2010年7月27日

バベシア症、エーリキア症 米国
炭疽ワクチン、ヒト 米国

● バベシア症、エーリキア症 米国(2件)
Subject PRO/AH/EDR> Babesia - USA: (NY)
Archive Number 20100727.2519
 情報源 ICT (Infection Control Today) 、2010年7月24日
Increase in babesiosis cases in New York
バベシア症 Babesiosis は,ダニによる致死性のまれな病気で、ネズミの赤血球に感染するBabesia という微生物(寄生虫)を原因とするが、the Lower Hudson Valley では増加の傾向にあると New York 州の保健当局が発表した。この地域には the counties of Westchester, Putnam, Orange, Dutchess, Ulster, Sullivan and Rockland が含まれている。
バベシア症は deer ticks ダニによって感染するマラリアのような症状の病気で、ライム病 Lyme disease や ehrlichiosis と同じ感染様式であるため、これらの病気と連動して起きることもある。輸血により感染する場合もある。ヒトでの感染はおおむね非常にまれであるが、特に the Lower Hudson Valley での報告が増加していると述べた
地図 The counties mentioned

PRO/AH/EDR> Tick-borne infections - USA: Ehrlichia, Babesia
Archive Number 20100727.2518
 情報源: CIDRAP (Center for Infectious Disease Research & Policy) News 、2010年7月24日
First zoonotic babesiosis in Tennessee and new ehrlichiosis species in Minnesota and Wisconsin
the International Conference on Emerging Infectious Disease (ICEID 新興感染症国際会議 2001年7月) で取り上げられた新たなダニ関連感染症の中で、テネシー Tennessee 州初の人獣共通感染症のバベシア症 babesiosis と、ミネソタ Minnesota およびウィスコンシン Wisconsin 州の、これまで北米では報告されていない新たな種によるエーリキア症 ehrlichiosis について報告された。
発熱などの症状の見られた1例目は、数年間テネシー州から出たことのない免疫の低下した患者で、ハンティングに出かけてダニに暴露した。血中に novel speice sの _Babesia_ 原虫が確認され、10日間の治療によって回復した。動物の宿主やダニベクターの調査が続けられている。この症例から、常在地域への渡航歴が無く既知の種に対する検査が陰性であっても、バベシア症である可能性は否定できないと述べた。
2つ目の報告では、北米でかつて確認されたことのない _E. muris_ に類似した種が、2つの州の患者から検出されたことが明らかにされた。この 4人の患者は、3人が Wisconsin 州で、1人が Minnesota 州の住民で、いずれも頭痛と発熱の症状を訴え、リンパ球減少が認められた。すべての患者は doxycycline による治療で回復し、血清学的調査で WI 州内に 40人以上の感染疑い例があることが示唆された。患者の 91%にイヌとの接触歴があり、85% にダニへの暴露が認められている。
[Mod.EP- ダニ媒介性感染症のリスク評価として、ダニの刺咬の有無を用いることはできない - 気づかないうちにダニに刺咬されることも多いためである。 _Babesia_ and _Ehrlichia_ やリケッチアなどの、ダニによる寄生虫(protozoan 原生動物による)感染症と診断される患者は、依然として実態を下回っており、新たな地域にも出現する可能性があることが、この報告でも明らかになっている。特に免疫低下のある場合は感染しやすいことがわかる]
[Mod.ML- Ehrlichiosis は rickettsia 類似偏性細胞内細菌による group of tick-borne zoonotic diseases で、宿主種名や感染が起きやすい白血球細胞名にちなんで命名されていた。2001年に the taxonomy of the ehrlichiae が変更となり、 _Ehrlichia phagocytophila_ が_Anaplasma phagocytophilum_ となり、疾患名は human granulocytic ehrlichiosis から human granulocytic anaplasmosisへと変更になった。 human monocytic or monocytotropic ehrlichiosis とその病原体は  _Ehrlichia chaffeensis_ のまま変わっていない。 _Ehrlichia muris_ は日本の齧歯類で見つかっている(Internat J Syst Bacteriol 1998; 45: 250-254)。これまで、ヒトでの病原性は確認されていないが murine monocytotropic ehrlichiosis を発生させる]

