2007年12月20日

リフトバレー熱 スーダン
セラチア菌 米国 注射器

● リフトバレー熱 スーダン
PRO/AH/EDR> Rift Valley fever - Sudan (10)
Archive Number: 20071220.4096
 情報源: Reuters Foundation AlertNet 、12月19日 
2007年12月19日、スーダン国民らは、イスラム教の犠牲的なお祭りである、Eid al-Adha イード を祝った。しかし、リフトバレー熱  Rift Valley fever RVF ウイルスの感染流行の後、多くの人は動物の処分には及び腰であった。保健省は、2007年12月16日現在の出血熱患者は565人と報告している。致死率は29%で、目の症状を訴えた 5ないし6例 [RVFの症状としては、まれ] を確認している。しかし、政府当局は、多くのスーダン国民の主要な農業収入源であるウシやヒツジでの感染は確認されていないと述べた。神のために息子を生贄にしようとしたアブラハムを思い起こすため、19日に始まった Eid al-Adha を、ヒツジを処分して祝っていたため、スーダン国内のイスラム教徒の間では、ウイルスに関するうわさが飛び交った。...
[Mod.CP- 2007年11月21日のWHOによる最終報告から、患者数は436人から565人に増加し、致死率は29%と見積もられている。感染流行が制圧されているとは言い難く、上記の報告から、スーダン政府は、緊迫感を持っての対応を行っていないようである。中央政府より、一般国民のほうがより危険性を周知しているようである。
リフトバレー熱の感染流行では、ヒトでの感染のほとんどは、感染した動物の血液または臓器との直接・間接の接触により感染する。ウイルスは、処分や精肉等の臓器の取り扱い、出産介助、獣医学的医療行為、死体や胎児の廃棄などによっても、ヒトに感染する。また、感染した蚊族の刺咬によるヒトでの感染も起こりうる。さらに、感染した動物の未殺菌のミルク、加熱処理されていないミルクや肉の摂食によっても感染する。
公衆衛生上の重要な対策として、社会的動員を行って;ウシ・ヒツジなどと接触のあるヒトの安全な作業を支援する;能動的なサーベイランスなどの疫学対策を行う;治療行為の支援;主に動物間で起こるが、動物-ヒト間にも関係するベクター対策;検査室での診断能向上、などを進めることである。
以前の報告 (20071118.3735)に、来る祭典においてRVF感染流行により感染した動物を生贄にするため、clerics聖職らが、スーダンのイスラム教徒らに、all-clear (全て認めること?) を与えたと報告された。宗教学者らは、感染が疑われる動物も、イスラムの大祭である Eid ul-Adha の生贄としてよいとのルールを定めてしまったと、報じられた。スーダン宗教学者委員会は、イスラム教徒が生贄を禁じられているのは、ハディース Hadith という預言者の言葉を収めた書の中に書かれた疾患に罹患した動物だけであると定めている。宗教上の機微に触れないように、医療上の責任遂行を達成することのバランスをとる見識が必要である]

● セラチア菌 米国
PRO/EDR> Serratia marcescens, heparin syringe - USA: (IL,TX), alert
Archive Number: 20071220.4090
[1] 自宅治療用のヘパリン入り注射器により、セラチア菌感染が発生している。 
 情報源: Associated Press 、12月18日
合衆国保健当局は2007年12月18日、細菌に汚染された syringe (シリンジ=注射器) との関連性がある、少なくとも2つの州で発生した血液によ る感染症数十件について調査を開始したことを明らかにした。 
Illinois イリノイと Texas テキサス各州で、シカゴ Chicago の Rush University Medical Center からの外来患者20人を含め、およそ40人が発病したが、今のところ死亡の報告はない。大学の医師らは、2007年12月始めの感染は担がん患者などが自宅での治療に使用するヘパリンが充填された注射器が原因であることを突き止めた。ヘパリンは抗凝固薬で、カテーテルや静脈ラインの洗浄に注射器が用いられている。
感染はセラチア菌 _Serratia marcescens_と呼ばれる細菌が原因で発生し、商品名 Sierra Pre-Filledという Angier 社製ヘパリン充填シリンジの1つの包装 batch から発見された。この batch は、コロラド Colorado、フロリダ Florida、ペンシルバニア Pennsulvania の各州へも出荷されている。感染により、発熱や悪寒が生じる。重症化することもあるが、通常、抗生物質によく反応する。
[2] シカゴ地区の21人と、テキサス州の20人以上の患者らが、注射器により感染。 
 情報源: Chicago (IL) Tribune 、12月19日。 
あまり多くない、危険な感染症の感染流行により、シカゴ地区の21人の患者らと、テキサス州の20人以上の患者らは、経静脈ラインの血栓予防に使用される液 体からの、細菌性感染を発症したと、2007年12月18日に病院当局が発表した。1人を除き、シカゴ地区の患者は全て退院したと、感染流行に初めて気づ かれたRush University Medical Center当局は説明した。... 
[3] ダラスで、20人以上が注射器により感染。 
 情報源: Dallas (TX) Morning News 、12月19日
政府当局は、ダラス Dallas 地区のがん専門クリニックの20人の患者が、細菌に汚染された医療用注射器により発病した原因を調査している。テキサス州の衛生当局は、2007年12月18日に、ダラス地区の患者らは、イリノイ州とその他5つの州に発送された問題の注射器の包装単位に暴露していたことを明らかにした。
[Mod.LL-セラチア菌_Serratia marcescens_の解説]

