Q熱 オランダ
細菌性赤痢 ノルウェー、デンマーク:ケニアから Eurosurveillance
● インフルエンザ A(H1N1) アルゼンチン:ブタ OIE
原因不明の死亡 コンゴ(民)
● ウイルス性胃腸炎 イタリア ノロウイルス疑い
PRO/EDR> Viral gastroenteritis - Italy: (BS) norovirus susp.
Archive Number: 20090626.2331
投稿者:伊・IZSLER (検査機関)、Prof. Stefano Cinotti、2009年6月26日。
最近(数日間)、地方および全国紙で北イタリアの San Felice del Benaco という小さな町(Lake Garda 湖畔 [Brescia province, Lombardy region]) における数件の胃腸炎感染流行について報じられている。現在 2000人以上の患者が発生している様で、その臨床症状の程度は様々であり、100人以上が現地の病院を受診している。当局は水質汚染の可能性を疑っていたため、検査目的に水質と患者の糞便の検体が検査機関 IZSLER に送付された。公衆の水道および患者の糞便のいずれの検体からも、ウイルスや細菌など複数の病原体が検出された。この結果から、複数の病原体に汚染された水道水が感染流行の原因であることが示唆された。以前の norovirus genotype 1 and 2 感染例と非常に類似する、ウイルス性胃腸炎の症状と考えられる。
● Q熱 オランダ
PRO/AH/EDR> Q fever - Netherlands (04): fatalities
Archive Number: 20090626.2330
[1] 少なくとも 2人の Q熱による死亡が確認されている
情報源: Dutch News 、2009年6月25日。
Den Bosch 地方で少なくとも 2人のインフルエンザ類似疾患である Q熱 Q fever による死者が発生したと、25日に微生物の専門家が明らかにした。診断された後入院中であったが、合併症もしくは他の原因で死亡したと the Jeroen Bosch hospital の同医師が説明した。Q熱による入院患者の 1-2%が死亡することからさらに死者が増える可能性がある。期間は判らないが約 600人が Q熱で入院したと ANP は伝えている。2007年までオランダにおいて Q熱感染はまれであったが、その年に 168例の患者が報告された。2008年の患者数は 1000人を超えた。感染は尿や糞、出産やミルクを通じて細菌を排出する家畜によって伝播される。Q熱はヒツジやヤギでは流産がおきるが、 ヒトではインフルエンザ様症状を発症させ、肺炎を発症する場合もある。
[2] オランダで 3人が Q熱により死亡した
情報源: Expatica 、2009年6月26日
2009年、これまでにオランダで 3人が Q熱により死亡した。国立公衆衛生環境研究所が明らかにした。同所長は 2008年の死者は 1人であったが 2009年は 3人となったと説明した。死亡した患者は全て他の重篤な疾患を持っていた。2009年初以来、開業医らからおよそ 1429人の感染患者が報告されてい る。感染拡大防止のため [North]-Brabant, Limburg, and Gelderland の各州では 13万頭のヤギにワクチン接種を行う予定である。
[Mod.LL− Q熱の病原体には、動物との濃厚な接触により感染することが多いが、非常に少ない菌の量でも感染し、エアロゾル化されて距離の離れた場所にも飛散する。この記事では感染した患者らと動物にどのような接触があり、農場にどの程度近接していたかが記載されていない。病原体の _Coxiella burnetii_ が発見されたのは 1937年である。この微生物は熱や乾燥に耐性で、エアロゾルによる感染経路では非常に感染力が強い。たった 1個の吸入でも発病する可能性がある。実際ヒト以外の霊長類では 50%の個体の致死量が 1.7個であった。加熱 heat、乾燥、多くの一般的な消毒薬に抵抗性である。このため同菌は環境中に長期間生存する。この非常に安定性のある特性は _C. burnetii_ の compact small cell variants によるもので、やや抵抗性の落ちる大型細胞の標準複製時に再生され、代謝の面で休眠状態にあり芽胞のような型をとる。ヒトの感染は通常、感染動物の胎盤組織や羊水、排泄物に汚染された家畜小屋の大気中に舞う乾燥したホコリに含まれたこれらの菌を吸入することで成立する。ヒトは非常に感受性が強く、ごくわずかの微生物で感染する。より少ないが、汚染されたミルクの飲用後に逆流して誤嚥することによる感染経路もある。その他のヒトへの感染経路として、ダニ刺咬やヒト-ヒト感染などもあるが、まれである。]
● 細菌性赤痢 ノルウェー、デンマーク:ケニアから
PRO/EDR> Shigellosis, imported sugar peas - Norway, Denmark: (ex Kenya) susp.
