2010年7月25日-26日

サルモネラ感染症 カナダ
類鼻疽、レプトスピラ症 マレーシア
ブルセラ症 マレーシア

● サルモネラ感染症 カナダ
PRO/AH/EDR> Salmonellosis - Canada: (ON Ontario, BC British Columbia) headcheese, alert 20100726.2499
 情報源: 680 News 、2010年7月24日
headcheese [jellied meat 肉詰めゼリー] が原因とされるサルモネラ感染症 Salmonellosis 集団発生を受け、政府当局は市民に対し注意を呼びかけている。当局は G. Brandt Meat Packers(ミシサーガ Mississauga, オンタリオ Ontario 州)が製造した Freybe brand headcheese の摂取を禁じている。Ontario とブリティッシュコロンビア British Columbia の両州で、この製品を食べた 18人が発病した。ほとんどが 70歳以上の高齢者である。病気との関連性がわかっているのは Freybe 社の製品だけであるが、2つの会社が headcheese 製品の回収を始めている。
[Mod.LL- 今回の食中毒の起因菌である _Salmonella enterica_ の血清型については記載がない。Head cheese or brawn は、もとは欧州の cold cut (スライスされた冷製調理肉)であった。 ビネガーで酢漬けされたものは souse と呼ばれる。Head cheese はチーズではなく、煮こごりの中に子牛やブタ (時にヒツジや成ウシ) の頭の部分の肉の入れた meat jelly である。用いられる部分は様々ではあるが、脳、眼球、耳は除かれている。タンや足、心臓までもが使われることがある。Head cheese はタマネギ、黒コショウ、オールスパイス、ベイリーフ、塩、ビネガーなどで味付けされる。luncheon meat として、冷やしてまたは室温に戻して食される。歴史的に meat jellies は、すべての内臓を取り除いた head of the animal を用い、貯蔵用に煮込まれた中世以来の農民食だった。 冷やすと固まるのは、元々頭蓋内に含まれているゼラチンによる。ちゃんとした煮こごりを作るにはゼラチンを足す必要がある]
写真 headcheese

● 類鼻疽、レプトスピラ症 マレーシア
PRO/AH/EDR> Melioidosis, leptospirosis - Malaysia: (PH) RFI 
Archive Number: 20100725.2495
 情報源 Bernama、2010年7月23日
The Pahang Health Department 当局は、6月の Lubuk Yu in Maran で発生した溺死者の捜索と救助作業者のうちの、19人から採取した血液検体で、10人の類鼻疽 Melioidosis やレプトスピラ症 leptospirosis 感染が確認されたことを明らかにした。6人が類鼻疽に感染し、ほか 4人は2つの感染症に感染していたと述べた。しかし、ほかの 9人の救助者らは感染していなかった。今も 6人が入院している。
2009年の類鼻疽患者は 83人だったが、2010年は 148人が類鼻疽に感染したと見られている。the Lubuk Yu recreational area は、域内で溺死した男性 1名の捜索により 6人が死亡し、83人のレプトスピラ症感染者が出たことから、10日に閉鎖となっている。
[Mod.LL- 類鼻疽もレプトスピラ症も、水との接触で感染する。_Burkholderia pseudomallei_ を原因菌とする類鼻疽は人獣共通感染症ではなく、感染の常在地域 (主に東南アジア、オーストラリア北部の雨期)の水や土壌から感染する。しかし、ヒトや動物から感染することもある。一方、レプトスピラ属 _Leptospira_ species 感染は人獣共通感染症であり、齧歯類や家畜をはじめとする感染動物の尿に直接または間接的に接触することで感染が起きる。類鼻疽の診断検査が、培養検査か血清学的検査だったのか記載されていない。後者は常在地域においては有用性が低い。ちなみに類鼻疽は、カテゴリー B のバイオテロ疾患である]

