2009年6月6日-7日

マラリア カンボジア artemisinin 耐性,ガボン Plasmodium gaboni
ライム病 ウクライナ

● マラリア カンボジア artemisinin 耐性,ガボン 
カンボジア
PRO/EDR> Malaria - Cambodia, artemisinin resistance
Archive Number: 20090607.2113
 情報源:BBC News、2009年5月28日
Western Cambodia の小さなコミュニティにおいて,マラリア Malaria 原虫が薬剤耐性を獲得した原因について科学者らは頭を悩ませている。Battambang Province の教師が 2009年5月18日に悪寒、発熱、頭痛、嘔吐を発症した。近くの医療センターで熱帯熱マラリアの "silver bullet(特効薬)" とされる薬剤により治療された。それは artesunate 薬による治療で、the US Armed Forces Research Institute of Medical Science (AFRIMS 米軍の医療研究機関) の臨床研究の一部として行われた。以前は artesunates により 2−3日で血中からマラリア原虫が駆逐された。しかし治療監視の 4日目になっても、この教師である患者の検査は陽性のままであった。この研究に携わる医師は、この患者以外にもこれまでに調査された約 90人の患者のうち,およそ 1/2〜1/3 が治療開始 3日後も検査陽性であり、一部の患者は 4から5日後でも陽性であったと述べた。artesunate の効果が明らかに以前より緩慢となっており、マラリア原虫がこの薬剤に対するある種の tolerance を獲得したか、もしくは薬剤の効果が less sensitive である(弱まっている)可能性があると考えられるが、その理由は分からないと述べた。これらの早期に判明した結果は十分に検討される必要があるが、artemisinin 関連の薬剤に対する耐性が生まれ始めている可能性があることが懸念されると述べた。この薬剤は、現在ある薬剤の中で群を抜いて最も有効性の高い薬剤であり、今後数年間は新たな薬剤が登場するという情報はないと説明した。研究者らは過去 2世代の抗マラリア薬が耐性によ り有効性を失ったことから、特に不安を強めている。そしてこれらの薬剤耐性例がふたたび Western Cambodia で発生した。この地域が抗マラリア薬の耐性の温床となっている確かな理由は分かっていない。医学的な監視に基づかない、薬剤の不適切使用が一因かも知れない。政府系クリニックの薬剤不足や閉鎖のため、患者らの多くが薬剤を求めて私立クリニックを受診する。 
Coloured tablets: 記者が訪れた Pailin's general market マーケット内の衣料品の店と食料品店に挟まれた小さな薬局の薬品は、全て認可薬と思われるが店主自身は免許を持っていなかった。一度筆記試験を受けたが不合格だった。他の薬局も同じと店主は話した。彼と妻はガラスのショーケースの上で数種類の coloured tablets を混ぜ合わせて、ラベルの貼られていないビニル袋に入れた自家製の薬剤(薬包)を調合していた。この種の薬局では,客は主に値段を見て欲しいものを選んでいく。受けるアドバイスの質も玉石混交で、その結果間違った組み合わせの間違った薬剤を服用し、耐性化に油を注ぐことになる。市場で偽薬が手にはいることは問題の一面でしかない。他の研究者も artesunate-type drugs の有効性低下を指摘している。過去,マラリア薬の耐性化がアフリカで多くの命を奪った。またアジアからアフリカに耐性マラリアが拡大すれば、マラリア対策に壊滅的影響を与えると、研究者は警告している。Pailin から未舗装の道を車で1.5時間ほど行ったジャングルの空き地で、およそ 200人の 住民に蚊帳が配られていた。
[Mod.JW− 参考文献: (Tjitra et al. (2008) Multidrug-resistant _Plasmodium vivax_ associated with severe and fatal malaria: A prospective study in Papua, Indonesia. PLoS Med 2008;5:e128)] 
[Mod.YMA− Artesunate は the qinghaosu or sweet wormwood plant の抽出物で、artemisinins と呼ばれる種類の薬剤である。Artesunate は脳マラリアなどの重症マラリアの治療において有効であり、chloroquine(クロロキン)- および mefloquine(メフロキン)- resistant strains of _Plasmodium falciparum_(耐性熱帯熱マラリア)に対しても治療効果を示す。偽薬の抗マラリア薬使用、artemisinin 単独療法による不十分な治療、処方箋や医学的根拠のない発熱疾患に対する抗マラリア薬の使用などによって、artesunate 耐性マラリアの耐性が誘導されている可能性がある。2009年1月に the Thai-Cambodian border において,artemisinin combination therapy (ACT artemisinin 併用療法) に対する耐性増加の報告もある。バッタンバン Battambang province はタイとの国境にある。] 関連項目 20090127.0371 
地図 Cambodia with provinces