Archive Number: 20090626.2328
[1] ノルウェー Norway
_Shigella sonnei_ infections in Norway associated with sugar peas, May-June 2009
情報源: Eurosurveillance edition 2009; 14(24) 、2009年6月18日。
ノルウェーでは赤痢 Shigellosis は報告義務のある疾患であり、分離菌は全て国立公衆衛生研究所に提出され確認検査および型診断が行われる。年間約 150例の赤痢患者が確認されており、その大部分が _Shigella sonnei_ による感染であった。毎年ノルウェー国内で感染した赤痢は 10−20例程度であり、ほとんどが家庭内での糞口感染による二次感染患者である。2009年5月27日、NIPH の国立中央研究所 Reference Laboratory は、4例の _Shigella sonnei_ 感染患者が関係する集団発生疑いの報告を受けた。患者らは、国内の異なる 2つの郡の住民で、発症前の海外渡航歴はなかった。同日市の医療機関の医師から、別々の 2家族における 5例の赤痢疑い患者発生の報告を受けた。
疫学調査:
5月27日に赤痢感染診断が確定した4人聞き取り調査が行われた。感染疑いの2家族らの訪問で、それぞれの家庭から同じケニアから輸入された sugar peas のパッケージが発見された。これらの sugar peas は同じ店で購入されていた。
微生物学的調査:
multilocus variable-number tandem-repeat analysis (MLVA 多位変数縦列反復解析 ?) 上、際だった特徴を示す _Shigella sonnei_ の分離菌が、感染流行の原因菌として同定された。食品検体については NMKL no. 174 (食品中の赤痢菌 _Shigella_ spp. 検出のための PCR 検査法) につづいて、immuno-magnetic separation (IMS 免疫磁気分離) および 選択培地への接種が行われた。PCR 陽性となった場合は、ヒトの diarrheagenic(下痢原性)_Escherichia coli_ および _Shigella spp._ 検出用に開発された octaplex PCR 変法を用いて、確認検査をおこなった。
結果:
6月16日までに指定研究機関に登録された,発病前の渡航歴のない _Shigella sonnei_ 感染流行の患者は 20例となった。患者らは異なる居住地の住民であるが、主にノルウェーの北部および西部の住民であった。初発例は 5月10日に発病した。10代の 1人を除き全員が成人で 16人が女性であった。20人の患者全てが sugar peas を食べていた。その他に共通の曝露源は認められなかった。ほとんどの患者が同じ大型スーパーチェーンの1つから購入していた。他のチェーンで購入した患者もあった。問題の sugar peas は全てケニア産であり、患者宅で回収された未開封のパッケージから PCR 法により _Shigella sonnei_ が検出された。しかし培養による確認はできなかった。
議論:
われわれの緊急要請に対し、デンマークから 2009年4月と5月の赤痢の患者数増加が報告された。ノルウェーの感染流行との関連性の調査が開始され、デンマークにおいても sugar peas が感染流行の原因であることが判明した。2つのスーパーマーケットのチェーンは、通常では同じ卸売りから購入することはないが、購入している場合もある。
[2] デンマーク Denmark
Imported fresh sugar peas as suspected source of an outbreak of _Shigella sonnei_ in Denmark, April - May 2009
情報源:Eurosurveillance edition 2009; 14(24) 、2009年6月18日。
上記流行と関連する内容、原文参照願います
参考資料 the US FDA (食品医薬品局) Center for Food Safety and Applied Nutrition, Bad Bug Book から
_Shigella_ が動物に感染 occur することはまれ; サルやチンパンジーなどの霊長類をのぞけば、基本的にヒトの病気である。ヒトの糞便に汚染された水からしばしばこの菌は検出される。The infective dose 感染に必要な菌量は、宿主の年齢や状態によるが、わずか細胞 10個である。The _Shigella_ spp. は糞口感染経路によって伝播される非常に感染力の強い病原体である。サラダ(ポテト、ツナ、エビ、マカロニ、チキン)、生野菜、ミルクや乳製品、家禽などの食品に関係する。これらの食品の汚染は糞口感染経路によっておきる。糞便で汚染された水や、食品の不衛生な取り扱いが汚染ルートとして最も多い。
[Mod.LL− _Salmonella_ (typhoid fever 腸チフスを除く), _E. coli_ O157(病原大腸菌O157), および_Campylobacter_ によるヒトの食中毒と明らかに異なり、赤痢はヒト(の糞便)による食品汚染によるものであって、動物の糞便は関係しない]
● 原因不明の死亡 コンゴ(民)
