2008年5月7日-8日

マラリア アフリカ、治療
手足口病 中国・マカオ、アジア

● マラリア アフリカ、治療
PRO/EDR> Malaria - Africa: substandard & counterfeit drugs
Archive Number: 20080508.1566
 情報源:Public Library of Science (PLoS)、5月7日
[Reference: Bate R, Coticelli P, Tren R, Attaran A (2008): Antimalarial Drug Quality in the Most Severely Malarious Parts of Africa -- A Six Country Study. PLoS ONE 3(5): e2132 doi:10.1371/journal.pone.0002132]
多様な抗マラリア薬が、マラリア Malaria の高度侵淫地域であるアフリカ6カ国の主要都市および周辺地域で、私営製薬企業により生産されている。半定量薄層クロマトグラフィー Semi-quantitative thin-layer chromatography (TLC) および溶解検査により、有効成分が国際基準を満たしているかについて評価した。
サンプルの 35%が一方または両方の検査で不合格となった。
さらに治療の 33% は artemisinin monotherapies(アルテミシン単独療法)によって行なわれており、その大部分 (78%) が WHO が臨床的に不適切なこれらの薬剤を市場から一掃するとの提唱に反して製造された薬剤だった。基準以下の薬剤が高い比率で蔓延り、私企業で不適切なアルテミシン単剤が製造されていることは、患者の安全を脅かし、薬剤耐性を生じることによって、将来のマラリア治療の世界的危機を招く。
[Mod.EP- 基準以下の、あるいは故意に製造された偽薬は、アフリカやアジアで良く知られている問題である。コントロールが不十分であったり、薬剤師その他の医療関係者との相談なく売られる over-the-counter sale が拡がることが、対策を困難なものにしている。偽薬や低品質薬によって、実際にはその薬剤が有効な地域で、formulation が基準以下であったり、有効成分が含まれていないために、薬剤耐性が疑われてしまう可能性もある]

● 手足口病 中国・マカオ、アジア(2件)
PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease - Asia (05): China
Archive Number: 20080508.1577
[1] 5月8日現在、中国国内で30人の死亡が発生
 情報源:China View, Xinhua News Agency、5月8日
感染症である手足口病 hand, foot and mouth disease (HFMD) により、2008年5月8日現在、中国国内で 30人の死亡が発生していることが、各省衛生当局からの確定死亡報告に基づく統計から判った。手足口病の原因である enterovirus 71 (EV71) の感染により、海南省 Hainan Province で 2人の小児が死亡したと、8日に省当局が発表した。死亡した日時は明らかにされていない。同省衛視衛陶局による最新の数字によると、8日までに 180例の HFMD 患者が報告されおり、このうち 5例で EV71ウイルスの感染が確認されている。7日、中央部湖南省 Hunan および南東部広西荘族自治区でも、同地域初で、各1例のみの死亡が報告されている。
[2] 21502例の HFMD 感染患者を報告し、30例が死亡している。
 情報源:China View, Xinhua News Agency、5月8日
中国政府は 2008年のこれまでに、21502例の HFMD 感染患者を報告し 30例が死亡している。7日には 19962例であった。数値の増加は事態の悪化を示すものではなく、衛生部が  HFMD を届け出義務のあるクラス C 感染症としたことによるものである。東部山東省 Shandong Province は 8日 1440例の HFMD 患者を報告した。最南端の海南省では、感染者数を 180人に更新し、北西部青海省 Qinghai Province も8日 10例に更新した。山東省衛生当局は grassroots hospitals(地方病院)に対し、5歳以下の発熱患者はより良好な治療が受けられるよう、ただちに大規模な病院へ転送するよう通達を出した。これまでに感染流行により死亡した 30人の原因ウイルスの多くが EV71 とされている。すべての犠牲者のうち、22人は安徽省、3人は広東省、2人は海南省、残りは、浙江省、広西荘族自治区、湖南省で発生した。
[Mod.CP- 中国国内での HFMD 感染流行は拡大が続いており、死者の数は30人となった。しかし、現在感染が発生している 20省のうち、死者の報告があったのは 6省のみであり、そのうち22人は、安徽省の1つの都市で発生した]

PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease - Asia (04): China, Macao S.A.R.
Archive Number: 20080507.1561
[1] 情報源:China view, Xinhua News agency、5月7日
手足口病 hand, foot and mouth disease (HFMD) の患者数は、2008年5月7日、16778人に急増し、28人が死亡した。5日には 15799人であった。患者数の急増は、事態の悪化ではなく、中国衛生省が HFMD を報告が必要な class C epidemic に分類を変更したためである。北部内モンゴル自治区から 131例の散発感染が報告された。最も被害が大きい Dengkou 郡では、幼稚園が閉鎖され小学校で朝の健康確認を行うよう指示された。天津 Tianjin の134例、北西部・青海省の 9例、東部にある最大の発生カ所・安徽省の 6545例の報告と、死亡例の発生地内訳など... 
[2] 中国 - マカオ Macao S.A.R. 
およそ79例のHFMD感染患者が確認 4例は EV71による感染
 情報源:China view, Xinhua News agency 、5月7日
マカオ Macao において、およそ 79例の HFMD感染患者が確認されており、このうち 4例は、EV71 による感染であることが確定されたと、7日にマカオの衛生当局が発表した。最多の感染発生があったのは creche(保育所)で、14人が HFMDと診断され、4人の便検体から EV71 が検出された。... いずれの症状も重篤なものはない。
[3] 中国 - WHO 中国のエンテロウイルス Enterovirus 感染状況 -- 更新 -- 2008年5月7日
 情報源:WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response、5月7日
2008年5月5日現在、中国・安徽省の阜陽市の乳幼児の間で、死者 22人を含む 4496人の、エンテロウイルス71 enterovirus 71 (EV71) による手足口病患者が報告されている。現在、1391 例が入院治療中であり、5日連続して、新たな死亡例の報告はない。5月2日、中国は HFMD を届出疾患に指定した。この報告方針の変更と国民の疾患に対する関心の深まりによって、今後数週間から数ヶ月間にわたって、安徽省および中国の他の地域から報告される患者数が増加することが見込まれる。中国政府は、安徽省およびその他の地域の疾患対策に対して、強力な技術的・政策的介入を行うことを WHO に確約した。サーベイランス強化に加え、エンテロウイルス感染には特異的な治療法がなく、ワクチンもないことから、全国的な保健キャンペーン(啓蒙活動)を展開し、手洗いを中心として個人的な衛生遵守を強調している。追加の人的資源として、衛生省から小児医療従事者が派遣されている。HFMDは、ありふれた、通常は軽い小児の疾患である。EV71 は HFMD 感染流行の原因となることの多いウイルスの1つで、症例の一部で神経学的疾患を伴うことがある。1997年以降、アジア太平洋地域では、多数の EV71 HFMD 感染流行が発生している。この地域の中で、感染流行の報告のあったのは、マレーシア(1997), 台湾 , 中国 (1998), オーストラリア(1999) シンガポール (2000) である。WHO は、中国に関する旅行および取引に関するいかなる制限も勧めていないが、個人の衛生遵守の強化による予防の必要性についてを強調している。 
[Mod.CP- 報告患者数の増加は、事態の悪化を示すものではなく、主に、HFMDを報告義務のある class C epidemic とした、最近の衛生省の指示によるものである。現在 20の省で HFMD 感染流行が発生しており、死者の数は 28人に増加した。新たな死者の発生は、複数の省に拡大している。一方、最悪の被害が出ている安徽省の死者数は 22人のままである] 

● チクングニア シンガポール,インド
PRO/EDR> Chikungunya (18): Singapore ex Indonesia, India (Kerala)
Archive Number: 20080508.1576
シンガポール
  情報源:China View、5月8日
シンガポール Singapore 保健省は、2008年5月3日、国内17例目の蚊族媒介性のチクングニア Chikungunya 感染患者を確認した。この最新の患者は男性で、海外でチクングニアに感染したことが疑われた、新たな4人の患者のうちの1人であることを明らかにした。
この男性は 1ヶ月前に、ジャカルタ Jakarta の Jagorawi Golf and Country Club でプレーした際にチクングニアウイルスに感染したものと見られている。現在感染力のある時期は過ぎている。2008年1月14日に初めての国内での感染伝播症例が確認されて以来、これまでに 13例の自国内感染例が発生し、一方 4例が海外で同ウイルスに感染している。チクングニアウイルスはシンガポール国内に侵入している可能性があり、(国内に) ヤブカ属 _Aedes_ が存在することから、現在も感染流行の恐れがあると広報担当者が述べた。デング熱ウイルス同様、チクングニアウイルスもヤブカ属の蚊族により伝播される。現在、発熱、関節痛、悪寒、嘔気を特徴とする、 チクングニア熱に対するワクチンはない。チクングニア熱回避のための最良の方法は、建物周囲の蚊族繁殖場所の撤去と、蚊族の刺咬からみを守ることである。
[Mod.TY- 節足動物が媒介するウイルスが、感染してウイルス血症となったヒトによって、いかにして素早くある地域から他の地域へ伝播されるかを示す一例である。行き先に伝播能力のあるベクターが存在する場合、感染流行開始のリスクは現実的となる。最も劇的な長距離間移動の例は、2007年、感染したインドからの個人旅行者によって持ち込まれたことにより、イタリアで発生したチクングニア感染流行である (20071210.3980)]
インド
 情報源:Thaindian News、5月8日
ケララ Kerala 州 Kasargod 地区 Panathadi 村から 2008年5月8日、チクングニア感染が疑われる流行が報告された。カルナタカ Karnataka 州との境界にある村である。地区衛生当局者は、およそ 130人のチクングニア感染疑い患者が報告されていると述べた。発熱と関節痛を訴えており、Alleppey (in Kerala) のウイルス研究所に血液検体を送付したと説明した。2007年、ケララ州南部でチクングニア感染流行が発生している。チクングニアはヤブカ属・蚊族によって伝播される。

