2009年5月19日

インフルエンザ A(H1N1) 重症例 MMWR

● インフルエンザ A(H1N1) 
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (36): case counts, amended
Archive Number: 20090519.1882
[1] WHO - global update 
 情報源: WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR)、2009年5月18日
Influenza A(H1N1) - update 33 -- 19 May 2009 感染研情報センター(訳)  
[2] PAHO - Americas regional update (18:00 GMT-4) 
[3] CDC - USA update 
a. updated case count 
b. Hospitalized Patients 
 情報源: MMWR 18 May 2009 / 58(Early Release);1-5 、2009年5月18日
Hospitalized Patients with Novel Influenza A (H1N1) Virus Infection -- California, April-May, 2009 
2009 年4月15日および17日に初めての新型インフルエンザ Novel Influenza  A(H1N1)感染が、南部カリフォルニア California 州の 2郡で確認されて以来、米国とメキシコを中心に世界中で新型インフルエンザ A(H1N1)感染患者が報告されている。米国では新型インフルエンザ A(H1N1)感染関連疾患の初期報告によると、重症度は季節性インフルエンザと変わりなく、ほとんどの患者は入院を必要とせず、概ね基礎疾患のある患者でまれに死亡が報告されることが示唆されている。
17日現在、カリフォルニア州では全 61地方保健管轄地域中 32ヶ所から 553例の新型インフルエンザ A(H1N1)患者が報告されて おり、このうち 333例が確定例、220例が可能性例であった。553例中 30例が入院となった。州内では新型インフルエンザ A(H1N1)感染に関連した死亡例報告されていない
17日現在の 30例の入院患者の総括と、疾患の重症度のばらつきや潜在的リスク要因を示す、4人の患者についての詳細な報告を行う。この暫定的な総括において、新型インフルエンザ A(H1N1)に感染して入院した患者のほとんどが、合併症を併発することなく回復しているが、一部の患者に重症かつ遷延化が見られた。すべての新型インフルエンザ A(H1N1)による入院患者に対して、注意深く監視し、発症から 48時間以上経過してから医療機関を受診した患者も含め、抗ウイルス薬による治療を行う必要がある。
入院患者の概要 
2009年4月20日の発生以来、the California Department of Public Health (CDPH 州公衆衛生局) と Imperial および San Diego 両郡の衛生当局は、この 2郡内にある 25の病院すべてにおいて、病院感染対策医師と協力して、検査で確定された新型インフルエンザ A(H1N1)症例と可能性例の入院患者に関する、強化サーベイランスを開始した。3日後の 2009年4月23日、CDPH はこのサーベイランスの対象を州全体に広げた。患者報告はprobable 可能性 (H1亜型ヒトインフルエンザウイルスか、H3亜型ヒトインフルエンザウイルスかの型判定ができない、real-time reverse transcription-polymerase chain reaction [rRT-PCR]法により、インフルエンザAが確認された症例と定義される)、または confirmed 確定例 (CDC protocol for rRT-PCR for novel influenza A H1N1の陽性例と定義される) として行われた。*unsubtypable とされたカリフォルニア州の検体の 96%が、最終的には CDC または the CDPH Viral and Rickettsial Disease Laboratory (VRDL) において、新型インフルエンザ A(H1N1)であることが確認されている。この報告で入院患者とは、新型インフルエンザ A(H1N1)の可能性例または確定例で、24時間以上入院した患者とする。
30人の入院患者のうち 26例は確定例、4例が可能性例 (確定検査中) であり、2009年4 月3日から 5月9日にかけて発症している。患者が報告されたのは 11の郡からで、そのほとんどが州南部または中部であった。最も患者数が多かった (15 例、50%) のは San Diego and Imperial の両郡であった。人種が明らかな 26例の患者のうち 17例 (65%) が Hispanic である。患者の年齢は生後 27日から 89歳までで、平均年齢は 27.5歳であり; 21人 (70%) が女性だった。4例の患者 (13%) には発症までの 7日間以内のメキシコへの渡航歴があった。30例の患者の中で、ブタもしくは新型インフルエンザ A(H1N1)感染が確認されている患者と接触があった患者はいなかった。
