2009年1月27日

マラリア カンボジア、タイ artemisinin耐性
鳥インフルエンザ、ヒト 中国,エジプト

● マラリア カンボジア タイ
PRO/EDR> Malaria - Cambodia, Thailand, artemisinin resistance
Archive Number: 20090127.0371
[1] ACTに対するマラリア原虫の耐性が明らかになった
 情報源:The New York Times、2009年1月26日
最も致死性の高いマラリア Malaria の原因となる寄生虫において、最新の最も有効な薬剤に対する耐性が初めて見つかった。伝統的な漢方薬に用いられている植物から抽出された抗マラリア薬 artemisinin は、近年 1日あたり 2000人以上のこどもが死亡するアフリカからマラリアを排除する薬剤として最も有望視されていた。
The New England Journal of Medicine 誌に掲載された 1件と、まもなく掲載予定の 1件を含めたいくつかの研究の中で、カンボジアにおいて artemisinin はその効力を失いつつあり、薬剤耐性マラリアが世界中に拡大しないよう一層努力しなければならないという点で、専門家らの意見の一致がみられている。...
 (カンボジアとタイで行われた調査で) artemisinin に対するわずかな耐性の徴候が見られたとの調査結果で、最近の研究結果では同薬剤が無効 failed と判断された患者はわずか 2人であった。いずれも最終的には治癒した。しかしマラリアの専門家らは、1950年代のクロロキン chloroquine 耐性株の登場以降、過去何度もこのタイ-カンボジア国境地帯が薬剤耐性マラリアの発祥地となっている点を指摘している。耐性が世界中に広がるまでに数十年かかるため、今後数年間は artemisinin を基剤とした薬物療法は有効であることは間違いないとも述べられた。artemisinin 耐性と闘うため、国際保健機関は artemisinin 耐性マラリア原虫が一掃されるまで長く血中にとどまるような他の抗マラリア薬との合剤の形に限って artemisinin を販売するよう監視を続けている。
最近行われた 2件の調査では、artemisinin 耐性は配合薬のない錠剤に関係していた。しかし、耐性が拡大すれば artemisinin の合剤に代わる薬物はなく、すぐに開発される見込みもない。カンボジアにおいて 3年間薬剤耐性の研究を指揮してきた WHO のマラリア専門家は、近く出されるこの問題の研究の共著者となっている。今のところバングラデシュやインドには発生していないと述べた。研究者らによって 1950年代にどのようにしてクロロキン耐性がタイ、ビルマ、インド、そしてアフリカにまで拡大し、毎年 100万人近い死者が発生するようになったか、分析されている。
artemisinin 治療後の再発予防として米国政府は、政治的問題を棚上げし旧ビルマのミャンマー軍事政権下にマラリア監視センターを設置することを容認した。マラリア研究最大の資金提供者である The Bill and Melinda Gates Foundation は、タイとカンボジア両政府に対して 1400万米ドルを拠出した。... 蚊帳の配布などの対策の説明、熱帯熱マラリア ... 
最近の研究では artemisinin 基剤の薬剤は血中のマラリア原虫除去の治療効果が減少していることが示された。数年前には服用後 48時間で血中の原虫が消失していたが、現在120時間を要する。2008年12月の NEJM 誌にこの研究結果が掲載された医師は、一部の患者で治療が無効であることを意味し、マラリア (の問題) は消えたり浮上したりすると述べた。
各地域によって artemisinin の合剤は異なっている。カンボジア政府は メフロキン mefloquine との合剤を推奨し、これは米軍が開発したもので Lariam として商品化されている。Artemether は artemisinin の抽出物で、別の抗マラリア薬である lumefantrine との合剤として使用されることが多い。この薬剤は最近パプアニューギニアの小児の治療薬として最も有効であるとされた。米国でもまもなく Novartis からの販売が承認される見込みである。主な使用目的 (対象) は、渡航者とマラリアに感染して米国に入国する人々である。
マラリアの伝播に与る蚊族は現在も米国内に存在する。しかし、近代的な建築物と医療へのアクセスが容易なこと、殺虫剤の使用などにより、先進国では実際的にはマラリアが排除されている。
著者はカンボジアのこの地域を薬剤耐性にとって "canary in the coal mine" と呼んでいる。過去、プランテーションや貴金属の鉱山への移民労働者らによって、薬剤耐性株のマラリアが西に広がったと信じられていた。政情不安や偽薬、弱く貧乏な政府によって、マラリア対策は困難を極めた。クロロキンの場合、広い範囲の住民を守ろうと食塩に混ぜるなどして、予防薬として使用されたため耐性が進んでしまった可能性があるという。米軍の薬剤であるメフロキンと、中国の薬草から生成された artemisinin との合剤ができたのは、1990年代になってからである。artemisinin 基剤の合剤は即効性で、感染伝播も遅らせる薬剤となった。
 [2] ACTへの耐性化と対策
 情報源:Thomson Reuters Foundation AlertNet, UN Integrated RegionalInformation Networks (IRIN) News report、2009年1月13日
