2009年6月8日-9日

腸チフス 米国,小集積
エーリキア症 米国

● 腸チフス 米国
PRO/EDR> Typhoid fever - USA: (TN) cluster
Archive Number: 20090608.2120
 情報源:Chattanooga (TN) Times Free Press 、2009年6月6日
現地保健当局は、途上国に多い死亡する可能性のある病気である腸チフス Typhoid fever と診断された 2人の患者と、感染の可能性のある 1人を確認した。Chattanooga で腸チフスの患者が発生したことがないわけではないが、通常海外旅行中の感染であったと当局者は説明した。この感染のあった小児らは、最近テネシー Tennessee 州から出たことはなかったと述べた。これまでとはやや異なるが,全米でこのような例が発生しているとした上で、感染源の調査が行われていると説明した。患児ら 3人は回復した。
[Mod.LL− Typhoid fever は _Salmonella enterica_ subtype Typhi を原因菌とするヒトの病気で、まれなサルモネラ菌感染症であり、人獣共通感染症ではない。米国など先進国の患者のほとんどが輸入例で、水系感染が頻繁に発生する地域と違い、汚水処理が適切に行われているため二次感染患者が発生することはない。この患者らは疫学的には単一の感染源に起因すると考えられる。以前 1906年の 8月に New York City 郊外の富裕層の居住地域である Oyster Bay, Long Island のある夏の別荘で、_S. typhi_ の集団発生が起きた。今日でも有名なこの集団発生は、食事係でチフス菌のキャリアでもあったアイルランド移民 Mary Mallon が関係していたため、彼女は "Typhoid Mary" と呼ばれている。21世紀に入ってからも米国ではいくつもの小集積が発生してい。

● エーリキア症 米国
PRO/AH/EDR> Ehrlichiosis - USA (02): (MO) fatal
Archive Number: 20009608.2116
 情報源:stltoday.com、2009年6月6日
セントルイス St Louis 地区の 74才の男性が、今週ダニが媒介するエーリキア症 ehrlichiosis により死亡したと 9日州衛生当局が発表した。 Ehrlichiosis は Rocky Mountain spotted fever ロッキー山紅斑熱に似た病気で、インフルエンザ様症状が現れるがまれに腎不全や呼吸障害などの合併症がおきる。この男性は北東部ミズーリ Missouri 州への釣行のあと、身体にダニが付いていることに気づいた。当局は男性に持病があったことが死亡につながったとしている。2008年、州内では記録的な数 (668) のダニ媒介性疾患が発生した。当局は昆虫忌避剤の使用と共に、アウトドアでの活動後皮膚のダニに気をつけるよう呼びかけている。 
[Mod.ML− 20090520.1887 で報告された。Missouri では 2009年、このほか 8例が報告されている。] 
診断と治療のガイドライン(ダニ媒介性リケッチア疾患 IDSA CDC):MMWR 2006; 55(RR04); 1-27 

● インフルエンザ A(H1N1)
PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (60): Egypt (Cairo)
Archive Number: 20090609.2128
 情報源:Angola Press Agency (Angop) [in French]、2009年6月10日
the American University of Cairo の外国人学生 2人のインフルエンザ A(H1N1) ウイルス感染が確認され、残る 140人の学生らが隔離措置されていると,医療関係者らが明らかにした。マスクをつけた警官らがナイル川の両岸に挟まれた the Zamaleck area にある学生寮の門の前に立っており,寮の出入りが禁止されている。発熱があった 3人目の学生も入院した。全学生が検査された。エジプト初のインフルエンザ感染患者が確認されたのは 2009年6月2日で,休暇でカイロ Cairo を訪れていた 12才のアメリカ人の少女であった。同時にアフリカ初の患者でもあった。

PRO/AH/EDR> Influenza A (H1N1) - worldwide (59)
Archive Number: 20090608.2117
[1] アジア アジア各国の確定患者数
 情報源: PRO/MBDS、2009年6月5日
[2] News briefs: 6-7 Jun 2009 

● 狂犬病 中国
PRO/AH/EDR> Rabies - China (03): (SA)
Archive Number: 20090609.2127
 情報源:Xinhua News Agency、2009年6月9日
北西部・陝西省の Hanzhong 漢中市で新たに 2人が狂犬病 Rabies により死亡し、3月以降市内で狂犬病により死亡した人の数は 11人となった。この 2人の死亡患者はいずれも女性で、1人は58才、もう1人は56才であったと現地当局者が述べた。初めての死者が報告されたのは 3月21日で、市内でイヌの咬傷を受けたヒトの数は 6256人に上る。約 3万35900人が予防接種を受けた。市内には 37万頭以上のイヌが生息しているが、1985−1992年の間の狂犬病の死者は 35人であった。
[Mod.TY− 恐らく 20090607.2105 の入院治療中であった患者 2人と思われる] 