● ムンプス 英国
PRO/EDR> Mumps, students - UK: (London)
Archive Number: 20080508.1575
  情報源:Your Local Guardian online、5月6日
Kingston University [London, UK] の学生らは、2008年4月に 20人のムンプス Mumps 感染が疑われる患者が報告されたことを受け、今週、緊急の予防接種クリニックを受診するよう勧告されている。すでに 5人の学生は、この非常に感染力の強いウイルスに感染していたとの診断を受けている。感染により、首と顔が腫れ、発熱、耳痛があり、重症例では聴覚障害や腹部の激痛をきたすこともある。12歳以上の男性では、厚顔炎を起こすこともあり、まれに不妊となる。学内でさらに患者が増える可能性があり、2005年の再来と恐れられている。当時548人の教員と学生が接種を受けた。
[Mod.CP-患者の大半は、何らかの理由で、小児期に、完全な免疫賦与に必要な2回の MMR ワクチンを、1回のみ、または全く受けていなかった可能性が高い]

● ボツリヌス中毒 ロシア
PRO/EDR> Botulism - Russia: (Samara)
Archive Number: 20080508.1573
 情報源:IA Regnum [trans]、4月30日
Tolyatti Municipality の広報によると、2008年第1四半期に 2件のボツリヌス中毒 Botulism が報告されている。いずれも、自家製のマッシュルームまたは魚類 (食品) の摂取によるものであった。2007年には 5件 7人のボツリヌス中毒が報告されている。このうち 4件の感染源が、自家製の魚類の缶詰で、3件 が自家製の魚類の干物であった。
[Mod.NP- ボツリヌス中毒に関しては、ロシア各地からたびたび報告されている。2008年4月には、Moscow, Rostov oblast, Buryatia における集団発生の報告があった。おそらく、症例のすべてがインターネット上で入手できるわけではないと思われる。寒い時期が過ぎ、前年 からの貯蔵食品を使用し始めるだろう。ロシアから、ボツリヌス中毒に関する報告が多数寄せられてはいるが、WHO によると、最もボツリヌス中毒が多く発生しているのはジョージアで,2006年中に 40件のボツリヌス中毒が発生した]
地図 Samara

