2010年8月10日

狂犬病 ペルー 吸血コウモリ
◎ クリミア・コンゴ出血熱 ナミビア

● 狂犬病 ペルー
PRO/AH/EDR> Rabies, vampire bat, human - Peru (02): (AS) susp  
Archive Number: 20100810.2743
 情報源: Living in Peru 、2010年8月10日
Rabies outbreak in northern Peru kills 4 children
吸血コウモリ vampire bats によると見られる狂犬病 Rabies 感染流行により、the Amazonas region of Peru で4人の子どもが死亡したと10日現地紙が伝えた。2-6日の週に the district of Nieva でこれらの死亡事例が発生し、保健省の調査チームにより診断が確定された。現在は新たな感染者は発見されていないが、狂犬病の潜伏期間が数ヶ月におよぶため、今後の状況は予断を許さないと当局者が述べた。
[Mod.CP- bat-transmitted rabies の大部分が、the Amazon region of Brazil and Peru と some remote communities of Colombia で発生している。 Vampire bats が確認されているのは Latin America だけである。
これまでに知られている3種類 --Diphylla ecaudata_, _Diaemus youngi_, and _Desmodus rotundus_ (the common vampire) -- のうち、哺乳類から吸血するのは後者のみで、ヒトの狂犬病ウイルスを伝播するのも後者のみである。吸血コウモリの保有する狂犬病ウイルスは、哺乳類や吸血しないコウモリの狂犬病ウイルスとは抗原性遺伝的違いがあるが、vampire bat transmitted rabies に対して、the standard human rabies vaccine の曝露前もしくは後の接種による感染(発症)防御効果が認められている。この死亡した4人の子どもたちが、間違いなく vampire bat bites によるものか確定されていない。オリジナルの記事には a striking photograph of a vampire bat も掲載されている]
地図 the Amazonas region of Peru 

◎ クリミア・コンゴ出血熱 ナミビア
PRO/AH/EDR> Crimean-Congo hem. fever - Namibia: (KA) 20100810.2732
 情報源: AllAfrica, The Namibian report、2010年8月2日
ナミビア人の Congo fever [Crimean-Congo hemorrhagic a fever クリミア・コンゴ出血熱] の患者1名が、30日に退院した。すぐにウシやヒツジのいる農場には復帰せず、もうしばらく南アフリカに残って、2週間治療に当たった医師の近くで回復を待つことにした。31日に自宅の農場に戻った妻にも1日からの週に38度の発熱が認められ入院となったが、検査の結果 CCHF ではないことが分かり、翌日退院した。
保健省の医師の説明によれば、Rift Valley fever (RVF) に非常に似ているこの疾患が、ナミビアで発生したのは8年ぶりのことであった。ダニが媒介することの多いクリミア・コンゴ出血熱は、届出義務のある病気となっている。国内では、1985年以来となる RVF の流行が2010年に発生した。7月26日の週に国連は、1人の死者も出していないナミビアの流行対策の成功を賞賛している。
[Mod.CP- Crimean-Congo haemorrhagic fever (CCHF) は,ナイロウイルス属 the genus _Nairovirus_ of the family Bunyaviridae_ ブニヤウイルス科のウイルスによる出血熱で、基本的には人獣共通感染症であるが、ヒトの間でも CCHF 感染流行も発生する。アフリカ、欧州、アジアのさまざまな国に常在する。2008年に南アフリカで流行した。ウイルスの地理的分布は、ベクターとなるダニの分布に一致して広がっている。アフリカ、アジア、中東、東欧で、CCHF ウイルスの兆候が確認されている。常在地域の医療従事者は、疾患とその感染対策を熟知し、自身と患者を院内感染から守らなければならない。多くの家畜や野生動物も感染する。鳥類の多くは感染に抵抗性を持つが、ダチョウは感染する。動物の感染は感染性ダニの刺咬によって成立する。ヒトは、家畜の血液などの組織に直接触れたり、ダニ刺咬を受けることにより感染する。大部分は、農業従事者、食肉処理場作業員、獣医師などの、家畜に関係する職業で発生する。潜伏期間は、暴露した経路によって異なり、via tick bite(ダニ刺咬) 後は1-3日(最大9日)、血液などとの接触後なら5-6日(記録上13日後まで)となる。発症は突然で、発熱、筋肉痛、めまい、頚部痛、背部痛、頭痛、目の痛みと光線過敏症で、嘔気や咽頭痛を訴える場合もある。腹痛や下痢を伴うこともある。その後数日たって、激しい気分の変調 sharp mood swings を経験し、混迷や攻撃性を呈するようになり、2-4日後には agitation (興奮) から、sleepiness (不眠), depression (うつ), lassitude (無気力) に変わる。 腹痛は右上1/4に限局したり、肝腫大を伴ったりする。CCHF の致死率はおよそ30%で、死亡例は発病後第2週目におきる。回復する患者は、発症から9-10日目に改善傾向が見られ始める]
地図1 Namibia is located in south west Africa bordered by Zimbabwe and South Africa  
地図2 the regions of Namibia

