行われていた。
衛生当局は、2007年5月に従業員らが店内でヤギを処分していたことが判明したため、大腸菌感染流行に関連性のあったノースカロライナ North Carolina 州 China Grove のレストラン Captain's Galley Seafood Restaurant を、2007年6月18日に閉鎖した。レストランの元従業員が、キッチンでヤギが処理されていたことについて当局に証言したことを、Rowan 郡衛生部長が、記者会見において明らかにした。オーナーもこれを認めているという。...2007年6月14日、Salisbury 在住の 86才女性が、致死性細菌である病原大腸菌 O157;H7感染による合併症で死亡した。このレストランでの食事後に発病した 21人の中のひとりである。...
[Mod.LL-牛挽肉をはじめとする食材による大腸菌 O157感染流行についての概説。ヤギを含め、ウシ以外の家畜も関与する可能性がある。20060512.1356 では、ヤギのチーズによる症例を報告している。ふれあい動物園のヤギも、消化管に保菌していることが確認されている。ヤギの肉が検査に供されていないが、この感染流行は特異的である]
地図 North Carolina 州中西部 Rowan 郡

● トウモロコシの病気,Brown stalk rot 南アフリカ
PRO/PL> Brown stalk rot, maize - South Africa: 1st report
Archive Number: 20070620.1993
 情報源:Plant Disease 91(6), 711-8 、6月

● 結核 ネパール・ゾウ,米国・ウシ(2件)
PRO/AH/EDR> Tuberculosis, elephants - Nepal (02)
Archive Number: 20070620.1990
 投稿者 Elephant Care International、Susan K. Miikota DVM、6月19日
ネパール政府は、ゾウの結核対策に先進的な取り組みを行っている
20070616.1962 に対して
ネパール政府は、ゾウの結核対策に先進的な取り組みを行っているとの情報提供 原文参照願います
[Mod.AS- ハワイ大学からの投稿の紹介。「ゾウは発病していたのか?どのような検査が行われたのか?潜在性の感染か、結核を発症したのか?」 "A review of tests available for use in the diagnosis of tuberculosis in non-bovine species" by D.V. Cousins & N. Florisson. Rev. sci. tech.Off. int. Epiz., 24(3),1039-1059:からの引用として、「ゾウにおける診断の標準gold standardは、体幹洗浄液 trunk wash の培養である。ツベルクリン反応は診断価値が低いとされ、これに代わる検査のデータも限られている。ゾウの結核の多くは、M.bovisではなく M.tuberculosis によることを思い出して頂きたい。M.tuberculosisは、ゾウが飼育者から感染することは少ないにもかかわらず、ゾウの飼育者にとって人獣共通感染の重大なリスクをもつ。ゾウは貴重な動物であり、治療が試みられることもあるため、感染が発生した少数の動物園で改良された診断法は有用である」

PRO/AH/EDR> Tuberculosis, bovine - USA (NM)(02)
Archive Number: 20070619.1980
 情報源 Las Cruces Sun-News 2007年6月15日
Bovine tuberculosis has been detected in dairy cattle in eastern New
Mexico, state officials said Thursday [14 Jun 2007].

● 原因不明の疾患、ブタ 中国
PRO/AH/EDR> Undiagnosed disease, porcine - China (11)
Archive Number: 20070620.1985
 情報源 Beijing Times [in Chinese]、6月18日
中国各地で高病原性pig blue ear disease感染流行が発生している。
新華社通信によると、2007年6月17日に農業部広報担当は、6月初めに重慶、湖南省、広西荘族自治区、貴州省、陜西省において、高病原性 pig blue ear disease 感染流行が発生したと発表した。今夏、極早期より準備 ・ 警戒態勢に入っていたため、2006年に比べ、高病原性 pig blue ear disease の発生は少なめとなっている。農業部は、2000万ml の pig blue ear disease ワクチンを送付した。...
[Mod.AS - (20070612.1913 の) 報道記事によれば、以下の省でブタ高熱性疾患 "swine high fever disease" (SHFD) が発生しており、ブタ生殖器呼吸器障害症候群 porcine reproductive and respiratory syndrome (PRRS, also called blue ear disease) がその主因を成していると思われる[省名は原文参照して下さい]。...情報が交錯しており、判断を留保すべきで、OIE 委託研究所での最終判断に委ねるべきとの意見など]

●  鳥インフルエンザ  ロシア
PRO/AH/EDR> Avian influenza (104): Russia (Siberia), wild ducks
Archive Number: 20070620.1983
 情報源 Itar-tass、6月19日
シベリアで、野生カモの鳥インフルエンザウイルス感染を確認
鳥インフルエンザに感染した後に回復した野生のカモ数羽が、Altai territory (Tomsk地方, Buryatiaand the Ust-Ordyn Buryat 自治区)で確認されたと、2007年6月19日にロシア農業監視当局者が述べた。「これらのトリは、感染したトリと接触したか、体内にウイルスを保持したまま回復したかのどちらかである。47羽が、血清中のウイルスの遺伝子成分と抗体の存在について検査された。シベリア全域で鳥インフルエンザ感染流行拡大防止策が実施されており、2007年6月19日の時点まで、家禽での鳥インフルエンザは発生していない。シベリアの連邦区のハイリスク地域には、約600万羽の家禽がいる。440万羽はすでにワクチン接種を受けている。
[Mod.AS- 臨床および病理学的所見の詳細、検査を受けた野生ガモおよび陽性数、検査結果、特に株の確認の情報を期待したい。2007年3月19日の OIEへの最新のフォローアップ報告;すべての感染流行は欧州ロシアで発生している]

● ブルセラ症、イヌ 米国
20070619.1976
数十匹の動物とともに飼われていたイヌがブルセラ症に感染していた。
 情報源 King5.com 、6月15日
郊外の Lewis 郡に隠棲する、数十匹の動物を飼っていた女性は、公衆衛生検疫に違反していた恐れがある。2007年5月、女性の飼育動物の一部が動物感染症の検査で陽性となった。飼い犬の檻の近くには "Three Mountain Dog Rescue"の看板がある。...この女性は 100頭近くのイヌを飼育しており、隔離措置後も動物らが彼女の敷地内に入り込んでいた。... 2007年5月に、ブルセラ症 brucellosis と呼ばれる動物感染症が判明し、警察と衛生当局は敷地内清掃を行い、41頭のイヌが安楽死させられた。...
[ModTG- Brucella canis_は、基本的にはイヌのブルセラ症の原因となる細菌病原体である。グラム陰性の細胞内細菌で、この他、_B. abortus_ and _B. suis_も時にイヌに感染することが知られている。生殖損失Reproductive failureが最もよく見られる臨床症状である。...以下、長文の解説]