2009年5月20日

エーリキア症 米国

● エーリキア症 米国
PRO/AH/EDR> Ehrlichiosis - USA: (MO)
Archive Number: 20090520.1887
 情報源:Moberly Monitor-Index 、2009年5月18日
2009年4月後半に今年初めての患者が確認され、ミズーリ Missouri 州のダニシーズンが公式に始まった。初めての感染はセントルイス St.Louis の南に住む 80歳代の女性1名に発生した。この第 1例患者は入院したが、その後退院して回復している。この女性が感染したのは ehrlichiosis [エーリキア症あるいは human monocytotropic ehrlichiosis] と呼ばれる疾患で、治療されないままだと腎不全となる可能性がある。
Ehrlichiosis は the lone star tick が伝播し、突然の発熱と頭痛で発症する。患者はしばしば、倦怠感や筋肉痛、その他のインフルエンザ類似症状を訴える。直ちに治療が行われない場合、死亡する可能性がある。この疾患は、成人でも小児でも抗生物質 doxycycline で治療可能である。
昨年(2008年)も第1例目の患者は 4月後半に報告されたが、ダニ刺咬によって記録的なダニ媒介性疾患が発生した。州衛生当局の統計によると、2008年のミズーリ州では 668例のダニ媒介性疾患が発生し、2007年と比べ およそ100例増加した。州の住民 1000人あたり 11人のダニ媒介性疾患との計算になる。ミズーリ州で最も一般的なダニ 媒介性疾患は Rocky Mountain spotted fever(ロッキー山紅斑熱), ehrlichiosis, and tularemia(野兎病)である。重症化しやすい 50歳以上の年代ではとくにダニのチェックは重要である。 
[Mod.ML− 偏性細胞内グラム陰性リケッチア類似細菌である _Ehrlichia chaffeensis_ を原因とする Human monocytotropic ehrlichiosis (HME) は、_E. chaffeensis_ の自然保有宿主であるシカ white-tailed deer の爆発的増加と、ベクターダニである _Amblyommaamericanum_ (キララマダニ)の生息域の拡大と個体数増加の結果、新興した感染症である。_A. americanum_ が広く生息する米国南東部および中南部に蔓延する。南東部ミズーリ州は _E. chaffeensis_ の white-tailed deer-lone star tick 間の感染サイクルと、感染性ダニの刺咬への曝露があるという点で、米国南東部のほとんどの農村地帯と同じ環境にある。
南東部ミズーリ州で 3年間に渡って行われた 1件の研究では 3日間の発熱(37.7℃以上)とダニ刺咬もしくはダニへの曝露があり、他の感染症の診断がついていない患者 102人のうち、29人(28.4%) が HME 感染の確定もしくは可能性例であったことが示されている。
確定例の定義とは、a) PCR 検査陽性で、血清中免疫グロブリン IgG値が1:64(64倍)未満から 1:64以上に上昇、もしくは b) PCR陽性なしで IgGの血清陽転 (4倍以上) があり 1:128以上、または c) 2つの別々の検査機関で行われたか、または 2つ以上の遺伝子をター ゲットにした PCR が陽性、d) 1回の血清 IgG抗体価が 1:256以上、のいずれかを満たすものである。可能性例とは、a) single IgG titers of 1:64 or 1:128, or b)  positive PCR results in one laboratory for only one target gene とされた。
この研究において、1997、1998,1999年の計算上の HME 発生件数はそれぞれ、人口 10万人あたり2,4.7, 3件であっ た。臨床症状や検査所見としては、発熱 (100%), 頭痛 (72%), 筋肉痛・関節痛 (69%), 悪寒(45%),weakness衰弱 (38 %), 嘔気 (38%), 白血球減少(60%), 血小板減少(56%), AST上昇 (52%) が見られた。41%の患者が入院した。
米国内では _Borrelia burgdorferi_ (Lyme disease の原因菌), _Anaplasma phagocytophilum_ (a rickettsia-like の微生物で以前 _Ehrlichia phagocytophila_ と呼ばれ human granulocytic anaplasmosis の起因菌) および _Babesia microti_ (babesiosis の起因菌) が、共通の節足動物のベクター _Ixodes scapularis_ を共有する。このダニは white-footed 別名 'deer' mouse (_Peromyscus leucopus_) と共生して、自然界でこれらの病原体を継続して保有する。
これらの微生物に起因する疾患は、北東およびupper Midwest 中西部の北?米国内で、この限定されたダニが多く見られる共通の地理的分布を有し;_I. scapularis_ が感染伝播する疾患のいずれかに感染した患者は、同じベクターに伝播される他の疾患にも同時に感染する可能性がある。ダニベクターが異なるため、HME 患者が _B. burgdorferi_, _A. phagocytophilum_, or _B. microti_ に共感染する可能性は低い] 
The Infectious Diseases Society of America and the CDC、MMWR 2006; 55(RR04); 1-27 
写真
Lone star tick (tick _Amblyomma americanum_) 
Blacklegged tick or deer tick (_Ixodes scapularis_) 
White-footed or 'deer' mouse (_Peromyscus leucopus_)


