2009年5月13日-14日

Ljungan virus  スウェーデン、SIDS
髄膜炎、髄膜炎菌性 マレーシア
インフルエンザ A(H1N1) 発熱の欠如,妊娠女性の感染

● Ljungan virus  スウェーデン
PRO> Ljungan virus, SIDS - Sweden
Archive Number: 20090514.1815
 情報源:Ljugan virus Newsletter、2009年5月13日
ユンガンウイルス Ljungan virus は sudden infant death syndrome [SIDS 乳児突然死症候群] に関係する最も重要な病原体の1つである。このような仮説が科学誌 Forensic Science, Medicine and Pathology [Forensic Sci Med Pathol. 2009 May 1 (Epub ahead of print) -- see abstract below] に掲載された。
この説は 3つの証拠から導かれた: SIDS患者の脳、心臓、肺の組織から Ljungan virus (LV) が新たに確認されたこと、LV が種々の動物で関連性のある疾患をおこすことが観察されたこと、および SIDS 発生と LV の保有動物の増加の間に関連性があることである。
さらに最近、科学誌 Birth Defects Research で、LV が子宮内胎児死亡や奇形(水頭症無能症)に関係するとの報告があった。 
[Mod.CP- Ljungan virus は parechovirus の 1つである。The genus(属) _Parechovirus_ は the family _Picornaviridae_(ピコルナウイルス科)を構成する 9つのウイルス属の1つで、_Human parechovirus_ と _Ljungan virus_ の 2種類のウイルスが含まれる。Virus Taxonomy (The Eighth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses) によると、the human parechoviruses は気道と消化管で増殖する。幼小児での感染が多いが、恐らく多くは不顕性感染に終わっている。気道感染と下痢のほか、中枢神経系の感染も報告されている。 Ljungan virus の分離結果から、主に齧歯類が感染するものと考えられている。parechoviruses の予測タンパク塩基配列には大きな相違が見られ、ピコルナウイルス科の中の他のウイルスの対応するタンパクと比較して 30% 以上の相同性を有するタンパクを持っていない。南北アメリカとスウェーデンの Ljungan virus 分離株には、かなりの相違が認められている。 
以下は今回の報告の事前発表論文の要約である: 
" Ljungan virus (LV) は近年、自然界の齧歯類宿主の周産期死亡や、実験マウスの繁殖における発達異常に関係することが示されている。スウェーデンにおける小型齧歯類の個体数増 加と、ヒトでの intrauterine fetal death (IUFD 子宮内胎児死亡) 発生の間には、強い疫学的相関性が確認されている。LV 抗原が IUFD 症例の半数で検出されている。sudden infant death syndrome (SIDS) と齧歯類の増勢に関連性があり、SIDS 症例で同ウイルスが検出されるかについて検討した。スウェーデンの死因検索データベースを用いて調査した SIDS 発生の変化は、野生の齧歯類の個体数変動の影響を受けていた。SIDS、リンパ球性心筋炎のある SIDS、および心筋炎の症例について、LV 特異 的免疫組織化学法 IHC を用いて、ホルマリン固定された脳、心臓、肺組織を調査したところ、IHC を用いて検討した患者 3人全員の脳・心臓・肺組織から LV ウイルスが検出された。これらの研究結果から、LV は乳児死亡に大きく関与し、IUFD とSIDS は最も疫学的関係の深い疾患である可能性が 高いことが示唆された。”]