● 肝炎 パキスタン
PRO/EDR> Hepatitis, viral - Pakistan: (SD) fatal
Archive Number: 20090609.2125
 情報源:Regional Times 、2009年6月9日
Jan Muhammad Jamali 村(New Saeedabad 近郊 [Matiari District, Sindh シンド州]) で汚染された水の摂取により 4人が死亡し、ほか 460人が肝炎 Hepatitis と診断された。数日前にこの村で 3人が死亡する下痢症の集団発生のあと、汚染された水の摂取により肝炎が広がった。この流行で 4人が死亡し、ほか 460人が肝炎の検査で陽性となっていると報告されている。 当局は 9日に村に臨時のワクチン接種キャンプを立ち上げた。
[Mod.TY− 報告では肝炎流行の病原体は示されていない。2007年の パキスタン政府当局の肝炎対策担当者の話を伝える報告によると、国内の B型肝炎の発生率は 3-4%で、C型肝炎は 5-6%におよんでいる。A, B, C, D, E の 5つのタイプの肝炎があり、不衛生な食品や水の摂取により Aおよび E型肝炎が発生している(20070306.0796)] 
地図 Sindh Province can be located on the map of Pakistan

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (101): Egypt, 79th, 80th cases
Archive Number: 20090609.2123
 情報源:Egyptian Chronicles 、2009年6月8日
保健省は、4才の少女が H5N1インフルエンザ Avian influenza ウイルスに感染したと発表した。80例目の感染者である。Dakahlia Governorate "Delta" の住民である。この女児は 5日に発症し 6日にthe Mansoura fever hospital に入院した。Tamiflu が投与され状態は安定している。まもなく Manshiat El-Bakery hospital に転院となる予定である。 
[Mod.TY− 79例目の患者 [a 17-month-old boy in Damietta Governorate] が報告されている; on 5 Jun 2009, in the Egyptian Chronicles ] 
地図 the Dakahlia Governorate in northeastern Egypt, Nile Delta  
地図2 the neighboring Damietta Governorate 

● ダニ媒介性脳炎 ロシア
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Russia (05): (KK)
Archive Number: 20090609.2122
 情報源:Epidemiolog.ru [in Russian]、2009年6月6日
先週 334人がダニ刺咬を理由に受診した。シーズン開始以来 2956人がダニの刺咬を受けた。2008年の同期比で 1.4倍となっている。ダニによる被害が最も多く発生しているのは、Sayanogorsk 近郊, the Tashtypsky, Shirinsky, Beysky, Bogradsky, Askizsky 各地区の森林地域、the Krasnoyarsky region の境界域である。Sayanogorsk 地区住民の夏期居住区である Cheremusky および周辺地区が最悪で、毎週 100−130人のダニ刺咬患者が記録されている。受診者の 20%以上が TBE ウイルスのワクチンを接種していなかった。共和国内で Tick-borne encephalitis と診断されたのは 17人; the Shirinsky and Tashtypsky districts の各3人, Abakan, Sayanogorsk, Abaz cities, and Askizsky districts で各 2人となっている。18人が Lyme diseaseと診断された; 2000年の感染者は 10人であった。taiga ticks にも感染していた。the Shirinsky, Bogradsky and Beysky districts では、ダニ駆除活動が行われた。

● デング熱
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2009 (23)
Archive Number: 20090608.2121
In this update:
[1] Brazil (Mato Grosso)
[2] Brazil (Bahia)
[3] Brazil (Espirito Santo)
[4] Western Hemisphere tropics
[5] Philippines
[6] India (Kerala)
[7] Saudi Arabia
[8] The Americas & Pacific

● ダニ媒介性回帰熱 米国:背景  
PRO/AH> Tick-borne relapsing fever - USA (02): background
Archive Number: 20090608.2119
 情報源: G

● 口蹄疫 中国
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease, bovine - China (05): (SD) serotype A
Archive Number: 20090609.2129
 情報源:China News.com 、2009年6月8日
農業省広報当局は 8日、Bincheng District(Binzhou City of Shandong Province 山東省) の農村部で Type A Foot & Mouth Disease [FMD 口蹄疫] が確認されたことを明らかにした。感染した 33頭のウシは全て発病した。

