インフルエンザ A(H1N1) 交差反応性抗体 MMWR
腎症候性出血熱 トルコ Eurosurveillance,ロシア
● インフルエンザ A(H1N1)
● リーシュマニア症 イラク
● 旋毛虫症 フランス、セネガルから
● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト
● ココアの病気,Black pod コートジボワール
● インフルエンザ A(H1N1)
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (39)
Archive Number: 20090521.1903
情報源:MMWR Weekly 58(19);521-524 、2009年5月22日
2009年5月19日現在、全米で 5469例の新型インフルエンザ Influenza A(H1N1) ウイルス感染患者が、確定または可能性例と診断されている。さらに 41カ国で 4774例が報告されている。新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス用ワクチンの開発には数ヶ月を要するため、季節性インフルエンザワクチンが、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに何らかの防御作用を示すかどうかの判断が重要となる。
そこで CDC は、ワクチンの研究用に保存されていた、 2005-06, 2006-07, 2007-08, or 2008-09 インフルエンザシーズンの、ワクチン接種前後の小児と成人の血清検体を用いて、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスへの交差反応性抗体レベルについて調査した。
この結果、ワクチン接種前には、小児においては、新型インフルエンザ A(H1N1) への交差反応性のある抗体は確認されなかった。
成人においては、接種前の 18−64才の年齢層の 6-9% に交差反応性抗体が認められ、60歳以上では 33% に認められた。
4回のシーズンのいずれかに、季節性インフルエンザ 3価不活化ワクチン (TIV) もしくは生ワクチン (LAIV) を接種されていても、小児では新型インフルエンザ A(H1N1) に対する交差反応性抗体反応は誘導されていなかった。成人では、季節性 TIV ワクチン接種により、18−64才の年齢層において新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスへの交差反応性抗体反応が 2倍に増加し、60(65?)歳以上では、"季節性"インフルエンザ H1N1 ウイルスへの交差反応性抗体反応は 12−19倍に増加したものの;新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスへの反応の増加は見られなかった。
これらのデータから、最近(2005−9年)接種された季節性インフルエンザワクチンが、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対して防御作用のある抗体反応を誘導する可能性は低いことが示唆された。今回の新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対する公衆衛生対応目的に、各支援機関から提供された血清検体は、 1) 北半球の 2005-06, 2006-07, 2007-08, or 2008-09 influenza seasons 用に開発された TIV を筋肉注射された、もしくは
2) 北半球の 2005-06 or 2006-07 influenza seasons 用の LAIV を筋肉注射された提供者からの血清である。 ...
Microneutralization (MN) および hemagglutination inhibition (HI) assays は、CDC において通常の手順に従って行われた。今回の研究に用いられた the seasonal influenza A (H1N1) viruses (A/New Caledonia/20/1999 [2005-06 and 2006-07], A/Solomon Islands/3/2006 [2007-08], and A/Brisbane/59/2007 [2008-09]) は、ワクチン製造と同じく、有精鶏卵上で増殖させた。The novel influenza A (H1N1) virus A/California/04/2009 を Madin-Darby canine kidney cells で培養し、全ての行程はbiosafety level 3 practices に則って biosafety level 2 laboratory で行った。The HI assay には 0.5%turkey red blood cells が使用された。血清検体は receptor-destroying enzymes で処理された。血清中の nonspecific agglutinins は、heme-adsorbed の上、10:1 の初期希釈で検査が行われた。MN assay のために 56℃ 30分の加熱によって不活化し、initial dilution of 1:10 で検査が行われた。geometric mean titer (GMT 幾何学的平均抗体価 ?) は、10未満の titer を 5、1280以上を 1280 とした。統計的有意差の検定には paired t-test を用いた。(原文で内容をお確かめ下さい)。まず 6−9才の小児 28人、18−59才の成人 30人、60歳以上の患者 42人の血清について、HI と MN アッセイ間の初期比較を行った。...