● 髄膜炎、髄膜炎菌性 マレーシア
PRO/EDR> Meningitis, meningococcal - Malaysia: (ME,PG) susp, RFI
Archive Number: 20090514.1812
[1] 20人の訓練生が入院し、2人が集中治療室、18人が隔離,1人が死亡
 情報源: The Malaysian Insider、2009年5月10日 
保健省は Tiang Dua [マラッカ Malacca]のthe Road Transport Department (JPJ) Academy の訓練生に発生し、先週 [4日-] 1人が死亡した髄膜炎 Meningitis の起因菌が、the diplococci bacteria [双球菌:恐らく _Neisseria meningitidis_ 髄膜炎菌] であることを確認した。保健相によると 10日までに 20人の訓練生が入院し、2人が集中治療室に入室し、18人も隔離病棟にいる。9日、新たに 6人の患者が同じ病院に入院となった。... 93人の訓練生は隔離され、厳重な健康監視が行われている。... Pedas (Negeri Sembilan), Muar (Johor), and Bukit Katil (Malacca)など、訓練生の実習地から検体を採取し、この細菌の感染源の調査が行われている。スタッフと訓練生は全員、髄膜炎菌感染に対する予防的抗生物質を投与されている。 
[2] 感染は academy 校内に限定され、国内への影響はない 
 情報源: The Star online、2009年5月12日
保健省はマラッカの双球菌性髄膜炎感染流行は封じ込められたと見ている。感染は academy 校内に限定され、国内への影響はないと考えられると、保健省が述べた。4日、Tiang Dua, Malacca にあるこの学校の訓練生 1名が、病院への搬送中に感染症により死亡した。ウイルス感染によるものではないことが直ちに確認されたと同相が説明した。11日現在マラッカの入院患者は 32人で、うち 2人が集中治療室に入っており、29人が隔離病棟に収容されている。残る 1人はペナン Penang の Kepala Batas で入院中である。いずれも状態は安定しているが、治療コースは 1週間かかると説明した。
[3] 髄膜炎が疑われて入院中の患者の数が、前日の31人から38人に増えた 
 情報源: The Star online、2009年5月13日
マラッカの病院に髄膜炎が疑われて入院中の患者の数は、前日の 31人から 12日には 38人に増えた。全国の入院患者数は Kepala Batas [Penang] の訓練生 1名を含め 39人となった。新たに発症した 4人の患者は、Tiang Dua, Malacca のホステルに停留されていた訓練生であることが明らかにされた。少なくとも 2人はレントゲン技師で、1人は訓練生のフィアンセである。集中治療室に入院中の 2人の訓練生は歩行できるまでに回復している。感染源は特定されていない。 
[Mod.ML− 記事では特定されていないものの、 今回のマレーシアの髄膜炎感染流行の原因は、恐らく髄膜炎菌 _N. meningitidis_ によるものと考えられる。ProMED-mail では最近、ミャンマーにおける髄膜炎菌性と考えられる髄膜炎流行と、ミャンマー西部国境地帯のインド北東部とバングラデシュの、確定診断された髄膜炎菌性髄膜炎について報告されている。
以下に、20090218.0674 の Mod.ML のコメントを抜粋する: 
ほとんどの症例が弧発例で、集団感染は 2%以下である。集団発生が起きるのは半閉鎖集団である訓練兵キャンプ、学生寮、学校、デイケアセンターなどである。郡市町といった地域において、濃厚接触がなく共通因子のない人々の間で、集団感染が発生することもある。最も感染しやすいのは 2歳以下の小児であるが、流行期には 5−19才までの年齢層で通常より高頻度に患者が発生する。現在、米国の大部分の感染の原因は serogroups B, C and Y によるものである; serogroup A は米国ではまれであり、W-135 による感染の占める割合は極めて小さい。乳児では serogroup B が最も多く、一方 65歳以上の患者のほとんどが serogroup Y で占められている。髄膜炎菌性疾患のアウトブレイクの定義は、3ヶ月以内に 3人以上の確定もしくは可能性例の発生とされている。これは結果的に、通常の発生率のおよそ 10倍である、人口 10万対 10人以上の primary disease attack rate 一次罹患率となる。予防内服は、総人口の 500−800倍の髄膜炎菌性疾患罹患リスクをもつ接触者に行われる。患者の濃厚接触者とは、同居家族、デイケア センターでの接触者、患者の口腔分泌物への直接接触者である。濃厚接触者以外予防内服勧められない予防内服判断材料として、髄膜炎菌 _N. meningitidis_ のための口腔咽頭および鼻咽頭培養はいずれも用いられない。感染流行が発生した場合、流行と判断されればなるべく早い時期にリスクのある集団は適切な serogroup に対する髄膜炎菌ワクチンの接種を受けるべきである。
マレーシア北西部沿岸の Penang の 1例と、 南西部沿岸の Malacca の他の感染例と、どのような関連性があるのかについては明らかにされていない。マレーシア国内の細菌性髄膜炎流行の原因となっ た病原体の確定が待ち望まれる。分離株の DNA fingerprinting  が疫学的な関連づけに有用である]

