2009年9月15日

インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 感染期間

● インフルエンザパンデミック (H1N1)2009 感染期間 contagious period
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) 2009 (48): contagious period
Archive Number: 20090915.3243
 情報源:healthzone.ca, Associated Press report 、2009年9月14日 
解熱後も数日間は Influenza ウイルス感染の可能性があるとの新たな研究が発表されたことで、豚インフルエンザの患者に関しては,咳が治まったときに感染力がなくなると考えた方が良いと専門家らは述べている。
CDC は国民に対して解熱後 1日経つまでは職場や学校に行かないで自宅に待機し、他者との接触を避けるよう説明している。しかし、今回の新たな研究によると、ウイルスの感染リスクがもっとも高い自宅では、さらに長い注意期間が必要であることが示唆されている。
豚インフルエンザは、通常の季節性インフルエンザに比べより感染期間が長いことが分かっている。今回の研究結果から、他者に感染させる可能性のある期間は 1日や2日ではなく、おそらく 1週間程度であると考えられると、ケベック Quebec の公衆衛生研究所の研究者は説明した。米国の微生物会議で発表された。今回の会議は、この春に豚インフルエンザが発生して以来はじめての感染症専門家らが集まる大きな会議であり、CDC によれば、豚インフルエンザに感染した米国民は 100万人を超え、600人近くが死亡している。
今回の新たな研究結果を受けて CDC が豚インフルエンザ感染者の自宅待機期間を変更するかどうかについては不明である。学校や職場を長期間休むことが、ほとんどの場合が軽症であるウイルスに対する対処法として適当とは考えにくいと、CDC のインフルエンザ責任者 Cox は述べている。豚インフルエンザがこれほど蔓延した今、感染患者を隔離することの価値は低くなっている。ガイダンスはすべての要素に配慮してバランスよくまとめなければならないと述べ、学校や大学などのような環境にウイルスを進入させない様にすることは、実際のところ不可能であるとしている。
粘液に排出されるウイルスの研究から、季節性インフルエンザについては、発症の数日前から発症後にも感染の可能性があることを医師らは知っている。豚インフルエンザについてのこのような研究は、今回が初めてであるが、この新型ウイルスはより長期間、感染性があることが示唆されている。季節性インフルエンザよりも長期間ウイルス排出されることは現実に即していると、St. Jude Children's Research Hospital の医師は述べている。
3件の報告がこのような事実を示唆している。カナダの De Serres らは、検査で確定診断された 43人の患者と、数十名の患者家族からの鼻咽頭スワブ検体を採取したところ、発症から 8日目においても、検査法により違いが見られたものの 19-75% の患者に鼻腔内にウイルスが残っていた。この数字はかなり大きいものであるが、どの程度のウイルスが残っていれば実際にインフルエンザの感染拡大が起き、どの程度まで減少していれば安心であるかは、よく分からないと説明されている。シンガポールの Dr. David C. Lye らは、治療を行った 70人の患者について鼻または咽頭に関して非常に鋭敏なウイルス検査を行ったところ、発症の 5日後に 80%の患者がウイルスを保有しており、7日後でも 40%にウイルスが確認できたと報告した。一部は 16日間経過した後もウイルスを持っていた。タミフルを開始した時期によって確認されるウイルスの量は変化したが、ウイルスの有無には全く影響しなかった。3件目はメキシコの the National Institutes of Medical Science and Nutrition の Dr. Guillermo Ruiz-Palacios の報告で、発症後 1週間経っても豚インフルエンザウイルスが排出されることが多かったと会議で発表した。特に肥満患者と薬剤服用が発症の 2日目以降となった患者に多かった。
この新しい研究報告は、豚インフルエンザの感染期間がより長期間であることを示唆したが、どれぐらいの期間であるかは明らかになっていない。たとえ鼻腔内にウイルスがいたとしても、他者に感染させるほど多くのウイルスを排出するわけではないと、CDC の専門家は述べている。この点で、のような症状のほうが問題となると説明した。
De Serres は感染力は様々な要因に影響され、ウイルスの存在だけで決まるものではなく、感染伝播に関係する他の症状にも依存するとしている。豚インフルエンザの症状として発熱、咳、咽頭痛、鼻水、身体痛、頭痛、悪寒、倦怠感と,時に下痢や嘔吐などが見られる。小児では、普段より不機嫌、遊ばない、あまり食べないなどであることもある。CDC の、解熱してから 1日は自宅で様子を見るというアドバイスは、医療現場には当てはめられない。医療現場においては、発症から 7日間、もしくは治癒するかの、どちらか長いほうの期間の隔離が今も勧められている。豚インフルエンザに感染した患者は、職場や学校に戻ったら、咳やくしゃみの際には口を被い、よく手を洗うことが求められると、CDC はアドバイスしている。 
[Mod.CP- このような結果があったとしても、CDC はインフルエンザパンデミック (H1N1)2009 ウイルス感染患者の隔離期間に関する勧告を変更する可能性は低いと思われる。長期間の隔離は、特に軽症であるウイルス性疾患に対してはもはや適当ではないとする、(CDCの) Nancy Cox の考え方が一般的だろう]