● ブルセラ症 マレーシア
PRO/AH/EDR> Brucellosis, caprine, human - Malaysia: (PG) RFI 20100725.2492
 情報源:The Star, Malaysia 、2010年7月23日
ペナン Penang では、ヤギのミルク業者のチェックと 98頭の処分が続けられている。
7歳男児が、初めてのブルセラ症 brucellosis 患者と確認されたためである。
ブルセラ症の原因は細菌のブルセラ_Brucella_ 菌で、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジを中心に見つかっている。この男児は生のヤギのミルクを飲んだ後に発病した。数日間、抗生物質を投与しても効果がみられないため、the Penang Hospital に搬送された。
バング病あるいは Bang's disease, or undulant fever(波状熱) とも呼ばれる、このブルセラ症は、殺菌されていない感染した動物のミルクや肉の摂取、その体液との接触などから起きる。筋肉痛、リンパ節腫脹などの、インフルエンザのような症状がみられ、骨や関節の病変、脳炎、髄膜炎、慢性疲労症候群などの合併症を伴うこともある。3243件のヤギの血清を採取し、検査で陽性となった 98頭が処分された...
[Mod.AS- Penang はマレーシア半島の北西沖のマラッカ海峡 the Strait of Malacca にある島で、the state of Pulau Pinang の一部を構成している。OIE への年次報告では、2009年にヒトのブルセラ症が報告されているが、詳細は示されていない。動物に関していえば、 _Brucella abortus_ および _B. melitensis_ のいずれも確認されているが、臨床症状が認められた例はなかった。
_B. melitensis_ が2009年に報告されたのは次の14の州: Johor, Kedah, Kelantan, Melaka, Negeri, Sembilan, Pahang, Perak, Perlis, Pulau Pinang, Sabah, Sarawak, Selangor, Terengganu 
_B. suis_ は報告されていないようである。今回の報告は、 _B. melitensis_ のようであるが、検査陽性例の家畜が処分されたのは、新たな菌の導入があったためだろうか?それとも、全国的に行われている方針なのだろうか?]

● インフルエンザ パンデミック (H1N1) (2件)
インド
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) (56): India (KA, KE, SM) 
Archive Number: 20100726.2506
[1] Aurangabad (Kerala)
 情報源:NewKerala.com, UNI report、2010年7月24日
恐ろしい swine flu [influenza pandemic (H1N1) virus infection] により1名が死亡し、もう1人も the Government Medical College and Hospital (GMCH) で生死の境をさまよっている。豚インフルエンザ検査が陽性だった40歳の Gangapur の住民1名が23日に死亡し、Sillod の50歳も重体となっている。
[2] Bhatkal (Karnataka)
 情報源: Express News Service、2010年7月25日
Hadlur, Hallari, Ashikan, and Hakodlu など、Bhatkal taluk [local authority district] の住民らが、豚インフルエンザに感染した。Hadlur village of Konur Gram Panchayat では22人もの患者が病院に運ばれてきた。Hadlur の3歳半の幼児が死亡している...
[3] Sikkim
 情報源: Goal.com 、2010年7月24日
the Sikkim football team のうち、6人もの選手が、Kolkata [Calcuttaコルカタ] 到着後に体調を崩した。3人は検査の結果、豚インフルエンザに感染していた

ブータン
PRO/AH/EDR> Influenza pandemic (H1N1) suspected - Bhutan: RFI 20100726.2500
 情報源: South Asian Media Net 、2010年7月25日
国内中南部で、インフルエンザ パンデミック (H1N1) ウイルスが疑われる感染流行が発生し、Tsirang and Dagana の2校が1週間閉鎖されている。Daga の高校では 175人の生徒が頭痛、高熱、咽頭痛を訴えている。Dagana dzongkhag [district] では、22日以降 503人の students が感染したため、アウトブレイクが宣言されている。Drujeygang and Lhamoizingkha の出身者らは、感染した生徒から隔離する目的でホテルに収容されている。感染した生徒ら 76人は教室とホステルにいて、porridge おかゆと Horlicks [a malted milk drink brand 麦芽乳製品] が与えられている。しかし H1N1 であることは確認されていない
[Mod.CP- Bhutan (Land of the Thunder Dragon) はヒマラヤ山脈の東側に当たる地域にある。学校での流行は influenza pandemic (H1N1) virus infection または any other specific respiratory virus によるものであるかは確認されていない。しかし、かなり深刻と見られ、地方当局に連絡が入っている]