MMWR 編集部注:
本研究結果から、近年(2005−9年)に行われた季節性イン フルエンザワクチンが、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対する防御効果を付与する可能性が低いことが示唆された。季節性 TIV の成人への接種が、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス抗体をわずかに増加させる結果が得られたが、そのレベルの交差反応性抗体が、どの程度の防御効果を示すかは不明である。これらの結果は、ブタ由来である新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスと、最近の季節性ヒト H1N1 ウイルスとの間に、かなりの遺伝学的相違があることと一致する:
今回調べられた中で、A/California/04/09 [=新型インフルエンザA(H1N1)] と、季節性インフルエンザウイルスとの間では、わずか 72-73%しかアミノ酸が一致していなかった。因みに本研究で用いられた季節性インフルエンザワクチンウイルス株間の HA1 タンパク内のアミノ酸配列の相同性は 97-98%であった。今回の分析で調べられた小児の血清数は少ないが、得られた数々の結果から、米国内の小児は概ね新型インフルエン A(H1N1) ウイルスに naive(初めて接する)状態であり、季節性 TIV および LAIV によって、測定可能なレベルの新型ウイルスへの交差反応抗体は誘導されていなかった。成人で得られた結果によると、ある程度の新型インフルエンザ A(H1N1) に対する免疫が、すでに獲得されている可能性があり、特に 60歳以上で可能性が高いことが示唆された。考えられる1つの説明として、この年齢の成人の一部は、遺伝子や抗原性の点で現在の季節性インフルエンザウイルスよりも新型インフルエンザ A(H1N1) により近いウイルスに、感染もしくはワクチン接種を通じて、以前に曝露していた可能性があることがあげられる。異なる年代における交差反応性抗体反応に対する評価が進められており、ある特定の年齢集団において、とくに交差反応性血清反応がより明確に示されることが判明するかも知れない。すべての年代の人々が、ウイルスに対する最良の防御効果を獲得するためには、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルス株に特異的なワクチンの開発が必要である。
[Mod.CP- 成人への3価の不活化季節性インフルエンザワクチン接種によって、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対する抗体がわずかに増加したとしても、そのような交差反応性抗体がどの程度の新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスへの防御効果を示すかは不明である。また新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対して、特に 60歳以上の成人で、ある程度の免疫が以前から獲得されていることから、現在の新型インフルエンザ A(H1N1) により近い H1N1 ウイルス株にかつて曝露していた可能性が示唆されている。結局、この報告によれば、最近(2005−9年)に季節性インフルエンザワクチンを接種されていても、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対しての予防効果は期待できないということである。全ての年齢層に最適な防御効果を付与するために、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに対する strain-specific vaccine の開発が望まれる]
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (40): case counts
Archive Number: 20090521.1906
[1] WHO - global updates (06:00 GMT)
[2] PAHO - Americas regional update (18:00 GMT-4)
[3] CDC - USA update (11:00 GMT -4); hospitalized cases
[4] Mexico - MOH update (09:00 GMT-4)
[5] News briefs
● ポリオ
PRO/EDR> Poliomyelitis - worldwide (05)
Archive Number: 20090521.1905
[1] ケニア Kenya
情報源: The Standard、2009年5月20日
