2009年7月17日

インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 症例数報告停止

● インフルエンザパンデミック (H1N1)2009
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (06): case reporting 20090717.2553
 情報源: canoe.ca Health, The Canadian Press、2009年7月16日
WHO tells countries with established swine flu outbreaks to stop counting cases 
各国は豚インフルエンザ感染拡大の追跡方法を変更する必要があると、16日WHO本部が述べた。個別の確定患者数をカウントすることにもはや有用な目的はないとしている。このようなサーベイランスへの資源集中は、すでにアウトブレイクが起きてしまった時点で不要となり、個々の症例ごとのカウントに費やされる労力は長続きしないと声明の中で述べられている。これに代わるものとして WHO は各国に対して、"unusual events" の兆候に注意するよう呼びかけている -- パンデミックウイルスが変化したことを示すと考えられる、重症度や拡大のパターンの変化を示唆する指標となる。多くの国々で感染者数の増加が見られ、コミュニティ内での感染伝播が続く中、各国にとって検査結果を元にした感染者の確定は不可能ではないかもしれないが、非常に困難を伴っていると WHO は述べた。さらに個々の症例数を数え上げることは、パンデミックウイルスによるリスクのレベルや性質をモニターしたり、適切な対応策実施の指標としたりする上で、もはや重要ではなくなっている、と説明した。WHO は先週、すでにアウトブレイクとなったことから各国に変化を要請するとの意向をほのめかしていた。そして 16日、カナダの公衆衛生当局者のトップは今後のカナダの報告方針と同じと述べた。我々が見てきたのは常に総インフルエンザ患者数のうちの数%でしかなかったし、患者数が増えるほどさらに (実数との) 関連性が薄くなっているとした上で、公衆衛生学的見地からすると、本当に大事なことは、重大な出来事を見逃さないようにすることと答えた。
[Ref. WHO Pandemic (H1N1) 2009 briefing note 3 (revised) 16 Jul 2009 英国はすでにカウントしていない] 
[Mod.CP- CIDRAP News of 16 Jul 2009 によると、米 CDCの報道官は WHOの症例報告方針の転換は予想されていたことで、WHOと CDCは以前から検査で確定された患者数は新型H1N1ウイルスに現在または過去に感染した真の患者数の氷山の一角に過ぎない点を強調していた。詳細な症例数のカウントは、感染拡大初期にはその特徴を捉えるために必要であったが、ウイルスの拡大が広範囲となり秋には更なる増加の可能性が懸念される現在、"詳細な症例数の計算はすでに不要であり、真の感染状況を示すものではないことから、その必要性が失われた" と述べられている。CDC も確定患者数を重要視しない方向にシフトすると思われるが、拡大はしないものの今後も継続し、パンデミックの健康へのインパクトと疾患の重症度の指標としてサーベイランスを行っていくと述べられている。リスクコミュニケーションの専門家は、新型インフルエンザ A(H1N1)の感染流行初期に WHOは各国に,確定患者数の経過を報告し、コミュニティでの感染伝播状況を把握することを求めていたが、症例数計算の有用性はまもなくその価値を失っていった。問題点は、確定患者数とそれと同時に発表される死者数が強調されることで、市民やそして政府関係者や公衆衛生当局者の一部までもが致死率の高いと思わされてしまうことであると述べた。いつかは H1N1パンデミックウイルスの致死性が高まると思われるが、米国でパンデミックにより死亡した患者者の数と、CDC が計算したこれまでの感染者数を比較すると、季節性インフルエンザよりパンデミックの致死率の方が低くなっている。しかし市民は、確定患者数と死者数を比較し、パンデミックの致死性がずっと高いものと感じてしまっている]

● 鳥インフルエンザ、ヒト 中国 訂正
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (105): China (HN, GX) correction 20090717.2550 
20090716.2534 に関して。
報告の内容は、2008年2月の WHO と ProMED 20080225.0758 で報告された症例に関するものであった。お詫びしたい。

● ブルータング オランダ
PRO/AH/EDR> Bluetongue - Europe (10): Netherlands (Gelderland), 1st 2009 case 20090717.2552 
 情報源:Agrarisch Dagblad [Dutch]、2009年7月16日
[2009年国内初の] ブルータング Bluetongue 感染例が East Netherlands Aalten で確認された。定期検査の枠組みの中において 1頭の若いウシで発見された。血清型の検査結果は来週中に判明する予定となっている。Staphorst で発生した前年の第1例目より 3週間早い第1例目の発生となった。農業相はウシのオーナーらにワクチンを勧めているが、これまでのところ 2009年に接種された頭数は 2008年を下回っている。北フランスとベルギーのブルータング発生シーズンは、2008年に比べて開始が遅くなっているようである。ベルギーではまだ報告がなく、フランスではアルパカの1型感染が5月に報告されたが、その後は報告されていない。

● 小麦の病気,黒さび病 インド:新株
PRO/PL> Stem rust, wheat - India: new strain 20090717.2548 
 情報源: Plant Disease、2009年8月
[Ref: Emergence of virulence to Sr25 of _Puccinia graminis_ f. sp. _tritici_ on wheat in India. Plant Dis 2009; 93(8), 840; DOI: 10.1094/PDIS-93-8-0840B]

