2009年6月16日

発疹熱 米国
インフルエンザ A(H1N1) 妊娠中の抗ウイルス薬

● 発疹熱 米国
PRO/AH/EDR> Murine typhus - USA: (TX)
Archive Number: 20090616.2228
 情報源:News8 Austin (TX) 、2009年6月12日
Williamson County and Cities Health District 当局は murine typhus 発疹熱, もしくは  fleaborne typhus(ノミ媒介性チフス)と呼ばれる疾患に感染した疑いのある 3人の調査を行っている。このほか Travis County からも患者が報告されている。ヒト-ヒト感染はなく、rats, mice や犬猫などの小動物に付く感染性のノミの刺咬により伝播され、高熱、激しい頭痛、発疹などの症状が見られる。重症例では入院を必要とすることがあるが、死亡することはまれである。予防策として、齧歯類やノミを遠ざけ DEET を使用することが勧められている。 
[Mod.LL− チフスの名前が付いた疾患には epidemic typhus(発疹チフス), Brill-Zinsser disease (recrudescent epidemic typhus,再発発疹チフス), murine typhus(発疹熱), scrub typhus(ツツガムシ病), and typhoid (腸チフス,so-called because it is typhus-like) がある。typhus の語はギリシャ語で -- to smoke -- を意味する _typhein_ に由来する。患者の精神的に the smoky or clouded(曇った)状態を表すのに用いられた。
_Rickettsia typhi_ を起因菌とする発疹熱 Murine typhus は世界中に広く分布し、特に温暖・湿潤な亜熱帯および熱帯気候の沿岸地方に多い。テキサス州で地方病感染していることは明らかではあるが 2004年以降増加傾向にある。先進国の中では,米国南部の大西洋沿岸州、カリブ諸国、米国南西部太平洋沿岸州、そしてハワイ Hawaii 州など,欧州では地中海沿岸と、アフリカの大西洋および地中海沿岸地方である。人獣共通感染症で、rats は無症候性保有宿主であり、最も一般的なベクターは Oriental rat flea _Xenopsylla cheopis_ である。沿岸部での発生が一般的であるが、輸送の大動脈を通って沿岸部から離れた場所に広がることもある。リケッチアに感染したノミの糞がリケッチアの刺し口に擦りこまれることが、ヒトでの主な感染経路とされているが、リケッチアの刺咬そのものや糞のエアロゾル化によっても感染伝播され る。発疹熱は比較的軽症の疾患である。急性期の入院患者のうち、集中治療を必要とするのは 10%にすぎないが 1-4%死亡する。診断は血清学的検査によるが,特定の検査機関では,皮膚病変の塗沫もしくは培養による rickettsiae の同定も可能である。成人の一般的な治療法は 1日2回の doxycycline 100 mg を 3−5日間行う。(米国内の)感染の活動性が高い地域は the Rio Grande valley (southern Texas) と the Los Angeles area である。米国では 1944−1953年の間は 1万9663例(1944年に 5401例)の患者が報告されていたが、1990年には全米で 50 例、1993年には 25例となり、1994年に報告義務のある疾患からはずされた]