衛生学の専門家らは(ケニア)国内でこの衰弱性疾患の感染流行が発生する危険がないわけではないと警告した。およそ 30万人の小児らに定期予防接種が行われていないことも明らかにした。この UNICEF 関係者は 19日、緊急の抗ポリオ Poliomyelitis 対策にもかかわらず、同ウイルスは今も感染循環がつづいていると話した。4月19日に最新のウイルス確認があり、キャンペーン対策の効果に疑問が投げかけられていると説明した。2009年2月に2人と報告されていたポリオ感染は、3月に8人となり、現在13人となっている。第3回目のポリオワクチン接種キャンペーン開始に際して、ワクチン接種のカバー率低下を憂慮する旨の発言を行った。Turkana District で野生株ポリオウイルスの感染が診断された13人の小児のうち、10人はワクチンを接種されていなかった。2009年2月に同地区でのポリオ感染流行が報告され、13人の小児に麻痺が残った。... WHOは、ケニアの野生株ポリオウイルスは、スーダン由来であると報告している。政府当局は Rift Valley, Central and Nairobi provinces の42個所を、ハイリスク地区としている。専門家らは、今回のポリオ流行により 1984年以来の状況が脅かされていることを懸念している。2009年の早い時期に初めて報告されたポリオ感染症例は 2才と4才の小児であった。感染拡大を阻止するための3つの緊急キャンペーンが、ケニ ア、ウガンダ、エチオピアで相次いで実施された。ケニア政府当局は、新たなポリオ感染症例の発生増加が報告されている北部の隣国からの、ポリオ感染輸入のリスク増大に向き合っている。
[2] Worldwide update
情報源: Polio Eradication Web site、2009年5月19日
[3] Religious objection to vaccination
情報源:Emerging Infectious Diseases (EID) 、2009年5月21日
Muslim 原理主義者の宗教上の理由による拒絶により、ナイジェリア・パキスタン・アフガニスタンにおけるポリオワクチン計画が不成功に終わっている大きな要因である。パキスタンのトライバルエリア tribal area での宗教紛争は、ポリオワクチン接種の最大の障壁となっている。疫学当局は,パキスタンと国境を接する国内南部に集中するアフガニスタンのポリオ蔓延地区からの、野生ポリオウイルス感染伝播を確認している。この感染伝播(拡大)が、これまでポリオ清浄地区とされていた地区での新たなポリオ患者 発生につながっている。地域のタリバン Taliban は、ワクチン接種がアメリカによる Muslim 集団浄化計画であると非難する fatwas(イスラムの解釈)を発出している。ほかにも過激派が広めた迷信として多いのが、ワクチン接種はアラー Allah の意志に背く試みだとするものがある。タリバン は、トライバルエリアのワクチン接種を計画した責任者も含めた当局者らの殺害も行っている。接種担当者らの誘拐や beatings(追い出し?) もしばし ば報告されている。ナイジェリアやアフガニスタンでもイスラム過激派による妨害が行われ、特に 2003年のナイジェリアの Kano で激しく、その結果、 アフリカの中でかつてポリオの発生がなかった 8カ国で、再び感染が起きている。
● リーシュマニア症 イラク
PRO/AH/EDR> Leishmaniasis - Iraq (MA)
Archive Number: 20090521.1904
情報源:Alertnet citing IRIN 、2009年5月21日
約 200人のリーシュマニア症 Leishmaniasis 患者が、バクダッド Baghdad の南約 350kmにある、南部 Missan [Maysan] 地方で報告された。19日に現地当局者が明らかにした。都会と農村部双方を含む州内各地から、年齢も様々な 190例のリーシュマニア症患者を登録している。現在感染は制御されつつあり、発生地域の監視が続けられている。リーシュマニア症は Baghdad boil、oriental sore, Aleppo button, Jericho boil and Delhi boil とも呼ばれている。最重症型の内臓リーシュマニア症では、臓器不全や死亡に至ることもある。メスのサシチョウバエ sand fly による刺咬で感染が伝播される。イヌなどの動物も感染し、ヒトへの感染源となる。特定の齧歯類が主要な保有動物と考えられている。発生地域の住民は、野外や衛生状態の悪い中で睡眠をとる傾向に ある。WHO によると、リーシュマニア寄生虫のうち、約 20種類の species or subspecies に感染性があり、発熱、全身倦怠、体重減少、貧血や,内蔵型では脾腫や肝・リンパ節腫大などの原因となる。最も多い型である皮膚リーシュマニア症では、1−200個所の単純な皮膚病変が認められ、数ヶ月で自然治癒するが、醜い跡が残る。潜伏期間は最大6ヶ月で、医師によると多くの人々が知らずに感染している可能性があると言う。