ガボン チンパンジー
PRO/AH/EDR> Plasmodium gaboni malaria, chimpanzees - Gabon
Archive Number: 20090607.2104
 情報源:PLoS Pathogens 、2009年6月6日
フランスとガボンの研究者らは、アフリカ中央部のチンパンジーの,新たな種類のマラリアPlasmodium 感染が確認されたことを報告した。PLoS Pathogens 誌に掲載されたこの論文では、_Plasmodium gaboni_ と呼ばれるこの新たな種がヒトの最重症型のマラリアである _Plasmodium falciparum_ (熱帯熱マラリア) と近い関係にあるとしている。この研究者らはガボンのある村で行った 19頭のチンパンジーの調査により、新種のマラリア原虫Plasmodium を発見した: 2頭のチンパンジーでこの寄生虫の感染が確認され、ミトコンドリア遺伝子の塩基配列から Plasmodium の新たな種であり、熱帯熱マラリアに非常に近いことが判明した。ヒトとチンパンジーに感染するマラリアの関係性の解明の助けとなる重要な発見だとしている。

● インフルエンザ A(H1N1)
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (58): USA, Africa
Archive Number: 20090607.2109
[1] 米国 (Ohio) 
 情報源:The Columbus Dispatch 、2009年6月5日
豚インフルエンザ Influenza  [A(H1N1)] ウイルスに感染しているというだけで、感染流行の監視に当たっている公衆衛生関係者が必ずしもその患者を追跡するわけではない。
最近郊外の Columbus 在住の 11才の少女が、Nationwide Children's Hospital 小児病院の検査でインフルエンザ A陽性と診断され、豚インフルエンザ感染の恐れがある。Far North Side の診療所で彼女の診察に当たった小児科医は病院に検査を委託し,オハイオ Ohio 州政府が H1N1ウイルスの確認を行うものと考えていたが、州当局は CDC のガイドラインの対象外としてこの検査を行わなかった。ガイドラインは流行初期から流動的で、一部の患者だけを検査するよう求めてきた。現在のガイドラインでは具体的に、入院を要する患者、感染者との接触者,または集団発生例に関して豚インフルエンザの検査を行うよう求めている。parameters を絞り込むことで、これまでのところ比較的軽症である感染流行の変化をより適切にモニターすることを目的としていると公衆衛生当局者が述べた。可能性例の精査は断られるのが通例である。この 11才の患者の両親は確定診断を希望してカリフォルニア California 州の私立の検査機関に 300USDを支払い検査を行ったところ、豚インフルエンザが確認された。この少女は回復して現在自宅にいる。州当局は 3日この患者を合計に加え、現在の確定患者は Franklin County の 2例を含む 35例となっている。4日、35才の女性が豚インフルエンザ感染と診断され、もう 1名は 13才の少女であることが明らかにされた。当局は、患者の希望は理解できるが、個々の診断はウイルスの追跡作業の中で必ず行わなければならないことではないと説明した。H1N1 がどの方向に向かっているかを示す患者の発見に努めることが whole point(大事)と述べた。4日、NPO の Trust for America's Health は豚インフルエンザ感染流行の関して次のような見解を発表した  
* パンデミック計画の Investments(施策)は paid off(成功している) 
* 公衆衛生当局は計画実施に必要なリソースを持っていない 
* 対応策は順応性があり、科学的に進めなければならない 
* 明確・直接的な情報が、市民の不安の解消と信頼構築に最も重要 
[2] Africa アフリカの 6カ国の8人の患者の検査を実施 
 情報源:Panapress、2009年6月4日
WHO は現在アフリカの 6カ国の 8人の患者について豚インフルエンザ [A(H1N1)] ウイルスの検査を実施しているが、今のところアフリカ大陸で感染が確定した症例はないとしている
[Mod.JW− エジプトで1例確定]。4日に得た独自の情報によると、3日現在調査されている患者はナミビ ア、カーポベルデ、エリトリア、ガンビア、南アフリカの各1名と、コンゴ民主共和国の 3名である。このような状況下で WHO はパンデミック警戒レベル 6 への引き上げを検討している。
地図 the African countries mentioned above  

