ダニ媒介性脳炎 ドイツ、リスク地域 Eurosurveillance
鳥インフルエンザ、ヒト H5および H9抗体 NEJM
クリミア・コンゴ出血熱 トルコ:AP92-like strain BMC
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Germany, risk areas
Archive Number: 20090612.2180
情報源:Eurosurveillance, Volume 14, Issue 23、2009年6月11日
2009年5月4日発行のドイツ・the Epidemiologisches Bulletin of the Robert Koch-Institut (RKI) には、ドイツ国内の tick-borne encephalitis (TBE ダニ媒介性脳炎) の最新のリスクエリアマップが掲載されている。TBE が地方病感染の状態にある地域と、専門家らから予防対策を行うことが望ましいとされたダニ曝露のリスクがある地域である。予防対策として、ダニに曝露する現地住民、リスク地域への旅行者、および職業上曝露のある人々へのワクチン接種が含まれる。
この最新マップによるとドイツ国内南部地域の、とりわけ Baden-Wurttemberg および Bavaria 州に、ダニ刺咬による TBE ウイルス感染のリスクがあるとされている。
この TBE risk map は 2002年から 2008年までの期間に RKI に報告された TBE 症例に基づくものである。この間に 1917例の TBE症例が報告され、年間の報告数は 238−546例で、2008年は 288例であった。5年間(2002,2003,2004,2006,2007,2008) の報告期間から、地区ごとの 5 year TBE incidences(5年分の発生数)を作成した。ある特定の地域のおけるワクチン接種カバーによるリスクの過小評価を避けるため、district region と呼ばれる当該地域に隣接地区を加えた地域の報告者数を作成した。ある地区がリスクエリアとされるのは the district もしくは the district region での発生率が、5年分の発生数として人口 10万対1を大きく超えた(p>0.05) 場合とした。
2008年、136の地区が TBE risk sreas に分類され、このうち初めて指定されたのは 4か所あった -- 42 districts in Baden-Wurttemberg (1 additional district); -- 78 districts in Bavaria (3 additional districts); -- 8 districts in Hesse (unchanged); -- 7 districts in Thuringia (unchanged); and -- 1 district in Rhineland-Palatinate (unchanged). 添付報告では TBE リスクについて州ごとに以下のようにまとめている -- federal states with defined TBE risk areas(明らかなリスクがある): Baden-Wurttemberg, Bavaria, Hesse, Rhineland-Palatinate, Thuringia; -- federal states with isolated cases of autochtonous TBE, in which no district fulfils the criteria of a TBE risk area(地域内 TBEの症例が発生し、TBE risk area の基準は満たしていない): Brandenburg, Mecklenburg-West Pomerania, Lower Saxony North Rhine-Westpfalia, Saarland, Saxony, Saxony-Anhalt -- federal states in which no TBE cases have been diagnosed(TBE 患者が報告されていない): Schleswig-Holstein, Hamburg, Bremen, Berlin. さらに報告では南部の州に限定して、過去数年間に徐々にリスクエリアの拡大があると述べられている。... 以上の疫学 criteria に基づきドイツワクチン委員会は、ダニへの曝露リスクが確認されている地域の住民に対する TBE ワクチン接種を推奨している。自治体の衛生当局として TBE に対するワ クチン接種が勧めているのは Baden-Wurttemberg 州で、地区に関わらず接種を勧めている(risk area に分類されていないのは 2地区のみ)。
● 炭疽 アルゼンチン、ヒト、家畜 2008
PRO/AH/EDR> Anthrax, human, livestock, 2008 - Argentina
Archive Number: 20090612.2179
投稿者:Ramon Noseda、2009年6月10日
アルゼンチンの合計 3つの州 --Buenos Aires, Cordoba and La Pampa-- で、20件のウシの炭疽感染流行が報告されている。2008年全国で6人の皮膚炭疽が報告されている: 4 cases in the Province of Buenos Aires and 2 in the Province of Entre Rios.