● 脳炎 ギリシャ(2件)
PRO/AH/EDR> Encephalitis - Greece (04): (MC) WNV conf 20100810.2742
 投稿者:ギリシャ・Aristotle University of Thessaloniki、Assoc. Prof. Anna Papa、2010年8月10日
(確定診断法についての Mod.TY の質問に対し)
これまでに 20 cases with encephalitis or meningitis cases について血清検体中の高 IgG and IgM 抗体価と、髄液中の抗 IgM 抗体を確認している。血清学的検査には commercial ELISA kit を使用し "in-house" indirect immunofluorescence (間接蛍光抗体法)を併用した。
患者の大部分が70歳以上で 2人が死亡した。
IgM 抗体検査に関しては、negative for Toscana virus, tick-borne encephalitis virus だったが、一部の患者では Dengue virus との交差反応を示したものの、grey zone の範囲だった。tick bite を申告した患者はいなかった
 
PRO/AH/EDR> Encephalitis - Greece (03): (MC) WNV conf 20100810.2727
 情報源: In Gr [in Greek]、2010年8月9日
the region of Macedonia マケドニアで発生した16例の脳炎患者の原因がウエストナイルウイルス West Nile virus によるものであったことが確認されたと、研究機関からの報告で明らかになった。Thessaloniki で最近死亡した3人の高齢者の患者うちの、2人からの検体でウイルスが確認された。血清学的確定診断であった(Detection is done by serology.)...
[Mod.TY- 非常に早く結果が出た。flaviviruses の検査は cross-reactive serologically(他のウイルスとの交差反応) が多いことで有名であるが、どのような血清検査が行われたのだろうか]

● 麻疹 ニュージーランド
PRO/EDR> Measles - New Zealand (02): (Auckland) alert 20100810.2739
 情報源:3news.co.nz, NZPA report 、2010年8月10日
Doctors fear measles outbreak in Auckland
オークランドthe Auckland region で、関連性のない 2件の麻疹 Measles 感染が発生した
[Mod.CP- 2010年4月初旬、the North Island of New Zealand において、信教上の理由でワクチンを受けない集団に限定された、麻疹感染流行が報告された。一般社会からと見られるその感染源は特定されないままである。麻疹の初発症状は、ウイルスへの暴露の10-12日後の高熱で、4-7日間継続する。初期症状として runny nose, a cough, red and watery eyes, and small white spots inside the cheeks (頬粘膜の小さな白斑)などが見られる。数日後から顔や首にできる発疹が数日間で手足まで広がり、5-6日間続いた後消退する。平均すると、ウイルス暴露後発疹が出るまでは14日間ある(7-18日間)。重症麻疹になりやすいのは、栄養状態のよくない乳幼児で、特にビタミンA欠乏や、HIV/AIDS などで免疫能の低下した児に多い。麻疹関連の死亡で最も多いのは、5歳未満の小児と20歳以上の成人に多い合併症による死亡である。もっとも深刻な合併症として失明、脳炎、重症下痢に伴う脱水、耳感染、肺炎などの呼吸器感染などがある]