● インフルエンザ A(H1N1)  妊娠中の抗ウイルス薬使用(2件)
PRO> Influenza A (H1N1) - worldwide (65): antivirals in pregnancy
Archive Number: 20090616.2224
 情報源:Edmonton Sun, News Canada, The Canadian Press report、2009年6月15日
抗ウイルス薬である Tamiflu and Relenza は、妊婦や授乳婦に処方されても比較的安全であると、以前からの公開されていないエビデンスも含めたレビューの著者らが述べた 
[Mod.CP- Tamiflu and Relenza はノイラミニダーゼ阻害薬 oseltamivir の proprietary preparations(専売薬)である。Tamiflu は経口で、Relenza は intranasally(sic 経鼻)で投与される .. ?? (GSK の能書にも oral inhalationとありますが、一方で intranasal に関する報告も散見されます;後日 zanamivir であり、吸入薬であったと訂正された)]。
6月15日付の電子版 the Canadian Medical Association Journal 誌に掲載されたこの研究結果によると、妊娠女性に対して Tamiflu が最適の選択薬であるが、授乳婦がインフルエンザに感染した場合はいずれの薬剤も安全に使用できるとしている。このレビュー研究の結果は、豚インフルエンザ (H1N1) ウイルスに感染し、抗ウイルス薬の使用に不安を感じている女性の助けになるかも知れない。妊娠女性は,非妊娠女性よりも季節性インフルエンザ感染時の合併症のリスクが高い。過去数回のパンデミックで得られた証拠として、妊娠女性はパンデミックインフルエンザウイルスにより特に重症化しやすいことが示唆されている。現在のパンデミックにおいてこのよ うなリスクの高い(妊婦の)患者の治療をためらうべきではないと senior author Toronto's Hospital for Sick Children の部長である Dr. Ito は述べた。リスク対効果の点で言えば、たとえ the 1st trimester(妊娠前期)であっても,妊婦に抗ウイルス薬を使用することは利益の方がかなり大きいことは言うまでもないと説明した。the Motherisk Program at Sick Kids および the Japan Drug Information Institute in Pregnancy 所属の著者らは、妊婦と授乳婦の抗ウイルス薬使用に関して得られたデータの吟味を行った。彼らは、限定的なエビデンスであることを認めた上で、パンデミック時に妊婦が抗ウイルス薬を使用した場合に何が生じるかに注意することが重要であると述べている。事象の発生後に製薬メーカーに蓄積されている使用報告に加え、日本で the 1st trimester に Tamiflu を使用した 90人の妊娠女性についての未公開の追跡データも示された。The 1st trimester は母親が曝露した化学物質や薬剤の影響が最も心配される期間であり、発達中の胎児への有害作用が懸念される時期である。(妊娠中に Tamiflu を服用した)これらの女性のうち、birth defect(出生時の異常)が認められた出産例はわずか 1例であった。一般人口における出生時異常の確率は 1-3%とされている。この数字からすれば Tamiflu 服用者での発生率は高いとは言えず、唯一の発生例は偶然発生したもので薬剤への曝露の結果ではないことが示唆される。ヒトの胎盤を使った別の研究では、胎盤に取り込まれた Tamiflu の胎児移行が検討されている。Ito によると、the other end(胎児側?) でかなり低い薬剤濃度であった場合でも(胎盤では)Tamiflu が高濃度である必要があったと述べている。筆者らは、妊婦が新型の H1N1インフルエンザに感染した場合 2種類あるインフルエンザ薬のうち,おそらく Tamiflu がより良い選択肢になることを示唆している。Tamiflu の方が妊娠中の使用の安全性に関するデータが多いことがその理由である。しかし授乳婦に関しては、Tamiflu も Relenza も共に乳汁中の分泌はごくわずかであることから、いずれも使用可能とされた。この論文で、いずれの薬剤にも胎内で曝露した場合の胎児への成長・発達に対する影響は認められなかったと述べられている。米 CDC は先週、豚インフルエンザ [H1N1] に感染した妊婦の一部が胎児へのリスクを恐れて、抗ウイルス薬の服用を拒んでいるとの報告があることを明らかにしている。 
Mod.CP- The United States Food and Drug Administration (FDA 米食品医薬品局)  は豚インフルエンザとも呼ばれている 2009年インフルエンザA(H1N1) の治療と予防に対する oseltamivir (Tamiflu) の使用に緊急承認を与えた。H1N1インフルエンザの治療および予防に関して、成人および 1才未満も含む小児への Oseltamivir の使用が可能となった] 

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (64): case count, pandemic
Archive Number: 20090616.2221
[1] Worldwide update - WHO 17:00 GMT+2 Influenza A (H1N1) - update 49 -- 15 Jun 2009 
[2] Americas update - PAHO 16:00 GMT-4 
[3] 中国 China - epidemiology of 1st 120 cases on mainland 
The epidemiology of the 1st 120 human A (H1N1) cases reported in China mainland 
 投稿者: China Animal Health and Epidemiology Center、Chen Jiming、2009年6月13日
5月26日、中国本土発生した初期の12人のインフルエンザA(H1N1)患者の疫学について報告した。今回、6月12日現在の、中国本土における発生初期から120人目までの患者について、オンラインニュースからのデータを用いて、疫学報告を行う。 1.120人中、104人は輸入例で、国内感染の12人の感染源は判明したが、2人については分かっていない 2.中国国内初の患者は5月10日、初の国内感染例は同29日に報告された。 3.輸入例104人からの感染伝播(国内発生)例は、輸入例5人からの14例にとどまっている 4.輸入例のうち、92人は北米(米国とカナダ)、5人はオーストラリアからの輸入感染例である その他は、イエメン、ベネズエラ、フィリピン、アルゼンチン、日本 5.ほぼ性差なし 6.83例は31歳以下、54例は21歳以下と、若い。 7.発生地は15の省または市にわたっている(北京33人、広東省30人、福健省14人、上海13人、四川省10人) 8.重症例なし 9.120人中15人が空港での体温検査で、2人が列車での検疫で発見された 
[4] News briefs: Tue 16 Jun 2009