● ブルセラ症 米国、swine hunters
PRO/AH/EDR> Brucellosis, swine hunters - USA: (SC, PA) EX Florida
Archive Number: 20090612.2178
情報源:MMWR 12 Jun 2009; 58: 618-621、2009年6月11日
_Brucella suis_ 感染によるブルセラ症 Brucellosis は、従来よりブタの処理場の従業員で発生していた。1972年、米国のブルセラ症対策当局はブタの群れに対象を広げた。市販のブタ でのブルセラ症排除により、ヒトでの _B. suis_関連疾患は減少した。現在、米国のヒトの swine-associated brucellosis は、野生のイノシシやブタなど feral swine による感染が主であり、これらの swine は自由に動き回る動物である。CDC はサウスカロライナ South Carolina 州およびペンシルベニア Pennsylvania 州当局と、feral swine hunts に関連する 2例のブルセラ症について協議した。ハントが行われたのはフロリダ Florida 州であった。
● ペスト モンゴル
PRO/AH/EDR> Plague, human - Mongolia: (BO), RFI
Archive Number: 20090612.2177
投稿者:Dan Silver、2009年6月11日
People's Daily によると Bayan-Olgii Province(バヤンウルギー県)の 14才の少年が、5月29日に marmot を食べてペスト Plague に感染した。6月2日に発症した。
[Mod.LL− ペストはモンゴルで地方病感染している。大型の齧歯類の the Tarvaga(the Tarbagan or Mongolian Marmot, _Marmota sibirica_)などの Marmots は、the American woodchuck (_M. monax_) と類縁関係にあり、東アジアではペスト菌 _Y. pestis_ の人獣共通感染の重要な保有宿主と考えられている。marmot の名前は French marmotte, from Latin _mures monti_ "mountain mouse." に由来する]
[Mod.JW− Roast marmot ("boodog" in Mongolian) は人気の高いごちそうで、毎年一部の不幸なハンターがペストに感染する]
● 鳥インフルエンザ,ヒト H5および H9抗体
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (102): H5 & H9 antibodies, poultry workers
Archive Number: 20090612.2176
情報源:New England Journal of Medicine (NEJM), Correspondence, Vol. 360:2583-2584, No. 24 、2009年6月11日。
中国南部の広洲市では H5N1および H9N2鳥インフルエンザ Avian influenza ウイルスのヒトでの感染が報告されている。ヒトでの感染リスク評価のため同市で血清学的サーベイランスを行った。
2007年3月から 2008年7月までの期間に 7種類の職業の職場 230か所から健康な 2191人の参加を募った。この調査は広洲市 CDC の倫理委員会の承認と文書での同意を得ている。これらの対象者から血清検体について、不活化された H5N2 virus strain A/Turkey/England/N28/1973 および H9N2 virus strain A/Chicken/Shandong/6/1996の 4つの hemagglutination units を含有する hemagglutination-inhibition assay を使って、H5および H9亜型鳥インフルエンザウイルスに対する抗体を調べた。これらの結果は以前に報告した neutralization assay against 100 tissue-culture infective doses of H5N1 strains A/Hong Kong/486/1997 and A/Vietnam/1194/2004 and H9N2 strain HK/2108/2003 によりさらに検証された。
抗 H5抗体の蔓延率は 0.2%で、抗 H9抗体は 4.5%であった [原文では表形式となっており他の情報についても参照されたい]。
