2009年5月22日

インフルエンザ A(H1N1) 日本初の成田空港,神戸の感染例

● インフルエンザ A(H1N1) 
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (41): case counts
Archive Number: 20090522.1921
[1] WHO - global update (06:00 GMT) 
 情報源: WHO Epidemic and Pandemic Alert and Response (EPR)、2009年5月22日
感染症情報センター(訳)   
(抜粋)(2009年5月22日6時00分世界標準時(訳注:日本時間 5月22日午後3時00分)現在、42カ国が合計11,168例のインフルエンザA(H1N1)感染を公式に報告しており、この中には86名の死亡者が含まれる。
[2] PAHO - Americas regional update (18:00 GMT-4)
[3] CDC - USA update (11:00 GMT -4); hospitalized cases
[4] Mexico - MOH update (09:00 GMT-4) 
[5] Canada - Public Health Agency update (16:00 GMT-4) 
[6] 日本 Japan - National Institute of Infectious Diseases 
 a. Narita(成田空港検疫所で発見された集団発生) 
Epidemiological investigation of a novel influenza A (H1N1) outbreakdetected by entry screening, Narita, Japan, 2009 -- Preliminary report 
 投稿者:感染研・ Nobuhiko Okabe、2009年5月22日
IDSC の日本語サイト: 
2009年4月24日に各市の国際交流事業として大阪府からデトロイト経由でトロント Toronto を訪れた 3つの学校の高校生 30人(2年生14人、3年生16人)と教師 6人のグループは、いくつかの活動の間に現地学生の自宅でホームステイを行い、現地の高校にも登校した。5月8日、デトロイト空港を経由して成田空港に到着した。このうち 3人に症状が認められ、空港での機内検疫によって新型インフルエンザ A(H1N1) の感染が確認された。患者らは予め指定されていた隔離用病院に入院し、他の 33人の参加者と、確認された患者周辺にいた 14人の乗客らおよび 2人の客室乗務員らは、指定宿泊施設にとどまって医療監視を受けるよう指示された。観察期間中に発病したのは 1人だけで、新型インフルエンザ A(H1N1) の感染が確認された。厚労省 (MHLW) からの要請により、感染症情報センターと感染研の研修コース参加者らからなるチームによる、交流事業参加者に対する疫学調査が行われた。
 b. Kobe City(神戸市における臨床像) 
 情報源: National Institute of Infectious Disease 、2009年5月19日。 
○ 背景 
2009年5月16日、日本で初めてとなる新型インフルエンザ A(H1N1swl)の最初の3例が神戸市によって報告された。.. 本要約は、5月19日までに神戸市内において確定例となり、入院あるいは外来にてフォローされた 43例について、国内事例の臨床像に関する情報を医療機関に迅速に提供し、新型インフルエンザの診療の資することを目的としている。... 
○ 患者属性・基礎疾患の有無
患者は 43例で、年齢中央値は 17歳(5~44歳)で、殆どが 10代後半の若者あった。男女比は 1:1.3(19例:24例)である。基礎疾患についての情報を得られた者が 38例あり、気管支喘息 6例15.8%。糖尿病、心疾患、免疫不全、悪性腫瘍などの背景を持つ者はいなかった。24例の女性の中で、妊娠の可能性があると答えた者はいなかった。 
○ 季節性インフルエンザワクチン接種歴および2008-2009年シーズンのインフルエンザ罹患 
.. 2008-2009 年冬季のインフルエンザ罹患歴については、情報の得られた 40例中 3例(7.5%)が、インフルエンザに罹患したと患者本人が答えた。 
○ インフルエンザ迅速検査 
43例全例の新型インフルエンザ検査確定例(RT-PCR 陽性者)について情報を得られた。発症日から迅速検査の検体採取日までの中央値は1日(0-4日)であった。迅速検査 A型陽性の診断は 23例(53.5%)についてなされていた。一方、迅速検査 A型陰性の診断は 20例(46.5%)であったが、これは発症から検査までの期間が短いことも影響していると考えられる。 
○ 入院時の臨床像 43 例の入院時の臨床像;
約90%に 38℃以上の高熱、60~80%の頻度で倦怠感、熱感、咳、咽頭痛があり、鼻汁・鼻閉、頭痛は約半数において認められた。嘔吐や下痢の消化器症状は約 10%弱、結膜炎は 7%。 
○ 入院時の検査所見 省略
(肺炎を疑われた症例はなかったため、胸部レントゲンは検査されていない 
○ 治療の概要 
43例中 39例が抗インフルエンザウイルス薬の投薬を受けていた。投与の内訳は、タミフルが 19例、リレンザ吸入が 20例であった。... 
○ 入院適応 
患者の大半は入院を要する臨床状況ではなかった。5月19日現在、人工換気を行う対象者は無く、また、死亡例も発生していない。... 
(参考) 入院が必要と考えられた 1例 
症例: 20歳代の女性。5月16日夕方より頻回の下痢と 38℃台の発熱出現*、咳(-)、鼻水(-)、咽頭痛(-)、頭痛(+)、下腹部痛(++)、関節痛(+)、悪心(-)、全身倦怠感(+)、にて入院となる。現症として咽頭は軽度発赤しており、下腹部に圧痛がある以外には著変を認めない。この日の検査データとしては、末梢血で白血球 5100/mm3、血小板 17.0 x 104/μl、 CRP 9.2mg/dl、咽頭拭い液あるいは鼻汁にて行われたインフルエンザ迅速検査A(-)B(-)、RT-PCR にてインフルエンザ A(H1N1swine)陽性であった。タミフル、ブスコパンを処方され、輸液が行われた。5月19日現在、依然入院中だが、臨床症状は徐々に改善している。腹痛の原因については精査中である。 
Interim report on clinical presentation of the novel influenza A (H1N1)cases reported from Kobe City 
[7] News brief: Fri 22 May 2009 

● クロストリジオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル菌 コスタリカ
PRO/EDR> Clostridium difficile, fatal, nosocomial - Costa Rica: (SJ) RFI
Archive Number: 20090522.1920
 情報源:MSN Latino-Salud, Agencia EFE report [in Spanish]、2009年5月20日
20日、コスタリカ衛生当局はサンホセ San Jose で 7人が、医療施設内で侵襲性の強い細菌[_Clostridium difficile_] に感染し死亡したことを報告した。当局者は、患者の死亡と C.difficile との因果関係は明らかではないものの、7人が発熱・下痢・嘔吐と大腸穿孔の原因となる同菌への感染が判明したと説明した。心臓や呼吸器病などの基礎疾患のある患者に影響が出やすい。

● A型肝炎ウイルス オーストラリア
PRO/EDR> Hepatitis A virus, semi-dried tomatoes - Australia: recall
Archive Number: 20090522.1917
[1] 情報源:ABC News (Australian Broadcasting Corporation)、2009年5月22日
ビクトリア Victoria 州と南オーストラリア South Australia 州の衛生当局は、semi-dried tomatoes が A型肝炎患者数の急増の原因であると発表した。市民に対し、IGA, Foodland, Foodworks や、個人の delis および cafes で、ハーブ油やガーリックオイルに入って販売されている loose(柔らかい) semi-dried tomatoes を食べないよう注意を呼びかけている。因果関係については現在調査中であるが、2つの州が協力して販売店からの商品の撤去を行っ ていると説明した。2009年のビクトリア州内で報告された A型肝炎の患者数は 90人で、2008年同期の報告は 40人であった。jars, pre-packaged, or vacuum packages の形で売られている semi-dried tomatoes は対象外である。
[2] Tomato product linked to hepatitis A spike in South Australia
 情報源:Adelaide Now, Australian Associated Press (AAP)report、2009年5月22日 
少なくとも 3つの州で semi-dried tomato product mixed with garlic, herbs, and oil が関係する A型肝炎ウイルス患者の急増が確認されている。South Australian 州では 2009年3月以来 26例の患者が報告されており、Victoria 州では 70例以上、Queensland 州でも患者数が急増している。スーパーマーケットでも販売されており、スナックバーやカフェで出される料理にも使われている可能性がある。製造者による自主回収が行われてい る。