● インフルエンザ A(H1N1) (5件)
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (26)
Archive Number: 20090514.1798
[1] Absence of fever 発熱の欠如
 情報源: The New York Times 、2009年5月12日
豚インフルエンザ Influenza  A(H1N1) の感染者の多くが、重症患者であっても発熱が見られず、新型ウイルスのこの奇異な特徴が、感染流行対策をより難しくさせる可能性があると、先週メキシコの患者を調査した米国の感染症の専門家が述べた。
発熱はインフルエンザの hallmark(特徴)の 1つで、発症時には突然 40℃ [104F] を超えることも多い。多くの感染症の専門家は、発熱はインフルエンザの最も重要な徴候と考えているため、発熱の存在が患者を見分ける決定要因である。
しかし米国の医師が先週調査のために訪れた Mexico City の 2つの病院では、初診時 when screened におよそ 1/3 の患者は発熱していなかったと、同医師は述べた。教科書的にはインフルエンザ流行中の発熱と咳の the predictive value(予測値)は 90%とされている。重症例の患者のほとんどは入院後に発熱したが、軽症例のおよそ半分では発熱しなかった: ほとんど全ての患者で全身倦怠が認められたと述べた。またメキシコの 2つの病院のおよそ 12%の患者は、咳や呼吸困難といった呼吸器症状に加え、重症の下痢が認められたことを明らかにした。このような患者らには 1日 6回の排便が 3日間続いた。同医師はメキシコの共同研究者らに、糞便中の豚インフルエンザ A(H1N1) ウイルスの検査を行うよう促した。A(H1N1) ウイルスがヒトからヒトに感染し、糞便中にウイルスがいるとすれば、特に貧困国での感染対策はさらに難しくなる。またメキシコの研究者らに対して、症状のないウイルスキャリアがいるかについても検査するよう求めている。メキシコでの感染流行の理解を複雑にしている、通常とは異なる特徴としてこの数ヶ月間に、メキシコでは 5種類の異なるインフルエンザウイルスが同時に感染循環していることがあると、述べた。同医師が訪れた病院の 1つ、the National Institute for Respiratory Diseases における Pneumonia rates 肺炎(発生)率は、過去 2年間は 1週間あたり 20例であったところ、最近では週 120例に達し、豚インフルエンザとの関連性が示唆されている。インフルエンザ患者が発症する肺炎は 1918-19年のインフルンザパンデミック時の主な合併症であったとされている、ブドウ球菌性肺炎像とは異なると説明された。この 2つのメキシコの病院は、呼吸器感染流行に十分対処できる設備(体制)があり、メキシコ人医師らは職員らの不安を軽減するために情報を公開し、ホットラインを開設し、心理的なサポートと医学的検査を提供するなどの手段を講じていた。感染流行に対する対応については、私見として米国ではあまり理解されていないと思われるが、対策を成功させるためには重要なことで、医療従事者の不安への対応に関してまだ十分とは言えないとした。 
[2] Symptoms in pigs 
 情報源: Reuters News、2009年5月11日
世界中に蔓延する新型 H1N1 ウイルスを子豚に感染させたタイの研究者は、ヒトでの感染例と同じようにインフルエンザ類似症状を呈した後消失すると 11日に発表した。豚インフルエンザと呼ばれるこの新たなウイルスによる感染流行により、メキシコを中心に 53人が死亡し、当局者が豚肉の消費によるウイルス感染拡大のリスクを否定しているにも関わらず、一部の国ではヒトでの感染が報告された国からの豚肉の輸入が禁止されている。豚肉生産者らは、ウイルスがどのようにして動物に感染するかについて不安を感じている。新型ウイルスに感染した 22頭の子豚は、感染から 1-4日後にインフルエンザ類似症状を示し、感染の 2日後からウイルスを排出 --感染力を有することを意味する-- した。より危険性の低い H3N2 亜型ウイルスに感染させた子豚も含め、どのブタも死亡しなかった。本研究の結果は、タイの豚インフルエンザ対策に役立つものと考えられると、雑誌 BioMed Central's Virology Journal で報告した。この新型ウイルスは、豚インフルエンザウイルスが鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの一部と混じりあった複合ウイルスであるが、メキシコで初めて発生したこの新たな感染症の由来についてはっきりと説明されていない。インフルエンザウイルスは常に変異しており、無差別にお互いの遺伝物質を交換し合っている。特に動物やヒトが同時に 2種類のウイルスに感染したときに起こりやすい。この研究チームは、感染したブタすべてが、鼻汁、咳、くしゃみ、結膜炎などの呼吸器症状を発症したことを確認している。また肉眼的に観察できるほど大きな肺病変が認められた。この病変は肺の暗紫色 dark, plum-colored の部分として区別され、感染の 2日後に最も激しかった。H1N1 ウイルス感染のブタに顕著で、肺の 1/3を占めていた。これらの結果から、離乳したばかりの子豚において、いずれの亜型の豚インフルエンザでもインフルエンザ類似症状と肺病変が引き起こされる可能性があることが示された。しかし肉眼的病変でも微細な肺病変においても、H1N1感染ブタの重症度がより高かったと説明された。
[3] Origin in eggs
 情報源:The Edmonton Sun, The CanadianPress、2009年5月12日
WHO およびインフルエンザの先進的研究グループは、新型 H1N1 豚インフルエンザウイルスは、自然界ではなく研究機関で発生した可能性があるとの、非公式の見解について調査を行っている。WHO は豪の元ウイルス学者である筆者から、pending publication(公表を検討する)通知を受けた。この主張を受け、直ちに世界中のヒトや動物のインフルエンザの先進的研究機関から、この主張の正当性を吟味し、もし正しいとすれば WHO が新型 H1N1 豚インフルエンザウイルスによる脅威に関して加盟国に与えた勧告を変更すべきかを判断するため、研究者らが招集された。WHO の主任インフルエンザ研究者は、議論は尽くされておらず、結論に至っていないが、これまでのところ weight of evidence からこの説は正しくないことが示唆されていると述べた。
[4] Origin in eggs
 情報源:Bloomberg News、2009年5月14日
WHO は,世界に感染が広がっている豚インフルエンザウイルスは人為的ミスにより産み出されたと豪の研究者が主張したことについて、調査を行っている。RocheHolding's Tamiflu drug の開発につながる研究に携わった 75歳のこの研究者は、新型ウイルスがウイルス培養ワクチン製造の目的に使用されるで偶然に発生した可能性がある、という内容の報告を発表予定であると、取材の中で述べた。genetic blueprint の解析によりウイルスの由来を追う中でこの結論に至ったと述べている。ウイルスは laboratory escape であるとするのが最も簡潔な説明だが、他にもいくつもの説明が存在するとも述べている。WHO 当局は先週末にこの研究結果を受け、内容を検討していると 11日の会見で明らかにした。40年間ウイルスの進化の研究を行ってきたこの研究者は、メキシコで 3週間前に確認され 1968年以来のパンデミックインフルエンザとなる可能性があるこのウイルスの、遺伝学的特徴の解析に関わる、第 1人者の 1人である。