入院時の診断で最も多かったのは肺炎と脱水だった。19人 (64%) に基礎疾患があり; 主なものとして、慢性肺疾患 (喘息、慢性閉塞性肺疾患 COPD)、免疫不全に関係する疾患、慢性心疾患 (先天性心疾患、冠動脈疾患)、糖尿病、肥満があげられる。主な症状は発熱、咳、嘔吐、息切れがあり; 下痢症はまれ uncommon であった。胸部レントゲン撮影のある 25例のうち、15例 (60%) 肺炎を疑う異常影が認められ、うち 10例は多葉性、5例は単葉性浸潤影であった。6例が集中治療室に入院し、4例は機械的人工換気を必要とした。5例の患者が妊婦であり、うち2例は自然流産と前期破水の合併症を併発した;胎児はそれぞれ、妊娠 13 週と 35週であった。院内でインフルエンザ Aの検査が行われた 24例のうち、迅速抗原検査で陽性だったのは 16例で、5例が陰性だった; 3例は他の検査法 (direct immunofluorescent antibody 直接免疫蛍光抗体法 [2 patients] とウイルス培養 [one patient]) で陽性となった。
30例ではいずれも、血液、尿、喀痰培養(挿管中の患者では気管内吸引もしくは気管肺胞洗浄液培養) において、二次性細菌感染の微生物学的徴候は認められなかった。
15例 (50%) に oseltamivir による抗ウイルス治療が行われた; 5例では、発症から 48時間以内に治療が開始されている。抗ウイルス薬による治療が行われなかった 15例のうち 6例は、発症から 48時間以上経過してからの受診だった。病歴が判明している 22例のうち、6例 (27%) は季節性インフルエンザワクチンを接種されていた。2009年5月17日現在、23例が退院して自宅に戻っている;(退院した患者の) 平均の入院期間は 4日間 (1-10日間) である。7人の患者が今も入院中であり、平均入院日数は 15日間 (4-167日間) である [上記 URLの表参照]。 
症例報告 
○ 症例3:生後5ヶ月の女児で、2008年12月前半に、子宮内発育遅延に、動脈管開存と心室中隔欠損の先天性心疾患を伴った、妊娠27週の早産児として生まれた。出産後の NICU 入院中にも  bronchopulmonary dysplasia 気管支肺形成異常と respiratory distress syndrome 呼吸窮迫症候群により長期の機械的人工換気や複数回のステロイド療法を必要とし、敗血症と肺炎を繰り返し、慢性貧血と血小板減少症を発症するなど、困難な入院経過を辿っていた。5ヶ月になるまでに人工呼吸器からはずれ、高流量鼻カニュラ酸素吸入で落ち着いていた。しかし、入院第 150日目に、新たな喀痰を伴わない咳と発熱が発生し、胸部レントゲン写真では右肺に新たな浸潤影が認められ、次第に両肺野が真っ白になった。複数の血液、尿、喀痰 培養が行われたが、原因不明のままであったが; インフルエンザ A迅速抗原検査は陽性で、のちに the CDPH VRDL において novel influenza A (H1) であることが確定された。児の感染源調査は現在進行中である。患児は再び挿管され、発熱の 3日後より、広域スペクトラムをもつ抗生物質と oseltamivir (kg 体重あたり 2mg、12時間毎) が開始されている。2009年5月14日現在、危険な状態が続いている。 
○ 症例 16; 生来健康であった、妊娠 28週の 29歳の女性が、2009年4月26日に救急室を受診した。10日前から熱感、痰をともなう咳、悪化する息切れが あった。初診時に異常のあったバイタルサインは軽度発熱 (37.6℃)、呼吸数 38回/分、血圧 112/57、心拍数 104/分、 room air での酸素飽和度 87%であった。胸部レントゲン撮影で両側肺門部の間質性浸潤影と縦隔リンパ節腫大が認められた。全血および生化学検査は、白血球増多11400(segment好中球分画 42%、bands 45%、リンパ球 9%) を除き、すべて正常だった。この患者は ICU に入院し、広域スペク トラムの抗生物質 (azithromycin and ceftriaxone) による治療が開始された。複数回行われた血液・尿・喀痰の細菌培養では有意な結果は得られず;インフルエンザ Aの迅速抗原検査が陽性となり、後に CDPH VRDL において新型インフルエンザ A(H1N1)が確認された。この女性には抗ウイルス薬治療は行われなかった。女性は次第に回復し、9日後に amoxicillin を服用しながら退院となった。 
