2009年6月17日-18日

インフルエンザ A(H1N1) 他のウイルス,南半球 Eurosurveillance,1918ウイルス
インフルエンザ A(H1N1) Origins and evolutionary genomics

● インフルエンザ A(H1N1) (3件:67-69)
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (69): other viral infections
Archive Number: 20090618.2254
 情報源:Eurosurveillance, Volume 14, Issue 24, 18 Jun 2009 、2009年6月18日
(北米の)influenza A(H1N1) virus 感染が確認されている各国への最近の渡航歴がある 79例の有症者から採取された臨床検体について、急性呼吸器感染の原因となる広い範囲の病原体を対象とする multiple real-time PCR による検査を行った。この解析により 4例のインフルエンザ A(H1N1)ウイルス感染例のほかに、検体のおよそ 60%で他の呼吸器ウイルスが診断された。influenza A(H1N1) virus 発生中の各国において、多くの異なる種類のウイルスの感染伝播が同時に発生していることが再認識された。この結果臨床症状と疫学的基準によ る the definition of suspected cases(感染疑い例の定義)では、インフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染と他のウイルス感染症をほとんど区別できないことが分かった。 
背景 
新たな influenza A(H1N1) virus variant は 2009年4月に初めて姿を現したあと世界中に拡大し、6月17日の時点で WHO は 39620例の患者を報告している。4月30日欧州委員会は症例定義を提示し、ほとんどの加盟国が採用している。その勧告に従いスウェーデンにおいては、呼吸器症状があり、38度以上の発熱を伴い、7日以内の感染発生国への渡航歴もしくは感染が確定した患者との濃厚接触があった場合に、インフルエンザ A(H1N1)の検査を行うことを推奨している。通常の季節性インフルエンザの定点サーベイランスの期間が延長され、輸入インフルエンザ A(H1N1)ウイルスの同定と、接触者の追跡や抗ウイルス薬により二次感染伝播を阻止し、コミュニティ内での持続感染発生の時期を遅らせることに焦点が絞られている。初期予防策実施の可否を決めるための、より確実な根拠を提供する目的で、(人口150万人の)スウェーデンの Vastra Gotaland 地域の,全ての suspected cases(疑い例)患者からの検体について様々な呼吸器感染症の病原体に対する拡大検査を施行した。 
材料と方法 
2009年4月24日から6月10日までの期間にインフルエンザ様症状を呈し、米国もしくはメキシコへの最近の渡航歴があり、検査を勧められた患者からの検体による報告であ る。診察は Sahlgrenska University Hostpital/stra(in Gothenburg) の感染症医によって行われ、彼らの診察結果と検査結果に基づいた報告となっている。
要約すると、投稿歴のある患者全 79人のうち 90%に呼吸器症状があり 5%はなかった。残りの 5%については呼吸器症状の記載がなかった。66%に 38℃以上の発熱があり、29%は発熱が見られなかった; 5%が発熱に関し不明であった。鼻咽頭スワブ検体が Sahlgrenska University Hospital のウイルス学研究室分子学的診断部に送付され 13 種類のウイルスと 2種類の細菌を対象とする multiple real-time PCR 法により検査が行われた:  6 parallel multiplex PCRs on an ABI 7500 instrument。この PCR 検査で matrix タンパクを狙ったインフルエンザ A構成成分検査に反応した検体は、追加のヘマグルチニン haemagglutinin 遺伝子を対象とし、従来からの H3N2・H1N1 と新たな H1N1ウイルス株に特異的に反応する、3つの PCR反応を平行して行う追加 real-time PCR 検査によって、サブタイプ分けされた [原文に primers and probes の情報あり] 。 
結果と検討 
全体で 79人の患者からの検体が検査された(男性 42人、女性 37人、平均年齢 30才、1−75才)。週平均 10−16検体が採取され、ほとんどが北米への最近の渡航歴のある、呼吸器症状のある患者だった。the new influenza A (H1N1) variant の患者は 4例で、興味深いことに患者の 56%から他の病原体が検出された。 
Table. Viral aetiologies for the patients(suspected cases), Apr-Jun 2009 (n=79) 