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (25): case counts
Archive Number: 20090513.1785
[1] WHO - global update (06:00 GMT) 
 情報源:WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR) 、2009年5月12日
Influenza A (H1N1) - update 26 - 12 May 2009 
12 日06:00 GMT 現在、30カ国で 5251人のインフルエンザ influenza A(H1N1) 感染が公式に報告されている。メキシコで検査で確定された患者は 6人の死者を含め2059人、米国では死者3人を含む2600人、カナ ダでは死者1人を含む330人、コスタリカでは死者1人を含む8人の患者が確定診断されている。以下は、死者の発生していない、感染が報告された国
Summary table of cases reported to WHO 30 Apr -- 12 May 2009
[2] PAHO - Americas regional update (17:00 GMT-4) 
 情報源: PAHO H1N1 flu website、2009年5月12日
12日までに 11カ国から死者 63人を含む 5696人の患者が報告されている。初発患者の発症日は 2009年3月28日で、米国での発症であった。11日以降、キューバで初めての患者がマタンサス Matanzas 州で確認された。 
[3] CDC 
a. USA update (11:00 GMT -4) : CDC H1N1 flu website 、2009年5月12日
b. MMWR Dispatch: pregnant women Novel influenza A (H1N1) virus infections in 3 pregnant women - United States, April-May 2009
 情報源: MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2009; 58 (dispatch): 1-3 、2009年5月12日
CDC が米国で初めての新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスの呼吸器感染患者を報告したのは 2009年4月15日と 17日であった。
季節性インフルエ ンザ感染流行や、かつて発生したパンデミックの期間中、妊娠女性にはインフルエンザに関連した合併症のリスクの上昇が認められている。さらに、母体のインフルエンザウイルス感染とこれに伴う体温上昇によって、胎児に先天奇形や早産などの合併症のリスクが加わる。
今回の新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染のサーベイランスの一環として CDC は、この新型ウイルスに感染した妊婦のサーベイランスを開始した。
2009年5月10日現在、米国内の妊婦の中で合計 20例の新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルス感染症例が報告されている。このうち 15例の診断は確定されており、5例は可能性例で ある。データが入手できた 7州の 13人の妊婦の、平均年齢は 26才(15−39才);3人が入院し、このうち 1人死亡した。この報告では 3人の妊婦に発生した新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染の、現段階で得られている詳細を明らかにする。
妊婦の新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染では、確定・可能性・疑い例に 5日間の抗ウイルス薬治療を行うべきである。妊婦には Oseltamivir が推奨され、処方開始は発症から 48時間以内 に行われるべきである。新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染の確定・可能性・疑い例の患者と濃厚接触のあった妊婦は zanamivir もしくは oseltamivir による 10日間の予防内服が勧められる。 
症例報告(患者A)
2009年4月15日、妊娠 35週の 33才の妊婦に、前日からの筋肉痛、乾性咳そう、軽度発熱があり、産科医による診察が行われた。比較的元気で、乾癬と軽い喘息の既往があったが、周産期のビタミン以外の薬剤は服用していなかった。最近のメキシコへの渡航歴はなかった。医院で行われた迅速のインフルエンザ診断検査キットで陽性となった。同月19 日、息切れ、発熱、湿性咳そうの悪化のため、地元の救急室を受診した。重度の呼吸障害があり、room air での血中酸素飽和度は 80%前後、呼吸回数は 30/分であった。胸部レントゲン撮影で、両側の結節性浸潤影が認められた。気管内挿管が必要で、人工呼吸器が装着された。同日、緊急帝王切開で女児 1名を出産し、Apgar スコア 4/6 であった; 児は元気に退院している。同 21日にこの患者は acute respiratory distress syndrome (ARDS) となり、28日から oseltamivir が開始され、広域スペクトラムの抗生剤も使用されて、機械式人工換気が続けられていた。患者は 5月4日に死亡した。4月25日に患者 Aから採取された鼻咽頭スワブ検体から、real-time reverse transcription-polymerase chain reaction (rRT-PCR) 法で、unsubtypable(型判定できない)influenza A strain が検出された。この検体は the Virus Surveillance and Diagnostic Branch Laboratory, Influenza Division, CDC に送付されたが novel influenza A (H1N1) virus 感染との結論(診断)には至らなかった。4月30日に再度採取された検体は、CDC における rRT-PCR 法による novel influenza A (H1N1) virus 検査で陽性となった。 
(患者B)
生来健康であった、妊娠32週の35才女性が、前日からの息切れ、咳、下痢、頭痛、筋肉痛、咽頭痛、吸気時の胸痛を訴え、4月20日に救急受診した。38.7度の発熱があり、心拍数は 128/分、呼吸数 22/分 で、room air での酸素飽和度は 97%であった。胸部レントゲン撮影で異常は認められなかった。インフルエンザの迅速検査では陰性であった。患者は経口の非ステロイド性抗炎症薬である acetoaminophen を処方され、albuterol の吸入を受け、帰宅した。翌日の産科医の健診で鼻咽頭スワブ検体が採取され、rRT-PCR testing が行われた。患者には抗生物質、制吐剤、acetoaminophen、吸入ステロイド薬が処方された。患者は完全に回復し、妊娠経過は順調である。患者Bは、救急受診までの3日間、メキシコに滞在している。メキシコと米国の家族の数人がインフルエンザ類似症状を発症しており、患者の姉は前の週に肺炎のため入院している。4月21日に患者Bから採取された鼻咽頭スワブ検体の the Naval Health Research Laboratory in San Diego における rRT-PCR 法で、型判定できないインフルエンザ Aウイルスが検出された。CDC での確認検査で、新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルス感染が確定された。 