● 鳥インフルエンザ、ヒト パキスタン
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (171): Pakistan
Archive Number: 20071220.4089
 情報源:Associated Press (AP) report 、12月19日
保健の専門家によるチームの第2陣が、2007年12月19日にパキスタンに向けて出発し、鳥インフルエンザ Avian influenza 感染が疑われる患者らの検体の解析により、鳥インフルエンザウイルスがどのようにして拡大し、ヒト-ヒト感染発生の可能性があるのかについての解明を行う。カイロ Cairo の米海軍第3医科学研究ユニット NAMRU-3 の専門家らが12月20日に到着の予定であり、政府当局による初期検査で、H5N1型鳥インフルエンザウイルス陽性となった複数の患者らから集められた検体について再度検査を行うものと見られている。患者らの診断が確定されれば、この患者がどのようにして感染したかの照合作業が開始されることとなる。
パキスタン保健省の広報担当者は、12月19日一行が到着したと発表していたが、ジュネーブの WHO の広報担当者は、1日遅れて到着することになっているとしている。イスラマバード Islamabad の北にある、Abbotabad において、2007年11月に5人の兄弟が体調を崩した。2人は死亡し、このうち1人は検査が行われることなく埋葬されてしまった。残りの検査を受けた4人は鳥インフルエンザウイルスが陽性となり、この他最大で6人が感染したと疑われている。複数に家禽との接触があった。保健省と  WHOは、当初、兄弟である4人だけが感染したことを疑われているとしていたが、「いとこ」とされていた患者の1人は、実際はもう1人の兄弟であった。ヒトでの発症の前に、この地区のトリ[家禽のこと?]の間で鳥インフルエンザ感染流行が報告されていた。当局者は、新たなトリやヒトの感染流行は発生していないことを強調している。2007年12月18日、WHO の別のチームが、北西部ペシャワール Peshawar 市の患者の治療が行われている病院を訪れた。医師や看護師と協力し、対策にあたっている。「H5N1型と気づかれていないが実際には H5N1型感染である可能性のある、呼吸器疾患患者の増加がないか、過去1-2ヶ月の病院の患者記録の点検を希望している」と、ジュネーブ Geneva の WHO 広報は説明した。
[Mod.CP- WHO から別個に派遣された第2チームの到着日程に関しての相容れない発言に端を発する、同じ内容の違った表現である。それでも、近い将来の解明に大きな期待がもてる。感染流行の中心にいる 4人兄弟は 5人兄弟となり、死亡した 2人のうちの 1人を除く全員が H5N1型の検査陽性となった。残る1人の兄弟は、これまで"いとこ"とされていたが、5人目の兄弟であることが判明した。しかし、米国へ帰国し H5N1型検査が陰性になったと伝えられている別の兄弟に関する記述がない。これ以外の感染が疑われる6人の関連性は触れられていない]

● 口蹄疫 キプロス
PRO/AH> Foot & mouth disease, ovine - Cyprus (18): meat exports
Archive Number: 20071220.4097
 情報源: Financial Mirror 、12月20日
EU獣医学常任委員会は、キプロスからの牛肉輸出に対する制限措置の解除を決定した。この措置は、キプロスで口蹄疫 Foot & mouth disease, FMD が確認されたことに対する制限であった。... 12月3日には、キプロスからの豚肉の出荷制限も解除されていた。

● 鳥インフルエンザ ベニン、H5N1型確定 
PRO/AH/EDR> Avian influenza (191): Benin, H5N1 conf
Archive Number: 20071220.4091
 情報源: CIDRAP News 、12月17日
西アフリカのベニンにおいて初めて家きんのH5N1型鳥インフルエンザ Avian influenza 感染流行が発生したことが、イタリアで行われていた検査で確認された。農業相が、2007年12月はじめに2つの農場で感染が疑われていた症例は、イタリア Padua の OIE により診断が確定したと述べたことが、12月15日に報じられた。(感染が発生した)農場は、いずれも国内南部沿岸地帯の、首都 Portp Novo の北、および商都コトヌー Cotonou にある。
ベニンは、過去2年間に鳥インフルエンザの家きんでの流行が発生しているナイジェリア、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソなどの国々に囲まれている。ナイジェリアでは、H5N1型患者1名も発生している。象牙海岸とガーナも、家禽での流行が発生した西アフリカ諸国のひとつである。ベニン政府当局者らは、2件の感染流行が疑われる事例について、12月5日に OIE に報告した。このとき、100羽のトリが死亡し、245羽が感染流行阻止の目的に処分されていた。死亡したトリの大部分はニワトリであったが、コトヌーの農場では、シチメンチョウ8羽も含まれていた。17日のロイターが伝えたところでは、衛生の専門家らは、ベニンの Voodoo の祈祷師らが、儀式の生贄として、生きた鶏の咽喉を掻き切る習慣が、鳥インフルエンザ感染の危険性を増すと懸念している。 
[Mod.AS- 2007年12月5日の OIE への "immediate notification (緊急報告)" のなかで、ベニン政府は、高病原性鳥インフルエンザウイルスによる2件の感染流行確認を報告した(20071206.3934)。1件は、ガーナからの不法取引によるレイヤー種のニワトリの輸入によるものであった。(その前に発生した)もう1件は、村内のあちこちを彷徨う小さな群れで発生した。国内研究機関における診断では、血清型が判明せず、ProMED-mailは、おそらく隣国ガーナと同じウイルス、すなわちH5N1型である可能性が高いが、委託研究機関での確定が必要とコメントした。今回の情報は、まさに待たれていた情報の一部である]