● 牛ブルセラ症 フィジー
PRO/AH/EDR> Bovine brucellosis - Fiji (06): (Viti Levu) pos. serology, official 20090717.2547 
 投稿者:Suva Fiji Islands、Ian Peebles BVSc MACVSc、 2009年7月16日
フィジー一次産業省は、the Central Division of Viti Levu の 6つの群れの 264頭のウシについて _Brucella abortus_ 感染が疑われるとして予防的処分を行った。その根拠として (1) 流産、弱った子牛、産後貯留の見られる頭数の増加などの臨床症状と (2) ブルセラ症の血液検査陽性 (screening by Rose Bengal test and confirmed by CFT [complement fixation test]) があげられる。.... 豪動物衛生研究所と連動して、フィジー政府当局は診断を確定した。乳牛に対するスクリーニングの方法である _Brucella_ milk ring testing を採用する計画である。

● 豚熱(豚コレラ)リトアニア
PRO/AH/EDR> Classical swine fever - Lithuania (02): (PA) conf. OIE 20090717.2546 
 情報源:OIE WAHID (World Animal Health Information Database) weekly disease information 2009; 22(29)、2009年7月11日
感染開始時期 2009年7月1日 前回流行時期 1992年11月 
原因ウイルス classical swine fever virus, type 2.1 
新たな感染流行 発生地: UAB "Pasodele," Rabikiu village, Panevezys, Panevezys : farm 
感染種: ブタ swine 445頭中3例、442頭廃棄処分

● オキシトシン、野菜 インド

PRO> Oxytocin, vegetables - India: (UP, PB) 20090717.2543 
インド政府:果実と野菜へのオキシトシンの悪用阻止 
India: government to prevent misuse of oxytocin in fruits and vegetables
 情報源:Fresh Plaza、2009年7月15日。 
ウッタルプラデシ Uttar Pradesh とパンジャブ Punjab 州の一部農家が、ウリ科やカボチャなどのサイズや重量を増す目的に、ホルモンのオキシトシン Oxytocin を使用していることがメディアの取材で明らかになった。無分別なオキシトシンの使用により一定期間以上野菜を通じて摂取された場合、健康被害が発生する可能性がある。この薬剤を農家が悪用しないよう Schedule-H drug の1つに分類し、登録された医学獣医学従事者らによる処方箋がある場合に限って販売が許されている。Gazette の報道によって、オキシトシンは 1unit blister packs ごとでしか販売できなくなっている。またすべての薬品管理当局に対して、オキシトシンの管理に関する通達が行われた。議会でも報告されている。 
[Mod.TG- オキシトシンは下垂体後葉から分泌される短いポリペプチドホルモンであり、分娩時の子宮平滑筋の収縮を刺激し、授乳期の泌乳に関与する。"mothering instinct 母性本能" の確立にも関係することがわかっている。他の機能、特に男性において果たす役割や、精子の運動との関連性についての研究が行われている。信頼感や他人との親密性において何らかの役割を果たすと考えられており、逆に濃度が低下すると、不安感を生じると見られている。
合成されたオキシトシンには発がん性があるとの意見がある。
陣痛刺激薬 [促進剤] として有用で、薬剤は緻密に合成されているものの、このような議論は続いている。難産の状況を救う貴重なホルモン薬である。植物はオキシトシンを産生することはないようだが、この記事によると、植物の中でも果物や野菜がホルモン刺激に反応があるようである。植物の生理学的側面やホルモン剤の代謝産物が、摂取したヒトに何らかの被害を生じるかどうか不透明である。この分野は未だ研究が進んでいない。判っていることは、果実が大型化する傾向があることで、これは体内のホルモン作用によるものではない。この薬剤の代謝産物に発がん性があるか、あるいはもしかすると抑制効果があるのかもわかっていない] 
[Mod.JW- オキシトシン処理された野菜による副作用は何も報告されていない点に注目すべきである。インドの農家が、どうして予想もつかないこの薬剤による成長促進効果を発見したのかに驚いた。この報告は、インドではウシに diclofenac を使ってウシの死骸に群がる griffon vulture ハゲタカ を殺傷していたことを思い出した(20040204.0415)。ほんのわずかの量 homeopathic quantities の使用で済むのでなければ、重量が増した分野菜の売価が上がっても、オキシトシンの費用に見合わないのではないか。さらに、なんらかのホルモンの影響が出る (累積される) には、毎日大量にカボチャを食べなければならないだろう]

● 狂犬病 米国
PRO/AH/EDR> Rabies - USA: (GA) canine 20090717.2542 
 情報源:The Herald-Gazette 、2009年7月13日
ジョージア Georgia 州検査当局は 2頭のキツネの狂犬病 Rabies 検査が陽性となったことを確認した。衛生当局は地域の住民に対して、ヒトを恐れずその動物には見られないような行動をする野生の動物には近づかないよう注意を呼びかけている。Lamar County のすべての住民らに対して、狂犬病の症状をよく理解しペットにはワクチンを接種することで家族とペットを守る対策を講じるよう呼びかけた
地図 Lamar County in central Georgia

● テンサイの病気,さび病 英国
PRO/PL> Rust, sugar beet - UK: alert 20090717.2541
 情報源:Farmers Weekly Interactive、2009年7月13日
11月第1週以降の収量増加を期待するテンサイ農家は、さび病 Rust を排除することで霜害のリスクを減らすことができる。しかし、例年より早めの対処が必要となっている。ここ数週間続いた暖かく湿った気候のため、早くもさび病の兆候が見られ始めていると述べた Broom's Barn の Mark Stevens は、例年さび病が現れるのは 8月後半から9月初めであるが、最近の気候のせいで多くの葉の病気の発生が早まっているとコメントした
[Mod.DHA- Sugar beet rust の原因は、真菌の _Uromyces beticola_(旧名_Uromyces betae_) で、sugar beet テンサイ, beetroot, spinach beet, mangolds,wild beet や、同じ属の他品種を含めたthe genus Beta vulgaris_ and subspecies に感染する (_Beta_ species taxonomy [分類] はいまだはっきりしていない)。]