PRO/AH/EDR> Undiagnosed fatalities - Congo DR: (BC), hem fever susp, RFI
Archive Number: 20090626.2326
情報源:Agence Centrafrique Presse, Xiinhua News Agency report[in French]、2009年6月22日
Democratic Republic of the Congo (DRC コンゴ民主共和国) 西部の Mangala 村 (Bas-Congo [Kongo Central] 州都 Boma 市から約 30km)で、今も診断がつかない疾患によるおよそ 12人の患者のうち、数日間に 5人が死亡した。the Boma health district の医師の説明によると、(1件目の流行である)感染流行の発生中心と考えられる the rural health zone of Boma Bungu では、5人の患者が報告され、ただ 1人 35才の男性が生存中である。(2件目の流行の)男性 2人、女性 1人、および 14才の少年が入院中で 4 歳児 1人が死亡した。潜伏期間に関する情報は明かされていないが、吐血と下血および鼻出血が特徴であると述べられている。政府や海外からの支援が届くま で、抗生物質・制酸薬その他の tonics や、輸液 transfusion and rehydration による治療が行われている。血液および便検体はキンシャサ Kinshasa の the INRB (National Institute for Biomedical Research 国立生化学研究所) に送付された。エボラ出血熱に似た症状のこの疾患により、Boma の住民らはパニックになっている。これまで DRC においてエボラ出血熱が発生したのは 1976および 1977年のEquateur (West), 1995年の Bandundu (West), 1999年と2000年の Orientale (Northeast), 2007年と2008年の Kasai Occidental (Center) においてである。
[Mod.MPP− DRC における出血熱の鑑別診断にはより "common(一般的な)" レプトスピラ症、黄熱、マラリア、クリミアコンゴ出血熱、デング出血熱などがある。より "exotic(例外的な)" エボラ、ラッサ、マールブルグウイルス性出血熱は、the Bas Congo region から報告されたことはないが、DRC 国内の他の地域や隣国のアンゴラでは報告されている。2004-5年にはアンゴラにおいて大規模なマールブルグ出血熱の感染流行が発生した。地理的な面から言えば、DRC の Boma はアンゴラとの国境間近にあり、マールブルグ出血熱の感染流行があったアンゴラ北部の Uige は DRCとの国境付近にある。DRC では以前からエボラ出血熱が報告されている;Kasai Occidental province in 2008-2009, in Equateur Province in 2008, in Kasai Occidental province in 2007, in Bandundu Province (Kikwit) in 1995, in the then Haut Zaire province (Tandala) 1977, and Equateur province (Yambuku) 1996 。DRC においてマールブルグ Marburg hemorrhagic fever が発生したのは: 2002年の Orientale (Watsa) と、1998−2000年の Orientale Province (Durba) である。ニュース記事によると、抗生物質などの併用療法により治療されていることから、細菌性の病原体が想定されているのかも知れない。疫学や検査上の調査に関する情報提供が待たれる]
● 鳥インフルエンザ ロシア
PRO/AH/EDR> Avian influenza (46): Russia (TU) wild birds, OIE
Archive Number: 20090626.2324
[1] Highly pathogenic avian influenza, Russia
情報源: OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2009; 22(26)、2009年6月25日
感染開始時期 2009年6月11日、終息
前回流行時期 2008年5月8日
原因ウイルス highly pathogenic avian influenza virus Serotype: H5N1
新たな感染流行 発生地 Ubsu-Nur, Ovursky, Respublika Tyva
種/個体数/感染/死亡/廃棄/と畜/ワクチン接種
Wild species / / 58 / 58 / 0 / 0
感染経路 野鳥との接触
[2] Re: Russia's immediate notification report sent to the OIE on 24 Jun 2009 OIE
投稿者: Wildlife Conservation Society、Martin Gilbert、2009年6月25日
