2010年7月3日

ダニ媒介性脳炎 クロアチア
出血熱 コンゴ共和国

● ダニ媒介性脳炎 クロアチア
PRO/AH/EDR> Tick-borne encephalitis - Croatia: susp.
Archive Number: 20100703.2218
 情報源: Adnkronos International 、2010年7月1日
Croatia: Tick bites provoke health scare
クロアチアのあるクリニックに、ダニ刺咬による感染で重体となった6人が入院している。1日の報道によると、6人のうち5人は意識不明だという。5人は人工呼吸器を装着され、回復の見込みははっきりしないと医師は説明した。6人目の患者の状態は良く、その妻は危険な状態ではないと述べた。年齢が30才から70才までのこの患者らは、クロアチア北部の住民で、髄膜脳炎 [ダニ媒介性脳炎 Tick-borne encephalitis ウイルスのこと] を持ったダニの刺咬を受けたと説明した。2010年に農村部からダニ刺咬のため入院となった患者は合計11人いるが、今回の症例は最も重症である。
[Mod.CP- Tick-borne encephalitis (TBE) virus は、ヒトへの病原性を有する主要なフラビウイルスの1つで、常在国の公衆衛生上、重大な影響を及ぼす疾患の原因となる。TBE の原因ウイルスには、3種類の異なる subtype のウイルスがある : Western European TBE virus, Far Eastern TBE virus and Siberian TBE virus である。
Western European TBE (中部ヨーロッパ脳炎 Central European encephalitis とも) は 西欧から中欧の国々に常在し、特にオーストリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、チェコ、スロバキア、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、スイス、ロシア西部、ウクライナ、ベラルーシ、クロアチア、スロベニアなどのの森林・山岳地帯に多く見られる。少ない頻度で、デンマーク、フランス、リヒテンシュタイン、イタリア、ノルウェー、オーランド諸島 the Aland archipelago と対岸のフィンランド沿岸部、Uppsala から Karlshamn までのスウェーデン南部沿岸地域一帯でも、発生が確認されている。春の終わりから秋のはじめまで、多数の TBE 患者が毎年発生する。この種の TBE はマダニの the tick _Ixodes ricinus_ によって伝播され、主要保有種であるノネズミ voles とダニの数が増える時期 (5-6月と9-10月)にアウトブレイクが発生する。ワクチンによる予防が可能な疾患である。クロアチアへの旅行者は、ダニ刺咬回避についての情報収集が必要である]

● 出血熱 コンゴ共和国
PRO/AH/EDR> Hemorrhagic fever - Republic of Congo (02): WHO susp. 20100703.2217
 情報源: World Health Organisation (WHO), CSR, Disease Outbreak News 、2010年7月2日 [FORTH]
Suspected Acute Hemorrhagic Fever in the Republic of the Congo -- update
[ProMED-mail- 今回のアウトブレイクは、コンゴ川の対岸であるコンゴ民主共和国 Songo で起きている流行とは無関係である]
コンゴ共和国の Sangha 地方で、感染症が疑われていた患者のうちの1人の血液検査は、いずれのウイルス性出血熱 (エボラ、マールブルグ、クリミアコンゴ、アレナウイルス)についても陰性であった。新たな追加検査が行われている。検査は、ガボンの the Centre International de Recherches Medicales de Franceville (CIRMF) が担当している。他の感染が疑われる死亡患者 3人からは、検体を採取することができなかった。
今回の疑い患者における陰性結果によって、急性出血熱の集団発生や継続を除外することはできない。保健省や WHO などの関係機関は、引き続きヒトと野生動物に対するサーベイランスを強化し、対応策の実施に当たる。感染が疑われた患者と直接の摂食があった40人以上については、最後の接触(6月19日)から21日間が経過するまでの期間、健康監視が続けられる。
[Mod.CP- これ以前に WHO は、コンゴ共和国 Republic of the Congo (Brazzaville) 北部の、人口約100人の隔絶された森林地域の村 Mokouangonda(Mokoke district, Region of Sangha) で、急性出血熱が疑われる、死者3人を含む5人の患者について報告していた。これまで可能性のある出血熱のいくつかは除外されているが、はっきりした診断は下されていない]
地図 the Republic of Congo, showing the location of Sangha region 
関連項目 
Hemorrhagic fever - Republic of Congo: susp 20100629.2170