● コレラ,下痢症,赤痢
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2008 (25)
Archive Number: 20080508.1572
ミャンマー
 情報源:The First Post、5月8日
数十万人のサイクロンによる被災者が、苛酷な環境で水や食糧のない状態となっている、ビルマのイラワジ Irrawaddy 川デルタの2つの地方で、コレラ Cholera 感染流行が発生した。この地域の2つの大きな町である Bogalay と Laputta の医師らは、すでに数え切れない人々がコレラ感染で死亡したと語った。住民らは川からの水を飲料水としている。イラワジ川には、死体や動物の死骸で埋め尽くされている。Bogalay and Laputta だけで 7万人が死亡したとの、匿名の軍関係者の証言もある。
イラク,下痢症
 情報源:Middle East Online、5月3日
イラク北部で下痢と嘔吐のために病院を受診するヒトの数が増加しており、コレラ感染流行が懸念されている。2008年4月、スレイマニア Sulaimaniyah の基幹病院には、コレラに似たこのような症状の患者が1日平均 25人の訪れている。(コレラ感染が)確定された患者は今のところいない。
インド,下痢症
 情報源:Star of Mysore、4月29日
およそ 35人の胃腸炎感染流行による患者が、Metagalli(KRS Road)の感染症病院に入院中である。2008年4月26日から入院患者が発生し始め、28日にその数は増加している。患者らは嘔吐と下痢を訴えている。多くは、B.M. Srinagar, Kumbarakoppal and Palahalli からの患者である。
地図 Karnataka:India 南部 [1973年までState of Mysoreと呼ばれていた]. 州都はバンガロール Bangalore 
ジンバブエ
 情報源:Afriquenligne 、5月8日
ジンバブエ政府衛生当局は、2008年5月8日、北部のリゾート地である Kariba 村で、コレラ感染により、数週間に幼い子供を含む 5人が死亡したことを明らかにした。現地当局者は、町の 2つの地区に集中しており、医師らは、付近の湖からの汚染された魚類の摂食によるものと見ていると述べた。2008年にコレラ Cholera 感染が流行したのは、これで 2回目となる。「コレラ菌に汚染された raw crocodile affluent を食べた魚類を食べ、人々はコレラ菌に感染したと見ている」と説明された。2008年、ジンバブエから、コレラ感染による複数の死亡が報告されており、薬剤の不足も問題を深刻化させている。
タンザニア
 情報源:AllAfrica & The Citizen (Dar es Salaam) 、5月6日
およそ 400万人が上下水道が不十分な場所に住むダルエスサラーム Dar es Salaam では、深刻なコレラ感染流行が発生していると、2008年5月5日に政府当局が発表した。Temeke および Ilala での被害が最も深刻となっていると報告された。死者はいまのところ出ていない。3日、Chang'ombe, Yombo Vituka and Miburani surburbs(in Temeke district)からの 8人の患者が入院治療中となっている。
ナミビア
 情報源:AllAfrica & New Era (Windhoek)、4月30日
Opuwoの北およそ120kmのOkangwati(Epupa constituency)の初発以降、Kunene Regionでは2008年初から2168人のコレラ感染患者が報告されている。51人が入院中であるが、検査で確定されたのは5例のみである。およそ13人の死亡が、コレラ感染によるものと疑われている。ほかに症状がはっきりしない2例の疑い症例がある。
地図 Kunene:Namibia 北西部の端, Ohangwena の西 
アンゴラ
 情報源:Angola Press 、4月28日
南部ウイラ Huila 州の衛生当局により、Chibia および Lubango 地区において、週末に少なくとも 12人のコレラ感染患者が報告された。2008年4月28日、公衆衛生の当局者は、 Lubango district で 9例、 Chibia地区で 3例発生したと述べた。同時期に 11人が退院し、ほか 26人が現在も治療中である。
米国,赤痢
 情報源:New York City Department of Health、5月2日
2008年5月2日、Brooklynのthe Borough Park and Williamsburg communities の、正統派ユダヤ教徒 Orthodox Jewish の住民らに、腸管感染症である赤痢の感染流行が発生中であることを通知した。2008年のこれまでに、この2つの地域で 150人以上の赤痢患者が発生し、半数以上は幼小児である。最も被害が大きいのは、zip code 11219 [in Borough Park]の地域で 60人が感染した。..赤痢は、保育所や幼稚園では、容易に感染が拡大する。保護者や教師らは、子供たちの手洗いを徹底させるよう注意が必要である。非常に少ない赤痢菌 _Shigella_ bacteria でも感染が起こる。... 近年、赤痢の大規模な流行が、Borough Park, Williamsburg、その他のNew York州, New Jersey, Illinois, Maryland and Canada の、ユダヤ人社会(traditionally observant Jewish communities)で発生している。2006年、ニューヨーク市で約 274人の赤痢感染が報告され、人口10万対比 3.4例となっている。
地図 Brooklyn は、New York City に5つある boroughs (区) の1つ;the Bronx が主島にあり、Staten Island と Manhattan は各々の名前の島にあって、Brooklyn と Queens は Long Island の西側に位置する 