(患者C)
2009年4月29日、妊娠23週の29才女性が、1日続く咳、咽頭痛、悪寒、軽度発熱、倦怠感を感じ、産前ケアを受けている開業医を受診した。患者には喘息の既往があったが、喘息薬は使用していなかった。女性の 10才の息子にも、この患者が発症する前から同様の症状が見られていたと報告されている。もう1人の 7才の息子は、患者である母親と同じ日に発病し、患者とともにクリニックを受診した。クリニックで、幼い方の息子は激しく咳をし、医院のスタッフからマスクを装着するよう求められた。この家庭医のクリニックで行われた、患者Cから採取された鼻咽頭スワブ検体のインフルエンザ迅速診断検査キットは陽性であった。この女性には oseltamivir が処方され、同日より服用を開始した。合併症なく回復し、妊娠経過は順調である。患者Cは、最近メキシコを訪れたことはなかった。7才の息子にも 29日から oseltamivir が処方されているが、インフルエンザ検査では陰性であった。患者Cを診察した医師自身も、妊娠13週の妊婦であった。この医師は oseltamivir の予防内服を行っており、現在まで症状は見られていない。患者Cから 4月29日に採取された 1件の鼻咽頭スワブ検体について the Washington State Public Health Laboratory で行われた検査では、unsubtypable influenza A strain と診断されたが、CDC における詳細な検査で novel influenza A (H1N1) virus 感染であることが確認された。 
MMWR editorial note
..  これら 3人の妊婦はいずれも当初、非妊娠女性の感染と臨床的に変わらない、急性発熱性呼吸器疾患の症状を呈していた; 1人(患者A)は ARDS を発症し死亡した。妊娠していない患者の新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染 [以下、新型 flu] で、最も多く見られる症状は発熱、 咳、咽頭痛である。どのような患者に、新型 flu 感染による合併症のリスクが最も高いかを結論するにはデータが不十分ではあるが、季節性インフルエンザの流行や、これまでにおきたインフルエンザ大流行においては、妊娠女性は非妊娠女性と比較して、概してインフルエンザ関連の有病率および死亡率でリスクが高くなることが示されている。このような合併症リスク上昇は、心血管/呼吸器/免疫系の変化を含む、妊娠に伴う複数の生理的変化に関連したものと考えられ ている。喘息などの基礎疾患のある妊婦は、特にインフルエンザ関連合併症のリスクが高くなる。妊娠女性はインフルエンザの合併症のハイリスクであるため、 the Advisory Committee on Immunization Practices and the American College of Obstetricians は、女性 [妊娠女性?] に対して 3価の不活化インフルエンザワクチン接種を受けるよう勧告している。現在感染循環する新型 flu ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害抗ウイルス薬である oseltamivir や zanamivir に対する感受性が認められている。無作為割付の外来患者に対する placebo 比較試験で、これらの薬剤は発症から 48時間以内に開始されれば、季節性インフルエンザによる症状の重症度と病期を抑制する効果が認められた。また季節性インフルエンザによる入院患者の観察研究による限られたデータから、発症から 48時間経過した後で開始された場合でも、oseltamivir による死亡率改善が認められている。さらに、oseltamivir と zanamivir は、感染への曝露直後に使用した場合、季節性インフルエンザの高い発症予防効果がある。妊娠中に使用された場合の安全性に関する情報はほとんどない (9.10)。しかし、これまでに得られている限られた情報と、妊娠中のインフルエンザ合併症によるリスクを考慮すると、この新型 flu に対して抗インフルエンザウイルス薬を使用することによってもたらされる利益は、胎児に与える可能性のあるリスクの影響を上回ると判断される。従って CDC の暫定ガイドラインでは、confirmed, probable, or suspected novel influenza A (H1N1) virus infection の妊娠女性に対して、5日間の抗ウイルス薬を内服するよう勧告している。妊娠中の zanamivir の使用も可能であるが、systemic absorption(全身性の吸収)の点で、妊娠女性の治療には oseltamivir がより望ましい。理論的には、呼吸器以外の場所(胎盤など)の 組織移行(吸収)が高まるほど、より効率的にインフルエンザの loads(負荷)が軽減され、母児間感染が防御されることになる。治療中の非妊娠女性への勧告同様、oseltamivir による治療は可能な限り早期に開始されるべきであり、理想的には発症から 48時間以内である。さらに 新型 flu の感染(確定・可能性・疑い)例の入院患者妊婦は全員、発症から 48時間以上経過している場合でも、oseltamivir の治療を受ける必要がある。可及的速やかな治療開始が肝要である。さらに acetoaminophen による妊婦の発熱の治療も重要で、高体温が胎児や新生児に様々な悪影響を及ぼす可能性がある。妊婦のケアを含む全ての医療現場において、最初に患者の発熱性の呼吸器疾患の症状についてのスクリーニングが必要であり、このような患者は直ちに隔離して診察を受けなければならない。外来や分娩室では、呼吸疾患のある患者や患者につきそう友人や家族の取り扱い手順を決め、実施すべきである。新型 flu 感染患者と濃厚接触のあった妊婦は、10日間の zanamivir もしくは oseltamivir による予防内服を行う必要がある。妊娠中の患者に対する予防内服に推奨される抗インフルエンザ薬は決まっていない。zanamivir では、より限定的な組織移行が見られる可能性があるという利点が考えられるものの、投与経路が吸入によるものであるため、咳や強度の鼻うっ血などの呼吸器症状がその有用性を制限してしまうかも知れない。患者Cの診察を行った妊娠中の医師は、曝露後直ちに予防内服を行っている。重症合併症のリスクの上昇があるため、novel influenza A (H1N1) virus 感染流行に対する公衆衛生対応として、妊娠女性を対象とした配慮が必要である。
妊娠女性とthe novel influenza A (H1N1) virus に特定される問題についての暫定的ガイドライン]
参考文献
[4] メキシコ- MOH update
 情報源: Secretaria de Salud website (MOH)[in Spanish]、2009年5月11日
[5] Canada - Public Health Agency of Canada (17:00 GMT -4) 
 情報源:Public Health Agency of Canada 、2009年5月12日
[6] News briefs: Tue 12 May 2009