○ 症例18; 閉塞性睡眠時無呼吸の既往のある 32歳の男性が、3日間続く発熱、悪寒、喀痰 を伴う咳を主訴に、2009年5月5日に救急受診した。患者は、めまいがあり、副鼻腔炎と診断され、2週間前から amoxicillin を服用していたと報告している。体温37.3℃、血圧89/58mmHg、心拍数 84/分であった。胸部聴診所見では、両側とも吸気良好であったが、胸部レントゲン撮影では、両側の浸潤影が確認された。全血および生化学検査では、白血球増多(13800、segment好中球94%、リンパ球4%) を除き、正常だった。動脈血液ガス分析結果より、呼吸性アシドーシスと pO2 of 80 mm Hg on room air の低酸素血症が判明した。この男性は ICU に入院の上、empiric の広域スペクトラム抗生物質が開始され、第2病日に低酸素血症が悪化し、気管内挿管が必要となった。入院初期の細菌学的検査 workup とインフルエンザ迅速抗原検査は陰性であった; 入院第2日より oseltamivir が開始されている。2回目の迅速抗原検査と、気管支肺胞洗浄液のウイルス培養で、インフルエンザ Aが陽性となり、後に新型インフルエンザ A(H1N1)であること が確認された。患者の状態は回復し、第5病日には抜管され、10日目に退院した。 
○ 症例29; 最近乳がんの診断を受け、腹腔内転移の可能性があり、高血圧症、糖尿病、冠動脈疾患、心血管性疾患、慢性腎障害、肥満があるなど、多くの医学的問題を抱える 87歳の女性が、2009年4月21日に意識を失っているところを娘に発見されて救急室に搬送された。入院する 2日前から発熱、咳、衰弱が始まっており、起坐呼吸と両側下肢腫脹が新たに認められたと報告されている。この女性は車椅子を使用しており、最近旅行したことはなく、患者との接触も確認されていない。救急室において発熱はなく、血圧は 57/37mmHg、脈拍57、呼吸数14/分、room air 下の酸素飽和度 87%であった。心電図上、Q波のない心筋梗塞が疑われた。胸部レントゲン撮影では両側性の肺炎と、心拡大を伴ううっ血性心不全が認 められた。異常検査所見として、白血球 13400、Hct 34%の軽度貧血、軽度のクレアチニン上昇 (1.8mg/dl)、ALT 36U/L AST 160U/L、トロポニン (29.43ng/ml)と CK (653IU/L)の著明な上昇が認められた。患者は呼吸停止に至り、気管内挿管が行わ れ、低用量ドーパミンの投与が開始され、心筋梗塞・うっ血性心不全・肺炎と敗血症の疑いの診断で ICU に収容された。胸部CTスキャンで、右中葉の完全無気肺、両側上葉のすりガラス陰影、および両側性胸水が認められた。その後に行われた気管支鏡検査では、右下葉気道内にカリフラワー様腫瘤が確認された。複数回行われた血液、尿、喀痰検査では異常が認められず; 迅速抗原検査でインフルエンザ Aが陽性となった; 後に CDPH VRDL で新型インフルエンザ A(H1N1)であることが確認されている。現在も集中治療が行われているが、危険な状態が続いている。 
MMWR編集部注
California 州の新型インフルエンザ A(H1N1) による入院患者の初期サーベイランスによると、患者の大半 majority が短い入院期間後に退院していることが分かる。基礎疾患のない生来健康であった患者は、合併症を起こすことなく回復し、平均在院日数 2.5日(1−7日) で退院した。入院した患者の 1/3に胸部レントゲン撮影で多葉性浸潤影の異常が認められたものの、oseltamivir による治療が行われたのはわずか 9%であり; それでもほとんどの患者が良好な経過を辿っている。5人の妊婦のうち 2人の妊婦は重篤な予後となった; しかし、先行の新型インフルエンザ A(H1N1) 感染がどの程度影響したかは不明である。California 州の入院患者の一部が重症化し、長期間の入院となっている。注目すべきことと して、ICU に入院となった同州の患者 6例中 3例は、長期に渡り今も集中治療が必要な状態にある。これらの患者の極端な年齢条件や複数の衰弱性の基礎疾患が、重症度の要因となっている可能性がある。慢性の基礎疾患および妊娠は、季節性インフルエンザでも合併症の重大なリスクとされてきたが、(症例18 の)軽度の慢性肺疾患以外は比較的健康に問題のなかった1例では、集中治療と機械的人工換気が必要となった。どのような集団が、新型インフルエンザ A(H1N1) 感染による入院と重篤な予後に関するリスクを有するのかについては、さらにデータが必要である。2009年4月27日以降、5月15日までに、California 州の公衆衛生研究所に提出されたおよそ 11600人の臨床検体中 9% が rRT-PCR 法でインフルエンザ A陽性であり、こ のうち 23%が季節性インフルエンザ A/H1、28%が同 A/H3サブタイプと鑑別された。この結果から California 州全体では、今も季節性インフルエンザウイルスも感染循環しており、インフルエンザ類似症状を呈し、迅速抗原検査では陽性の結果が出る可能性がある。今回の series(患者のうち)では、迅速抗原検査が行われた中で 67%が陽性となったものの、主に外来において検査を受け、CDPH VRDL で確定診断された患者の事例報告によれば、偽陰性や偽陽性の結果がでることも多いことが示唆されている。このため CDPHは、州内においては rRT-PCR 法によるインフルエンザウイルス検査の重要性を強調している。州内の医師に対し、発熱性呼吸器疾患で入院もしくは死亡した患者について、気道の検体を公衆衛生研究所に提出し、rRT-PCR testing, subtyping およびウイルスの特徴の解析を行うよう呼びかけている。
[4] Mexico - MOH update 09:00 GMT-4
[5] News brief: 19 May 2009