ロシアと湖岸で接するモンゴル西部の湖 Uuvs Nuur [Ubsu-Nur] において、HPAI H5N1 感染流行が確認された。この状況は 2006年および 2009年の中央アジア地域において、中国・青海省の野鳥で HPAIが確認された(2006 年5月と2009年5月)のち、モンゴル中西部で感染流行が発生し(2006年5月と2009年5月)、さらに Uuvs Nuur (June 2006 and 2009 同6月) に野鳥の感染流行が確認されるまでのパターンと、驚くほど似た状況が続いている。これは、サーベイランスの範囲の偏りによるものである可能性は低い。なぜな 、モンゴル国内においては the National Emergency Management Agency(非常事態省), State Central Veterinary Laboratory(中央獣医学研究所)and Mongolian Academy of Sciences(モンゴル科学学会)のみならず、非政府協力組織(non-government partners)である the Wildlife Conservation Society (野生生物保護協会)も加わって、全国の水禽生息地のほとんどをカバーしてサーベイランスが行われているからである。夏から秋までの期間を通じてモンゴルでのサーベイランスは続けられ、今後の動向が注目される。
● インフルエンザ A(H1N1) アルゼンチン:ブタ OIE
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1): animal health (16), Argentina, swine, OIE
Archive Number: 20090626.2322
情報源:OIE, WAHID (World Animal Health Information Database), weekly disease information 2009; 22(26)
感染開始時期 2009年6月15日、初報告
新興疾患 人獣共通感染症としての影響 [in Spanish] 現在調査中、感染したヒトとの接触が疑われるため
原因ウイルス A/H1N1 influenza virus
Serotype: other
発生地 ブエノスアイレス: Buenos Aires (San Andres de Giles, San Andres de Giles)
biosecurity measures が実施され自社で restocking system を保有する商業的養豚場 (4.5-hectares area) でブタ以外は飼育していない:(飼育動物の内訳)516 sows(メス), 7 hogs, 2900 castrated(去勢) pigs, 58 young sows, and 2105 sucking pigs(乳で育てられているブタ)。
疫学コメント 6月7−9日の間に、2人の従業員がインフルエンザ症状を発症しているが、受診していないため、診断検査が行われていない。own restocking system を保有している。最終の動物搬入は 2008年7月。biosecurity measures を実施しており、処分される以外にブタは農場から出ることはない。6月24日以降、施設内のブタで臨床症状は認められていない。
[Mod.AS− 上記の RT-PCR の陽性結果が、現在のパンデミックの原因である新型インフルエンザ A(H1N1) ブタウイルス感染を意味するので有れば、世界中で 2番目のブタでの感染確認例となる。最初の感染例は 2009年4月にカナダで発生した。アルバータ Alberta 州の商業的農場のブタでパンデミックウイルスが確認されている。今回のアルゼンチンの情報では、米国や英国でのブタでの感染実験もそうであったようにブタの A/H1N1 ウイルス感染は事実上無症候性である。カナダの感染において、当初疑われたメキシコから帰国した人物による感染導入は、後に否定されている。今回のアルゼンチンにおけるブタの感染源としての 2人の関与に関する調査結果が強い関心を持って待たれる]
● バナナの病気,Yellow sigatoka、leaf speckle オーストラリア
PRO/PL> Yellow sigatoka, leaf speckle, banana - Australia: (QL)
Archive Number: 20090626.2321
情報源:North Queensland Register 、2009年6月25日
Biosecurity Queensland BQ の当局者によると、最近の湿潤気候は yellow sigatoka や speckle disease などの他の病気の拡大に好適な状況となっている。Sigatoka disease はバナナの成育に影響し収穫量の減少につながると述べた。Leaf spot diseases は降雨や露の影響を受け、風で 30kmも飛ばされて他の地域にも拡大すると説明した。
[Mod.DHA− Yellow sigatoka (YS; sigatoka leaf spot) は、真菌の _Mycosphaerella musicola_ を原因とする。類縁の _M. fijiensis_ (black sigatoka, BS; black leaf streak) や、その他の属の多数の真菌によっても、同様の leaf spot symptoms が世界中で発生している。現場での鑑別は困難であり、正確な診断を行うには検査室での解析が必要である...]