● 狂犬病 インドネシア,米国(2件)
インドネシア
PRO/AH/EDR> Rabies, canine, human - Indonesia (10): Bali, susp. 20090915.3242 
 情報源: The Bali Post [in Indonesian]、2009年9月15日
狂犬病 Rabies 感染が疑われている 3人目の患者である 47才の女性が 14日 Sanglah Hospital [Tabanan Regency] で死亡した。7月20日にキッチンで急に暴れ出した飼い犬の咬傷を受けていた。右腕を咬まれ直ちに医療機関を受診したが、破傷風の予防注射だけが行われていた。このイヌは 3才だった。咬傷を受けてから 1ヶ月後に女性は体調不良を訴え、9月12日に頭部の大量の発汗、胸痛、呼吸困難などの症状を経験した。病院を受診し 2種類の投薬を受け帰宅したが改善せず、13日に別の病院を受診し隔離病棟に収容された。すでに麻痺を生じ蘇生は困難と見られ、14日に死亡した。咬傷から数週間後に、恐水症や恐風症の症状が見られ、常にのどの渇きを訴え、発熱があったことを配偶者が明らかにした。15日現在、狂犬病の疑われる死者の数は 3人で、Desa Buahan (Tabanan) の 2人と、Kediri の 1人である。 
[Mod.CP- バリ島は 8つの行政区に分かれている (Badung, Gianyar, Tabanan, Bangli, Karangasem, Jembrana, Buleleng, and Klungkung, and one municipal city (Denpasar))。このうち、いずれも隣り合った 3つの地域 Badung, Denpasar and now Tabanan は、狂犬病の地方感染地域と考えてよい。感染対策は遅々として進んでいないようである。Tabanan Regency では 3人目の狂犬病疑い患者が発生した。患者の公式確認が待たれる。バリ島における感染対策や治療状況も悲惨である]

米国 野生動物 
PRO/AH/EDR> Rabies, wildlife - USA (06): (FL) human exposure 20090915.3239
 情報源:NorthEscambia.com 、2009年9月13日
North Escambia エスカンビアでは、1頭の狂犬病のキツネにヒト 1人が襲われ、イヌを襲ったアライグマ 2匹も検査の結果狂犬病と判明したことから、狂犬病への警戒が続けられている。Escambia County Health Department の環境医療局長は、5月に Crabtree Church Road in Molino において、狂犬病のアライグマ 1頭にイヌが咬まれ、8月にも Handy Road in Cottage Hil において、アライグマにイヌが襲われていると述べた。先月(8月)に North Escambia の某所 [Mod.JW- このことにより、リスクのある人々がその地域で狂犬病のリスクがあるかどうかを知ることができないことになる。ある 1人のプライバシーを守ることで、他の人々のリスクを高めることになる] でヒトを襲ったキツネ 1頭も、狂犬病検査で陽性となったことを明らかにした。
狂犬病のアライグマに襲われたイヌは隔離され、狂犬病のキツネに襲われたヒトは治療中である。Escambia County(フロリダ Florida)の中央部から北部にかけての地域に対して、13日に狂犬病警報を発令した。3頭の野生動物の狂犬病検査が陽性となったことを受けての対応である。注意喚起は合計 60日間継続され、Escambia County 北部の Muscogee Road から the Alabama State (アラバマ州境)までの地域に適応される 
[5月から狂犬病が発生している中、なぜ 60日間だけなのかは不明である]
地図 Escambia County は州の最西端