● 百日咳 米国
PRO/EDR> Pertussis - USA (03) 20100725.2493
[1] Idaho
 情報源: Oregon Public Broadcasting 、2010年7月22日
百日咳 Whooping cough がアイダホ州で猛威を振るっている。77人の患者が報告されている。これは例年の2倍のペースである。保健当局者によると、特別な理由はなく、周期的に流行する傾向があると説明されている。最良の予防法はワクチン接種で、11歳から12歳の小児に追加接種が必要であるが、行われなくなりつつあるという
[2] Ohio
 情報源: Buckeye Lake Beacon 、2010年7月24日
この数か月間、フェアフィールド Fairfield Medical Center's Infection Control Department(医療センター感染症科) を受診する、百日咳患者が増えている。7月現在、36例の患者が確認されている...2009年の患者数は24人だった。2010-2011年度の新7年生に the Tdap vaccine (providing protection against Tetanus, Diphtheria, and Pertussis 破傷風・ジフテリア・百日咳) ワクチンの接種が義務づけられた。
[3] California
 情報源: Associated Press 、2010年7月23日。
13日現在の州内の患者数は1500人を超え、2009年の5倍以上となっている。今回の流行で、6人の乳児が百日咳で死亡した。22日、サクラメント Sacramento に近い、カラベラス Calaveras County の当局者が、新たに3人の患者を報告している。カリフォルニア州で死亡した乳児6人のうち、5人が3か月以下の乳児で、予防接種対象の月齢より小さい赤ちゃんだった。
[4] California (July 2010 immunization recommendations 勧奨接種)
 情報源: California Department of Public Health (CDPH 公衆衛生局) 、2010年7月0日
CDPH はすべての patients (対象児?)に次の接種を勧告する
- 生後6週以上、6歳以下 DTaP
- 7歳以上、Tdap Tdapの例外は、以前の接種による接種不適格者のみとなる。
その他の接種勧告の対象としては、
-妊娠可能年齢の女性
-乳児との濃厚接触の可能性のあるの者
-医療従事者
-7歳以上のけが人で、破傷風トキソイドの対象者
新たな法制定による適応外使用
-7-9歳時へのTdap使用は安全とのデータがある; カナダでは4歳以上に適応あり
-65歳以上への Tdap を推奨する

● 鳥インフルエンザ、ヒト エジプト
PRO/AH/EDR> Avian influenza, human (48): Egypt, 110th case 20100725.2491
 情報源:Kuna (Kuwait News Agency) 、2010年7月24日
エジプト政府当局が24日、国内で110人目となる鳥インフルエンザ Avian influenza [H5N1] の患者について発表した。患者は重体であると述べた。この20歳の女性は、熱と呼吸困難のため、カイロ Cairo の Sadr al Abbasiya Hospital に搬送された。タミフルによる治療が続けられており、今も医療監視下にあると述べられている。政府当局は、2006年以降パンデミック対策を講じてきており、県を越える生きた鳥の移動や、決められた場所以外での鳥の処分を禁止してきた。
[ModCP- WHO による確定患者数の表では、この110人目の患者発生以前の 2010年のエジプトでは、鳥インフルエンザ A (H5N1)感染患者数は 19人、死者 7人とされている。2008年の世界全体に占める、エジプトの患者数が 18%であったのに対し、2009年に 53%、この患者発生以前までの 2010年は 59%と着実にその割合を伸ばしている]

● ベネズエラウマ脳炎 コロンビア
PRO/AH/EDR> Venezuelan equine encephalitis, equine - Colombia 20100726.2507
 情報源:Pan American Health Organization Epidemiological Alert 、2010年7月20日
コロンビア国内で3件の、ウマの Venezuelan equine encephalitis (VEE ベネズエラウマ脳炎) のアウトブレイクが発生した。常在地域のマグダレナ Magdalena (2) と コルドバ Cordoba (1) で発生し、周期的な発生が繰り返されている。44頭のウマの死亡が伝えられている。
[Mod.TY- いつ発生し、どのタイプの VEE ウイルスであったのか報告されていないのは残念である。この2つの地域は the VEE virus subtype ID の常在地域であるカリブ海沿岸部であるが、同タイプはウマでの感染流行には関係しない。ウマでの流行や、時に南米の北部地域でヒトにも感染が及ぶのは subtype IC である。ウマはウイルスの増殖宿主である。発表された論文で、わずか 2組の塩基の変異により、ID から IC への変化が生じることが示されている。VEE の発生が散発的であるため、多くのウマの所有者は、ウマへのワクチン接種を行おうとしない]
地図 the 2 departments  