● 炭疽 ペルー
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, bovine - Peru: (Lima, Piura)
Archive Number: 20080508.1571
 情報源:Epidemiological Bulletin (Lima) 2008; 17(16); 229-230 [in Spanish]、5月8日
現状:
2008年4月23日、Lima District Health Unit (DIRESA) に、Caudevilla locality (Supe District) で発生した、3例の皮膚炭疽 Anthrax 感染が確認されたとの報告が届いた。 
詳細:
症例1 食肉処理場で働く 29歳の男性の前腕の潰瘍性壊死性病変から、_Bacillus anthracis_感染に合致するグラム陽性鏡検結果 
症例2 26歳女性、左手第2指の ulceronecrotic skin lesion
(症例1.2の 2人はともに、ウシの処分を行っていた) 
症例3 9歳女児、手背の病変、同じウシの処分時に内蔵の洗浄をおこなった
[2] ピウラ Piura: 疑い suspected
 情報源:Epidemiological Bulletin (Lima) 2008; 17(16); 229-230 [in Spanish]、5月8日。
現状:
2008年4月18日、Piura 市(district and province of Piura) で炭疽感染可能性症例 1例が報告された 
詳細:
患者は16歳の少年で、肉屋からピウラ市の別の店に肉を運んでいる 病変は上記URLで確認できる
[Mod.MHJ- ピウラでは、最後にヒトでの症例が確認されたのは 1980年代前半であるが、2004年と 2005年に家畜での感染が発生している。訳に不備な点があるので、興味のある方は原文を参照されたい。紙背に照らせば、2つの報告のいずれにも登場する、非合法の食肉処理が、定常的な獣医衛生学上の問題になっているものと思われる。]

● クリミア・コンゴ出血熱 トルコ
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Turkey
Archive Number: 20080508.1567
 情報源:Turkish Daily News 、5月7日
2008年5月5日、新たに 3人がクリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo hem. fever CCHF により死亡し、1週間の死者は 5人となった。Samsun 県において、2人が CCHF により死亡し、ほかに 4人の同様の症状を示す患者が治療中である。57歳の男性 1名は、3週間前にダニの刺咬を受け、アンカラ Anakra の病院で死亡した。男性の家族の話では、Kirecoca 村(Corum province)にある自宅の庭で、ダニの刺咬を受けた数日後に病院へ運んだと言う。中央部アナトリア地方シバス Sivas 市で、6人の小児が CCHF の疑いで監視されている。
[Mod.CP- CCHF は、3分節のゲノムを持つ1本鎖RNAウイルスで、genus _Nairovirus_ of the family _Bunyaviridae_(ブンヤウイルス科ナイロウイルス属) に分類されている。CCHF ウイルスはダニ刺咬により直接ヒトに感染伝播したり、病院内の院内感染や家畜の処理の際に血液を介して感染したりする。まれな、未殺菌のミルクを介する感染もある。ダニからの感染伝播による症例は、通常散発性で、集団発生は、動物(おもに、動物自身は無症状であるヒツジ)の処分に関係する、血液を介する感染伝播があったことを示唆する]
地図 the provinces of Turkey 

● オーエスキー病 Pseudorabies、ブタ 米国
PRO/AH/EDR> Pseudorabies, swine - USA: (MI)
Archive Number: 20080508.1578
 情報源:The Chicago Tribune 、5月7日
Saginaw County の私有の game ranch(牧場)で、感染力の強いブタのウイルスが確認された。19頭の sport swine を所有する農場で、仮性狂犬病の感染流行が発生していることが、検査機関で確認された。Pseudorabies (PRV) は、生まれたばかりの子ブタを死亡させる、非常に感染力の強いウイルス性疾患である。まれに、ネコやイヌが突然死することがある。ウシ、ヒツジ、シカにも感染することがあるが、ヒトに感染することはない。狂犬病とは無関係である。
[Mod.TG- Pseudorabies は、主にブタなどの家畜や野生動物にも感染することのある、世界中に存在する、急性で致死性になることの多い疾患である。pseudorabies virus が、米国で重要な病原体として登場したのは1960年代のことであり、屋内でブタを飼育することが増えたためか、あるいは強毒性の株が新興したことが主な原因と考えられる。狂犬病類似の症状が見られることから、 "mad itch" とも呼ばれる。米国では、届け出義務のある疾患であり、ほとんどの地域で排除されている。ミシガン州は、USDA の基準により、数年以上前から清浄化されていた。1902年にハンガリーで初めてウシやイヌの病気として確認され、間もなく、ブタがウイルスの自然宿主であると同時に、死亡することもあることが判ってきた。発見者の名にちなんで、Aujesky's disease とも呼ばれている。Pseudorabies virus は DNA ヘルペスウイルスである。ブタが唯一の自然宿主であるにも関わらず、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ヤギ、そしてアライグマ、オポッサム、スカンク、齧歯類などの野生動物にも感染する。実験的には、rhesus monkeys や marmosets にも感受性があるが、チンパンジーには感受性がなかった。ヒトでの感染の報告は限定的で、ウイルスの分離ではなく、seroconversion 血清抗体出現による診断である。ウマでの感染もまれである。血清型は 1種類といわれているが、モノクローナル抗体処理、制限エンドヌクレアーゼアッセイ、および熱・トリプシン不活化マーカーを用いた、ウイルス株の違いが確認されている。ウイルスの感染伝播は、鼻-鼻、もしくは、糞口感染による。エアロゾル化したウイルスによる、間接的な感染伝播もしばしば起こる。湿度 55%の空気中で最大7時間ウイルスが生存する。イングランドのデータでは、エアロゾルとして 2kmまで移動した。塩素化されていない井戸水中では7時間、酸素化された礁湖や芝生、土壌、糞便などでは2日間生存するなどのデータの紹介。エンベロープを持ち、乾燥、日光、高熱 (37℃)で不活化される。イヌなどは最終宿主であるが、感染後2-3日間生存する。ベクターとしての昆虫に関しては、調査中であるが、鳥類は感染伝播に寄与していない。臨床症状は、感染動物の年齢により、若いブタは感受性が高く、生後7日未満の子ブタでは、致死率は 100%に及ぶ。通常、中枢神経症状 (e.g., tremors and paddling) が見られる]
 