● マラリア インド
PRO/EDR> Malaria, fever - India: (Mumbai), RFI 20100703.2216
 情報源: DNA 、2010年6月22日
Malaria is back in Mumbai
モンスーンは始まったばかりだが、市内ではマラリア Malaria と発熱患者が増え始め、深刻な不安が広がっている。2009年に比べ、これまでのところ、マラリアについては 28%、発熱疾患については 22%の患者数の増加が見られている。市保健当局によると、6月1日以降の公立および私立の医療機関を受診したマラリア患者は 1175人、発熱患者は 3474人である。1日あたりの各病院の受診者としては、マラリア患者 44人と発熱患者 171人となる。1日以降、2人がマラリアで死亡した ... Kurla では、マラリア患者が 261人発生し、最も深刻な状況にある
[Mod.EP- ... Mumbai は低リスク地域と考えられているが、それは富裕層の居住地域に対する評価である。以前行われた研究 (Field survey on water supply, sanitation and associated health impacts in urban poor communities--a case from Mumbai City, India. Water Sci Technol. 2002;46:269-75) によると、市内スラム街では、人口千人あたりの年間のマラリア発生率が126人と非常に高いことが示されている。もしもこの状況が今日にも当てはまるとすれば、今回報告された状況は、単に例年どおりの季節性変化と捉えられる]
[Mod.JW- ここで言われている水源では、マラリアのベクター蚊族であるハマダラカ (_Anopheles_ spp.) ではなく、デング熱のヤブカ属しか発生しない。発熱性疾患の患者とはデング熱患者を指している可能性が高い]

● 炭疽 キルギスタン
PRO/AH/EDR> Anthrax, human - Kyrgyzstan: (DA Dzhalal-Abadskaya Oblast) 20100703.2214
 情報源:Itar-Tass、2010年7月2日
Some 14 people hospitalized with suspected anthrax in Kyrgyzstan

キルギスタンのジャララバード(the Jalal-Abad Region of Kyrgyzstan)で、およそ 14人が炭疽 Anthrax 感染の疑いにより入院となったと、2日、キルギスタン非常事態省広報が伝えた。隣接する Nooken district でも合計7人が治療中であるとした。暫定的な検査結果から、Nooken district において感染があったと見られる家畜の肉を食べ、炭疽に感染した可能性がある。家畜の検査も現在行われていると、会見で述べた。the Bazar-Korgon district でも、炭疽の疑いがもたれる女性 1人が確認されている。医療専門家は、キルギスタン南部には、複数の場所に炭疽感染の発生が点在すると見ている。現地では、この危険な病気に感染するヒトが、絶え間なく発生している。
[Mod.MHJ- キルギスタンのこの地域は常に炭疽の高度侵淫地区で、周りのウズベキスタン西部も同様の状況にあり、このような状況についての、同国保健省関係者からの詳しい報告がある(20090130.0415) 。いわく、最悪の発生地域は the Jalal-Abad region [province] で、Osh, Batken, and Chuy provinces がこれに続く。このような状況は ground foci of anthrax 炭疽菌による土壌汚染箇所 が多数存在することがその理由である。共和国全体で 1234の汚染箇所が確認されており、485 foci in Chuy province; 354 foci in Jalal-Abad province; 247 foci in Osh province; 124 foci in Issyk-Kul [Ysyk-Kol] province; 23 foci in Talas province; 5 foci each in Naryn and Batken provinces; and 1 focus in the city of Bishkek(首都ビシケク)となっている。流行発生の主因は、家畜へのワクチン接種の不徹底である。また住民にも責任がある。病気の家畜について、獣医師のチェックを受けることなく処分を行い、その肉を市場に売却している。処分に関わったものも、業者も消費者にも危険が及んでいる。しかし、問題は今も解決されていない]
* Jalalabad (here spelt as Dzhalal-Abadskaya Oblast) はウズベキスタンと国境を接している

● 東部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎 ベネズエラ
PRO/AH/EDR> Eastern & Venezuelan equine encephalitis - Venezuela: humans, equines 20100703.2219
 情報源 Radio Union [in Spanish]、2010年7月2日
The Venezuelan Medical Science Societies は、294例のウマ脳炎を報告した。このうち13例がヒトの感染で、Venezuelan equine encephalitis [VEE ベネズエラウマ脳炎] 7例と、eastern equine encephalitis [EEE 東部ウマ脳炎] 6例である。数年前に根絶されたが、最近ふたたび発生したことは問題とされていない