病原体 / 症例数 / Percentage Rhinovirus / 28 / 34 Coronavirus / 8 / 10 Influenza B virus / 3 / 4 Human parainfluenza virus types 1-3 / 3 / 3 / 4 Adenovirus / 2 / 2 Influenza A (H1N1) virus / 4 / 5 Metapneumovirus / 1 / 1 Enterovirus / 1 / 1 Respiratory syncytial virus / 0 / 0 Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniae / 0 / 0 Negative / 32 / 39 Total number / 82 / 100 (3人の患者で、重複感染あり)
 ... the criteria for suspected cases of influenza A(H1N1) は、ウイルス感染の指標としては妥当 relevant だが、インフルエンザ A(H1N1)に特異的ではなかった。さらに定義を厳しくすれば、比較的軽症であったインフルエンザ A(H1N1)ウイルスの患者が漏れてしまう。体温 39℃以上や筋肉痛などを入れた厳しすぎる (too strict) 基準にすれば、感染流行が少なく見積もられてしまう恐れがあり、liberal(緩い)定義だと多くの患者が他の病原体によるものとなってしまう。感染流行の時期(初期とピーク時)によって臨床診断による positive predictive value(陽性予測値)は上下すること、流行時には広範囲の病原体診断による他の病原体検出の割合は 50%から低下すると推察されること ... 新型インフルエンザ A(H1N1)ウイルスのような新興呼吸器ウイルスの初期検査に broad diagnostic test が有効なツールとなりうるだろう。

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (68): southern hemisphere
Archive Number: 20090618.2253:南半球
[1] ブラジル - new strain discounted
 情報源: CIDRAP News 、2009年6月17日。 
The Centers for Disease Control and Prevention (CDC)、その他の専門家らは、ブラジルの患者において新たな新型 [2009 swine-origin] H1N1 influenza virus 株が確認されたとの報告を受理(承認)しなかった。サンパウロ Sao Paulo の研究機関の研究者らが、すでに回復している国内の患者 1名から新たなウイルス株を検出したと、同研究所と AFP の情報として報道されていた [20090617.2235]。この分離されたウイルス株のヘマグルチニン hemagglutinin (HA) 遺伝子の内部の "核酸とアミノ酸配列に明らかな変化がいくつも見られた" と述べられていた。しかし、米・アトランタ Atlanta の CDC の広 報担当者は、"CDC は新型インフルエンザ A(H1N1)の新たなウイルス株の情報を得ていない" と述べ、このウイルスが新たな株だとする報告を否定した (discounted)。Virology Blog を掲載するコロンビア Columbia 大学のウイルス学者も、A/Sao Paulo/1454/H1N1 の HA タンパクのアミノ酸配列と、現在のパンデミックウイルスを比較して変化はないとし、数カ所で見られる、他の 2009 H1N1ウイルス株とのいくつかのアミノ酸の違いは、抗原性や宿主の範囲に影響ないと考えられると Blogの中に書いている。このウイルスは、メキシコへの旅行から帰国後すぐに発病した 26才のサンパウロの男性患者から採取された。4月24日に入院したがその後回復している。 
[2] 南半球の活動性 
Southern hemisphere activity Influenza A (H1N1) virus activity in the Southern Hemisphere - Lessons to learn for Europe? : The European Centre for Disease Prevention and Control, Stockholm, Sweden 
 情報源: Eurosurveillance, Volume 14, Issue 24, 18 Jun 2009 、2009年6月18日