● ハンタウイルス カナダ
PRO/AH/EDR> Hantavirus update 2010 - Americas (30): Canada (SK) 20100810.2729
 情報源: CBC (Canadian Broadcasting Corporation) News、2010年8月9日
サスカチュワンSaskatchewan 州の男性1名が、ハンタウイルス Hantavirus に感染し発病した。州内では2年ぶりの感染であると保健当局者が述べた。州中西部在住のこの男性が感染したハンタウイルスは、deer mice [_Peromyscus maniculatus_] の唾液や排泄物からヒトに感染し、インフルエンザ類似の症状で発症する。重症化したり、死亡する可能性もある。農家、grain handlers 穀物業者、コテージのオーナーなどの人々は、ネズミの糞を始末するときや建物の掃除の際には、マスクと手袋を着用するよう勧められている。最後に患者が発生したのは2008年のことで、今回の患者を入れずに、1994年以来州内で感染した人の数は19人である。
[Mod.TY- カナダの Prairie Provinces and British Columbia でも、ここ数年散発的にヒトのハンタウイルス感染が起きている。この報告には、どのハンタウイルスによる感染であるかは書かれていないが Sin Nombre virus であろうと思われる。Sin Nombre と New York hantaviruses はともに deer mice を reservoir hosts (宿主) としている]

● デング熱/デング出血熱
PRO/EDR> Dengue/DHF update 2010 (41) 20100810.2726
フィリピン
[1] フィリピン Philippines (Capiz)
 情報源:The News Today、2010年8月9日
The Sangguniang Panlungsod [provincial legislature] は、市内で444人の dengue hemorrhagic fever cases と5人の死者が発生したことを受け、感染流行宣言を行った...
地図 Capiz province in the Western Visayas region  
[2] 75例の患者確認
 情報源: Relief Web 、2010年8月7日
市内5か所の barangays [neighborhood political units] でデング熱感染流行が発生している。7月だけで、75 cases of dengue in barangay of Cudog のほか、the 4 clustered barangays of Poblacion, Lagawe でもデング熱が確認されている
[3] Philippines (Rizal)
情報源: Manila Bulletin Publishing Corporation 、2010年8月6日
州全域で、約200人のデング熱感染および疑い患者が確認されている。 Cainta および Antipoloで各2名の死亡が報告された
ベトナム (southern provinces)
 情報源: Thanh Nien News 、210年8月6日
ホーチミンHo Chi Minh City Preventive Medicine center 長は、districts 1 and 3 など、市内のほとんどの地域で、6-7月にデング熱感染が急増していると述べた。周辺の Binh Phuoc 省などからも、死者2人を含む700例の患者が報告されている。Dong Nai Province(the north east of HCMC)の2010年の患者数は1000人を超えている。3人が死亡した。
タイ (Ubon Ratchathani)
 情報源: AIT News、2010年8月9日
北東部 Ubon Ratchathani 県では、882のデング熱患者と2人の死亡が報告されていることが、公衆衛生省から発表された。国境に近い、the districts of Nam Yuen, Na Ja Luay, Nam Kun and Bunthari で発生している
地図 Ubon Ratchathani province in far eastern Thailand
マレーシア
 情報源:New Straits Times、2010年8月7日
1月以来のデング熱による死者は67人に増えた。2009年同期、67人だった[2009年に比べ38%増とする後述の内容から、この数字は誤りか?]。
インド (マハーラシュトラ)
 情報源: Pune Mirror 、2010年8月7日
プネ Pune Municipal Corporation (PMC) health department 当局の統計によると、1月からこれまでに59人のデング熱による死者が報告されている。
[Mod.TY- 発生日が記載されていない。インドに常在するデング熱が、流行しているのか、散発的な累積なのか判断できない。別の新聞記事 : an 18 year old boy had died of DHF and 4 dengue cases had been hospitalized in Mumbai on 6-7 Aug 2010(The 8 Aug 20120 edition of the Hindustan Times]
イエメン
Study [shows] 200 deaths of dengue fever in Taiz, Aden; over 100 000 infected

