2010年8月1日-2日

◎ Toscana virus ドイツ

◎ Toscana virus ドイツ:無菌性髄膜炎
PRO/EDR> Aseptic meningitis, Toscana virus - Germany: (BW) 20100802.2587
 情報源: Short News [in German]、2010年8月1日
ブライスガウ Breisgau にある Goettingen および Freiburg 両大学の研究者らと、the Pforzheim Clinical Center の専門家らが、Baden-Wurttemberg では初めての the Toscana virus の発生を確認した。このウイルスはサシチョウバエ sandflies によって伝播されると考えられていて、元々地中海地方に発生していた数日で回復する軽症の髄膜炎の原因ウイルスである。
今回研究者らは、過去数年間の原因がわからなかった炎症[髄膜炎]の症例について調査を行い、発症前 14日以内に南欧に行ったことがないにもかかわらず、同ウイルスに対する抗体を有する 10人の患者を確認した。このウイルスの感染からの潜伏期間は2週間である。
[Mod.TY- ドイツ国内初の Toscana virus による無菌性髄膜炎症例の報告である。 Toscana virus が初めて確認されたのは 1971年のイタリア中部のサシチョウバエ sandfly (_Phlebotomus perniciosus_) での感染であった。
以下、summary of Toscana virus : "Toscana virus (TOSV) は節足動物媒介性ウイルスの1種で _Phlebotomus_ spp sandflies によりヒトに感染する。感染により無菌性髄膜炎、髄膜脳炎などの脳障害を引き起こし、イタリアでは主に夏に発生する。最近では TOSV 感染に、虚血性の合併症や水頭症などの重篤な後遺症を伴う非典型例が報告されている。TOSV  は新興感染症であり、イタリア、フランス、スペイン、ポ ルトガル、キプロスなどの Mediterranean basin の国々での発生について調査が行われている。系統発生学的に2つの genotypes of TOSV A and Bがある; A は主にイタリア、B はスペインに多く、これはベクターの分布の違いに関係すると見られている...]
参考資料 Toscana virus epidemiology: from Italy to beyond. Open Virol J, 4: 22-8

● 狂犬病 インドネシア
PRO/AH/EDR> Rabies, human - Indonesia (08): (Bali)
Archive Number:  20100802.2599
Rabies epidemic hits tourist haven of Bali
 情報源: Fox News, Associated Press report 、2010年8月1日
300万人が暮らし、アジアで最も人気の高い観光地の1つであるバリ Bali 島で狂犬病 Rabies が流行し、2年間に 78人の死者が確認されている。1週間前にも 40歳の女性1名が死亡しており、このほかにも報告されていない死者がいると見られる

● ウエストナイルウイルス イスラエル,ポルトガル(2件)
イスラエル
PRO/AH/EDR> West Nile virus - Israel 20100802.2598
 情報源: Haaretz 、2010年8月2日
イスラエル国内にウエストナイル熱 West Nile virus の感染が広がっている。患者数は今のところ少数にとどまっている。夏に発生することが多いが、これまでに 12人の患者と、 ほかに 12人の感染が疑われる患者が確認されている。テルアビブ the Tel Aviv area を中心に発生が見られている。Ramat Efal の持病のある 87歳の女性が感染により死亡した。患者の多くが 65歳以上もしくは持病のある人だった。イスラエルで最後に流行があったのは 2000年のことで、400人以上が感染し 29人が死亡している。
[Mod.TY- イスラエルではこれまでにも、ヒトやウマの感染例や、鳥類と蚊族の West Nile virus が確認されていた]

ポルトガル
PRO/AH/EDR> West Nile virus - Portugal 20100802.2588
 情報源:EPA (European Pressphoto Agency), Lusa (Agencia de Noticias de Portugal, SA) report [in Portuguese]、2010年7月26日
保健当局は、ウエストナイル West Nile [WN] virus に感染した患者が、どこで感染したかについて調査している。この患者の住む地域では、(ベクターの) 蚊族のウイルス感染は確認されたことがない。the National Institute of Health での検査結果が待たれる中、... 他の WN ウイルス感染患者の発生の可能性はきわめて低いと、当局者は述べている。
[Mod.TY- ポルトガルではこれまでにも WNV 感染が発生しており、2004年にアイルランドの旅行者 2人が、アルガルベ Algarve in Portugal の観光地で WNV に感染したと診断されている(20040726.2044)。2010年7月26日発行のポルトガル語による Diario Digital (in Portuguese) には、the National Institute of Health (INSA) が今回の WNV 感染患者は、地域のサーベイランスの中で蚊族の WNV 感染が認められなかったことから、弧発例と結論づけたとある。検査により WNV infection と診断されており "very probable" に当局は分類している]