熱帯を除けば、インフルエンザ感染の活動性は緯度に依存する季節性変動があるが、経度には影響されない。この季節性に関係する因子について完全に理解されているわけではないが、indoor crowding(室内の密集度), lower temperatures(気温の低下)、decreased humidity(湿度の低下)および reduced levels of sunlight(日射量の減少)などが、感染伝播と感染感受性双方に影響するものと考えられている [1]。 季節性インフルエンザは典型的には,北半球では 11月から3月にかけて、南半球では 4月から9月にかけて発生する。しかし両半球間のインフルエンザ活動性が一時的に重なり合う現象が報告されている [2]。熱帯地方では 1年中インフルエンザが発生する; 熱帯地域が両半球の感染流行にとってのウイルス貯蔵所の役目を果たしているのか、については今も分かっていない。流行中優位となる季節性インフルエンザウイルスについては、半球内でも違いが見られたり、有病率が異なることが報告されている。たとえば 2007-8年インフルエンザシーズンでは、欧州で優位であったウイルスは A(H1N1)であったが、南北アメリカにおいては A(H3N2)が優位であった [3,4]。インフルエンザは 1年のうちの決まった期間内に発生するが、2つの半球で感染循環 するインフルエンザウイルスは互いに独立しているわけではない。このことは、両半球で感染循環するウイルス株に基づくウイルス学的情報を考慮して the seasonal influenza [sic ワクチンのこと ?] が製造される理由の1つになっている。季節性インフルエンザ用ワクチンの組成に関する勧告は、それぞれの半球のインフルエンザシーズン開始前に合わせて、通常は 2月と 9月の年2回 WHOから発表される。北半球と南半球のインフルエンザ活動性に相互作用が見られることから、ウイルスの発病率、重症度と重症化リスクには共通性が見られると予想される。このことは、北半球の国々にとって、南半球の経験から学び準備する機会を与えられることにもつながる。 
現在のチリとオーストラリアのインフルエンザ活動性状況 
チリおよびオーストラ リアの国土の大部分は南半球の温帯地域に位置し、はっきりしたインフルエンザシーズンの時期と大多数の患者発生は 5月から9月にかけての時期となる。 いずれの国にも季節性インフルエンザのサーベイランスシステムが確立されている。チリでは 2−4年ごとにインフルエンザ活動性の増大が観察されており、 オーストラリアでは近年、インフルエンザ類似疾患とインフルエンザ検査確定報告数の全般的な増加が報告されている。南半球でのインフルエンザシーズン開始に一致して、ここ数週間両国ともインフルエンザ A(H1N1)の症例数の急激な増加が観察されている。チリで第 1例目の患者が報告されたのは 2009年5月中旬であった:複数の学校内における(2−6例からなる)小集積と、ドミニカ共和国から帰国した3例であった。5月末の時点で国内の全 15自治体のうち 11か所から患者が報告されている。6月12日、患者数は 2335人となりうち 2人が死亡した; 大部分 (66%) が 5−19才で、重症化して入院を必要としたのは 2%であった。オーストラリアで初めての A(H1N1) ウイルス感染患者が確認されたのは 月8日で、その後 3週間で全豪 8管轄区内から検査による確定診断例が報告された。6月16日の時点でオーストラリア全国では 1965人の患者が報告されているが、その 62%がビクトリア  Victoria州からの報告である。 チリ・オーストラリア両国政府は、第1例目のインフルエンザ A(H1N1) 症例に対して "containment(封じ込め)"  strategy で臨んだ。急速な感染拡大状況を受け(第1例発生から2週間後の) 5月末の時点で、チリ政府当局は "mitigation(緩和、軽減)" strategy に転換した。オーストラリア政府当局は当初、"sustain" phase(維持期)が適用されていた感染が最も深刻だったビクトリア州だけの方針転換を決めたが、現行のパンデミックはあまり重症化しないとの立場から、6月17日全国的に新たな "protect" phase への移行を開始した。この政策転換により、とりわけ検査戦略が変更され重症化(の可能性のある)症例の早期発見と適切な治療に重点が置かれている。
チリやオーストラリアの現況から欧州は何を学べるか 
過去の季節性インフルエンザのように,南半球の冬期のインフ ルエンザ A(H1N1) ウイルスの発生状況は北半球の冬期に予想される事態を明らかにしてくれる可能性が高い。南半球のインフルエンザシーズンは始まっ たばかりで、インフルエンザ A(H1N1) ウイルスに関するデータも限られているが、すでに初期のいくつかの結論は得られている。しかし、欧州を含めた北半球の各国にとってもっと重要なことは、今後も事態を注意深く観察し,最も影響を受ける集団、重症化に至るリスク因子、ウイルスの毒性・感染伝播・抗ウイルス薬に対する感受性の変化に加え、薬物および非薬物的公衆衛生対策の影響に関してより一層の知識を得ることである。インフルエンザシーズンに一致して急増するオーストラリアとチリにおける報告患者数の現況は、今も感染拡大が緩徐な欧州で観察されてきた状況と異なっている。北半球の夏期の間の欧州ではインフルエンザの活動性は低レベルのままと予想される一方、オーストラリアとチリでは 2009年9月ごろの欧州のインフルエンザシーズン開始時期にも、今のように急増しているかも知れない。チリとオーストラリアは直ちに containment(封じ込め) から mitigation(緩和)もしくは sustaining(維持)strategies に切り替えた。これまで欧州の加盟国の対応策として、積極的な患者の発見と接触者追跡、患者と接触者の隔離、抗ウイルス薬による治療および予防などの、強力な封じ込め戦略を採ってきた。これらの対策は、欧州で新たなウイルスが初めて確認されたときの対応としては適切であったが、大陸内の広い範囲でウイルス感染循環が起きる可能性が高い、次期冬期間に継続して実施可能であるかについては不透明である。国内の感染流行とウイルス学的状況に応じて別の対策を実施する可能性が高い。