 情報源: Saba net 、2010年8月6日
the University of Sana'a の調査によると、イエメン国内各地にデング熱感染流行が波及し、Aden province では1000人が感染し、600人が入院となった。以下、取り上げられた地名のみ:Ibn Khaldon in the southern city of Lahj, Shabwa province, Taiz province, Hodeidah province and adjacent areas...
地図 Yemen
米国 (フロリダ)
 情報源:CNN 、2010年8月4日
the Key West area でデング熱に感染する人の数が増えていることが、フロリダ Florida 州保健局により明らかになった。7月中旬の Key West で報告された感染者数は24人で、18人が Key West の住民だった。これ以外にも、いわゆる "imported" cases of dengue fever  が49人報告されている。
メキシコ(Tamaulipas)
 情報源: Metro Noticias [in Spanish]、2010年8月4日
the Health Jurisdiction No. 4 当局は、デング熱患者9人が報告された7月12日以降は、確認される患者数の増加が小さいと認めている。これまでに確認された患者は12人で、30人については数日以内に結果が確認されることになっている。12人のうち4人がデング出血熱の患者であった。
ドミニカ共和国
 情報源:El Nacional [in Spanish]、2010年8月4日
デング熱の感染者が15000人を超え、死者が40人に達していることを、the Dominican Medical Association 副代表が明らかにした。(一方) 3日の公衆衛生省の発表では、全国のデング熱患者数は 6727, of which 645 presented alarming signs (DHF), with deaths totaling 32 と発表されている。
[Mod.TY- 数字がずいぶん違う]
マルティニーク Martinique
 情報源: Femme Actuelle [in French]、2010年8月6日
7月中旬に1900人であった臨床的にデング熱が疑われる患者数が、8月1日には2600人まで増加した。検査で確定診断された患者は310人以上で、うち9人が死亡している。
ジャマイカ
 情報源: The Jamaica Observer 、2010年8月4日
7月24日までに、ジャマイカ国内で77 例の laboratory-confirmed dengue cases が確認されている。DHF の患者は7例だが、ショックや死亡の患者はいない。
ホンジュラス
 情報源: Latin American Herald Tribune 、2010年8月9日
この2週間に10人を超えるホンジュラス国民が DHF で死亡した。2010年の死者が43人になったと、7日政府当局から発表された... 保健省は、2010年に Honduras では 1025 cases of DHF and 33 628 cases of non-lethal classic dengue が発生したことを明らかにした。2009年1年間に出血熱で死亡した患者数は12人に上った...
コスタリカ
 情報源: energypub 、2010年8月7日
保健省は、ニカラグアやホンジュラスで発見されているが、コスタリカでは唯一確認されていない型の、"dengue [virus] 4" の発生に注意するよう警告している。2010年初以来、15916人のデング熱患者が発生した。2009年と比較して 603%の増加である。

● 狂犬病 米国
PRO/AH/EDR> Rabies update - USA (09): August 2010 20100810.2731
[1] ビーバー(Beaver), human exposure - USA (Georgia)
Atlanta man attacked by beaver
 情報源:My Fox Atlanta 、2010年7月30日
アトランタ Atlanta の男性は、Lake Lanier 付近でビーバーによって受けた腕の傷がようやく癒えようとしている。7月29日に the Buford Dam の下流で釣りをしていたところ、いきなり14kg もあるビーバーが噛み付いてきたと話している。前腕部に深い傷を負い、ワクチン接種を受けている..
[2] Feline, human exposure - USA (Alabama)
[3] Bat, canine exposure - USA (Utah)
[4] Skunk, feline, canine exposure - USA (New York)
[5] Bat, feline exposure - USA (New Jersey)
[6] Bat, human exposure - USA (South Carolina)
[7] Raccoon, canine, human exposure - USA (New Jersey)
[8] Feline, canine, human exposure - USA (Texas)
[9] Bats, multiple human exposure - USA (Colorado)

● 東部ウマ脳炎 米国 歩哨用鳥類
PRO/AH> Eastern equine encephalitis - USA (15): (FL) sentinel avian 20100810.2728
 投稿者:米・Florida Department of Health、Lillian M Stark, PhD, MPH, MS、2010年8月9日。
Re: 20100807.2691
Mod.TGのコメント ”歩哨用ニワトリ chicken はどうなったのか? エミューやダチョウを含め、鳥類は EEE に感受性が強いため、おそらく感染により死亡したに違いない” に対して
chicken は EEE 感染では死なない
フロリダ Florida 州では以前より (many years)、アルボウイルス感染の早期警報として sentinel chicken (歩哨用のニワトリ)を使用している。それはニワトリは感染しても発病したり死亡せず、蚊族を感染させるようなウイルス血症も起こしたりしないためである。しかしウイルス感染に対する抗体は産生するため、その抗体を指標とすることができるのである。毎週血清を採取して検査部門に送付し、HAI [hemagglutination-inhibition 血液凝集素阻害反応] を用いて抗 flaviviruses および alphaviruses 抗体が調べられている。陽性検体については、IgM Elisa and/or SN-PRNT [serum neutralization test-plaque reduction neutralization test] により特異的病原体を決定する。まったく症状のない鳥の同一の血清検体中で、同時に WN と EEE の抗体陽性化を認めた例もある。1988年から2009年までの22年間に 49 231 birds (547 313 sera) の検査が行われている。