タイ-カンボジア国境一帯の致死性マラリアは治療薬に対する抵抗性を増し、世界的なマラリア根絶への取り組みを脅かすこととなっていることが、新たな研究で明らかになった。Artemisinin combination therapy (ACT アルテミシニン併用療法) は、マラリア原虫を即効性に死滅させる薬と遅効性に死滅させる薬剤を服用する治療法であるが、治癒までの長い時間がを要する傾向にあり、その治療効果は減弱している。以前は 24-36時間で原虫を死滅させていたが、現在の ACT では最大 120時間かかっていると WHO の担当者が述べた。ACT の 2つの薬剤のうちの1剤である artemisinin に対するマラリア原虫の耐性は、ACT が無効となる前兆である。通常医師は artemisinin を遅効性の薬剤とともに処方する。問題は 1970年代から指摘されていた artemisinin の耐性 resistance だけではなく、むしろ 2剤による最も進んだ治療法である ACT への耐性 tolerance が見られることにある。artemisinin 単独療法を WHO は推奨していない。米・カリフォルニア大学の専門家によると、artemisinin 耐性は単独療法や無制限の使用が横行した東南アジアの一部で発生したことが指摘されている。ACT の価格の 1/10 で ACT の副作用である嘔吐が見られないことから、artemisinin 単独療法は今も多くの人々にとって最も一般的な治療法となっている。しかし、もし恐れていたことが起これば、耐性マラリアはこの地域全体に広がり、特に貧困集落に影響が出ると予測されている。
プノンペン Phnom Penh の the National Centre for Parasitology, Entomology and Malaria Control センター長は、耐性化への懸念はあるものの ACT と援助と蚊帳などの予防具によって,2006年には 10万人であったマラリア患者が ,2007年には 59000人、2008年には 54000人に減少していると説明した。マラリアによる致死率は わずか 2年で 1/2 となった (from 396 in 2006 to 241 in 2007 and 184 in 2008)。2008年10月の緊急会議において WHOは、2009年に向け dihydroartemisinin-piperaquine (DHA-PIP) と呼ばれる、新たな ACT への変更を勧告した。カンボジアにおける新たなトライアル試験でほぼ 100%の有効率を示した。2001年以降のこれまでの ACT 治療は artesunate mefloquine であり、現在も 90%の有効性があるが、禁止にもかかわらず今も単独療法を行っているリスク集団では、あまり知られていない。農村部では安価な偽薬の単独薬が売買されている。WHO は蚊帳の配布、単独療法の厳格な禁止、WHO承認薬の即時採用を求めている。マラリアは従来より artemisinin 耐性であったが、ACT に対する抵抗性が認められたのは、原虫の進化による新局面である。
1970年代以降、タイ-カンボジア国境の複数のマラリア種が混在する東南アジア一帯からの鉱山採掘の移動労働者、無法となっている薬物市場、artemisinin 単独療法の蔓延などの要因が、カンボジアで最も多い熱帯熱マラリア _Plasmodium falciparum_ の薬剤耐性獲得を助長したとされている。カンボジア政府と WHO は、2001年に ACTを承認し、単独療法を禁止した。しかし、マラリア原虫の 90%以上に効果があるとされているにもかかわらず、ACT でさえもまもなく耐性化 adapted が認められるようになると見られている。常に artemisinin と新たな薬剤との合剤による ACT の開発に努めることが、優れた薬剤の優れた使用法と言うことになる。しかし、いずれ原虫の耐性はそれに追いつくことになるため、新たな薬剤の開発は、人類の健康にとって最重要課題であると述べた。
偽薬や治療スケジュールを守れない患者も、もう1つの要因である。もし、患者がきちんと服用しなければ耐性を生むことになると女性省健康部長は述べた。2050年までに地球からマラリアを根絶できると考える前出の加大の研究者は、薬剤耐性の問題があり、長い間耐性化の阻止に成功しなかったことを考えると、今こそ排除と対策強化への進んだ論議が必要だと主張する。手遅れや生半可な実施では、費用がかかる上に危険であると説明している。2008年の WHO によるマラリア報告によれば、世界中の人口の半数に感染のリスクがあり、2006年におよそ 2億4700万人の患者のうち,約100万人が死亡したとされている。アフリカの妊婦と小児が特に危険であると、WHO は述べている。
[Mod.MPP- ACT の耐性/無効については困った事態である。同時にマラリア感染による致死率の減少を伴った、最近の深刻なマラリア導入 inroads は、ACT 耐性が増加するなら、脅威となるだろう。記事にもあるように、タイカンボジア国境における抗マラリア薬への耐性出現には前例があり、最初はクロロキン、のちに他の抗マラリア薬でも認められている。PRO/MBS にも数多くの偽薬の報告があり、耐性化出現の一因と思われる。(効果不十分な) artemisinin 単独使用による単剤治療や、マラリアの確定診断のないままに発熱疾患にタイして抗マラリア薬が広く使用されるていることも他の要因となっている。最近の論文では、開発中の ACT に対する耐性徴候が議論されている。2008年12月の NEJM 誌へのレターで、カンボジアにおける熱帯熱マラリアに対して artemisinin 治療を受けた 60人の患者についての研究が掲載されている。60人の患者の中で 4人が治療開始後 21-28日目に寄生虫血症の再燃を見た。調査された 3.3%に当たるこの 4人のうち 2人は artemisinin 耐性に分類された]