適切に対応するために必要な追加情報は何か 
南半球で行われる非薬物的な公衆衛生対策の有効性に関する研究が重要である。比較する際に、各国の医療システム、人口密度、社会構造の違いを考慮に入れることが肝要である。他のインフルエンザウイルスの共感染循環や、あるウイルス株の他の株に対する優位性も、注意深く観察する必要がある。チリでは疫学第 21週に感染循環しているインフルエンザウイルスの 90%がインフルエンザ A(H1N1)ウイルスであり、米国でも第 22週に 89%に達していることが確認されている。他のインフ ルエンザウイルス株に対する、パンデミックウイルス株の優位性は、以前のパンデミックにおいても観察された現象であった。他の南の国々でもそのような現象 (A(H1N1)優位)が見られるとすれば、北半球でも同じ現象が起きると予測され、それに応じたワクチン接種や治療などの公衆衛生対策を適応させる必要がある。2009年4月の確認以来、メキシコと米国を中心にこの新たな [2009 swine-origin] influenza A(H1N1) virus に関する多くの疫学およびウイルス学的情報が得られた。しかしこれらの情報は、ウイルス感染拡大初期の状況を反映したものであって、次の冬期の状況を表すものではないかも知れない。従って南半球の冬期の状況をよく観察することは、北半球の冬のインフルエンザシーズンのより正確な予測とその準備に有用と考えられる。ただし、判明した事実の一部はその解釈を慎重に行わなければならず、そのまま欧州に当てはまるとは限らない。パンデミック対 策に当たる南半球の各国を支援する目的で国際的な協力が行われ、相互に利益がもたらされる必要がある。南半球のための追加資源、綿密な対象を絞った調査への協力、北半球での疫学的知見の蓄積が、予測される冬期のピークへの準備の向上につながる。 

PRO/AH> Influenza A (H1N1) - worldwide (67): comments on 1918 virus
Archive Number: 20090618.2251
 投稿者:加・Neil V Rau、2009年6月17日
1918ウイルスに関するコメント 
質問 1918年パンデミックではウイルスの変異によりその年の秋に感染状況が悪化したというのは本当か 
1918年のパンデミックでは、変異によってその年の秋に感染状況が悪化したというコメントがくり返されているが、そのウイルス学的根拠を示せる方がいるのだろうか? 北極で掘り出された遺体では、そのような詳しいレベルの情報は得られなかったと記憶している。20090617.2235 でも述べられていた。
[Mod.EP− このコメントは死亡率のデータに基づくものと考える。N Engl J Med. 2009 May 7: The Signature Features of Influenza Pandemics -- Implications for Policy には、全体の死亡率に占 めるインフルエンザによる死亡のグラフがあり、1918年パンデミックのコペンハーゲン Copenhagen のデータでは、インフルエンザによる全死亡の割合は、7月に 5%であったのが、11月には 60%に増加している。このことから、第2波においてより強毒性のウイルスが出現したと解釈でき、納得できる仮説だと思われる] 
[Mod.DK- 死亡に関するデータはよく知られていた。強毒性ウイルスの出現以外にも、この違いを説明する方法はいくつもあると思われる。感染した人口集団の違い、冬期の肺炎球菌やブドウ球菌の感染循環増加、他の病原体ウイルスの増加、高密度で低温の大気とともに、より毒性が強く大量のウイルスの吸入などがある] 
[Mod.TY- 1918−19年のパンデミックの時期の分離株の、遺伝学分析は不可能であることから、drift や mutation についての評価も不可能である。残された評価方法は、毒性を表す唯一の指数と考えられる、臨床症状の重症度と致死率の変化である。それらのデータが現在入手でき、信頼性があり、二次性細菌性肺感染を除外できるかについては確かではない] 
[Mod.LLー これまでに調査が行われた Frankenstein (reanimated:フランケンシュタインのように蘇った) 1918 viruses について、 春のウイルスから秋のウイルスになるまでの phenotypic(表現型)や genotypic(遺伝型)の変化に関するデータはない] 