● White nose syndrome、コウモリ 米国
PRO/AH/EDR> White nose syndrome, bats - USA (12): control 20100726.2505
 情報源: The Statesman, Bloomberg News report 、2010年7月24日
政府の計画によると、人間からコウモリを守る目的で、the West and Midwest の数百か所の洞窟と3万の廃坑への、ハイカーの立ち入りが禁止されることとなりそうである。今週中に閉鎖される見通しで、全米13州とカナダの2州のコウモリに壊滅的な被害を及ぼしている、white nose syndrome と呼ばれる病気に対抗する、最新の対策となる

● イネの病気,Bacterial leaf blight インド
PRO/PL> Bacterial leaf blight, rice - India: (PB Punjab) 20100726.2504
 情報源: The Times of India, Times News Network (TNN) report、2010年7月22日
洪水被害の後、ここ数日間に bacterial blight of rice の被害が広がっている。パンジャブ Punjab 地方に降り続く雨と川からあふれ出る水が、細菌の増殖に好適な条件を生み出している
[Mod.DHA- Bacterial leaf blight (BLB) of rice の原因は _Xanthomonas oryzae_ pv. _oryzae_ で、アジア、オーストラリア北部、アフリカ、米国から報告されている。アジアでは毎年、数百万 haのイネの水田に被害が発生している]
地図 Punjab districts

● 口蹄疫 日本
PRO/AH/EDR> Foot & mouth disease - Japan (35): (MZ) update 20100726.2498
[1] 宮崎県は26日深夜に、動物の移動禁止を解除する
 情報源: Breitbart.com, Kyodo News/Associated Press (AP) report 、2010年7月26日
初発例発見から3か月以上続いていた制限がすべて解除されることとなる....
[2] 農水省の第1例確認前から発生していた
 情報源:: AsiaOne, The Yomiuri Shimbun/Asia News Network report、2010年7月25日
宮崎県内の10か所以上の農家で飼育されていた家畜が、農水省が第1例目の感染例の確認より前に、すでにFMDに感染していたことが、同省専門家により明らかにされた

● 穀類の病気,Fusarium head blight 赤かび病 英国
PRO/PL> Fusarium head blight, cereals - UK: re-emergence 20100726.2497
 情報源:Media Newswire、2010年7月23日
BBSRC [UK Biotechnology and Biological Sciences Research Council 研究委員会] は、深刻な穀類の病気である Fusarium ear blight (FEB) による収穫前の壊滅的損害を防ぐため、駆除剤の組成を変更するよう、農家に指導を行っている。研究所の研究員らが、wheat ears (小麦の穂)に症状の出ていない感染を発見した。これは、一見問題のない小麦の間にも、すでに感染が広がっていて、手に負えない状態となっている可能性があることを意味する。
[Mod.DHA- Fusarium head blight (FHB; also called ear blight, scab) of small grain cereal crops (小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦、トウモロコシなど)の原因は、すべてフサリウム属 the genus _Fusarium_の複数の真菌による]

● 炭疽 米国
PRO/AH/EDR> Anthrax, bovine - USA (02): (ND) 20100725.2496
 情報源: Associated Press 、2010年7月23日
ノースダコタ North Dakota 州では、2010年の3例目となるウシの炭疽 Anthrax 症例が発生した。バーンズ Barnes County で弧発例の炭疽感染が確認されたことを、州獣医学当局者が明らかにした。7月のこれまでにディッキー Dickey County で、また 5月にも東部のスー Sioux County で 1頭の感染が確認されている。ND では例年数頭の炭疽感染が発生する。2005年には炭疽感染により、およそ1000頭のウシ、バイソン、ウマ、ヒツジ、ラマや、家畜のシカやエルクが死亡した。
[Mod.LM- 州当局の指示に従わず、家畜にワクチン接種を行わない農場主は、炭疽菌の芽胞によって暴き出されてしまう。夏の間中、散発性のアウトブレイクが発生する。もしほかが元気なら、ただの奇妙な動物とされてしまう]