[Mod.EP− イラクではリーシュマニア症が広く蔓延しており、ProMED-mail では 2008年5月に南部の州からの報告を行っている。sandflies が感染伝播を行い、small rodents が reservoirs の役目を果たしている。感染予防対策は vector and rodent control である]
● 旋毛虫症 フランス、セネガルから
PRO/AH/EDR> Trichinellosis, warthog ham - France ex Senegal
Archive Number: 20090521.1902
投稿者:仏・Hopital Cochin, Descartes University、Jean Dupouy-Camet, MD, PhD、2009年5月21日
少なくとも 3例については確定診断されている旋毛虫症 Trichinellosis の小流行が、2009年3月にフランスで発生した。それぞれ異なる地域に住む 3人の患者は warthog の燻製ハムを食べて感染した。検査ができるハムは残っていない。いずれの患者も 2009年2月中旬に同じ St Louis du Senegal(地名? ホテル名?) ホテルに宿泊している。2009年3月中旬には、通常の臨床的・生物学的症状(発熱、顔面と四肢の腫脹、筋肉痛、好 酸球血症)が認められている。全患者とも血清学的検査 (ELISA and western blot) は陽性で、1人は抗体陽性が確認されている。心または神経合併症は発生していない。1人だけ入院し、いずれの患者も albendazole により治療された。これまでのところ warthog の関係する他の感染流行は報告されていない。このフランス人患者らが感染したセネガルのホテルは、欧州各国からの宿泊客を受け入れている。1960年代に 9人の患者が発生して以来、セネガルの旋毛虫症発生が報告されており、1970年の調査によると、450頭の warthog の 4% に旋毛虫が蔓延していることが報告されている。隣国のギニアでは _Trichinella britovi_ が検出されているが、検査された 10頭の warthogs からは _Trichinella_ は検出されなかったとの報告がある。
[Mod.EP − ヒトおよび動物の _Trichinella_ infections が 960年代にセネガルから報告された (Gretillat & Chevalier. Receptivity of the warthog (_Phacochoerus aethiopicus_) to the West African strain of _Trichinella spiralis_ [in French]. C R Acad Sci Hebd Seances Acad Sci D. 1969 Dec 15; 269(24): 2381-3). 2005年から始まった調査では、ギニアの _T. britovi_ from guinea が確認されている (Pozio E et al. _Trichinella britovi_ etiological agent of sylvatic trichinellosis in the Republic of Guinea (West Africa) and a re-evaluation of geographical distribution for encapsulated species in Africa. Int J Parasitol. 2005; 35: 955-60, abstract)。おそらく smoked warthog ham は、trichinellosis の検査なしにフランスに輸入されている]
● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (92): Egypt (DQ) 73rd, (SJ) 74th
Archive Number: 20090521.1901
[1] 最近の症例
情報源: Strengthening Avian Influenza Detection & Response (SAIDR)、2009年5月20日
Governorate: Sohag, District: Sohag, 74th case
3.5 才の男児1名に 17日から発熱と咳の症状があり、18日から Sohag Chest Hospital に入院した。20日、鳥インフルエンザの感染が確定された。病死した家禽との濃厚な接触歴が報告されている。20日の時点で容態は安定しており、カイロ Cairo の Manshiyet El Bakry Hospital に搬送された。保健省はこの症例がエジプトで 74例目の高病原性鳥インフルエンザ Avian Influenza 患者であると発表した。
Governorate: Dakahlia, District: Sherbin, (73rd case)
4 才の男児1名が 18日から発熱し、同日 Mansoura Chest Hospital に入院した。20日、鳥インフルエンザの感染が確定された。病死した家禽との濃厚接触が報告されている。20日の時点で全身状態は良好で、カイロ Cairo の Manshiyet El Bakry Hospital に搬送された。保健省は、この症例がエジプトで 73例目の高病原性鳥インフルエンザ患者であると発表した。