● 鳥インフルエンザ、ヒト カンボジア

PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (93): Cambodia, inapparent infection
Archive Number: 20090522.1915
 情報源:Thomson Reuters Foundation AlertNet、2009年5月21日
H5N1 鳥インフルエンザ Avian influenza ウイルスは、症状に気づかれないままにヒトに感染する可能性があるが、非常にまれであることが、21日に出版された報告で明らかになった。
鳥インフルエンザの感染により 2人の小児が死亡したカンボジアのある地域に住む 600人以上に対して行われた調査の結果、少なくとも 7人が明らかに感染しているにもかかわらず、全く気づかれていなかったことが分かった。
雑誌 the Journal of Infectious Diseases に掲載されたこの報告では、患者らは、感染のあった鳥類が水浴びをしていた池での水泳中に感染した可能性があることも示唆されている。さらに広い範囲で確認をしなければ、これらの結果が一般的 representative であると考えることはできないが、ある状況下ではサーベイランスにおいて潜在的に H5N1 ウイルス感染が見過ごされていた可能性もあることが示唆されたと、WHO の関係者らがコメントしている。
H5N1 鳥インフルエンザウイルスによる鳥類での感染流行が続いており、FAO によれば、バングラデシュ、中国、エジプト、インド、インドネシア、ラオス、ネパール、ベトナム で、2009年2月だけで 250件の感染流行が発生している。ヒトへの感染はまれだが、ひとたび感染すれば死亡する場合が多い。WHO は、2003年以来感染した 424人中 261人が死亡したとしている。一番恐れられているのは、ヒトでの間での感染が容易になり、パンデミックにつながることである。この不安は、2009年3月に始まったより軽症の H1N1 豚インフルエンザによるパンデミックに近い流行により、やや影を潜めている。
大きな疑問の 1つは、一部で気づかれないまま感染が発生していたかどうかであった。もしそうであれば、致死率はもっと低くなる。現在の数字のままなら致死率はおよそ 60%ということになるが、感染者が 424人より多ければ、もっと低い死亡率になる。
カンボジアのパスツール研究所員らが 2006年に H5N1 感染により死亡した 2人の小児について調査を行った。住民らに聞き取り調査を行い、血液検体を採取した。住民 674人中 7人 (1%) が、検査の結果、血中のH5N1鳥インフルエンザ抗体が陽性でありながら、重い症状を訴えていなかった。このことは、この患者らはある時期に H5N1 感染と闘って撃退していたことを意味する。多くは男性で 18歳以下であり、他の住民と比べ家の池での水浴びや水泳を多く行っていた。on stilt(高床の?) 木の家に住み、井戸か池の水が唯一の家庭用の水源であり、死亡した 2人の小児との接触のあったものはいなかった。
研究者らによると、鳥類は糞便中にインフルエンザウイルスを排出し、特にカモは、ウイルスの汚染のある糞で池を汚染する可能性がある。糞や水中のウイルスは最大 6日間生存する。この調査期間中、参加者のほとんどが家禽との直接的な濃厚接触を繰り返していたと報告しており、その内訳は、家禽にエサをやったり触ったりした (73.3%)、肥料として家禽の糞を集めた(50.9%)、病鳥の羽毛をむしった(31.1%)、病死した家禽を素手で集めた (36.8%) などとなっている。しかし筆者らは、今回分かったことから、2006年のカンボジアでは病鳥からヒトへの感染伝播はまれであったことが示された、とも述べてい る。筆者らは、池や池の植物から採取された検体中で H5N1 ウイルスの遺伝物質を確認している。
研究結果から、自宅の池での水浴びや水泳は H5N1 インフルエンザウイルス感染のリスクとなる可能性が示唆され、この種の小さな池はありふれており、庭先飼育の動物や園芸の水源となっていることが多いと報告した。多くの場合,カモがこどもたちが水浴びをして遊ぶこのような池を渡り、大量の糞を排泄する。 
[Mod.CP- 今回の研究結果と照らし合わせた場合、カンボジアは 2005年にわずか 4例、2006年は 2例、2007年と2008年には各 1例と、東アジアの中では発生の少ない国の 1つで、1 例を除いて死亡していることは、ある意味で驚きである。
上記で紹介された the Journal of Infectious Diseases 誌の論文の詳細:
Sirenda Vongら、Risk Factors Associated with Subclinical Human Infection with Avian Influenza A (H5N1) Virus - Cambodia, 2006. The Journal of Infectious Diseases 2009; 199: 1744-1752   
要約 
背景
H5N1イ ンフルエンザが発生したカンボジアの2つの村で、H5N1ウイルス感染伝播の発生頻度とリスク要因に関する調査を行った。 
方法 家禽でのH5N1インフ ルエンザ感染流行発生からおよそ7週間後の2006年5月、インフルエンザH5N1患者2人の自宅周辺の住民らに聞き取り調査を行い、採血して検体を入手した。microneutralization assay による検査で、influenza H5N1 neutralizing antibody titer of 1:80 以上を陽性と定義し、Western blot assay により確認検査を行った。症例対照研究を行って、H5N1インフルエンザウイルスのリスク因子を調べた。血清検査陰性のコントロールと H5N1-seropositive persons との、住居、H5N1感染家禽の自宅での飼育、性別、年齢をマッチングした。 
結果
住民 674人中7人(1.0%) が H5N1 インフルエ ンザ抗体の検査陽性であり、重い症状を報告したことはなかった; 6人 (85.7 percent) は男性だった。7人の H5N1-seropositive persons はいずれも 18歳以下であり、検査で陰性 seronegative for H5N1 antibodies だった人たち (平均年齢, 12.0 years vs 27.4 years; P=0.3) よりも若く、the 24 control subjects の中で、 自宅の池での水浴びや水泳 bathing or swimming in household ponds の報告が多かった (71.4 percent vs 20.8 percent; matched odds ratio, 11.3; P=.03)。 
結論
トリからヒトへの H5N1インフルエンザウイルス感染伝播は、たとえ家禽との頻繁な接触があったとしても、依然として低率である。 汚染されている可能性のある環境への曝露は、ヒトの感染のリスク因子であった。"今回の観察結果から、気道を通じた曝露で死亡例が見られるのとは対照的に、気道以外の経路からのヒトの感染では、はっきりとした発病にはいたらない、との結論が得られるかもしれない。"]