[Mod.CP- 1918インフルエンザの犠牲者の固定・冷凍肺組織から得られた、完全な 1918インフルエンザウイルスの遺伝子塩基配列情報が入手できることから、このパンデミックウイルスの 8分節全てをリバースジェネティックス reverse genetics の手法で再生することが可能である。これにより、極めて強毒性であったその特性の研究が可能となる。現在のヒトインフルエンザ H1N1ウイ ルスと異なり、1918パンデミックウイルスはトリプシン Trypsin なしで増殖することが可能なため、マウスや有精卵を死に至らしめ、ヒトの気管上皮細胞での高成長という表現型が示された(Characterization of the Reconstructed 1918 Spanish Influenza Pandemic Virus. Science. 2005, Oct 7; 310(5745): 77-80; abstract )。この 1918ウイルスの塩基配列は aggregated material(塊)から抽出されたもので、生物学的なクローンウイルス株からではないと考えられる。知りうる限りでは、パンデミックの流行中に時間を隔てて採取された遺伝子塩基配列情報はなく、実際にヒトインフルエンザウイルスが初めて分離されたのは、ようやく 1930年代になってからのことである。 RNA 遺伝子を持つウイルスには、元来高い変異能力が備わっていることを除いても、単一のパンデミック発生期間中に特異的な遺伝学的変化が毒性変化の原因であるとはっきり言うことは、とても難しい作業である]

● インフルエンザ A(H1N1) (3件:64,65,動物)

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (66): new strain, sequence analysis
Archive Number: 20090617.2235
[1] ブラジル: new strain Brazil finds new strain of H1N1 virus 
 情報源: Breitbart.com, Agence France-Presse (AFP) report 、2009年6月16日 
ブラジルの研究者らがサンパウロ Sao Paulo の患者1名の検体を検査したところ、the [2009] H1N1 virus の新たな株が確認された。所属研究機関が 16日に明らかにした。カリフォルニア California で検出された the A (H1N1) swine flu の検体との比較を行った the Adolfo Lutz Bacteriological Institute により、この変異株は A/Sao Paulo/1454/H1N1と呼ばれている。この新たな亜型  the H1N1 virus の遺伝子配列は、ウイルス学チームによって解析された。新たな宿主への感染を可能にする the hemagglutinin [HA ヘマグルチニン]  protein に変化が見られたことが変異の理由である。この新株が WHO によりパンデミック宣言された現行の A(H1N1) ウイルスより強毒性であるかは不明である。H1N1ウイルスの遺伝学構造とその subvariants(変異)は、研究者らにとって重要事項である。製薬会社は、現行の A(H1N1)インフルエンザに対するワクチンの大量生産に動いている。より致死性の高い株に変異することにより、同じ A(H1N1)ウイルスである 1918スペインかぜ(インフルエンザ)のように世界中で多数の死者が出ることが懸念されている。WHO によると 76カ国で 36000人が H1N1ウイルスに感染し 163人が死亡している。 
[Mod.CP- この記事には the A/Sao Paulo/1454/H1N1 virus がこれまでに分離されている the novel 2009 A (H1N1) influenza virus とどの程度の相違点があり、現段階で発生系統樹のどこに位置するのかが明確されていない。これまでのところ the hemagglutinin gene である segment 4 の完全な塩基配列だけが GenBankに提出されている] 
[2] Sequence analysis Swine flu origins revealed 
 情報源: University if Oxford, press release 、2009年6月11日
the current swine-origin H1N1 influenza A virus(現行のブタ由来の H1N1インフルエンザ Aウイルス)について行われた新たな解析結果から、ヒトへの感染伝播が起きたのは現在の流行発生が確認される数ヶ月前であることが示唆された。11日のオンライン版 Nature に掲載されたこの論文では、ブタのインフルエンザに関する組織的サーベイランスの必要性を指摘し、ブタにおける新たな遺伝要素の発生がヒトのパンデミックを引き起こす能力を持つウイルスの新興につながる可能性があるとの証拠を提示している。Oxford で過去 10年以上にわたって開発されてきた computational methods(計算式・法)により、今回の新たなパンデミックの由来と時間経過を再構築することが出来たと、著者である Oxford 大学の研究者が説明した。研究結果によると、このウイルスはブタの間で感染循環していたもので、おそらく複数の大陸におよぶ範囲でヒトに感染伝播する数年前から循環していたと見られている。同氏はエジンバラ Edinburgh 大学の研究者らとともに,進化解析を用いて感染流行の発生源の時間経過と感染流行初期の展開について評価を行ったところ、このウイルスはブタの間で感染循環していた複数のウイルスを起源とし、発端となったヒトへの感染伝播があったのは感染流行に気づかれる数ヶ月前であると考えられると述べた。同チームは,ヒトでのインフルエンザサーベイランスは広い範囲で行われているにもかかわらず、ブタでの組織的なサーベイランスが行われていないことが,パンデミックの可能性のあるウイルスの存在と進化を数年間にわたって見過ごしてきた原因であると結論づけた。 