● デング熱 カンボジア,ミャンマー,マレーシア,スリランカ,メキシコ,ブラジル
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2009 (37) 20090915.3240
カンボジア
 情報源:The Phnom Penh Post 、2009年9月8日
カンポート Kampot province で豪雨による洪水によって 20軒以上の家屋に被害が生じ、州都ではデング熱 Dengue 発生の危険性が懸念されていると 7日に当局者が語った。5日間降り続いた雨により、Kratie, Stung Treng, and Kampong Cham provinces で洪水が発生している。2009年、小児 24人が死亡しているデング熱に対し、より一層警戒が必要であるとされている。 
[Mod.TY- 20090823.2977 では 8月18日現在、カンボジアで 7227人が感染し 19人が死亡したと National Center for Malaria (NCM) が報告している] 
地図 Cambodia 
ミャンマー
 情報源:Narinjara News 、2009年8月24日 
報道によると、8月の第1週にアラカン Arakan [currently Rakhine] State で小児 3名がデング熱により死亡した。州都シットウェ Sittwe の 2人と、もう 1人は第 2の都市 Kyaukpru の小児であった。アラカンのデング熱感染者数は 8月1週目までで 329人となったと、政府当局は発表している。Sittwe および Kyaukpru で最も多くの患者が発生しているが、その他の都市でも前年に比べて 2倍のデング熱患者が発生している。現地の情報によると、デング熱患者らに対する医療施設は非常に貧弱であり、治療薬が不足しているところが多い。治療薬の足りない農村部の小児患者らの状態は最悪である。薬品の不足に加え、受ける治療も組織化されていない。シットウェの医師は報告されている 329人よりも多いと考えている。農村部から正確な患者数が伝わってこないためである。費用の面からこどもを受診させられない家族も多い。 
マレーシア 
 情報源:Asia One Health, The New Straits Times report 、2009年9月12日
8月25日に新たなデング熱による死者が報告され、2009年の死者は合計 69人となった。最新の死者は Taman Aman(Parit Bakar in Muar, Johor)在住の工場労働者である、45才の女性であった。2008年、この女性の家では 3人がデング熱で死亡している。
2009年8月30日から 9月5日の間に、全国で新たに 410人のデング熱患者が報告され、マレーシア国内の患者数は 3万0110人となった。2008年の同じ時期の感染者は 30956人、死者 71人であった。Selangor, Johor, Perak, Sarawak, and [Kuala Lumpur] など、多くの場所で発生が集中している。 
地図 Malaysia 
スリランカ
 情報源:People's Daily Online, Xinhua News Agency report、2009年9月11日
デング熱患者数は 25606人となり、死者は 249人に達したと、11日スリランカ保健省の疫学局が発表した。最も患者が多く発生したのは 6月の 25606人であった,多くの患者が発生した地域は Kandy, Kegalle, Colombo, Gampaha, and Kurunegala である
地図 Sri Lanka  
メキシコ 
 情報源:Guadalajara Reporter 、2009年9月11日
1日、チャパラ Chapala 衛生当局が 2009年初めてのデング熱患者を確認し、同湖岸地域でデング熱発生の危険性が増している。当局は直ちにこれに対応している
地図 Jalisco state showing the location of Laguna de Chapala south of the city of Guadalajara 
ブラジル
 情報源:O Globo [in Portuguese]、2009年9月9日
マトグロッソ Mato Grosso 州衛生当局は、9日現在 3万6563人のデング熱患者を報告している。重症例は 1093例、死者は 34例(うち 6例は感染確定)である。2008年1月1日から 9月9日まで(患者数 10489例)に比べ、250% の増加を記録している。州都クイアバ Cuiaba の 2009年の患者数は 10841例で、420例が重症、13例が死亡した。Varzea Grande からは 3825 例と死者6例が報告されており、他に死者の発生した州は  Curvelandia, Diamantino, Jaciara, Juara, Nova Mutum, and Tapurah である。 
地図 Mato Grosso state 