● 炭疽ワクチン、ヒト 米国
PRO/AH/EDR> Anthrax vaccine, human - USA: new recommendations 20100727.2514
[1] News report:CDC changes anthrax vaccine recommendations
 情報源: Bio Prep Watch 、2010年7月23日
米疾病対策予防センター the US Centers for Disease Control and Prevention は、2010年2月に米国民に対する炭疽ワクチンについて諮問グループが出した勧告について、新たな説明を発出した。The Advisory Committee on Immunization Practices's [ACIP] report outlines では、炭疽ワクチン接種に関して 5つの変更点が加えられた。このうち 2つは 2月の報告にあったものである。
以前の勧告からの変更点は、初回接種が 6回から 5回になったことと、接種方法が皮下注から筋肉注射になったことである。これは、接種に要する期間の短縮と副反応の軽減のために行われていた、臨床知見の結果をふまえての変更である。
これ以外の3つの新たな勧告として、CIDRAP [Center for Infectious Disease Research & Policy] News reports で述べられているのは、emergency workers(救急隊員) や 1st responders(初期対応者) に対する暴露前接種のガイダンス提供、妊娠女性の暴露後接種として BioThrax の推奨、ワクチン未接種者に最適の暴露後防護として、3回の BioThrax 接種と60日間の抗生剤 予防内服、があげられている。1st trimester (妊娠第1期) でのワクチン接種には a slightly higher risk of birth defects を負うものの outside of the 1st trimester の接種妊婦とのリスクの差は認められなかった。
[2] CDC report
Use of anthrax vaccine in the United States

Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP), 2009
 情報源: CDC. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2010; 59(RR-6); 1-30 、2010年7月23日
要約 
the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP 予防接種諮問委員会) は、anthrax vaccine adsorbed (AVA 炭疽ワクチン接種?) (CDC: Use of anthrax vaccine in the United States: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices [ACIP]. MMWR 2000; 49: 1-20; CDC: Use of anthrax vaccine in response to terrorism: supplemental recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices [ACIP]. MMWR 2002; 51: 1024-6) に関する従来の勧告を変更した。米国内の炭疽ワクチンの供給状況も反映したものである。
内容として、
1)炭疽の疫学情報を更新
2)AVA の有効性 effectiveness and efficacy、免疫的効果、安全性に関するエビデンスの総括
3)暴露前の AVA に関する勧告
4)暴露後の AVA 使用に関する勧告
いくつかの状況において、変更のなかった勧告を明記した。新たに承認された炭疽ワクチンはなかった。
大きな変更点 Substantial changes としては、
1.the pre-event and preexposure primary series (初回接種) 回数が6回から5回に減らされた
2.暴露前に使用される場合、皮下注射ではなく、筋肉注射を推奨した
3.エアロゾル化した_Bacillus anthracis_ spores (芽胞) を吸入した妊娠女性の、暴露後予防として AVA を推奨した
4.emergency and other responder organizations の暴露前ワクチン接種ガイドラインを提供した
5.ワクチンを接種していない場合の、エアロゾルの芽胞に暴露後の optimal protection として、60日間の抗生物質と3回の AVA をを推奨した

● コレラ、下痢症 シリア,イエメン
PRO/EDR> Cholera, diarrhea & dysentery update 2010 (12): West Asia RFI
Archive Number: 20100727.2521
[1] シリア,下痢症 Diarrhea, fatal, troops - Syria: RFI
 情報源 World Tribune 7月13日
シリア軍によると,複数の兵士が死亡し計画の遅延を招く原因不明の流行 a mysterious epidemic が発生している。The Syrian opposition 反政府勢力によれば,北部を中心に兵舎全体 through Syrian Army barracks で原因不明の疾患が発生し,複数名の死亡が発生し,徴兵訓練に遅れが生じている delayed a recruitment program ... 
[2] イエメン,下痢症 Diarrhea, fatal - Yemen: RFI
 情報源 Al-Sahwah, Sanaa 7月1日
Lahij governorate の下痢症流行 a diarrhea epidemicにより,小児 1名を含む合計 4人が死亡し,ほか 127人が発病した。Hajjah governorate でも 7人のこどもが死亡し,200人以上が感染したと報告されている。
[3] Diarrhea, fatal - Yemen: RFI
 情報源 Mareb Press [in Arabic] 7月6日
a diarrheal epidemic 感染拡大を受け,the province of the Hajj Directorate の調査が行われている。地域の病院が 1日 15例以上の患者を受け入れている。