原著タイトル "Origins and evolutionary genomics of the 2009 swine-origin H1N1 influenza A epidemic 
要約 
2009年3月から4月前半にメキシコと米国で新たな swine-origin influenza A (H1N1) virus (S-OIV) が新興した。初期の数週間のサーベイランスの間(5月11日までに)、ヒト-ヒト感染を通じて世界 30カ国にウイルス感染が拡大し、WHO はパンデミックレベルを 6段階の 5まで引き上げた [その後 6に]。このウイルスによる 21世紀初のインフルエンザ大流行につながる可能性がある。今回われわれは、evolutionary analysis 進化解析を用いて、S-OIV 感染流行の起源の時間経過と初期の展開の評価を行った。ブタで感染循環する複数のウイルスを起源とし、発端となったヒトへの感染伝播が発生したのは感染流行が認識される数ヶ月前であることが判明した。遺伝学的サーベイランスの穴を埋める系統発生学的評価により、この S-OIV の感染流行以前に検体が採取されていないかなり以前からの祖先が存在し、ブタの系統ウイルスの再集合が起きたのはヒトでの新興の数年前であることが示唆される一方、S-OIV の複数の遺伝学的祖先が人工的に創造されたウイルスであることは示唆されなかった。さらに感染流行の検体が採取されていなかった歴史によって、近縁関係にある未発表のブタインフルエンザウイルス株は一括りにされていたが、遺伝学的に最も近いブタのウイルスの性質や発生地において、感染流行の直近の起源を示すものはほとんどなかった。今回の研究結果により、ブタにおけるインフルエンザの系統的なサーベイランスの必要性が示され、ブタにおいて新たな遺伝学的要素が混入することが、ヒトでのパンデミックの潜在性をもつウイルスの新興につながる可能性があるとの証拠が提示された。"]

PRO> Influenza A (H1N1) - worldwide (65): antivirals in pregnancy, corr
Archive Number: 20090617.2236
 投稿者:米・SUNY Upstate Medical University、Nicholas Bennett、2009年6月17日
20090616.2224 について: 妊娠中の抗ウイルス薬の使用、訂正
[Relenza は経鼻ではなく吸入薬である(欧米でも、訳者注)] 
(Mod.CP の間違いを指摘し)Relenza は an inhaled (but not intranasal:吸入薬であって、経鼻投与しない) formulation of zanamivir で、(oseltamivir とは)全く異なるneuraminidase inhibitor である。Relenza は吸入薬である点で幼児や挿管されている重症患者への投与が困難である。
一方 2008-2009の季節性インフルエンザ(豚インフルエンザではない)H1N1インフルエンザは、米国では 100% oseltamivir 耐性であったが、zanamivir には感受性を示した。来る冬期シーズンにおいて empiric および targeted の両面で治療上の問題が生じる可能性がある。ヒト H1N1では amantadine もしくは zanamivir の治療が必要になると考えられる一方で、ブタ由来の H1N1では oseltamivir への感受性が残されていることが期待されている。また、インフルエンザ Bは従来より amantadine への耐性があり、oseltamivir または zanamivir で治療される必要がある。
H3N2 ウイルスも、最近 amantadine への耐性が示されている。唯一の common drug(どれにも効果のある薬剤)は zanamivir であり、幼児や重症患者への empiric treatment としては併用療法(組み合わせ)が唯一の実行可能な対処法となるだろう。
これは 2008-2009シーズンでの推奨される治療であったが、ワクチンでのコントロールが限定的と見られる現状で、広範囲の感染流行発生時における薬剤供給上の ramifications(派生問題)として浮上するだろう。迅速診断法が薬剤によってカバーしなければならない範囲を狭める(=使用量減少)ことに寄与するが、多くの場所で使用することができず、multiplex PCR でさえ(診断までに)数日間かかる。

PRO/AH> Influenza A (H1N1): animal health (15), Egypt, pig cull