● アフラトキシン、ウマの飼料 米国
PRO/AH/EDR> Aflatoxin, equine feed - USA: (multistate), recall
Archive Number: 20080508.1574
 情報源:The Horse.com, Article 11810、5月5日
Land O'Lakes Purina Feed LLC 社は、3つの東海岸にある工場で生産されたウマの飼料の商品回収を発表した。高濃度のアフラトキシン Aflatoxin が含有されている疑いがあ る。アフラトキシンは、マイコトキシンの1種で、真菌アスペルギルス _Aspergillus_ spp. が産生する、二次代謝物である。

● 狂犬病、イヌ 英国
PRO/AH> Rabies, canine - UK (02): (England), restrictions lifted
Archive Number: 20080508.1570
 情報源:DEFRA Information Bulletin, ref 130/08 、5月7日
Defra (UK Department for Environment, Food and Rural Affairs、英国・環境食糧農林省) および Health Protection Agency 健康保護局は、スリランカから持ち込まれ、英国の検疫施設に係留中の1頭のイヌが、2008年4月25日に狂犬病であることが確認されたことをうけ、徹底的な調査を行なってきた。調査は完了し、この結果をうけ、25日にこの検疫施設に課せられていた制限を解除し、狂犬病で死亡したスリランカからのイヌの到着後に、検疫期間終了により同施設から出た 4頭のイヌの予防的隔離も解除された。感染犬と接触のあった、動物やヒトの全追跡調査も無事終了した。... ハイリスクとされた4頭のイヌは安楽死させられ、いずれも処分時に感染性の狂犬病ではなかったことが確認された。
[Mod.AS- 読者らは、本症例が「野良犬を救おう」という慈善団体によってスリランカから英国に連れてこられた、生後8週の子犬によるものであったことを記憶されているだろう。ProMED-mail では、都市部に狂犬病が蔓延する国で捕獲された野良犬を、狂犬病排除国へ移送させる許可を与えることに、疑問を抱く。スリランカ国内の設備の整った動物保護施設に出資(資金援助)することを検討すべきである。そうすればもっと多くの動物を、長距離移動のストレスなく、ヒトや他の動物にも重大なリスクを与えずに救うことができる]

● 豚繁殖呼吸器障害症候群 ベトナム
PRO/AH> Porcine reprod. & resp. syndrome - Viet Nam (03): enzootic
Archive Number: 20080507.1562
 投稿者:ベトナム・Department of Animal Health,Do Huu Dung, DVM, MPhil.、5月6日
20080422.1429 に関連しての反論:
ベトナムの動物衛生報告は透明性が保たれている。 
OIE の加盟国には、一度国内で土着感染 [原文にある epidemic は、おそらく endemic の  typo であろう] が発生した疾患に関しては、その疾患について、OIE に対し緊急報告することを求められていない。このため、半期または年次報告によって感染流行に関するデータが提出されることとなる。ベトナムは動物衛生情報に関して、現在も透明性が保たれていることを、改めて確認したい。 
[Mod.AS- この情報からすると、ベトナムにおいて、PRRS (locally named "Blue ear pig disease") は、土着感染していると結論されているのだろう]