● インフルエンザ A(H1N1) 
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (37)
Archive Number: 20090520.1893
[1] Vaccine development delay
 情報源: Los Angeles Times 、2009年5月20日
 WHO は 19日、H5N1インフルエンザウイルス用ワクチンの製造に必要な the seed stock(種株 シード株)の準備に、当初予想されていたより長い時間がかかっていることを明らかにした。いわゆる豚インフルエンザ感染流行について話し合うため、ジュネーブ Geneva で開かれている 1週間にわたる会議の中で、世界保健機関は研究室内でのウイルスの成育スピードがそれ程早くないと述 べた。このことは、ワクチン製造メーカーの生産開始が早くても 2009年7月中旬となることを意味する。WHO の当局者は当初 2009年5月末までには製造メーカーへのシード株配給が可能との見方を示していた。シード株が製造メーカーに手渡された後、ワクチン生産までにおよそ 4−6ヶ月間を要する。The U.S. Centers for Disease Control and Prevention (CDC 米国疾病対策センター) は、自ら保有している H1N1のシード株を 2009年5月末までにワクチンメーカーに配布する予定であり、このための準備は、"still on track(順調に進んでいる)" であると 19日に広報担当者が述べた。少数の H1N1 ワクチンロットによるヒトでの臨床治験が、早ければ 2009年7月後半か 8月には可能となるであろうと述べている。WHO と CDC 双方とも、製造メーカーに対する H1N1ワクチン製造開始の承認(go-ahead )は出していない。 
[2] Vaccination policy
 情報源: FluTrackers.com 、2009年5月18日
世界的に有名なウイルス学者である Albert Osterhaus 教授は、欧州最大の感染症会議の参加者らに対して、インフルエンザ A(H1N1)の感染流行はヒトのインフルエンザにとって間違いなく、過去40年間の中で最重要課題であると語った。同時に、現在の H1N1 の脅威は深刻であることを強調した。ロッテルダム Rotterdam にある the Erasumus Medical Centre のウイルス学部長であり、1997年には鳥インフルエンザ(H5N1)のヒトでの感染確認作業をリードした同教授は、ブタ由来インフルエンザに直面したときに行うべmedical preparedness(医療対策)には、3つの重要な要素があると説明した:
Good surveillance and diagnostics(適切なサーベイランスと診断)
effective treatment/antiviral therapy(有効な治療/抗ウイルス治療
予防の基本である vaccination(ワクチン接種)
である。しかし同氏は、今回のインフルエンザウイルス流行経過中に、予想外の事態がおきることも想定し準備しなければならないとも警告した。同氏は、ヘルシンキ Helsinki で開催されたthe European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (ECCMID) のプログラムに追加された the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (ESCMID) と雑誌 The Lancet が共同で企画した late breaker session で発表した。 A (H1N1) vaccination の問題について言及し、全てのインフルエンザワクチンの製造について改善の余地があると述べた。さらに良いものでなければならない と、科学・医療・製薬の各産業からの代表者に対して注文をつけた。インフルエンザワクチンの生産システムと生産能力については、A(H1N1) ワクチンの開発如何に関わらず、改善の必要があり、現在の生産能力では約 10−20億人分を守ることができるが、世界中の人口はおよそ 67億人であり、まだ十分とは 言えないと述べた。臨床医の立場から今回の感染流行に焦点を当てた、ESCMID の新しい議長でバルセロナ Barcelona の Hospital Mutua Terrassa の医学部長である Javiar Garau 教授は、ブタ由来インフルエンザの治療を優先する考えを強調した。われわれは経験上、インフルエンザでは肺炎の形をとることもある二次感染が致命的となる可能性があることを知っている。このことから、抗ウイルス薬だけでなく、十分量の抗生物質を備蓄することも、対策の中に含めるべきだと主張した。The Lancet Infectious Diseases の編集長は、ウイルスを甘く見ては行けないと述べ、Osterhaus 教授が指摘したように、感染流行が突然姿を消す可能性は低く、ウイルス感染の拡大に目を光らせていなければならないとした。 