● ペスト リビア、腺ペスト
PRO/AH/EDR> Plague, bubonic - Libya: (BN)
Archive Number: 20090616.2227
 情報源:Reuters、2009年6月16日
リビア政府当局は地中海沿岸の町 Tubruq において腺ペスト Plague, bubonic の感染流行が発生したことを報告し、WHO から調査チームが派遣されることになったと 16日に WHOの当局者が明らかにした。およそ 16−18人の患者が報告されており、中世に黒死病と呼ばれたペストがリビアで発生するのは 20年ぶり以上のこととなると WHO関係者が述べた。報告では腺ペストとされているが事態の全体像は把握されておらず、17日 WHOのチームがリビアに入り確定患者の有無などを調査することになっている。政府当局からの暫定的な情報によると、死者 1人を含め 16−18人の患者が報告されており、トリポリ Tripoli は国際団体の支援を要請している。新たな患者が報告されているトゥブルクはエジプトとの国境から約 125kmに位置し、数十年前にもペスト患者が発生し ている。エジプトは H1N1ウイルスの感染流行対策に取り組んでいるが、ペストは報告されていない。WHO の報告によると世界中で毎年 1000−3000例のペスト患者が発生しており、最近の 5年間で患者数が多かったのはマダガスカル、タンザニア、モザンビーク、マラウイ、ウガンダ、 コンゴ民主共和国の各国であった。米国でも年間およそ10-20例の患者が発生している。 
[Mod.LL− 1976年のリビアのペストの原因は感染したラクダの肉を食べたことによるとされている(要約の紹介)。2005年のサウジアラビア(ラクダの骨髄などからペスト菌検出)と、1997年のサウジアラビア国境付近のヨルダン(いずれも同じラクダの肉を食べた 12人)でペスト流行が報告されている ... 感染源は触れられていないが感染したラクダやノミの関係が示唆される]
地図 Tobruk or Tubruq は Libya 北東部の半島にある港湾都市で Egypt に近い 中心地は Al Butnan District (formerly Tobruk District)

● 水疱性口内炎、ウマ 米国
PRO/AH> Vesicular stomatitis, equine - USA (02): (TX)
Archive Number: 20090616.2230
 投稿者:Randall Levings 、2009年6月15日
Texas 州の症例は、2004, 2005, and 2006 の流行と同じ、VS-New Jersey serotype によるものである。

● 照射済みキャットフード中毒 オーストラリア
PRO/AH/EDR> Irradiated cat food toxicity - Australia
Archive Number: 20090616.2222
 情報源: The Sydney Morning Herald 、2009年5月30日
一連のネコの死亡は、輸入ペットフードに対して政府が指定した照射が原因であった。放射線照射が行われたドライフードを食べたネコの一部が、致死性の神経障害を発生する恐れがあるとの無視できない海外のエビデンスを受け、農業相は数十年以上前から行われているが、意見の分かれている滅菌操作を直ちに中止するよう指示した。同じ処理をされたペットフードをイヌが食べても影響はない。2008年、シドニー Sydney の獣医師が、Orijen という商品名の Canadian gourmet pet food と原因不明の病気との因果関係を指摘するまでの間に 90匹のネコが発病し 30匹が死亡した。製造者の Champion Petfoods 社は、決められた温度以上で調理されていないペットフードに対して、豪国内の到着時に irradiation of 50 kiloGrays(50kGy の照射)を義務づけているオーストラリア検疫規則が問題の原因であると主張している。同社の輸出先である 60カ国のうち、オーストラリアだけが放射線照射を義務づけている。乾燥ハープやトロピカルフルーツなど一部のヒトの食品にも照射が義務づけられているが、 ペットフードよりずっど低い線量で行われている。ドッグフードには今も照射は禁止されていない。他のペットフードで問題が出ていない点も未解決である。 
[2] 豪で発生した、ペットで初めての照射済み食品による神経障害は、予測されていたこと 
 情報源: The VIN (Veterinary Information Network) News Service、2009年6月8日
1998年以降、少なくとも 3回の照射済み食品による重症神経障害が発生している。アイルランドと米国の研究室のネコと、オーストラリアのペットのネコである。