● ヒトスジシマカ Aedes albopictus フランス
PRO/EDR> Aedes albopictus - France: 1st report  20090915.3240
 情報源:Le Progres [in French]、2009年9月14日
The tiger mosquito とも呼ばれるヒトスジシマカ [_Aedes_] _albopictus_ は、デング熱やチクングニアウイルスのベクターとなる昆虫 insect で、温暖な国に広く分布する。2005年、 La Reunion でチクングニアが流行し 5000例以上の患者が発生したことを思い出す人もいるだろう。この病気は発熱と関節痛を特徴とする。
仮にこの種の蚊族がフランス南部に定着していたとしても、今までにフランス国内でチクングニアやデング熱患者が発生したと報告されたことはない。しかしそのことを理由に the DGS (Directorate of Health 保健局)  が全ての道路に沿って行っている、この蚊族の拡大の監視をやめることはない。
初めてこの種の蚊族が確認されたのは 2009年7月後半で、通常の産卵トラップ oviposition traps のうちの 1か所で見つかったものであると、the Interdepartmental Alliance for Mosquito Control. Based in Chindrieux (Savoy サボイ) の生物学者の1人が述べた。この部署は蚊族の繁殖状況の把握などを担当する。同部署のチームは、蚊族の発生があった 5か所(アン Ain, サボア Savoie, オートサボア Haute-Savoie, イゼール Isere, and ローヌ Rhone) に数百のトラップを仕掛けている。
これまでのところ "tiger" [mosquito] が見つかったのは、Aiton, サボア Savoy, Manissieux(リヨン Lyon東部、the Lyon-Chambery motorway)だけである。
トラップが置かれているのは、蚊族の分布が広がる道路沿いである。ほとんど場合、すでに数年のうちに急速に分布が広がっているイタリアからの流入であり、ボウフラや卵がトラックやタイヤに溜まった水の中で運ばれてくる。暖かくなって孵化するため、専門家による調査が必要である。自宅付近の水たまりを放置しないよう注意を呼びかけている当局者は、花瓶や植木鉢のような入れ物は、蚊族をおびき寄せると警告している。 
[Mod.TY- _Aedes albopictus_ が欧州内を北方に向かって分布域を拡大させ、それに伴って、デングやチクングニア、その他のウイルスの感染伝播リスクが生じていることを示唆する報告である。2007年にはイタリア中部でチクングニアウイルス感染が発生したことが報告されている。チクングニアウイルスは 2009年にシンガポールへの旅行者によってフランスに持ち込まれたが、それ以上の感染伝播は生じなかった (20090423.1524)。Professor EA Gould は、チクングニアウイルスの_Aedes albopictus_への適応の重要性を強調する興味深いコメントを行っており、この蚊族が定着している地域に、広範囲な地理的拡大が起きるリスクを指摘している (20080910.2829)。このコメントの中で _Ae. albopictus_ がデング熱などの他のウイルスのベクターでもあることの重要性が指摘されている。フランスは  _Ae. albopictus_ establishment(定着)に関して比較的高いリスクを有している国に分類されている。 
参考 European Centre for Disease Prevention and Control, 2009, Technical Report: Development of _Aedes albopictus_ risk maps. 45 pp.  
地図 French administrative division

● 口蹄疫 南アフリカ
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - South Africa: suspected, RFI 20090915.3241
 情報源:VetsWeb.com 、2009年9月10日
ウシの foot and mouth disease [FMD 口蹄疫], type SAT1 による感染流行が、南アフリカ農業当局から報告されている。FMD 発生地域である the Kruger National Park(クルーガー国立公園)と the FMD buffer zone(緩衝地帯)の境界にある村で 6頭のウシが感染した。感染のあったウシは dip tank(水飲み場?)で発見されており、727頭のウシに感染の危険性がある