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (36): case counts
Archive Number: 20090519.1881



● ダニ媒介性脳炎 ロシア
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Russia: (IK), susp.
Archive Number: 20090519.1879
 情報源:Teleinform News Agency [translated]、2009年5月14日
the Irkutsk(イルクーツク)Oblast では、小児 217人を含め合計 918人がダニによる刺咬のために医療機関を受診した。昨年 2008年 同時期の受診者は 699人であった。最も多く刺咬が発生したのは Irkutsk city, Irkutsk district, Angarsk, and Usolye-Sibisrk である。イルクーツク公衆衛生サーベイランスセンターからこの情報が出された。
小児 3人を含む合計 9人が暫定的にダニ媒介性脳炎 Tick-borne encephalitis と診断され入院となった。このほか 4人が boreliosis(ボレリア症)と診断され入院中であり、さらに 4人の患者がダニ媒介性リケッチア症と診断されている。boreliosis の1人と ricketsiosis の 2人は確定診断された。1週間に 425匹のダニで病原体検査が行われ、23体が tick-borne encephalitis virus を、 72体が borelia を保有していた。 
[Cor.BAP- ロシアの公衆衛生当局者は、温暖な気候になり週末に郊外で余暇を楽しむ人が増えるにつれてダニ刺咬の報告が増加する、と関連づけている。医療センターでは tick-borne encephalitis virus infection に対するワクチンが提供されており、5月末までに 125 000人以上(小児 86?人を含む)がワクチンを接種された。Irkutsk は地方病感染地域であるためこれだけでは不十分で、レクリエーション地域からのダニ排除の努力も併せて行われている] 
地図 Irkutsk Oblast  

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト H5N1
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (91): Egypt (DQ) 72nd case, 27th death
Archive Number: 20090519.1876
[1] 情報源: Strengthening Avian Influenza Detection & Response (SAIDR)、2009年5月18日
4歳の女児が 9日発病した。17日に肺炎のため Mansoura Chest Hospital に入院となった。18日に鳥インフルエンザの感染が確認された。病気の家禽との接触があったことが報告されている。18日にこの少女は死亡した。保健省によると、エジプトで 72例目の高病原性鳥インフルエンザ H5N1の患者となった。 
[2] H5N1 human death no. 27 
 情報源: Egyptian Chronicles、2009年5月19日
Dakahlia Governorate の 4歳の子供が H5N1のため死亡したと、保健省が発表した。この女児の死亡は、国内の H5N1による 27人目の死亡となった。 9日に発病していたが、入院は 17日になってからだった。[18日に] H5N1 陽性が確認されたが、その後死亡した。 
地図 Dakahlia Governorate (no. 7) 

● リンゴの病気,Scab disease−オーストラリア
PRO/PL> Scab disease, apple - Australia: (WA)
Archive Number: 20090519.1880
 情報源:Donnybrook-Bridgetown Mail、2009年5月14日
Western Australia's (WA 西オーストラリア) のフルーツ栽培農家は、同地域の apple scab に困窮している。apple scab は、葉や果実に感染する真菌の病気で結実できなくなる。同疾患の排除状態は、2008年前半に Mount Barker で感染流行が発生したことで失われた。 
[Mod.DHA− Apple scab は black spot とも呼ばれ、真菌の _Venturia inaequalis_ を原因とし、世界中のリンゴにとって最も経済上重要な疾患と考えられている。この菌は _Malus_ 種だけに感染し、同じ属の他の真菌は違う果実に scab を発生させることが知られている]

● トマトの病気,Late blight 米国
PRO/PL> Late blight, tomato - USA: (AL)
Archive Number: 20090519.1875
 情報源:The Birmingham News 、2009年5月16日
2009 年春のアラバマ Alabama 州全域の寒冷・湿潤気候が、例年発生することのなかった真菌疾患に非常に好適な条件となり、今年(2009年)は問題化して いる。この病気は "late blight" と呼ばれている。数日間で、区画内のトマトやポテトが壊滅する可能性がある。 
[Mod.DHA− Late blight of tomato and potato は真菌類似の病原体である  _Phytophthora infestans_ を原因とし、作物が全滅する場合もある]