● 狂犬病 メキシコ
PRO/AH/EDR> Rabies - Mexico: (JA)
Archive Number: 20090522.1914
 情報源:Milenio online [in Spanish] 2009年5月21日
Hostotipaquillo 市の小さなコミュニティに住む 63才の男性が、州内では 2009年の2例目となる、野生動物による狂犬病 Rabies の犠牲者となった。家族の話では、男性はコウ モリの咬傷に遭ったと見られる。当局によると、この男性は何かに肘を咬まれたが、ひどいキズではなかった (not important) と家族に話していたと言う。入院の 3日前の10日、全身倦怠感、手のしびれ、歩行困難などが見られ、内科の医師は神経疾患を疑って Guadalajara のthe Juan I Menchaca Civil Hospital を紹介した。さらに患者は 17日に Magdalena Regional Hospital を受診し、40℃の発熱と意識障害、運動失調、項部硬直から、感染性神経疾患と考えられたと説明した。CT などの検査が行われたが 17日中に死亡した。結核、インフルエンザ A(H1N1) などが否定され、脳組織の検体が州の公衆衛生研究所に送付され、狂犬病ウイルスに感染していたことが確認された。男性の居住地である La Venta de Mochitiltic は疫学的隔離が行われ、Hostotipaquillo 市内の他の 8個所でも、患者の同定が行われている。この症例は 2009年にハリスコ Jalisco 州内で起きた 2例目の野生動物からの狂犬病による死者で、1月2日にはコウモリの咬傷を受けて San Sebastian del Oeste の 4才の女児 1名が死亡している。1995年以降、ハリスコではイヌやネコから狂犬病に感染した患者は報告されていない。野生のコウモリによ る感染であったことから、当局は、農業・畜産・地方開発・漁業・食料省に対して、地域内の洞窟に生息するコウモリの狂犬病ウイルス感染状況を調査し、対策をとるよう要求した。 
[Mod.TY- 2症例が、どの種類のコウモリによるものか報告されていないが、メキシコ国内の neotropics (?) の農村部の住民には、家畜やときにヒトに対する狂犬病の主な伝播者である吸血コウモリ vampire bats (_Desmodus rotundus_) の咬傷の、特徴やその存在はよく知られているはずである。これらの症例では Vampire bat bites が見過ごされていたのかも知れない。しかしメキシコ国内では、複数種の食虫コウモリの狂犬病発生が報告されている(evidence がある)] 
地図 Mexico and Jalisco state showing the location of Hostotipaquillo (21d 4' 0" N 104d 4' 0" W) northwest of the city of Guadalajara