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (38): case counts
Archive Number: 20090520.1895
[1] WHO - global update 
[2] PAHO - Americas regional update (18:00 GMT-4) 
[3] CDC - USA update 
[4] Mexico - MOH update 09:00 GMT-4 
[5] Canada - Public Health Agency of Canada (17:00 GMT -4) 
[6] News briefs: 19 May 2009

● チクングニア タイ
PRO/EDR> Chikungunya (16): Thailand (south)
Archive Number: 20090520.1894
 情報源:Bangkok Post 、2009年5月19日
Trang 県で 500人以上がチクングニア Chikungunya に感染したことから、当局はタイ南部の住民に対し蚊族発生個所の除去に努めるよう呼びかけている。19日、衛生当局者は 500人以上いるチクングニア感染患者の多くが Muang および Yan Ta Khao 地区出身であると述べた。 雨期に入り蚊族の活動性が増しているため、住居周辺の水たまりを取り除くよう求めた。夜間の蚊帳の使用や忌避剤も勧められている。チクングニアは感染性の蚊族によりヒトに伝播するウイルス性疾患である。生命の危険はないが、デング熱に似た症状である。チクングニアの感染患者は、強烈で長期間持続する関節痛に苦しむ。 
[Mod.YMA− この記事の中で Trang 県でのチクングニア感染流行が報告されている。これ以前にはプーケット Phuket 県で確定患者 4人が出た感染流行が発生した  (20090513.1792)。タイ当局のサーベイランス報告(タイ語)によると、南部の 10県から 17946人の患者が報告されている。Trang 県は合計 95例を報告しており、2009年1月2例、4月 92例、5月 1例となっている] 

● Murray Valley encephalitis オーストラリア
PRO/AH/EDR> Murray Valley encephalitis - Australia (06): (NT)
Archive Number: 20090520.1892
 情報源:ABC News、2009年5月20日
The Northern Territory's Health Department 当局は、2009年の 2例目となる、死亡する可能性のある蚊族媒介性疾患のマレーバレー脳炎 Murray Valley encephalitis [MVE] の患者がダーウィン Darwin の海岸付近で釣りをしていたことを明らかにした。男性の家族は年齢を含め、プライバシーを侵害しないよう求めている。男性は the Royal Darwin Hospital に入院し、状態は安定している。この最新の感染例は,2009年3月に Darwin の農村地帯で MVE に感染し脳機能不全で死亡した 58才のマンゴー栽培農業労働者の死亡発生に続いて起きた。当局者は Territorians (住民)に対し、長袖の着衣と特に日没後には沼地を避けるよう、注意を呼びかけている。 