[2] Two Egyptian boys contract bird flu
情報源: Reuters News 、2009年5月20日
エジプト人の男児 2名が H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染し、アラブで最も人口の多いこの国の患者は合計 74人となったと 20日に報道され た。エジプトは、アジアを除いて最も鳥インフルエンザの感染が深刻な国で、最近では 2009年4月1日以降に患者の増加が見られ、新たに 14人が感染し、4人が死亡している。これは 2008年の1年間の総患者数を超えている。the Nile Delta [Dakahlia] 在住の 4才の男児 1名と、南部 Sohag の 3才の男児1名が、高熱のため入院となったが、Tamiflu による治療を受け現在容態は安定していると伝えられている。保健省当局者の話として、いずれの男児にも鳥インフルエンザ感染が疑われる鳥類との接触があったことが報じられている。これらの新たな感染は、同ウイルスによって、4才の女児1名が18日に死亡した数日後に発生した。これでエジプトでは 27人が鳥インフルエンザによって死亡したことになった。エジプトの感染者のほとんどが、国内の感染のある家禽との接触後に発病している。エジプトでは、およそ500万世帯が食糧源と収入源として家禽の飼育に依存している。
地図 the governorates of Egypt
● 腎症候性出血熱 トルコ,ロシア(2件)
トルコ
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fever with renal syndrome - Turkey (04): (BR, ZO)
Archive Number: 20090521.1900
情報源:Eurosurveillance edition 2009; 14(20)、2009年5月21日
要約:
トルコ国内において、2009年1月から5月の間に臨床診断と血清学的検査で診断され、検査により確定された 12例の haemorrhagic fever with renal syndrome (HFRS 腎症候性出血熱) 患者に関する、予備報告を行う。保有宿主集団の動向と、疫学的特徴およびヒトにおけるリスク因子を理解するため、現在も調査が続けられている。
結語:
2009年、IFA [immunofluorescent assay 免疫蛍光アッセイ] および immunoblotting techniques(免疫ブロッティング法)により、12人の HFRS 患者が確認された。血清学的検査において Puumala 亜型ハンタウイルス陽性であったが、ハンタウイルスの亜型間では、血清学検査においてしばしば交差反応性が見られることも考慮しなければならない。加えて generic(通常の)ハンタウイルス RT-PCR 検査の結果は陽性ではなかった;このため、塩基配列解析を行えなかった。(陰性となった)理由として、ハンタウイルス感染のウイルス血症の期間が非常に短かい可能性が考えられる。本研究のもう 1つの制限事項として中和反応検査が行われなかったことがある。ある発生地域でリスク集団にある健常者の間において、血清ハンタウイルス抗体陽性率 5.2% の結果が得られた、今回の予備結果から、このウイルスは地域内で感染循環していることが示された。今日まで、無症状もしくは軽症の非特異的症状が見られた感染があることで、真のハンタウイルス感染者数より少なく報告されていた可能性がある。今回の血清疫学的研究結果について統計学的解析を完了し、今後のトルコにおける研究と調査の計画に役立てる必要がある。現地の齧歯類の種類のリストアップ、齧歯類間で感染循環するハンタウイルスの血清型の確認、齧歯類とヒトから分離されたウイルス株の分子学的特徴を明らかにして周辺諸国の株と比較、ヒトのハンタウイルス感染の感染経路(メカニズム)と時間的空間的広がりの調査、などが計画されている。ハンタウイルスによって多数のヒトが発病 し、世界的な公衆衛生上の脅威となっている。トルコでこのウイルスが確認されたことは、周辺諸国における感染循環があることから不思議ではない。発生地域におけるハンタウイルスの包括的な感染防止対策として、衛生教育、啓蒙活動、齧歯類対策とサーベイランスなどが実施されている。例を挙げると、家屋の 内外の齧歯類侵入防止と捕獲や死亡した齧歯類の安全な廃棄のためのガイドラインを市民に配布した。
出典:Ertek M and Buzgan T 21 May 2009: An outbreak caused by hantavirus in the Black Sea region of Turkey, January-May 2009. Eurosurveillance, 14 (20).