● 狂犬病 アンゴラ,中国(2件)
アンゴラ
PRO/AH/EDR> Rabies, canine, human - Angola (07): (UI)
Archive Number: 20090607.2106
 情報源:ANGOP [in Portuguese]、2009年6月4日
ウイジェ Uige市 で 2009年1月から4月にかけてイヌに襲われた 830人のうち、6人が死亡したと市のワクチン拡大接種計画担当者が述べた。
地図 Uige city in Uige province in northwest Angola 

中国 陝西省
PRO/AH/EDR> Rabies - China (02): (SA)
Archive Number: 20090607.2105
 情報源:China View 、2009年6月1日
2009 年3月以降、陝西省では狂犬病 Rabies により 8人が死亡し、2人が感染が疑われて入院となっている。一方、イヌに襲われた人は 5523人に上っていると市農業当局長が発表した。3月21日にはじめての死者が発生し、2人が狂犬病感染を疑われ入院治療中であると述べた。37万頭以上のイヌが生息する市内では 1985年から 1992年にかけて 35例の死亡 [ヒト?] が報告されていた。5月23日から 6月1日にかけて個別訪問によるイヌへの強制ワクチン接種を実施し、飼い主には鎖につなぐか道路に出ないようにするよう求めている。

● クリミア・コンゴ出血熱 ロシア
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Russia (04): (ST)
Archive Number: 20090606.2098
 情報源:RIA Interfax [translated]、2009年6月3日
the Stavropol region (スタブロポリ) では、流行に迫る勢いで Crimean-Congo hemorrhagic fever [クリミア・コンゴ出血熱 CCHF] が発生している; 各地から 13人の患者が報告された [前回投稿時は 7人] Apanasenkovskiy (3), Arzgirskiy (3), Neftekumskiy (2), Turkmenskiy(2), Ipatovskiy (2), and Andropovskiy (1)... 
[Corr.BA− 2008年には死者 6人を含む 80人の CCHF が発生する感染状況の悪化が見られた] 

● ダニ媒介性脳炎 ロシア
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Russia (04): (SV)
Archive Number: 20090606.2097
 情報源:IA: rg.ru [translated]、2009年6月4日
Sverdlovskaya スベルドロフスカヤでは、2009年初から 10733例のダニ刺咬が記録され、119人の患者のダニ媒介性脳炎 Tick-borne encephalitis が確認されている。5月 Rege で71 歳の男性が死亡した。この男性は自分でダニを除去し医療機関を受診しなかった。この前日、Tavde で 72歳の男性1名が死亡している。いずれの患者もワクチンを接種していなかった。当局はワクチン接種状況が望ましいものではない例があるとしており、7歳児に接種する体制が採られているものの、定年後の人々は接種を受けない。ワクチン接種計画は 21%しか達成されていない。parks(公園?)での抗ダニ治療が完了したのは 60%である。専門家らによると、2008年と比較して 2009年にはダニが増加すると見込まれている。 
地図 Sverdlovskaya oblast in central Russia 