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (27): case counts
Archive Number: 20090514.1800
[1] WHO - global updates (06:00 GMT) Influenza A (H1N1) - update 27 -- 13 May 2009 
 情報源: WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR) 、2009年5月13日
13日 06:00 GMT現在、33カ国で 5728人のインフルエンザ A(H1N1) 感染者が公式に報告されている。メキシコでは死者 56人を含む 2059人、米国では死者 3人を含む 3009人、カナダでは死者 1人を含む 358人、コスタリカでは死者 1人を含む 8人の感染が確定診断されている。
[2] PAHO - Americas regional update (17:00 GMT-4) 
[3] CDC - USA update (11:00 GMT -4) 
[4] メキシコ - MOH update (08:40 GMT -5) 
[5] カナダ- Public Health Agency of Canada (15:00 GMT -4) 
[6] News brief: Wed 13 May 2009

PRO/AH> Influenza A (H1N1): animal health (10) swine, Canada, cull
Archive Number: 20090514.1813
カナダ:動物衛生(10) ブタ、処分
[1] Alberta pig farm quarantined due to influenza A (H1N1) virus culls 500 hogs 
 情報源: The Canadian Press 、2009年5月9日
中部アルバータ Alberta 州ではブタの群れで新たな豚インフルエンザウイルスの感染が確認されたことから、養豚場 1個所で 500頭のブタが処分された。当局によると、ブタ生産者、政府および州当局者間の議論の結果、動物を処分する決定が下された。集団の繁栄にとって最良であり、農場の過密状態の緩和に役立つと述べられた。1700頭の全ての豚は今も隔離されている。保健当局者によると、検疫のため生産者はブタを市場に出荷することができず、結果として農場内は収容の限界状態となっていた。カナダでは 9日、新たに数人の豚インフルエンザ感染が報告され、全国の合計が 281人に達し た。
[2] Angry Alberta pig farmer urges entire cull 
 情報源: Pig Progress.Net、2009年5月14日
自らの農場で H1N1 が確認されたアルバータ州の養豚農家は、なぜ直ちに全頭処分されなかったのか理解できないと述べていることを、カナダの報道機関である CBC が報じた。小規模農場であり、皆の、さらには世界中の養豚産業全体の不安を取り除くべきだと、インタビューで述べた。すでに 9,10日以上経ってしまい、時間と金の無駄だと訴えた。この男性の飼育するブタ 2200頭は全て,インフルエンザ A(H1N1)ウイルスによる感染が確認された 4月後半にこの農場で隔離された。これらの家畜は、メキシコを旅行した建築業者から感染したと見られている。... 牧場の混雑解消のために 500頭だけ処分する指示を出した当局への怒りなど .. アルバー タ州の農業当局責任者は、the Canadian Food Inspection Agency 管轄の食の安全の問題ではないので、政府ではなく州が決定すべき問題であるとしながら、直ちに処分すべきかとの問いには、分からないと答えた。.
[Mod.AS− -- "to cull or not to cull" -- の命題は、20090506.1691 でも取り上げられている。処分や補償のない、届出疾患外の疾病であるという、法的側面も関与する決定である。他国でも同様の問題が生じる可能性があり、lesson, deserving study and conclusions としてとらえるべきである]

PRO/AH> Influenza A (H1N1): animal health (09), swine, Canada
Archive Number: 20090513.1790
 情報源:DEFRA, Global Animal Health - International Disease Monitoring. Preliminary Outbreak Assessment. Ref VITT 1200 、2009年5月6日
 [20090428.1604 の後の更新情報] 
導入 
カナダ政府当局は、カナダ・アルバータ Alberta 州のブタ farrowing(繁殖)/fattening(肥育)pig の1つの群れで発生した、新たな変異型インフルエンザ A(H1N1) の感染流行を報告してきた。この種のウイルスのブタの集団での初報告である。 同疾患はメキシコを旅行して 4月12日に帰国した 1人により持ち込まれた。2000頭以上いるブタのうち、450頭が発病した。24検体中 19検体で the influenza A matrix gene(マトリックス遺伝子)が、15検体で H1遺伝子が陽性であることが確認された。部分塩基配列解析により、マトリックス遺伝子では 100%、H1 遺伝子でも 99-100%の、米国とメキシコでヒトから分離されたウイルスの遺伝子塩基配列との相同性を有することが示された。2009年3月中旬以降、 北米各地でヒトでの感染循環を起こしている、この新型の変異インフルエンザ A(H1N1)ウイルスは、(英国を含む)欧州、南米、アジア、中東、 Australasia(オセアニア?)にまで広がっている。このインフルエンザは、基本的にヒトの間での感染が継続しており、ヒトでは一般的に軽症であるが、北米では死者も記録されている。 
状況評価 
the Canadian Food Inspection Agency and Veterinary Authorities(カナダ食品監視獣医学当局)による調査では、今回の事例はメキシコで休暇を過ごし帰国した農場労働者であるヒトからブタに感染した、弧発感染例であると結論づけられている。この労働者は 2009年4月12日にメキシコから帰国した後、インフルエンザ類似症状を発症した。4月14日には仕事に戻り、同14−29日の間に、この労働者、生産者、生産者の家族の全員が発症した。4月24日にはこの労働者は回復し、インフルエンザウイルスの検査は陰性であった。同日以降、ブタの間で食欲低下、発熱、呼吸器症状などの症状が見られ始めた。感染のあったブタは回復し、インフルエンザ感染と直接関係のある死亡発生していない。豚舎は隔離されている。診断のための詳細な検査が続けられている。EU Rules では、カナダから EU への生きたブタ、豚肉および豚肉加工品の輸出が認められている。TRACES(the European Electronic Trade Notification System 欧州電子取引報告システム)によると、過去 2ヶ月間にカナダから生きたブタが運搬された記録はない。ブタのインフルエンザ感染は、エアロゾルの吸入による。インフルエンザウイルスの中には、血中に入り、肉などの組織に侵入する能力をもつものがあることは事実だが、ブタのインフルエンザウイルス自然感染で確認されたことはない。ブタでの感染ではウイルス血症はおこさず、気道および所属リンパ節以外で、ウイルスは確認されない。従ってインフルエンザウイルスが、豚肉および豚肉加工品、またはブタの精液を通じて感染する可能性は極めて低い。欧州委員会 (EC) は、カナダ政府当局が適切な時期に適切な対策を行っている、との声明を発表している。この情報に照らし EC はカナダからのブタおよび豚肉加工品の取引上のルールを変更することはない。これは OIE の勧告にも沿うものである。1999年以来,英国および他の EU 圏内ではブタの間でのインフルエンザに対するサーベイランスが実施されている。 その結果によると、全ての豚インフルエンザウイルス株(による感染)は、時折、新たな株による動物間での流行が発生しながら、低レベルを保っているものの、今回の新型変異 H1N1 ウイルスはこれまでのところ、英国および EU では確認されていない。感染発生地域内のブタにおける真の感染発生状況は、今もかなり不透明である。現在メキシコに派遣されている OIE FAO からさらに詳しい情報が得られるものと思われる。... 
結論 
カナダからの合法的なブタおよび豚肉加工品の輸入による、英国への新型の変異インフルエンザ A(H1N1)導入の可能性は無視できないと考えている。現段階の EU の生きたブタと豚肉加工品の取引のルールは、疾患の導入リスクを減少させるためには適切なものと考える。もう 1つの英国内のブタにインフルエンザが持ち込まれる経路としては、感染者が養豚場もしくは養豚場の労働者に、直接または間接的に接触することによっておきる場合がある。感染国から最近帰国した畜産労働者、または感染症症状のあるもの、あるいはいずれにもあてはまる場合には、ブタや養豚場と接触すべきでない。このことはインフルエンザに限らず、多くの ヒトとブタに見られる疾患にあてはまる勧告である。当局は家畜業者に対して、on-farm biosecurity measures の強化を行い、自らの家畜を守ることをアドバイスしている。 There remains no requirement to alter current trade rules for pigs or pig products from Canada. 
参考文献 AQIS (1999) Porcine Semen Import Risk Analysis: Technical Issues paper. [Mod.AS−上記で触れられている "AQIS (1999)" には、2.3.17 "Swine influenza virus" の項がある。30ページの "Transmission via semen" では;豚インフルエンザの感染は、エアロゾルの吸入により成立する。豚インフルエンザウイルスはウイルス血症を起こさない。気道および所属リンパ節以外の組織でウイルスは確認されない。精液からウイルスが分離されたことはない、とされている。Hare らは、同ウイルスは精液中に存在する可能性があるものの、人工授精による感染は恐らく起きないだろうと述べている。動物のインフルエンザウイルス感染は、ネコの HPAI H5N1 ウイルス感染のようにしばしばウイルス血症がおきるが、(古典的)豚インフルエンザの場合は一般的にウイルス血症は起こさないようである。まもなく the Avian Influenza Community Reference Laboratory(at VLA, Weybridge, UK)が他の European laboratories と共同で行う予定とされる、様々な種の動物における新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスの疫学に関する実験的な研究の結果を、重大な関心を持って待っている。豚肉の安全性に関わる、ウイルス血症の問題に関しても評価が行われることが期待される]