[Mod.TY− 筆者は the IFA and immunoblotting techniques を用いた検査で Puumala ウイルスの血清学的陽性が示されたが、他のハンタウイルスとの cross-reactivity が除外できなかったと述べている。2009年4月20日の投稿 (20090420.1495) の中で Prof Heikki Henttonen は、"Dobrava virus in _Apodeus flavicollis_ は the Balkan region においてよく知られた重症化する病原体で、この齧歯類は国内に多く見られる (ありふれている)。重症度から判断すると Dobrava virus or a Dobrava-like virus である可能性が考えられる。 _Myodes glareolus_ (the host of Puumala virus) は、トルコ国内の黒海の北部沿岸地域でも見られるため、同ウイルスによる可能性もある..." と述べている]
地図 Turkey indicating the area where human cases of hantavirus infection were reported in January-May 2009
ロシア
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fever w/renal synd - Russia (06): (PZ)
Archive Number: 20090521.1897
情報源:IA "TV-express" [in Russian]、2009年5月13日
ペンザ Penza 地方の医師らは hemorrhagic fever with renal syndrome (HFRS 腎症候性出血熱)に懸命に対応しているが、13日現在の状況は悪化している。暖冬と人々の不始末から、事態改善の努力は報われないままとなっている。Territorial Management of Rospotrebnadzor [Federal Service for Consumer Affairs and Human Welfare] の責任者は HFRS、レプトスピラ症、野兎病,の直接の原因はゴミの投棄だとしている。2008年の HFRS 患者数は 350人であった が、2009年にはすでに 122人に達している。農村部の住民の感染の主な感染源は投棄されたゴミであるが、他の地域の感染リスクは齧歯類の生息・繁 殖の場である、余暇や野外活動用の country cottages(小屋)の乱立である。春や夏になって初めての掃除をする際に、ホコリを吸い込まないよう、wet cleaning(湿らせて掃除を行い)、マスクを着用するよう、アドバイスしている。
[Mod.CP- The Penza region は 1939に成立した。the Russian Federation に属し、モスクワ南東の the East European plain に位置し,温帯地方にある。地域内の気候条件は様々で: 北東地域のおよそ半分は森林に被われているが、一方、南西部は the typical Russian steppe(ステップ)気候である。平均気温は、夏は +18.5 deg C、冬は -11 deg Cとなる]
地図 the Penza Region (Oblast)
● スイカの病気,Gummy stem blight 米国
PRO/PL> Gummy stem blight, watermelon - USA: new strains
Archive Number: 20090521.1899
情報源:University of Georgia College of Agricultural and Environmental Sciences、2009年5月14日
Watermelon の栽培農家は、何よりも gummy stem blight [GSB] の発生を恐れる。対処法としては、米ジョージア Georgia 大の植物病理学者は毎年 GSB 感染流行がどのような形で開始されているかについて、地域内で解明する努力を指導してきた。GSB は一旦発生すると、特に熱い湿った気候下では、封じ込めは困難であると説明されている。... ジョージ ア州は top watermelon-producing state の1つである。農家はアジア、南米、オーストラリアで育った種子を移植している。この際に(海外で)使用される殺真菌剤についてはよく判っていないため、GBS が耐性となっている可能性もある。
[Mod.DHA− Gummy stem blight of cucurbits は the fungus _Didymella bryoniae_ を原因とする]
● 鳥インフルエンザ FAO
PRO/AH/EDR> Avian influenza (37): world update, FAO
Archive Number: 20090521.1898
[1] H5N1 HPAI global overview February 2009