抗 H5抗体陽性例は全員が家禽取引業者 poultry retailers or wholesalers であったのに対し、抗 H9抗体陽性者は調査された集団の全てのグループで認められた。
H5N1および H9N2ウイルスが市場の家禽とヒトの間で感染循環しているとの報告がある。家禽取引業者らにおいて抗 H5抗体陽性率が抗 H9抗体陽性率と比較して著しく低かった: poultry retailers (H5 0.8% versus. H9 15.5%, P greater than 0.001)、wholesalers (0.8% versus 6.6 %, P equal to 0.001)。この違いは家禽で広く H5ワクチンが使用されている一方、H9ワクチンがないことと関係があると考えられる。さらに家禽の H9鳥インフ ルエンザウイルス感染では、症状が見られないままウイルスが排泄されていることが多い。中国南部において H9N2ウイルスと他の亜型鳥インフルエンザ ウイルスとの再集合発生が確認されていることから、H9鳥インフルエンザウイルスの公衆衛生上の潜在リスクが注目される結果となった。
抗 H9抗体陽性率が poultry retailers で高かった (15.5%);これは他の 6つのグループに比べ極めて高率であった(P >=0.006)。同じ市場の他製品の取り扱い販売業者と比較しても poultry retailers の抗 H9抗体陽性率は高率 (15.5% vs 1.8%) であったことは、特に生きた鳥類を扱う poultry retailers が家禽の処分の際に直接曝露することが原因と考えられる。また H9鳥インフルエンザウイルスの市場内での感染伝播は、主に家禽−ヒト感染であってヒト-ヒト接触によるものではないことが示唆された。また poultry retailers では wholesalers(卸売り)と比較して抗 H9抗体陽性率が高かった (15.5% vs 6.6%)。この違いは,小売業者が複数の卸売業者から複数の種類の家禽を購入するためと考えられる: 生きたトリを扱う市場内での家禽同志の感染伝播対策として、ヒトでの鳥インフルエンザウイルス感染防止が重要な役割を果たすと考えられる。
[Mod.CP- 一般人口からの 301人のうち 4人(1.3%) が抗 H9抗 体陽性であり、抗 H5抗体陽性者は 0だった。中国南部で H9N2ウイルスと他の亜型鳥インフルエンザウイルスとの再集合発生が報告されていることから、この発見により H9亜型鳥インフルエンザウイルスの公衆衛生上の危険性が注目されると著者は述べている。抗 H5抗体反応がほとんど見られないことは、抗 H5鳥インフルエンザワクチンが家禽に使用されていることによる可能性もある。抗 H9抗体が比較的高頻度に見られたが、著者は H9亜型鳥インフルエンザウイルスの市場での感染伝播は、主に家禽からヒトへの感染であってヒト-ヒトの接触によるものではないと解説している]
● クリミア・コンゴ出血熱 トルコ
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Turkey (06): AP92-like strain
Archive Number: 20090612.2171
情報源: BioMed Central (BMC) Infectious Diseases 2009, 9:90、2009年6月10日
原著タイトル The first clinical case due to AP92 like strain of Crimean-Congo Hemorrhagic Fever virus and a field survey 全文
要約(暫定)
背景:Crimean-Congo hemorrhagic fever virus (CCHFV クリミア・コンゴ出血熱ウイルス) 感染は致死性であるが AP92 strain による患者は報告されたことがない。われわれは、AP92-like CCHFV による初めての感染例を報告する。
方法:トルコ・バルカン Balkan 地方で 1名の AP92-like CCHFV による感染例が確認された。RT-PCR 法と遺伝子配列解析により診断が確定された。患者発生地域でヒトの血清学的調査とベクターダニのサーベイランスを行った。
結果:741人の調査で 38人に抗 CCHFV IgM 抗体が確認された。全体的な CCHFV 感染率は 5.2% と計算された。一変量解析で CCHFV IgM 陽性(感染)との関連性が認められたのは、年齢 (p>0.001)、男性 (p=0.001)、農業 (p=0.036)、ダニ刺咬歴 (p=0.014) である The index case was a 6 years old child.