● チクングニア マレーシア
PRO/EDR> Chikungunya (12): Malaysia (KH)
Archive Number: 20090514.1816
 情報源:Malaysian National News Agency (Bernama) 、2009年5月13日
チクングニア Chikungunya ウイルス感染症が the Pokok Sena and Pendang districts of Kedah(ケダ)で確認されているが、さらに Kota Setar and Padang Terap の 2つの地区にも広がったと保健当局者が述べた。Kampung Baru (the Kota Setar district)で 2例が確認されたのをはじめ、 Kampung [village] Baru Naka, Kampung Padang Kerasak, Kampung Tong Plu, Kampung Banggol Pong, Kampung Padang Setol, and Kampung Malau (the Padang Terap district) でも複数の症例が報告されている。当局は噴霧消毒による蚊族対策を実施していると声明の中で述べた。自宅周囲の清掃も呼びかけられている。農家やゴム採集者らに対しては、長袖シャツと長ズボンをはいて原因ウイルスを伝播する蚊族の刺咬を避けるよう、アドバイスが行われている。 
[Mod.TY− Kedah 州では依然としてチクングニアウイルス感染伝播がくすぶっており、最近ではタイ国境を越えて広がっている。10日の ProMED- mail (20090511.1752) では、今回の報告のあった地域とほぼ同じ地域で、チクングニアウイルスが疑われる原因不明の疾病患者が報告された。上記報告では新たな患者はチクングニアウイルス感染によるものと確認されている]

● 鳥インフルエンザ,ヒト エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (88): Egypt (SA), 70th case
Archive Number: 20090514.1814
 情報源:Reuters News 、2009年5月14日
エジプトで4才の男児が、高病原性 H5N1 鳥インフルエンザ Avian influenza ウイルスに感染し、アラブにおける人口最多国で 70例目の鳥インフルエンザ感染症例となった。エジ プトは、アジアを除いて最も深刻な鳥インフルエンザの被害が発生しており、最近患者数の増加が見られている。2009年4月1日以降、2008年1年間の患者数を超える 10人の新たな感染者が報告されている。最新のウイルス感染患者は、ナイルデルタ地域の Sharkiya 県の住民である。鳥インフルエンザがヒトに感染することはまれだが、専門家らはヒトの間での感染が容易な型に変異し、パンデミックが発生することを懸念している。およそ 26人のエジプ ト人が、このウイルスに感染して死亡した。患者の多くに感染のある家禽との接触があった。発病した家禽から感染したと見られるこの男児は、高熱とインフ ルエンザ症状のため入院した。抗ウイルス薬タミフル oseltamivir で治療され、状態は安定している。
[Mod.CP- この 70例目の患者もまた、20090507.1708 で取り上げられた年齢特異性パターンに一致する] 
地図 Sharkiya province (no. 23) 

● クリミア・コンゴ出血熱−トルコ
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Turkey: (SS)
Archive Number: 20090514.1808
 情報源:Today's Zaman 、2009年5月14日
黒海沿岸の Samsun 州の the 19 Mayzs University Medical Faculty Hospital 病院で治療中のクリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo hem. fever CCHF 患者 2名が 10日死亡したと報じられた。82才の女性と 55才の男性であった。動物に感染することの多い CCHF はダニにより感染伝播する。ヒト以外にヒツジやウシにも感染し、早期に診断・治療されない時には死亡する可能性がある。2002 年にトルコで初めての感染が確認されて以来、毎年多くの患者が死亡している。2008年、トルコでは CCHF により 55人が死亡し、6年間の CCHF による死者は 147人となった。
地図 Samsun