Archive Number: 20090617.2241
 情報源:Egypt Today Magazine, June 2009 -- Volume 30, Issue 06 、2009年6月17日
豚インフルエンザとしてもよく知られているインフルエンザ A(H1N1)に対して、世界中の不安が高まる中 2009年4月29日、エジプト保健人口相は全国の約 35万頭のブタを処分することを発表した。養豚業者と精肉業者らは動物は安全だとしてこの決定に反発した。政府当局はその後態度を変え、処分作業は豚インフルエンザが理由ではなく、一般的な公衆衛生環境の改善を目的としたものとしている。

● 発疹熱 米国
PRO/AH> Murine typhus - USA (02): (TX)
Archive Number: 20090617.2240
 投稿者:米・Pamela Alley、2009年6月17日
20090616.2228 について 
感染ノミとの接触の可能性のある全てのペット(外で飼われているネコ、イヌ、ウサギなど)の治療は、typhus(=発疹熱のこと?)の発生地域であれば、予防策の重要な部分として意味があるように思われる。種に応じた治療(例えばイヌ・ネコ用ノミ除去剤 Frontlineを、ウサギには使わないなど)を毎月決まって行うことで、各動物のノミだけでなく、地域全体のノミの数の減少にも効果がある。

● ブドウ球菌(MRSA) 欧州
PRO/AH/EDR> Staph. aureus (MRSA), human, animals - Europe: evaluation
Archive Number: 20090618.2255
 情報源:EFTA press release 、2009年6月16日
livestock, pets and foodsにおける、meticillin-resistant _Staphylococcus aureus_ (MRSA メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) に関する The European Food Safety Authority (EFSA), the European Centre for Disease Control and Prevention (ECDC) and the European Medicines Agency (EMEA) の合同研究報告

● ブルセラ症 カザフスタン
PRO/AH/EDR> Brucellosis, livestock, human - Kazakhstan: (WK)
Archive Number: 20090618.2245
 情報源:Meatinfo.ru [in Russian]、2009年6月15日
the West Kazakhstan region 西カザフスタン地方では 1万頭以上のウシがブルセラ症 Brucellosis に感染している。ウラル Ural の各精肉処理場は strengthened mode の状態にある(監視強化? 生産体制の強化?)。農業従事者らが多数の感染ウシを持ち込んでいる。大量の肉の処理を行うため、肉のパック詰め工場の作業も the strengthened mode であるが、ソーセージの店頭価格は下がっていない。過去数年間と比べ、感染したウシの数は増加傾向にあり 23万頭を超えるウシが検査された。感染発生が多かった地域は Dzhangalinsky, Akzhaiksky, Dzhanibeksky の各地区である。しかし専門家らは感染流行ではないとしている。感染ウシの再利用の問題も現実味を帯びてきた。ソーセージや缶詰めの肉の加温製造を経ていれば、Sanitary meat(衛生処理肉 ?)も使用可能となっている。感染拡大防止にはウシの処分が必要だが(家畜を)生活の糧としている全ての農家が処分を急ぐ必要はない。それでも感染肉の処理に合意した精肉加工場は、工業資源の不足から緊迫した状況に陥っている。生肉があまっているにも関わらず、全ての経済原則に反してソーセージの店頭価格は高止まりしている。

● ココアの病気,Black pod ガーナ
PRO/PL> Black pod, cocoa - Ghana: (AH)
Archive Number: 20090618.2244
 情報源:Modern Ghana, Ghana News Agency (GNA) report、2009年6月14日
the Produce Buying Company の Tafo [Ashanti Region アサンテ地方] District 責任者は、the black pod disease 根絶のため、地域内のココアに対する一斉噴霧消毒を強化するよう当局に要請した
[Mod.DHA − Black pod (別名 _Phytophthora_ pod rot) は、世界中のココアに被害を及ぼす主要な真菌疾患で、Africa における病原体は _Phytophthora palmivora_ と _P. megakarya_ である。南北アメリカにおいては、このほかに 2種類の種が確認されていて、 _P. palmivora_ が最も多く、高湿気候では損失が 95%におよぶこともある]