● 手足口病 ベトナム
PRO/EDR> Hand, foot & mouth disease (07): Viet Nam
Archive Number: 20100801.2586
 情報源:Radio The Voice of Viet Nam (VOV) News 、2010年7月28日
ホーチミン Ho Chi Minh (HCM) City における hand-foot-mouth disease (HFMD 手足口病) 患者の数が急増している。HFMD は 5つの地方に広がり、6月だけで 340人の患者が報告された。2009年比で 23%の増加である。上半期の患者数 1640人は、前年同期比で 20%増であった。
[Mod.CP- 2009年に比べ各国の HFMDは増えているが、それぞれのサーベイランスなどの違いから各国間の比較は難しい:ECDC (European Centre for Disease Prevention and Control survey)。2010年5月21日の中国衛生省の報告では total of 497 447 cases of HFMD (重症例 6861) となっている。中国、日本などの報告で、enterovirus 71 (EV71) の割合が増えている。欧州における EV71 感染は順に、sub-genogroups B0, B1 and B2 の各ウイルスによるものであった。1987年に shift がおこり、以後 subgenogroups C1 and C2 だけが検出されるようになった。1997年以降、アジア太平洋地域だけに EV71 subgenogroups B3-B5 and C4-C5による大規模流行が発生している。
現在、解決されればより HFMD に対する理解が深まると思われる、知識のギャップが存在する。
1.季節性:アジアのほとんどの国々で毎年 HFMD の流行が繰り返されているにもかかわらず(今年の日本で認められたような) 早い時期からの流行開始のきっかけが何であるかわかっていないこと
2.疾患の周期性: 一部の国々において 2-3年ごとの周期的流行発生があると示唆されている。東南アジアでの最近の大流行は 2008年で、2010年の流行もその周期性パターンによるとも考えられる]

● ブタ繁殖呼吸器障害症候群 ベトナム
PRO/AH/EDR> Porcine reprod. & resp. syndrome - Viet Nam (06): flare-up 20100802.2600
 情報源:Thanhniennews.com 、2010年7月31日
Blue ear disease hits 11 provinces in Viet Nam
7 月30日現在、ベトナム国内の11の省で blue ear disease が発生していると、動物衛生局が報告した。南部の Tien Giang and Soc Trang 両省が、最も深刻な状況にある。このほか、中部 Nghe An and Quang Tri、メコンデルタ the Mekong Deltaの Bac Lieu、北部の Cao Bang の各省でも発生があった。全体の感染頭数は把握されていない。porcine reproductive and respiratory syndrome と呼ばれるこの感染症は、さらに拡大すると見られている。2009年6月、ベトナム政府当局は、口蹄疫、鳥インフルエンザとともに blue ear disease の封じ込めに成功している。しかし、2010年4月3日、blue ear が北部 Hai Duong 省に再び発生した。
[Mod.AS- Porcine reproductive and respiratory syndrome (PRRS) は、雌の不妊 reproductive failure と子豚の呼吸器障害を特徴とする疾患で、原因となるウイルスは the order Nidovirales , family Arteriviridae, genus Arterivirus に分類されている the PRRS virus である。ウイルスの標的臓器はブタの肺胞のマクロファージである。the European and the American type という2つの antigenic types of the virus があり、感染したブタのほか、排泄物や飼料などによっても感染が広がる。世界中の主な養豚地域のほとんどに見られる PRRS は、2007年に初めてベトナムから報告され、現地で "Blue ear pig disease" と呼ばれていた。全国に感染が拡大し、2008年2月23日に流行が宣言されている(distribution map)。ベトナムで確認された後、中国に波及し大きな経済的損失をもたらせた。ベトナム政府当局の対応は透明性の高い、賞賛すべきものであった]

● 炭疽、バイソン 米国
PRO/AH/EDR> Anthrax, bison - USA (02): (MT) 2nd bison 20100802.2591
 情報源:The Prairie Star、2010年8月1日
the Flying D Ranch 農場(ガラティン Gallatin County)の1歳の雌のバイソン yearling bison heifer の遺体の検査、自然発生の炭疽菌が原因であったことが判明したと、モンタナ Montana 州の当局が発表した。2年前に287頭のバイソンが炭疽感染によ り死亡した農場の近くで、26日に死亡した発見されたバイソンの野外調査でわかった。2008年の流行発生以降、2500頭あるこの群れは毎年1回以上ワクチンを接種されていた。
[Mod.MHJ- このオオカミによって殺された家畜が発見された後、2頭めのワクチン接種後で炭疽検査陽性のバイソンが発見された。同じくオオカミに襲われた。3頭めの死骸は炭疽ではなかった。1頭めのこの雌のバイ ソンは、ワクチンによる抗体価が低く、たくさんのハエが群がったためという仮説が考えられる。2頭めも同じ7月12日頃に死亡している。これまでのサーベ イランスで、これより高度が高い場所では、elk [bison?] の死体は発見されていない。ハエの密度も高く、トラップがいっぱいになっている]

● Brassica アブラナ の病気 英国
PRO/PL> Brassica diseases - UK: alert 20100802.2590
Red alert for brassica diseases
 情報源:Farming UK 、2010年7月28日。
アブラナ栽培農家に対して、2010年7月中旬に alternaria, ringspot, and white blister などの病気発生のリスクが高いとの見方が、The Brassica Alert disease and pest forecasting system から出されている

● ヒヨコマメの病気,Ascochyta blight オーストラリア
PRO/PL> Ascochyta blight, chickpea - Australia: (NS) 20100802.2589
 情報源:Australian Broadcasting Corporation (ABC) Rural Report 、2010年7月28日
Ascochyta threatens chickpea crop
タムワース Tamworth の植物病理学者によると、NSW [New South Wales] 州北部で ascochyta の発生の増加が見られている。この真菌性疾患により、ヒヨコマメ chickpea crops が死滅する可能性がある。この地域の主要作物であるヒヨコマメは、地域経済の要となっている
[Mod.DHA- Ascochyta blight (AB) of chickpea は真菌の _Ascochyta rabiei_ を原因とし、世界中のヒヨコマメにとって最も重大な病気となっている]