● 日本脳炎 インド
PRO/EDR> Japanese encephalitis - India (UP): susp, RFI
Archive Number: 20090513.1789
 情報源:China.com, Xinhua News Agency report 、2009年5月9日
2009 年初以来、州都 Lucknow に隣接する地区で Japanese encephalitis [JE 日本脳炎] が疑われる 38人死亡が発生している北部 Uttar Pradesh 州で、衛生上の注意が強化されていることを 9日政府高官が明らかにした。Maharajganj 地区で 38人が日本脳炎で死亡し、他の地区でも発生した疑いがあると、州の保健副部長が述べた。地区内ではほかに 170人以上が病院で治療中であると説明した。日本脳炎は蚊族が媒介するフラビウイルス属の日本脳炎ウイルス感染による疾患で、飼育されているブタや野鳥がウイルスの宿主であり、ヒトが感染すると重篤な症状が見られる可能性がある。 
[Mod.TY−インドの Uttar Pradesh 州では JE virus が地方病感染している。この 39人の患者の発生が、季節性の感染流行が始まりを意味するのか、JE ウイルス感染シーズンの最中の少数または散発例なのか、わからない。入院中の 170人の JE 症状の有無も明らかではない。しばらく注意が必要である。JE はアジアでは重要な公衆衛生上の問題で、年間 3−5万人の患者が発生している。JE ウイルス感染の多くは不顕性である。致死率は 30%で、生存患者の 30%に神経学的後遺症を残す] 
地図 India showing the location of Uttar Pradesh state

● 牛結核 米国,英国(2件)
米国
PRO/AH> Bovine tuberculosis - USA (02): (ND)
Archive Number: 20090514.1811
 情報源:Farm & Ranch Guide 、2009年5月11日
南西部ノースダコタ North Dakota 州の結核 Bovine tuberculosis が疑われる感染流行が集中する地域のウシの群れは、結核に感染していないことが確認され、隔離が解かれた。

英国
PRO/AH> Bovine tuberculosis - USA (02): (ND)
Archive Number: 20090514.1811
[1] Bovine TB in other species shows 4-fold increase 
 情報源: Farmers Weekly Interactive、2009年5月12日
ウシ以外の種の牛結核 Bovine tuberculosis 感染症例が激増していることが、DEFRA の統計で明らかになった。2008年中に 8種 119頭の動物が  _Mycobacterium bovis_ に感染した。2007年の 4倍増で、1昨年は 30例以下であった。最も増加が著しいのはシカで、2007年にはわずか 1頭であったものが、2008年には 34頭の感染が記録された。ヤギは 2頭から 33頭に、ブタは 5頭から 10頭にそれぞれ増加し、イヌ、ネコ、アルパカ、ラマ、ヒツジでの感染も増えてい る。
[2] Bovine tuberculosis in England: towards eradication 
 情報源: DEFRA (UK Department for Environment, Food, and Rural Affairs), Animal health & welfare、2009年5月14日

● 鳥インフルエンザ LPAI 米国
PRO/AH> Avian influenza (LPAI), poultry - USA (05): (TN)
Archive Number: 20090514.1810
 情報源:Meat Process.com 、2009年5月7日
テネシー Tennessee 州の 15000羽の breeder のニワトリが、検査で軽症型の鳥インフルエンザ Avian influenza が確認されたために処分された。この家禽は Tyson Foods 社との契約で飼育されていたものであるが症状はなく、ヒトの健康への影響もない。検査で確認されたのは H7N9 インフルエンザ抗体で、アジアなどで確認されている H5N1 高病原性鳥インフルエンザではなかった。テネシー州で発生したこの感染流行は、H1N1豚インフルエンザウイルスとも関係は ない。

● コーヒーの病気,Wilt disease ウガンダ
PRO/PL> Wilt disease, coffee - Uganda: update
Archive Number: 20090514.1807
 情報源:The New Vision (Uganda) 、2009年5月12日
Coffee wilt により robusta 種のコーヒー生産量が 50%減少したと、ウガンダ当局者が述べた。40年前に植えられた 1億5千万から 3億本の robusta 種のコーヒーの木が感染したことを明らかにした。2002年以降、政府当局は 8500万本の植樹を行ってきた。同国のコーヒー輸出高は、米国、中国、エジプトなどの市場を相手に、2002年の 8400万米ドルから2008年には 3億8千8百万米ドルに増加している。
[Mod.DHA− Coffee wilt disease (CWD, 別名 tracheomycosis) は、真菌の _Gibberella xylarioides_ を原因とする。商業栽培されている 2種類のコーヒー _Coffea arabica_(arabica or highland coffee) と _Coffea canephora_ (robusta or lowland coffee) のうち、robusta だけに発生する。いずれの成長段階にあっても感染が発生し、 100% 死滅する]  

● 小麦の病気,Stripe rust 英国
PRO/PL> Stripe rust, wheat - UK (02): new strain
Archive Number: 20090514.1806
 情報源:Farmers Weekly Interactive、2009年5月6日
新たな種類の Solstice wheat に感染する yellow rust の調査が行われている。前回の the United Kingdom Cereal Pathogen Virulence Survey (UKCPVS) シーズン中に種々の株から採取された検体で、苗に対しても毒性があることが確認された。Solstice やその他の種の小麦に、どの程度 \の感受性があるかについて、成木から分離された菌の検査を行っている。

● 豚熱(豚コレラ)ベルー
PRO/AH> Classical swine fever - Peru: (LB)
Archive Number: 20090514.1799
 情報源:RPP (Peru) [in Spanish]、2009年5月12日
The National Agrarian Health Service (国立農業衛生局 Senasa、Lambayeque ランバイェケ)は、Morrope 地区で豚熱 Classical swine fever 感染流行が発生し、およそ 17頭のブタが死亡したが、現在は鎮静化したと報告した。