● デング熱/デング熱出血熱 アジア,南北アメリカ
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2010 (38)
Archive Number: 20100727.2520
[1] Philippines (Cagayan)
 情報源 Balita.ph 7月20日
2010年初 1か月に 6人が死亡
[2] Taiwan
 情報源 Taiwan Headlines 7月23日
23日,感染者数 12人,mostly in the southern city of Kaohsiung と発表。
[3] India (Delhi)
 情報源 The Times of India 7月23日
The national capital reported the 1st dengue death of the season 
[4] Sri Lanka
 情報源 Viva Lanka 7月24日
the outbreak of dengue fever has caused 164 deaths, while 22 159 cases have been reported so far this year [2010]
[5] Maldives
 情報源 Minivan News 7月17日
Dengue fever is on the rise across the Maldives, especially in Male:473 cases have been reported for 2010 up to the 1st week of July 2010
[6] USA (Florida)
 情報源 WESH.com 7月21日
海外での感染例,30例以上。
[7] Trinidad & Tobago
 情報源 i95.5FM 7月23日
there are now about 600 reported cases
[8] Mexico
 情報源 Associated Press via the San Francisco Examiner 7月21日
type 2 strain is now in the Gulf coast state of Veracruz and moving north toward the region on the U.S. border.
[Dengue virus] type 1 is already present in border states like Tamaulipas, 
[9] Honduras
 情報源 Proceso Digital [in Spanish] 7月20日
Serotypes 1, 3 and 4 have been circulating widely in the country, but "at this time, Hondurans face serotype 2,
[10] El Salvador
 情報源 SDP Noticias [in Spanish] 7月19日
a national campaign will be launched, to prevent an epidemic of dengue 
[11] Brazil (Pernambuco)
 情報源 JC Online [in Portuguese] 7月21日
Among the 300 [people] who daily seek treatment in the Immediate Care Units (UPA) in Paulista and Olinda, in Grande Recife, the proportion of these people with symptoms of dengue reached 70 percent

● マラリア フィリピン
Subject PRO/EDR> Malaria - Philippines: (CN)
Archive Number 20100727.2516
 情報源: GMA News.TV 、2010年7月24日
Bicol region の保健当局は Camarines Norte province で 182人の患者が発生したことを受け、マラリア Malaria の感染流行を宣言した。当局者によると、多くは Jose Panganiban town の患者であるが、州全体の流行を宣言し拡大防止に努めるという。当局は Camarines Norte 州と Camarines Sur 州間の、特に the towns of Sipocot and Lupi での発生状況を注意深く監視し、拡大の防止をはかっている:the ReliefWeb
折しも、保健省と WHO が以下の地域のマラリア清浄化を宣言したタイミングだった; Albay, Sorsogon, Catanduanes, and Masbate。Camarines Sur についても、清浄宣言のための調査が進められている...
[Mod.EP- Camarines Norte は Southeasten Luzon に位置し、平時は low risk area と考えられてきた。フィリピンでは _Plasmodium vivax_ and _P. falciparum_ の双方とも報告されているが、上記では種類が特定されていない]

● バンコマイシン耐性腸球菌 スウェーデン
PRO/AH/EDR> Vancomycin resistant enterococci - Sweden
Archive Number 20100727.2515
 情報源:Eurosurveillance edition 2010; 15(29)、2010年7月22日
Alarming spread of vancomycin resistant enterococci in Sweden since 2007

● Q熱 オランダ
PRO/AH/EDR> Q fever - Netherlands (30): peaked, mitigation measures 20100727.2513
 投稿者:European Livestock Association (ELA) Secretary、Christine Bijl、2010年7月27日
Developments re Q fever, Inf@ct update No 11, 22 Jul 2010
[Inf@ct [メールアドレス] は、the Centre for infectious Diseases (Clb 感染症センター) of RIVM (the National Dutch Institute for Public Health and the Environment オランダ公衆衛生環境研究所) が運営する、感染症に関する closed electronic information service で、オランダ語でかかれた最新版 on 22 Jul 2010 の翻訳が投稿されたもの]
1.公衆衛生面での現況:6月21日までに報告のあった国内の Q熱患者は 421例であった(2009年は 1796例)。316例については 2010年に入って発症した。2010年に Qf(Q fever) で死亡した患者は5例であった...
2.獣医学的現況:91か所の農場で、バルクのミルクの検査により Qf 発生が報告された...
3.GR (Health Council) - advice re Q-fever vaccination:...
4.コメント:2008および 2009年と比較して、ここ数か月間の Qf の発生は大きく減少した。Qf 患者の大半が過去2年間に感染のあった慢性 Qf であることから、今後も Qf 関連死亡の報告が続くと予想される。