● 鳥インフルエンザ,ヒト 中国,エジプト(2件)

中国 WHO
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (24): China (GZ, SD, XJ) WHO
Archive Number: 20090127.0367
[1] 新疆ウイグル自治区 Xinjiang 貴州省 Guizhou provinces
 情報源 World Health Organisation (WHO), EPR, Disease Outbreak News 2009年1月27日
中国保健省は、新たなH5N1型鳥インフルエンザ Avian influenza ウイルス感染患者3名を発表した。
1例目の患者は、新彊自治区ウルムチ市在住の31歳の女性で、1月10日に発症した。入院して治療を受けたが、1月23日に死亡した。感染源調査では、最近、家禽市場へ訪れていたことが示されている。自治体の当局は、現在、疫学調査を実施しており、濃厚接触者は監視下に置かれている。現在まで、接触者の中で臨床症状を呈した者は報告されていない。
2例目の患者は貴州省貴陽市在住の29歳の男性で、1月15日に発症し、現在重篤な状態にある。感染源調査では、家禽市場で感染を受けた可能性が示されている。
3例目の患者は広西壮族自治区北流市在住の18歳の男性で1月19日に発症し、26日に死亡した。感染源調査では、病死した家禽との接触歴があったことが示されている。濃厚接触者は監視下に置かれており、現在のところ全員健康である。中国では、これまでに確定された患者37名中、25名が死亡している。 
[2] 山東省 Shandong province
 情報源: Sohu.com [translated from Chinese]、2009年1月23日
20090124.0321 (女性には調理時に家禽との接触があった可能性が残っている) に関して 
Z氏の発言内容:
彼の配偶者は、路上で 'Ma La Tang' の販売を手伝っており、カモの血液、ニワトリの羽や足の肉、家禽製品との接触を避けることは不可能であった。保健当局は感染源の特定に至っていないが、彼自身は、妻の鳥インフルエンザは間違いなくこれらの肉や家禽から感染したものと信じている。 

エジプト WHO
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (23): Egypt, WHO
Archive Number: 20090127.0366
 情報源:World Health Organization (WHO) Epidemic and Pandemic Alertand Response (EPR) disease outbreak news、2009年1月26日
26日、エジプト保健人口省は、新たなH5N1型鳥インフルエンザウイルス感染患者1名を発表した。患者は Manofia(Al-Minufiyah) 地域・Shebin Elkom 地区の 2歳女児で、1月23日に発症し、直ちに入院した。彼女の容態は安定している。H5N1型鳥インフルエンザウイルス感染はエジプト中央公衆衛生検査所で確定された。彼女の感染源調査では、最近、病死した家禽との接触歴があったことが示されている。エジプトでは、確定された患者53名中、23名が死亡している。

● バナナの病気,Banana bunchy top virus - アフリカ:感染拡大
PRO/PL> Banana bunchy top virus - Africa: spread
Archive Number: 20090127.0372
 情報源:New Agriculturalist、2009年1月 

● 悪性カタル熱-米国、ウシ
PRO/AH/EDR> Malignant catarrhal fever, bovine - USA: (WA)
Archive Number: 20090127.0365
 情報源:Peninsula Daily News 、2009年1月26日
Sequim High School の学生が育てた Angus 種のチャンピオン牛 Momma Cow が死亡したことは、ショックと当時に予想されていなかったことだと、農科学担当教諭が述べた。...このウシは MCF malignant catarrhal fever の感染により 2008年11月20日に死亡した。

● 口蹄疫 ウガンダ ウシ
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease, bovine - Uganda (03): (N., E, & Central)
Archive Number: 20090127.0364
 情報源 The New Vision (Uganda) 1月25日
Cattle vaccines out of stock
 情報源 The New Vision (Uganda) 1月25日
口蹄疫 foot-and-mouth disease [FMD] 発生地域のウシへのワクチン接種が,ワクチン不足により滞っていると,農業省が明らかにした。財務省が資金を拠出しない限り、ワクチンを供給できないとしている。 ... 2008年末から2009年初にかけて,北部の当局は,the districts of Lira, Apac, Amuru, Amolatar, Pader, Dokolo, Abim, and Oyam [in the Northern region], and Katakwi and Kaberamaido [in the Eastern region] の市場を閉鎖した