● 鳥インフルエンザ ワクチン、感染伝播
PRO/AH> Avian influenza (44): vaccine, transmission
Archive Number: 20090609.2126
[1] New vaccine
 情報源: The Poultry Site 、2009年6月8日
the WHO Collaborating Center for the Surveillance, Epidemiology and Control of Influenza at the Centers for Disease Control and Prevention (WHO CC), Atlanta, USA により、A/Egypt/2321-NAMRU3/2007 (H5N1; Clade 2.2.1) から新たな H5N1リコンビナントワクチン用ウイルス株が開発された。エジプトの保健人口省がウイルスを提供した。Material Transfer Agreement (MTA) を通じ入手可能である。季節性インフルエンザおよび A(H5N1) ウイルス同様、WHO がワクチンの選定と開発にあたり,ウイルスの塩基配列(the sequences of the haemagglutinin (HA) and neuraminidase (NA) of A/Egypt/2321-NAMRU3/2007)は GenBank のウェブサイトで閲覧できる。この  candidate vaccine viruses の提供を希望する関係各機関は WHO および CDCまで連絡すること。A (H5N1) vaccine viruses の抗原特性や、新興 H5N1ウイルスとの関係に関する研究は、the WHO Global Influenza Surveillance Network で行われている。The Global Influenza Program は感染循環するウイルスの抗原性や遺伝子の変化を注意深く監視しており、ヒトから分離されたウイルスには特別に注意を払っている。WHO は各国に対し、ヒトおよび動物の検体や分離ウイルスを共有し the WHO H5N1 vaccine virus の開発と選定過程に参加するよう、他の公衆衛生活動に加えた取り組みを促している。 
[2] Transmission model 
 情報源: UPI (United Press International)、2009年6月8日
米国の研究者は、鳥類の間の直接・間接いずれの感染伝播も考慮した鳥インフルエンザウイルスの感染モデルの第1号を作成した。ジョージア Georgia 大学の研究者らは、彼らのモデルが野鳥での感染流行発生の解明に新たな光を投じる可能性があるとしている。鳥類が自然環境において鳥インフルエンザに感染伝播することはきわめてまれだが、彼らのモデルはそれ(自然環境でのウイルス感染)が流行発生に重要な役目を果たしていることを証明したと述べた。 主任研究者は自然環境での感染伝播の可能性を無視すると,感染流行の可能性・規模・期間の予測を大きく見誤る可能性があると述べた。現在の鳥インフルエンザモデルは、感染した水禽や shorebirds(沿岸部の鳥類)から排泄されたウイルスを直接伝播されたり、その周囲でウイルスに汚染された水を飲むことで感染伝播する場合しか考慮されていない。しかしこの新研究では、鳥インフルエンザウイルスの一部は最大 150日間水中で生存することが示されている。このため、そこに感染した鳥類がいなくなってからもウイルスが水中に存在し、感染流行の引き金になる可能性があると説明されている。直接の感染伝播だけを考慮したモデルでは、感染した鳥類がいなくなれば感染流行のリスクはないと誤った結論が導かれてしまうと説明した。
the Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS the early online edition) 
[Mod.TY− 水禽がインフルエンザウイルスを(排出するのではなく)体外に保有する(汚染された)場合も、別の地域で新たな感染流行を発生させるほどの量のウイルスを播種させる結果となるのだろうか]

● イネのウイルス ベトナム:注意喚起
PRO/PL> Rice viruses - Viet Nam: alert
Archive Number: 20090608.2118
 情報源:Viet Nam News (VNS) 、2009年6月6日
北部 Hung Yen, Hai Duong, Thai Binh, and Bac Ninh の各省で小型で褐色の plant hoppers(イナゴ?)が発生しているが、農業当局は農家に対し冷静な対応を呼びかけている。農相によると _Laodelphax striatellus_ と呼ばれる新種の planthopper が、35ha の水田を覆い尽くしているのが発見された。この虫は、中国本土、日本、韓国など数カ国で発生している。
[Mod.DHA− The small brown planthopper である _Laodelphax striatellus_ はウイルス性 graminaceous plants 疾患のベクターとして重要であり、 _Rice stripe virus_ (RSV; genus _Tenuivirus_) の最も重要なベクターである]