● ライム病 ウクライナ

PRO/AH/EDR> Lyme disease - Ukraine: (DT)
Archive Number: 20090606.2095
 情報源:Politbayki [translated]、2009年6月4日
ダニの刺咬によるライム病 Lyme disease の患者は合計 36人となっている [2009年の合計?]。ダニの活動性の最盛期であるこの時期には連日 300体のダニが持ち込まれ、疫学者らが検査に追われている。ダニが大量に自然発生する地域は the Slavyanivsky district, Krasniy Liman, Druzhkovka, and Konstantinovka である。the "Kleban-bull" park, Velikoanadolsky forest, and in the Putylovsky forest (in Donetsk)でも多くのダニの発生が認められる。 
[Mod.NP− Lyme disease はウクライナのキーウ Kiev,  Dnepropetrovsk, Donetsk など多くの地域で発生している。ロシア国内では 72の地方で報告がある。Lyme 病が報告されている地域はダニ媒介性脳炎の発生地域より広い。] 
[Mod.ML- 以下は 20080723.2234 からの引用である 
Lyme borreliosis はウクライナのすべての自治体から報告されており増加傾向にある。この地域における the main vector of _Borrelia burgdorferi_ は The hard tick _Ixodes ricinus_ である。 
参考文献と要約:  Study of Lyme borreliosis in Ukraine. Lviv Research Institute of Epidemiology and Hygiene, Lviv, Ukraine. Int J Med Microbiol. 30 May 2008 
(Note: strangely, this URL does not work any more, and PubMed does not list this paper, nor any such journal as the Int J Med Microbiol.! -Mod.JW) 
要約:
ウクライナのすべての自治体とクリミア自治共和国 the Autonomous Republic of Crimea 国内において human Lyme borreliosis (LB) の患者が報告されており、増加傾向にある。LB の病原体である Borrelia burgdorferi s.l. の the main vector は The hard tick Ixodes ricinus であった。LB の発生が集中する地域では I. ricinus ticks の成虫のおよそ 25%が borrelias を保有しており、人口の 30%以上が Lyme borreliae の血清抗体を有していた。the LB agent (s) の感染伝播サイクルにおける Mus musculus, Microtus arvalis, Myodes glareolus, Apodemus agrarius, and A. sylvaticus の役割が明らかになった。LB と TBE  (tick-borne encephalitis ダニ媒介性脳炎) の発生地域の重なりと、ヒトでの混合感染が、8 oblasts から報告された。LB の様々な臨床症状には considerable spectrum(かなりの幅) が認められた:患者の 64.9%に erythema migrans [移動性の皮膚紅斑] 、26.9% に神経症状、24.7%に rheumatic affliction (症状)、8.3%に心血管障害が認められた] 

● 馬インフルエンザ インド
PRO/AH/EDR> Equine influenza - India (04): (UT), update
Archive Number: 20090607.2112
 情報源: Horsetalk 、2009年6月5日
インドで長期間発生が続いている馬インフルエンザ Equine influenza の最新症例が Uttaranchal [Uttarakhand] 州で発生したと動物衛生の世界機関が最新報告の中で明らかにした。州内の 5か所の村で報告されている。 Ukhimath, Gaurikund and Rudraprayag において感染が深刻化しており、合計 114例が発生している。他の地域でも 2−24例が発生している。

● 炭疽 インド
PRO/AH/EDR> Anthrax, ovine - India (02): (GJ) bovine RFI
Archive Number: 20090606.2103
[1] Anthrax is not new to Dehgam
 情報源: Times of India、2009年6月4日
現在炭疽 Anthrax 感染流行の発生の中心地である Nandol village(Dehgam taluka)において、炭疽感染が発生したのは初めてではない。3年前 Bhaiyal village(Nandol から 20km) において、数頭のウシが原因不明の病気で死亡した。その後、この地域で炭疽菌が確認された。
 [2] Government on tenterhooks as cattle die of anthrax
 情報源: Times of India 、2009年6月4日
35頭のウシが炭疽感染により死亡したことにより、州政府当局は Dehgam ですべてのウシにワクチン接種を行うことを決めた

● 鳥インフルエンザ 中国 H5N1
PRO/AH/EDR> Avian influenza (42): China (QH) poultry, wild birds, OIE
Archive Number: 20090606.2096
 情報源:OIE WAHID (World Animal Health Information Database) Disease Information 2009; 22(23)、2009年6月4日
感染開始時期 2009年5月8日 
前回流行時期 2006年6月 
原因ウイルス Highly pathogenic avian influenza virus Serotype: H5N1 
新たな感染流行 
発生地 Nanhai Prefecture, Nanhai Prefecture, QINGHAI (青海) 
感染種 野鳥 162羽死亡 (予防策として家禽 23903羽処分)

● 小麦の病気,Spot blotch パキスタン
PRO/PL> Spot blotch, wheat - Pakistan: (PB, SD)
Archive Number: 20090606.2094
 情報源:South Asia Partnership Pakistan, The Dawn report 、2009年6月3日。
シンド Sindh 州とパンジャブ Punjab 州では、様々な要因(早い時期からの病気の発生、作付けの遅れや品種、気候など)により収穫量の損失が生じており、地域により損失の程度の差が見られる。各地で採取された葉の検体の検査の結果、葉に black irregular spots の症状が見られた病気は  "_Bipolaris sorokiniana_" spot blotch、別名helminthosporium leaf blight (HLB) であることが確認された。
[Mod.DHA- 小麦や大麦の Spot blotch は、複数の the fungus _Cochliobolus sativus_ (synonym _Bipolaris sorokiniana_) が原因とされている]