情報源: FAO AIDE news, Avian Influenza Disease Emergency Situation, Update 59, 20 May 2009, 17 pages [extracted ]、2009年5月20日
[Mod.AS− この総括では、導入として 2009年2月に世界中で 8カ国(バングラディシュ、中国、エジプト、インド、インドネシア、ラオス、ネパール、ベトナ ム)から公式に 250件の家禽の H5N1 HPAI 感染流行が報告されたと述べられている。国別および各国内地域別の流行/症例数が graphically に示されている。さらにアフリカ、南アジア、中央アジア、東南アジア、ヨーロッパの、それぞれの状況が詳細に報告されている。複数の表や図が使われている全体の総括は上記 URL で参照されたい。この FAO の報告は 2009年2月に作成されたため、最近おきた1つの重大な出来事、すなわち 5月の中国の青海省における野生の渡り鳥の大量死については記載されていない。ここでは the final 'conclusions' paragraph を掲載した]
結語:
2003年以降 62の国と地域で H5N1 HPAI 感染流行が発生した。家きんでの感染流行に対して有効な対策を実施することが、各国におけるヒトでの感染流行の減少につながっている。しかし、アジアとアフリカ(エジプト)の各地で、家禽の間に H5N1 HPAI が定着し、ヒトでの感染リスクが残されたままであり、地方病感染があると見られる 2カ国で、5月も 5人のヒトでの感染が確認された。過去のデータから、感染流行と症例数のピークは家禽の流行数でも患者数においても 1月から3月にかけてピークがある。実際 2009年2月が今シーズンのピークとなっている。世界中の HPAI 感染状況について、公式報告や一部の国の不十分な調査だけを元に、完全な疫学的解析を行うことは困難である。HPAI はもっと大きな範囲に蔓延し、多く発生しているに違いない。ある期間、HPAI の発生を報告していなかった数カ国が、この数ヶ月間は感染流行に見舞われてい る。それはカンボジア、中国、インド、タイである。これらの国々で新たな感染が発生したのは、感染が再導入されたためか、ウイルスが低レベルで存続していたためかは分からない。2009年2月は、2008年2月と比較して、感染発生国数(8 vs 11)、感染流行数 (86 vs 116) とも、ほぼ同じ活動性であったことが確認された。しかし、2006年2月および 2007年2月と比較した場合、2009年2月の HPAI 感染の活動性は著しく低かった。2006年2月は特に活動性が高く(33カ国で 292件の感染流行数)、欧州全域に動物での大流行が発生したことを反映している。疾患に関する啓蒙活動は進んでいるが、未だに多くの国や地域において獣医学当局による適切で有効な HPAI サーベイランス能力に限界があり、補償制度も十分ではないため、過少報告される結果となっている。最近、2006年前半のナイジェリアでの新興から 2008年前半までに、11カ国で分離されたアフリカの H5N1 HPAI ウイルスの系統発生解析に関する報告 [subscription required] が発表された。この研究グループは、アフリカのウイルス株 67検体からの 494個の遺伝子の全塩基配列を作成し、アフリカ・欧州・中東で 2006年から 2008年前半までに分離されたウイルスから得られた 1152個の A/H5N1 塩基配列に対する分子学的解析ツールとして用いた。ウイルスの 8分節を詳細に系統発生解析を行ったところ、3種類の異なる sub-lineages が導入され、定着し、この 2年間にアフリカ大陸全域に拡大したことが確認された。さらに分子疫学的研究により、多くの症例で、遺伝学的集積と発生由来地との間に関連性が認められることが明らかにされた。特定地域内で分離されたウイルス株に特有の分子学的痕跡 signatures により、A/H5N1 ウイル スの大陸全体への感染拡大が、より明確に描き出されることとなった。内部タンパクをコードする遺伝子や宿主適応に関連する遺伝子内に、ヒトインフルエンザウイルスに典型的とされる変異が認められ、また抗ウイルス薬への耐性増加も確認されている。これらの発見により、このような遺伝学的特性をもったウイルスがもたらせるヒトへの健康リスクの可能性が懸念されるため、アフリカ全域の H5N1 ウイルスの変化に対し、より一層、監視を強化する必要があることがはっきりと示された
[2] ブタ、トリ、ヒトのインフルエンザウイルスの関係
情報源: FAO AIDE news, Avian Influenza Disease Emergency Situation, Update 59, 20 May 2009, 17 pages [extracted]、2009年5月20日
鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、ヒトインフルエンザウイルスは、いずれも Orthomyxoviruses という同一のクラス [網] のウイルスに属する。H1N1 ウイルスも H5N1 も A型ウイルスの亜型であり、増殖後に宿主の感染細胞からウイルスの遊離を助ける the neuraminidase 1 (N1) protein をもつ。これらのウイルスにはいくつかの類似性が認められるものの、ヒトで新興した H1N1 ウイルスが、そのまま家禽で循環する HPAI H5N1 ウイルスと関連づけられることはない。鳥インフルエンザウイルスは、野鳥や、時には家禽でも感染循環する。高病原性 H5N1 を含め、一部の亜型は哺乳動物に感染することがあり、その中にはヒトも含まれている。豚インフルエンザウイルスはブタの集団内で感染循環し、多くはないが、時に鳥類やヒトにも感染する。ヒトのインフルエンザはヒトの集団内で循環し、ヒトからヒトに感染する。ヒトのインフルエンザウイルスは、動物、特にブタにも感染可能である。 従って、ブタはトリやヒト由来のウイルスを保有し、これらのウイルスの "mixing vessels(混合培養器)" として働く。ブタに感染させたヒトの例として、2009年5月2日にカナダのCFIAから、Alberta州のブタで H1N1ウイルス感染が確認され、メキシコから帰国しインフルエンザ症状が見られた作業員のウイルスに曝露した可能性が高いとの報告がなされた。... イ ンフルエンザ A(H1N1) の感染伝播(ヒト−動物もしくは動物−動物間)リスクを減少させるため、FAO はブタの呼吸器疾患に対するサーベイランスを強化し、全ての呼吸器症状は直ちに獣医学当局に報告するよう勧告した。どのようなブタであれ、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスが確認された場 合、OIE および FAO の国際機関に報告しなければならない。さらにブタの呼吸器疾患が認められれば、診断が確定するまで移動制限も必要である。インフルエンザ A(H1N1)が確定診断された場合、最後の症例の回復後 7日間は移動制限を続けるべきである。豚インフルエンザに感染したブタは、健常なブタから隔離し、回復を待つ; 感染したブタの処分は不要である。動物を取り扱う場合は、人獣共通感染病原体の感染リスク軽減のため、手袋を着用すること。ブタと直接関係のある仕事に就くものは、呼吸器疾患、発熱やインフルエンザ類似症状が見られる場合は、就業すべきでない。ハイリスク地域では関係当局の許可があれば、ブタに現行ウイルスに有効な豚インフルエンザワクチンを使用することができる。
[Mod.AS− the FAO overview on HPAI H5N1 によると、現在バングラディシュ、中国、エジプト、インド、インドネシア、ラオス、ネパール、ベトナムで感染循環が起きているとされる。ということは、特にブタにおける H5N1 と新型インフルエンザ A(H1N1) の共感染が発生しうる国々であると言える。これまでのところ、新型インフルエンザ A(H1N1) ウイルスは 41カ国から報告されており、このうち H5N1 発生国は、中国とインドの 2カ国である。"ブタの呼吸器疾患に対するサーベイランスの強化と、全てのブタの呼吸器症状の、国際獣医学機関当局への迅速な報告が必要" との FAO の指摘は、特にこの 2カ国にとって、とりわけ重要な意味を持っている]
● ココアの病気,Black pod コートジボワール
PRO/PL> Black pod, cocoa - Cote d'Ivoire: alert
Archive Number: 20090521.1896
情報源:Reuters Africa 、2009年5月12日
何週間もの湿潤気候のあとの 4日からの週に、コートジボワールのココア栽培地域には豪雨が降り続き black pod disease 発生の危機が高まっている。雨期に発生しやすい Black pod disease によって、2008年10月から 2009年3月までの最盛期に、世界最大の栽培国での収穫が脅かされている。ココア栽培地帯の中心地である西部 Soubre 地方では先週100.5mmの降雨があった。例年のこの時期の降水量は 14mmである。... 中西部 Daloa 地方の栽培者は、多雨にある程度の日照があり、2009年4月中旬の作柄に好影響の組み合わせと話している。好条件が報告されている地方は、南部の Divo, Aboisso, and Agboville や、沿岸部の Sassandra and San Pedro, 中央部 Yamoussoukro 、および東部 Abengourou などである。
[Mod.DHA− Black pod (または_Phytophthora_ pod rot) は、1920年代以降に世界中の cocoa に発生した重要な真菌疾患で、起因菌として: 世界中で確認されている _Phytophthora palmivora_; 西アフリカの複数の国で見つかっている _P. megakarya_ ; 非常に酷似するが恐らく別種と考えられている、米国の _P. capsici_; より強毒性であるが比較的まれなブラジルの _P. citrophthora_などがある]