Survey in the Region
Discussion
Conclusion
トルコでは初めてとなる,イスタンブールの農村地地区 rural Balkanian part of Istanbul における AP92 like CCHFV strain ウイルスの軽症感染例 mild CCHF case を報告した。同株のウイルスが確認されたのはこれまでギリシャ Greece のみで,無症候性感染例と報告されている。この地域の overall CCHF infection の感染率は 5.2% ときわめて低く,屋外で作業する男性と高齢者に多く見られた。
[Mod.CP- Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF クリミア・コンゴ出血熱) はヒトの重症出血熱であり致死率は最大 50% になる。CCHF の病原体はダニ媒介性の the family _Bunyaviridae_(ブニヤウイルス科), genus _Nairovirus_(ナイロウイルス属の)ウイルスである。ヒトには,感染したダニ刺咬や押しつぶし、ウイルス血症の動物やヒトとの直接接触を介してウイルス伝播される。
CCHF の感染流行はアフリカ、中東、東欧、西アジアなどベクターで保有宿主でもあるダニ _Hyalomma_ spp がいる地域で報告されている。
CCHF ウイルスの分子学的・生物学的解析の最近の進歩により、このウイルスは他のブニヤウイルス属のウイルスに比べより多くのタンパクをエンコードし(遺伝情報を有し)、ウイルスタンパクの生成過程が複雑であることが分かった。CCHF の遺伝子配列には多様性が見られ7つの異なるクレード clade にグループ分けされている。CCHF の S-RNA と L-RNA segments に基づく系統発生解析から、この 7つの clade は地理的分布と関連性があることが判明した。バルカン Balkan 半島、ロシア、トルコ全域で確認された CCHFウイルスは、遺伝的解析により 6つの cladeに分けられている。
例外は Greek strain, designated AP92 で、1976年にダニから分離された。現在までの報告によるとこのウイルス株は、ヒトでの疾患発生との関連性がなく、不顕性感染だけに関連するものと考えられてきた。
上記の報告では、トルコで AP92-like virus が確認され、軽症例との関連が認められている。この新たに分離されたウイルス株は AP92-like と呼ばれ、さらに解析が進めば recombinant/reassortant virus であることが判明するかも知れない]
● リシン、中毒 米国
PRO/EDR> Ricin, poisoning - USA: (WA) susp
Archive Number: 20090612.2168
[1] 情報源: HeraldNet、2009年6月9日
2009年6月8日に公開された裁判所文書で、南部 Everett [Washington ワシントン州] の男性の自宅と、その妻の尿の検体から、猛毒のリシン Ricin が検出されたことが明らかになった。犯人と見られるこの 48才の男性は、第1級暴行と不法監禁の疑いで 6日に拘留された。
[2] Police confirm ricin traces in Washington State woman
情報源 Global Security News Wire (GSN) 、2009年6月10日
● ピロプラズマ症 米国、ウマ
PRO/AH/EDR> Piroplasmosis, equine - USA (02): (MO)
Archive Number: 20090612.2172
情報源:Veterinary Practice News、2009年6月11日
OIE は 11日 Jackson County, [Missouri ミズーリ州] において equine piroplasmosis (EP 馬ピロプラズマ症) の感染流行を報告した。前回発生が報告されたのは2 009年2月であった。EP はウマ・ロバ・ラバ・シマウマに感染する、ダニ媒介性の疾患であり、ダニの刺咬や不適切な注射・手術などによる、_Theileria equi_ の感染伝播による疾患である。
● ドラゴンフルーツの病気,Dothiorella blight マレーシア
PRO/PL> Dothiorella blight, dragon fruit - Malaysia: spread
Archive Number: 20090612.2170
情報源:New Straits Times、2009年6月9日。
除去が困難な真菌が、国内のドラゴンフルーツ dragon fruit 農場で被害を出し多くの農家は他の作物への転換を迫られている。 the _Dothiorella_ fungus は red dragon fruit plants だけに発生し、white variety は元来この病気に抵抗性がある。このため 90%の農家が the white variety を作付けしているベトナムではこの真菌は発生していない。マレーシアでパハン Pahang に次ぐドラゴンフルーツの主要産地であるジョホール Johor の the Kluang district では、ピーク時の 1997年には 50か所の農園があったが、現在ではわずか 20か所となっている。真菌感染を理由に農園の閉鎖が見られるようになったのは 2年前からである。
● 魚類の大量死 米国
PRO/AH/EDR> Fish die-off - USA: (VA)
Archive Number: 20090612.2169
情報源:The Washington Times、2009年6月10日
ふたたび市民や当局の生物学者らから魚類の死亡が報告されている。報告される河川の数は少ないものの、相当数の魚類に病気が認められている。_Aeromonas salmonicida_ と感染実験の魚類の病変や死亡との関連性について研究者らが確認した。