● 麻疹 ロシア
PRO/EDR> Measles, adult cases - Russia: (KX)
Archive Number: 20090520.1891
 情報源:IA Interfax-Siberia [translated]、2009年5月14日
Krasnoyarsk で 2年ぶりとなる、成人の間に発生した麻疹 Measles 感染症例が報告された。Russian Sanitary Surveillance [public health] center (SSC) の専門家らが 5人の患者を確認した。当局によるとこの患者らは中央アジアからの移民労働者との接触により麻疹に感染したものと考えられている。5人の患者同士の接触はなく、居住地 neighborhoods も異なっていた。5人の患者が発生したことから、結果的に感染流行と見なされた。全員が感染症病院に入院中である。疫学者らは、小児期に麻疹に対するワクチン接種を受けていない [従って麻疹に免疫がなく、ワクチン接種の対象となる] 人の確認作業を 行っている。 
[Corr.VM− 1ヶ月前に Krasnoyarsk は、麻疹排除都市宣言を行う計画であった。Krasnoyarsk では 1例の麻疹患者も発生していないため、SCC 当局は measles-free city を宣言する証書の獲得を目指していた。同市の主任疫学担当者はインタビューで 18−35 才までの 36350人が、麻疹ワクチン接種前に麻疹に感染していなかったことを明らかにした。2004年以降は、ワクチン接種後に散発発生例が報告されるだけであり; 2008年、患者発生が皆無であるとの記事 が出された。Krasnoyarsk で 5人の患者が発生した結果、成人に対して、選択的な麻疹ワクチン接種計画の実施が望まれる]

● A型肝炎 ロシア
PRO/EDR> Hepatitis A - Russia: (BK)
Archive Number: 20090520.1890
 情報源:Susanin News Portal [in Russian]、2009年5月20日
2009年4月中旬以降、Ufa 市内で A型肝炎 Hepatitis A ウイルス感染例の発生増加が見られる。11日から 17日までの 1週間に、患者117人が条件付きで A型肝炎と診断された。the Bashkiria Branch of Rospotrebnadzor [Federal Service for Consumer Affairs and Human Welfare] 当局は、5月初め以降およそ 200人が A型肝炎により入院となったことを明らかにした。いずれの患者も 4月中旬に感染した。2009年4月後半、"Farmlend" network の従業員 17人が同疾患と診断され入院した。3月6日の集会に参加中に感染したものと見られている。Bashkiria において過去の最も新しい A型肝炎ウイルス感染の大規模発生は 2004年のことで、当時 353例の患者(人口10万人あたり32.7人)が発生した。2008年には Ufa で 41人が感染した。2009年の第一四半期に、Bashkiriaの首都において、12人が感染した。報道によると、例年の発生数を上回る数ではないとされてい る。
[Mod.CP- 感染源は特定されていないが、水系感染ではなく、食品もしくはヒト-ヒト間の接触によるものと見られる] 

● 天然痘ワクチン 米国、副反応
PRO/EDR> Smallpox vaccination, adverse events - USA: prog. vaccinia
Archive Number: 20090520.1886
 情報源:CDC. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2009; 58 (early release); 1-4 、2009年5月19日
Progressive vaccinia (PV) は、かつて vaccinia necrosum,vaccinia gangrenosum, or disseminated vaccinia と呼ばれており、生のワクシニアウイルスを用いて製造された天然痘ワクチン接種後に発生する、まれだが死亡することも多い副反応であ る。
最近行われたワクチン接種プログラム中に発生した PV 疑い症例について調査が行われたが、いずれも標準の症例定義に一致しなかった。
米国では 1987年以降、PV が確認されたことはない。2009年3月2日、ある米海軍病院から CDC の the Poxvirus Program  に対して、天然痘ワクチンを接種された男性兵士1名の PV が疑われる症例についての報告があった。この兵士 service member は、新たに急性骨髄性白血病 acute myelogenous leukemia M0 (AML M0) と診断されていた。化学療法後の好中球減少による発熱の精査中に、天然痘ワクチン接種から 6.5週間が経過していた接種部位が無痛性に拡大し、治癒傾向が見られないことに気づかれた。臨床学的・検査学的調査により、このワクチン被接種者は the Brighton Collaboration and CDC adverse event surveillance guideline case definition for PV (4,5) に合致することが確認された。本報告ではこの患者の長期間にわたる臨床経過を要約し、....